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海外ビジネス コラム

時事 2012年09月25日

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【「尖閣問題」緊急特集】何れにしても長期戦、海外戦略を見直す良いチャンス!

福田 完次(株式会社グラブポット)

上海のオフィスでこのコラムを書いています。
今朝(9月20日)の中国のTVニュースなどを見ると、昨日までの煽るトーンとは、大分ニュアンスが変わってきています。
暴動が政府に向かうことを避けながら、経済的な波及を一定の範囲に収めつつ、かつ政治的には絶対に譲らないと言う方向性に変わってきたという感。

日本航空のキャンセル量なども引き合いに出しながら、経済的なダメージは日本の方が大きいと言う証言や(日本には相当なペナルティになってもいるという国民へのメッセージ)、日本人のビジネス関係者などのコメントも入れ、ビジネス関係は早く回復して欲しいと日本側が望んでいるというトーンの報道も見られました。

また、米国の存在についても随分大きく扱われており、必ずしも単一で日本と中国の問題として捉えていないことも良く解ります。
何れにしても、今後も、対抗措置や抗議は続けるが、理性的に対応してゆくというスタンスに変わってきています。

中国の場合は、報道イコール政府の意思。
煽ることも沈静化も含めて、対国民への見せ方と言う意味ではストレートに出てきます。
少なくとも、暴動や放火、略奪といった法治国家としては考えられない状況については、一先ず統制が掛かるということです。

今回の件は、日本政府の手法にも相当に問題があります。
2010年の漁船衝突事件の対応から間違った信号を発信し続けていますし、何より、一番中国内がセンシティブな9月18日前に契約を交わし、発表する必要が果たしてあったのかという事。
きちんと内容を相手に理解してもらう努力が足りていたのかも疑問。
相手国のトップと会って、反対表明されたのを押し切って、すぐ後の発表と言うのも、相手の立場と面子から受け容れ難いものでしょう。
つまり、日本側に火に油を注ぐようなところもあったという事で、やり方によっては、ここまで大きな騒動にはならなかった筈だと私は思います。

何れにしても、この問題では双方とも譲歩できる状況にありませんので、持久戦。
10年、20年と続いてゆくことになると思います。
幸い米国側が、尖閣諸島は日米安保条約に含まれると明言してくれていることで、中国側の軍事的な行動には抑制が掛かっており、いきなり開戦という事については考えにくい状況。
よって、このエリアでは双方に不測の事態が起こらないように、慎重に、長期に渡って対峙してゆくという事になるかと思います。

では、ビジネスについてはどう考えるべきかという事です。

中国として見た場合、日本の投資は現時点ではそれなりの価値があります。
欧州危機により、欧米の投資額が大きく減少している中で、この1年間の日本の直接投資額の増加率は昨年に比べ16%超、外資の流入と言う意味では一定の価値があります。

勿論、彼らは外資に頼らなくてもやってゆける体制を目指している訳ですが、まだ完全に外資を切る状況にはありません。
また、今回のデモに伴い発現してきたリスクのせいで、日本企業の撤退が続けば、労働市場が縮小し、その責任の矛先は政府に向かいます。

或いは、日本製品のボイコット、不買運動などという話もでていますが、現状の大半の製品は中国で製造された物。
その製品が売れなくなれば、中国の工場の稼働率が下がり、やはり多くの中国人社員の労働機会が失われます。
そう考えた時に、この動きがどんどんエスカレートしてゆくとは考えられません。

最初は出て行けと言っていたとしても(一部の人ですが)、それが自分達の仕事が無くなることに直接繋がるとすれば、日本企業に不満を向けることも出来にくい訳です(暴力行為を働き、更に自分達で不買運動や出て行けと言ったのですから)。

そういう事を総合的に勘案したときに、この尖閣の政治的対立と周辺海域での睨み合いは相当長期に渡って続くものの、日中間の経済関係についてはある程度元に戻そうという力学が働くと考えます。

勿論、中国内市場、中国内企業だけでやっていける状況になれば、政府として外資排除という可能性も多いにある訳ですが、そこまでには相当の猶予がありますし、その間に市場に浸透し、中国内メーカーに負けない一定の評価を得てしまえば良い話でもあります。
日系企業としては多少のハンデを乗越えて、彼らに欲しい!と言ってもらえる製品作りにこそ集中すべきです。

あわせて、今回の事件は日本企業が海外進出を考える良い機会でもあると思います。

今回のことは確かにリスキーでしたが、海外に行けば、どこに行ってもリスクがあります。
デモのリスクが無くても、違うリスクがある。
宗教などが絡めば更に難しい問題になります。
すぐ傍らで戦争状態のところもあれば、クーデターに直面することもあります。
世界中見渡しても日本ほど平和な国は無い訳であり、危険を恐れていればどこにも行けません。
そういうリスクがどうしても嫌なら、日本国内だけでやっていくしかないということになってしまいます。

冷静に日本市場を見たときに、仮に日本国内だけでは成長できないとするなら(業種によるでしょうが多くの企業は苦しいはずです)、やはりリスクは有っても海外に出て行かないとならないし、その際には、こういうリスクを踏まえた覚悟を求められるという事だと思います。

日系企業も様々、今回の件で、そんな怖い国ではやっていけないという所は撤退するでしょうし、それを理解した上で(対応策は必要ですが)腹を括ってチャレンジするのだと言う所は、粛々と中国市場でのチャレンジを続けると思います。
また、リスキーだからと市場競争から降りるところが出れば、ライバルが減る分チャンスが増えるという見方もできます。

逆風にも歩みを止めない船がよりゴールに近づけます。
当に、日本企業が海外進出にどのような覚悟を持って臨むのか、その姿勢を見直す良いチャンスであり、企業のスタンスが問われている様に思います。

このコラムの著者

福田 完次

福田 完次

(株式会社グラブポット)

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