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海外ビジネス コラム

時事 2012年09月25日

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【「尖閣問題」緊急特集】 実態経済に国境はない! 上海視察で感じた日本企業への追い風と「優遇」

上地 弘恭(FMBコンサルタンツ株式会社)

9月12日~16日の5日間、上海の工業団地へ視察に行って来ました。

到着当日から、ちょうど尖閣諸島の問題で上海の日本領事館前ではデモ集会が行われていました。
近くを歩いていても危険を感じることはありませんでしたが、その日の夜、上海で日本人が危害を加えられる事件があり、翌日には外務省が在中日本人に対して「最近の日中関係の動きにかかる注意喚起(その1)」を発布するなど、急に物々しい雰囲気となりました。
ひとりで訪中していましたし、各工業団地へは上海から長距離バスでの移動でしたので少し不安にもなりましたが、訪問先で出会う中国人の方々は皆さん好意的で、報道とのギャップに疑問を感じつつも無事全てのスケジュールを終えて16日の夜に帰国いたしました。
今回は、日中関係の悪化が心配される中、中国の工業化が今後どのように進んでいくのかについて、私が現場で感じてきたことを皆さんへお伝えしたいと思います。

■嘉定工業地域の工場見学まずは上海市内から北西へ約50Kmの位置にある嘉定工業地域です。
当社の顧問先で10年前に独資で進出された金属加工業の工場を訪れました。
当時は「2年間家賃免除」や「税金免除」などの優遇策を利用したそうで、他にも多くの外資系企業が次々と進出してきたとの事。
ところが4~5年前からは、上海周辺も都市化が進んで住宅地が必要となり工場が居住用地域に指定されて立ち退きにあう会社や、環境に対する規制強化で膨大な時間と手間が掛かるなど、誘致どころか追い出し策のような話をいくつか伺いました。
これから土地を買って工場建設するには「666平米あたり50万元(約630万)の納税が見込める会社」が条件となっており製造業ではハードルが相当高いそうで、現実的では無いとの事です。
市況環境について伺ったところ、当時は「高品質」を説明しても全く理解されず初年度は売上高200万円といった状況だったが、今では経済発展に伴って品質も重要視されるようになり、引き合いも多く営業をしなくても生産が止まることは無いそうです。
また今後も市場拡大していくので競合他社と合わせても生産が追いつかない状況にあるとのこと。
「当社の海外進出は本当に大正解だった」と将来の期待に胸を膨らむお話を伺うことが出来ました。

■呉江経済開発工業団地の視察この工業団地は上海から西へ約80Kmと近いため、一般的には家賃や人件費も高いとされている地域ですが、開発区としては珍しく共同の社員寮や社員食堂が整っており、中小企業でも進出容易な条件が整っていたので今回視察地に選びました。
この開発区は今年20周年目を迎え、すでに1000社の外資系企業が集まっています。
そのうち8割が「台湾・韓国企業」で日系企業では45社が進出していました。
最近の開発区の誘致方針を伺ったところ、現在は特に「日系・欧州企業」の誘致に力を入れているとの話でした。
理由のひとつには、開発区として土地も限られているため、今後税収を増やすために「平米あたりの税収単価が高い会社」を重要視しており「日系・欧州企業」は「台湾・韓国企業」に比べて5倍の税収が見込めるそうです。
因みに優遇策は「工場家賃1ヶ月分が無料」でしたので、経済的なメリットが無くても十分進出企業は集まるようでした。

■視察を終えて国の発展には「工業化」がカギを握ると言われていますが、上海などの都心部では外資の力を借りながら工業化を成功させたものの、経済の発展に伴い「高付加価値」が次の課題となっていると感じました。
「日系・欧州企業」が台湾・韓国企業と比較して「平米あたりの税収」が高い理由は、「独自のブランドや技術」を持っているためです。
低賃金で付加価値の低い下請け製造業の場合、賃金が低い地域では商売が成り立ちますが、賃金水準が上がると移転しない限りやってゆけません、メーカーからの値下げ圧力に対して自助努力では限界があるからです。
反面「独自のブランドや技術」を持つ会社は「お客様のニーズ」を満たせばいくらでも粗利を高めることが可能であり、少人数でも高い生産性を実現できます。
上海近郊では経済発展に伴い人々の生活も向上して人件費水準も上がってきました。
これから生産性の低い会社は留まる事が難しくなり、今後、地域社会からは生産性の高い会社が求められるでしょう。
日本は世界的に見て「自分たちで価値を生み出せる数少ない民族」です。
今回の視察で、中国経済にとっても日系企業は重要な役割を担っていると感じました。
報道では尖閣問題しきりでしたが、これは外交政策の話であり実態経済には国境が無いわけで、民族の違いこそあれ民間が互いの力を求める以上、経済交流は今後益々活発になってゆくでしょう。

このコラムの著者

上地 弘恭

上地 弘恭

(FMBコンサルタンツ株式会社)

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