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海外ビジネス コラム

インバウンド 2018年11月28日

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参考にしたい! アメリカのインバウンド対策

大塚 孝二(株式会社デジタルスタジオ)

2017年の世界の観光客数でもっとも多かった国は、フランスの8,260万人で2位はスペインの8,178万人、第3位はアメリカの7,590万人となっている。アメリカは2016年は2位であったが、2017年は3位と順位を下げた結果となった。アメリカは、2001年の同時多発テロ以降、一時は4,000万人近くまで落ち込んだ時期もあったが、現在は、7,590万人まで回復している。ちなみに日本はランキング12位で2,869万人となっている。

アメリカは、2021年までに外国人観光客1億人の目標を掲げており、2011年にはインバウンド対策や雇用創出など目的で「ブランドUSA」という公的機関が設けられ、各種イベントやキャンペーンなどで外国人誘致のための活動を展開している。

今回は、このアメリカのインバウンド対策で主にどのような内容が施策されているのか、アメリカの代表的な都市、ワシントンDC、シカゴ、ポートランド、シアトルのインバウンドの取り組みを見ていこう。

 

アメリカと日本のインバウンド対策の違い

日本など、多くの国では自国の政府直轄の観光局があるが、アメリカは教育から税制、法律にいたるものまで、連邦国家であるため、観光客誘致においても、州や町がそれぞれ観光局を設置し、観光マーケティング専門の民間企業に業務委託し、行われれるのが一般的だ。

そして、アメリカには長い間、国レベルの観光に関する機関はなかったが、2010年に、合衆国に全世界の観光客を誘致する目的で、「Brand USA」が設立された。

この「Brand USA」は航空会社やホテルなどの旅行関係の民間企業や、観光団体、コンベンションビューロー等とパーナーシップを結び、アメリカへのインバウンドの増加、市場の拡大、アメリカ経済の活性化、さらに雇用の拡大へと展開している。

イギリスのシンクタンクの調査によると、「Brand USA」の過去4年の活動により、430万人の訪問客がアメリカへ訪れ、経済効果としては、300億ドル増収、さらに年平均で約5万900人の雇用を創出しているという。

それでは、実際にアメリカ合衆国の各都市では、どのような取り組みを行っているのだろう。東はワシントン D.C.、シカゴ、西はシアトル、ポートランドの観光プロモーションなど主な施策について見ていこう。

 

ワシントン D.C.のインバウンド対策

ワシントン D.C.はアメリカの首都である。観光スポットも国会議事堂、ワシントン記念塔、国立航空宇宙博物館、ホワイトハウス、ポトマック川のソメイヨシノなど、多彩である。ワシントン D.C.では「Destination DC」がワシントンの観光推進を行っている。 Destination DCが現在、力を入れているのは、コンベンションの誘致である。同時にコンベンション参加者に観光スポットのディスカウントチケットを配布したり、ホテル宿泊料金を安く提供するなどプロモーションを行っている。

ワシントンの写真

◆ ウェブサイトやSNSを使った情報発信

また、ワシントン D.C.に多くの人を呼びこむために、ウェブサイトの充実し、さらにFacebookやInstagramなどのSNSで情報発信を行っている。特に、Instagramを使った情報の発信については、月1回、発信力や影響力があるInstagramerともに、Instagramに関する会議を行い、情報発信を行っている。

海外へのプロモーションはFacebookやInstagramだけではなく、中国へはWeChatを活用し、中国に向けても独自のPRを行っている。また、中国人は欧米に比べ、ツアーでの観光を行う傾向があるため、旅行会社と提携し、様々なツアー紹介も行っている。

ワシントン D.C.は桜のシーズンは観光客は多いが、冬シーズンの観光が少ないため、クリスマスや旧正月(春節)時期にPRの重点を置き、訪問客増加を施策している。

ワシントンサイト

 

シカゴのインバウンド対策

シカゴはニューヨーク、ロサンゼルスに次ぐ、アメリカ国内第3位の大都市である。世界最古の摩天楼が立ち並び、建築家やアート好きにはおすすめの観光地である。シカゴは訪問客数もアメリカでは上位で、特に中国からは前年比22.7%増、インドも前年比7.1%増、韓国からは前年比べ10.2%増とアジア圏からの観光客が多いようだ。シカゴの観光運営は「Choose Chicago」が各種イベントなどの企画、運営を行っている。 では、その一部を見ていこう。

シカゴの写真

◆「シアターウィーク」では公演チケットを低価格販売

シアターウィーク期間中は、100演目以上の公演のチケットを30ドル、15ドルなど低価格帯で販売し、観光客を誘引しようとするもの。このシアターウィークの時期になるとカナダ、イギリス、スコットランドなどの多くの観光客がシカゴを訪れているという。

◆「レストランウィーク」では高級レストランで廉価で食事ができる

レストランウィークとは、シカゴの352 のレストランが参加し開催され、通常では行けない高級レストランで、この時期だけは、22ドルでランチ、33ドルもしくは 44ドルでディナーを楽しむことができるというものだ。レストランウィーク中は、57万2,000食の料理が提供され、63万1,000回(前年比 98%増)ウェブサイトページが閲覧された。

◆「Choose Chicago」のウェブサイトで集客

Choose Chicagoのウェブサイトには、2016年は660万人が訪問し、2017年も同時期に比べると6.75%増加、スマートフォンでは同時期に比べ 15.3%増加している。Facebook、Twitter、InstagramなどSNSプラットフォームより情報発信を行っており、高いフォロワー数を獲得しており、SNSでの情報発信は重要視しているようだ。

シカゴのサイト

 

ポートランドのインバウンド対策

アメリカ西海岸にあるオレゴン州の都市ポートランドは、環境に優しい街として、アメリカで一番住みたい国にも選ばれた人気の都市である。
美術館や博物館も多く、バラの街としても有名で、市内各所ではウォーキングツアーが催行されている。
ポートランドの観光をプロモートするのは、「Travel Portland」である。 Travel Portlandはポートランドを、コンベンションやレジャー、旅行に適した場所として売り出すため、750以上のホテル、旅行会社、レストランなどと連携し、様々なプロモーションを展開している。
ポートランドの訪問客数は、カナダ、日本、中国、イギリス、オーストラリア・ニュージーランド、ドイツの順となっており、各国ごとの訪問客の傾向を分析し、観光プロモーションを実施している。 それでは、日本向けのインバウンド対策はどのような内容なのかを見ていこう。

ポートランドの写真

◆「Odnarotoop(オドナロトゥープ)」プロモーションビデオ

日本向けでは、「Odnarotoop(オドナロトゥープ)」というプロモーションを行っている。「Odnarotoop」とは「Portland」を日本語読み(Pootorando)で逆からの発音からきており、ポートランドの豊かな自然やユニークな暮らしを歌った楽曲、「ODNAROTOOP(オドナロトゥープ)」をビデオ公開している。また、阪急百貨店の協力のもと、「ポートランドフェア」を1週間開催し、ポートランドのビール、バック、コーヒー、バック、アクセサリーなどの展示販売を行った。

https://www.youtube.com/watch?v=WRBQ-b8QJ-0&feature=youtu.be

◆「Travel Portland」のウェブサイトはどのような運営を行っている?

Travel Portlandのウェブサイトには2016年では、400万人以上の訪問者があり、パソコンからスマートフォンへアクセスがシフトしているという。ウェブサイトは英語の他に日本語、中国語、オランダ語、スペイン語、ポルトガル語、ドイツ語、フランス語と多くの言語に翻訳されており、ウェブサイトは重要な集客ツールとして位置づけ、毎日3人の担当者が情報の更新を行っている。SNSでの情報発信も行っており、2016年時点でインスタグラムでは10万人のフォロワー数を記録している。

ポートランドのサイト

シアトルのインバウンド対策

ポートランドの北に位置するシアトルは、アマゾン、マイクロソフトなどの本社があることでも有名なIT都市である。 また、シアトルはイチロー選手が所属するシアトルマリナーズの本拠地であり、日本人にも馴染みが深い都市だ。

シアトルの観光プロモーションなどを行っているのは、「Visit Seattle」である。 シアトルの2016年の観光客数は、3,890万人(前年比 2.2%増)で、訪問客の消費は70億ドル(前年比 3.8%増)と過去最高となった。
そのうち、海外からの訪問客は7%はで国内からの訪問客で93%という割合だ。ただ、消費をみると、国内訪問客が85%で、海外訪問客が 15%という構成比で海外訪問客の消費が高く、インバウンド消費が伸びている。 次にシアトルの観光プロモーションを見ていこう。

◆「Seattle Museum MonthProgram」キャンペーン

2017年2月にVisit Seattle は「Seattle Museum MonthProgram」という、ダウンタウンのホテルの宿泊者を対象に、シアトルの40以上美術館を半額で見学できるキャンペーンを1ヶ月間、実施した。この期間には1万8,000人以上の観光客が訪れており、このキャンペーンは2018年2月にも開催された。

◆「Visit Seattle.tv」で動画プロモーション

シアトルの魅力を紹介したVisit Seattle.tvでは、さまざまな動画をYoutubeにもアップし、2016年に4,100万分の再生を記録している。
Visit Seattle.tvの紹介ビデオは、食べ物、お酒、音楽、ダンス、テーマパークなど、各テーマごとに別れ、その場所に行きたくなるように、マップ情報や、シアトル出身のミュージシャンなども参加し、工夫している。

シアトルの動画サイト

◆「Taste Washington」のワインと食のイベント

Taste Washingtonは、1998年から開催された、アメリカ最大級のワインと食のイベントである。
約300のワイナリーと70のレストランが集まり、ワインの試食、食べ物の試食他、ワインのセミナー、地元の農家、ワイン製造者のツアーなどが開催される。

◆SNSを活用した情報配信

「Visit Seattle」のウェブサイトは英語、日本語、中国語、韓国語、ドイツ語、フランス語と多言語に対応したサイトで情報を提供している。
さらに、Facebook、Twitter、Instagramについても各国専用のSNSアカウントを作り、情報発信を行っている。PV数やフォロワー数も、ウェブサイトの180万PV、Facebookでは46万2,000フォロワー、Instagramの7万5,300フォロワーと、その情報発信力の高さを示している。

シアトルのサイト

まとめ

アメリカでは、日本のように都道府県や市町の行政の観光課が中心となり、観光客誘致のための施策を行うというのではなく、観光に関する観光プロモーション専門企業が、ビジネスとして様々な観光客誘致のための取り組みを行っている。

特に、施策として共通していた内容は、ウェブサイトの充実とSNSでの情報発信である。 日本では、オリンピツクに開催に向け、インバウンド増加が期待されるなか、どの程度まで、ウェブサイトの多言語化(英語、中国語、韓国語、スペイン語、ドイツ語、フランス語など)が行われているだろうか?

地域PR動画を作成し、YouTubeなどでPRすることなど、どこまで行っているのだろうか? そして、さまざまなSNSプラットフォームを活用し、地元の魅力を発信すべきだろう。 北米の観光客誘致のための方法や運営方法は参考になる点が多い。

 

参考資料:北米におけるインバウンド対策について

提供:越境ECソリューション – Live Commerce

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大塚 孝二

(株式会社デジタルスタジオ)

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