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海外ビジネス コラム

インバウンド 2018年09月21日

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観光庁がインバウンドで推進する「日本版DMO」って何?

大塚 孝二(株式会社デジタルスタジオ)

2017年のインバウンド旅行者数は2,869万人となった。日本政府は2020年オリンピックイヤーでは、4000万人を目標としている。充分に目標達成はされる数値であるが、政府は数値目標として、三大都市圏(埼玉、東京、千葉、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫の8都府県)以外の地方部へのインバウンド旅行者の誘致を大きな目標として、宿泊者数7,000万人、シェア50%という数値も掲げている。

観光庁では、地方創生の柱の一つとして、観光地域作りの舵取り役となる「日本版DMO」の登録制度を2015年11月に創立した。海外のDMOでは、地場に根付いた法人が活発に機能することで、観光客の集客にも大きな成果がでているとの報告もある。今回はこの「日本版DMO」とは何か? そして、「日本版DMO」はどのような活動を行っているのかなどを見ていこう。

 

●「日本版DMO」とは何?

DMOとは、「Destination Management Organization」の略で、観光庁の資料によると、『地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人』とある。

つまり、DMOとは、地域を一体化して魅力的な観光地域をつくり、戦略に基づく一元的な情報発信・プロモーションを担う法人組織のこと示している。具体的には宿泊施設、商工業、交通機関、地域住民、行政、農林漁業、飲食店などその地域のすべての情報に精通し、観光に関する調査と状況分析を的確に行い、地域の観光能力が最大限に発揮されるように支援するのが目的である。

DMOの役割を分かりやすくまとめると、以下の3つが挙げられる。

  1.  ◆ 内外の有益な人材・ノウハウを積極的に取り込むことで、関係者間の連携を高める。
  2.  ◆ 観光活性化に必要なデータの収集や分析をしっかりと行う。
  3.  ◆ 行政の発想だけにとらわれることなく、民間の手法の導入を行う。

 
これら事項をまとめると、「地域の観光開発をしっかり確立し、地域の中心存在として観光を盛り上げ、さらに、データに基づいた施策を実施する」ことが、「日本版DMO」の役割と言えるだろう。

 

●「日本版DMO」7つの支援内容

日本政府は、DMO制度を作り、インバウンドのゴールデンルート(東京・箱根・富士山・名古屋・京都・大阪)以外の地方の観光地をさらに盛り上げようとしている。 具体的にどのような支援があるのだろうか。 主な7つ支援内容をまとめてみた。

(1)観光地域のブランド確立に対する支援

国際競争力の高い魅力的な観光地域づくりを促進するために、「観光地域づくりプラットフォーム」による地域独自 の「ブランド」の確立に向けた取組を支援する。
例えば、観光客の滞在プログラムの企画、観光ガイドの育成、宿泊サービスの改善・向上に関するコンサルティング、マーケティング調査などである。

(2)クラウドを活用した 知的観光基盤を支援

観光地域のシステム・ツールである「DMOネット」を開発し、ネット上に、専門的知識を持つ民間業者のノウハウ、人材マッチング機能、自治体などの統計情報などを掲載し、「DMOネット」でノウハウや事業例を横展開する。

(3)ふるさとの名物、名産品を支援

地域資源を活用したふるさと名物などの新商品・新サービスの開発等の支援やふるさと名物の販路開拓の支援を行う。
さらに、ふるさと名品のブランド確立、海外展示会出展などを支援する。 具体的には「ふるさと名物支援事業」、「JAPANブランド育成支援事業」、「JAPANブランド等プロデュース支援事業」、「産地ブランド化推進事業」などがある。

(4)食によるインバウンド対応推進を支援

訪日外国人に一人でも多く訪日してもらうため、地域の食文化資源の魅力を高めるための支援を行う。
具体的には、需要拡大ために国内外の料理人や有識者等を地域へ派遣したり、地域の食、食文化を広めるための映像制作を支援し国内外に発信する。
また、飲食店に訪れた、訪日外国人対応として必要な情報を提供するためのガイドブックを作成、さらにインバウンド対応研修なども支援する。

(5)「地域おこし」のための企業人交流プログラムを支援

市町村が企業社員を一定期間受け入れ、企業のノウハウを活かし、地域独自の魅力や価値の向上を図るもの。
取り組む事業は、ICT分野、観光分野、営業の専門知識、人脈の活用、エネルギー分野などがある。

(6)スポーツを活用した地域活性化を支援

「地域スポーツコミッション」の活動に対して支援を行い、スポーツを観光資源とした地域活性化の促進し支援する。
具体的には、スポーツツーリズムによる交流人口拡大、キャンプ誘致・地域間の国際交流の促進、スポーツインバウンドの促進を狙った取り組みを行う。

(7)河川とそれに繋がるまちの活性化を支援

地域の景観、歴史、文化、及び観光基盤などの資源、地域の知恵を活かし、河川空間とまち空間が融合した良好な空間形成を目指す。
治水および河川利用上の安全整備、河川敷のイベント広場や、オープンカフェの設置、さらに「都市・地域再生等利用地域」に指定などの支援などを行う。

 

●観光庁公表の「日本版DMO」事例から

現在、「日本版DMO」の登録法人は86件(地域連合DMOが8件、地域連携DMOが48件、地域DMOが30件)にのぼり、その候補法人として122件が登録されている。
ここでは観光庁の資料から、3件の事例内容を見ていこう。

(1)せとうちDMO(せとうち観光推進機構)

瀬戸内DMO

2013年に瀬戸内を囲む7県(兵庫県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県)が合同し、瀬戸内全体の観光ブランド化を推進するための「瀬戸内ブランド推進連合」が結成され、瀬戸内全体での観光地マーケティングやプロダクト開発を推進。その後、2016年3月に(一社)せとうち観光推進機構に発展改組され、地元の金融機関等の出資により設立された(株)瀬戸内ブランドコーポレーションと密接と連携し、両者が一体の「せとうちDMO」として、瀬戸内エリアのブランド価値向上に取り組んでいる。

「せとうちDMO」の主な施策

  •  ◆ せとうちDMO戦略的デジタルマーケティング:アクティビティの手配にも対応したWebサイト
  •  ◆ インバウンド戦略の核となるコンセプトの策定 ・現地メディア旅行会社との関係構築
  •  ◆ 域内周遊促進と滞在時間拡大に向けた取り組み
  •  ◆ せとうちブランドの認知・浸透を効果的に推進する様々な仕掛け
  •  ◆ 地域の関連事業者や地域住民の意欲を喚起し、ネットワーク化する取り組み
  •  ◆ 観光活性化ファンド等を通じた事業者支援

 

(2)雪国観光圏(地域連携DMO)

雪国観光圏

新潟県の湯沢町、南魚沼市、魚沼市、十日町市、津南町、長野県栄村、群馬県みなかみ町の合同により、(一社)雪国観光圏を設立した。雪国観光圏は、東京や京都といった知名度の高い地域ではなく、日本でもマイナーな地域に来訪する外国人旅行者を取り逃したくないという思いから、文化的に交流の深い地域が連携して、観光地域づくりに取り組んでいる。

地域には、市町村や観光協会などがメンバーとなって、社会資本の整備や中長期計画の策定、人材育成などを担当する雪国観光圏推進協議会と、民間主導のプロモーションや品質認証などを担当するプラットフォームとし、「豪雪地帯」であることを活かした「雪国文化」のブランディングを目指し、明確な役割分担の下で事業を執行している。雪国観光圏(地域連携DMO)は2018年8月24日、「第4回ジャパン・ツーリズム・アワード」の大賞を受賞した。

主な取り組み内容は以下のもの。

・雪国A級グルメ(食の品質認証)

第3者機関により、地域の食を、産地情報の公開、できるだけ科学調味料を使わない、雪国の伝統的な調理法による調理等の観点から評価し、1つ星から3つ星を付して、「雪国A級グルメ」として認証し、地域ならではの「食」を提供。

・地域住民と事業者への意識啓発

雪国観光圏が構築してきた「雪国文化」の価値を地域住民と事業者が共有し、それぞれの役割を果たすことでブランド価値の発展を図る。

 

(3)豊岡観光イノベーション(地域連携DMO)

豊岡観光イノベーション

豊岡観光イノベーションは、豊岡市が主導して、豊岡市合併前の旧1市5町に残っている6つの観光協会の上部組織として、2016年6月に設立し、隣接している京都府京丹後市もマーケティング区域としている。基金の捻出は、地方銀行や路線バス事業者などの民間企業が行い、メンバーは市の派遣職員や商社・旅行会社などの派遣社員からなる。

また、京都丹後鉄道を運営するWILLERグループと城崎温泉で運営しているインフォメーションセンターと豊岡観光イノベーションの3者は、豊岡DMO機構と位置付け、密接に連携することにより、地域の素材を国内のみならず世界のマーケットに流通させる仕組みを構築している。主な施策は以下の内容となっている。

・データの継続的な収集・分析と戦略的な情報発信(地域連携DMO)

豊岡市内40カ所に無料Wi-Fiを設置し、外国人受入環境の整備を図るとともに、Wi-Fi利用者のデータを元に、その属性や行動ルートを把握・分析。

・WEBマーケティング

欧米豪のFIT層を取り込む方策として、DMO自身で宿泊予約サイト「Visit Kinosaki」を運営。本WEBサイトでは、英語及びフランス語により、大手WEBサイトでは難しい地域のきめ細かい観光情報を発信している。

・インナープロモーションの取組

観光関連事業者の事業拡大や新規参入事業者の増加を促すとともに、DMOの活動に対する市民の認知、関心を高めるため、セミナー・交流会の開催(H29.9~)やニュースレターの発行(H29.7~)、会員サービスの充実に取り組んでいる。

●まとめ

「日本版DMO」の登録法人は現在、86件(地域連合DMOが8件、地域連携DMOが48件、地域DMOが30件)にのぼり、今後も、この数値はインバウンドの盛り上がりとともに拡大してゆくだろう。「日本版DMO」の根底にあるのは、地域が一丸となって、「魅力的な観光地域づくり」を進め、国内外の観光客を呼び込むことによって、地域創生を推進するというものである。

「日本版DMO」では、これまで、観光産業を担ってきた関係者だけではなく、教育や保健・医療、スポーツや文化などの分野も巻き込み、地域が持つ価値を拡大し、観光客、旅行者の地域の魅力を提供していくものである。今、各地に誕生している「日本版DMO」が本格的に稼働し、国内の観光産業が、新たな段階へ道が開かれることが期待される。

参考:

提供:越境ECソリューション – Live Commerce

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大塚 孝二

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