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時事 2017年02月27日

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「ならず者国家」と対決し始めたマレーシアの毅然とした態度

鵜子 幸久(桜リクルート社(マレーシア))

マレーシアのKLIA2空港で起こった金正男(キム・ジョンナム)氏の襲撃殺害事件は記憶に新しいところですが、事件の真相はまだ闇に包まれているとはいえ、この事件をきっかけに、友好国であったマレーシアと北朝鮮の関係が険悪な状態になっています。北朝鮮が全体の捜査に協力しないばかりか、マレーシア警察を痛烈に批判しはじめたことにより堪忍袋の緒が切れ始めたという様相で、マレーシア外務省は北朝鮮駐在の大使を帰国させたほか、ナズリ観光相は「ならず者国家」という痛烈なアナウンスを出し、もはや国あげて怒り心頭という段階に突入しています。

マレーシアのザヒド副首相は、関係見直しの選択肢を洗い出すよう外務省に指示しました。可能性として高くなってきたのは国交断絶で、1983年にミャンマーが爆弾テロ事件を契機に北朝鮮と断交した例があります。また在マレーシア北朝鮮大使館外交官の追放も検討されています。外交官の処遇を定めた「ウィーン条約」には、受け入れ国がペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)と判断すれば、その外交官の承認を拒否できるとの規定があるからです。その場合派遣国は当該外交官の任務を終了させなければならず、事実上の国外追放処分といえる措置となります。

マレーシアが関係見直しの検討を急ぐ背景には、正男氏殺害の捜査協力を拒む北朝鮮への圧力を強める目的があります。北朝鮮大使館の2等書記官が外国人の女性を使い殺害に深く関与した疑いが浮上し、またKL市内南部のタマンデサ地区にある高層コンドミニアムからは犯行に使われた猛毒の神経剤VXの関連が疑われる化学物質が押収されました。それでもシラを切る北朝鮮側は「外交特権」を盾に一切の協力を拒んでいるため、マレーシア警察の長官は、姿をくらました書記官らに対する逮捕状の請求はじめ一歩踏み込んだ強硬策を取っていくとの考えを示しています。

いつものこととして北朝鮮の報復も予想されます。マレーシアは北朝鮮とビザ(査証)なし往来が可能で、2016年は北朝鮮に対してパーム油など3億円弱を輸出しているため、貿易などに携わる自国民の不利益につながる要素もありますが、マレーシアとしては国家の威信をかけて強気の姿勢を貫いていくことと思われますし、各国もこの毅然とした姿勢を支持していくことになるでしょう。国際社会の孤立児、北朝鮮がこの事件をきっかけにまた追い詰められていくことになると思います。

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