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海外ビジネス コラム

その他 2012年08月16日

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素直すぎる人々をどう教育するか? インドネシア進出時の人材育成のツボは「WHY」だ

小野 耕司(インドネシアビジネスサポート)

このコラムは3ヵ月間にわたり毎週一回、合計12回の連載でお送りします。

6回目のテーマは、『人材教育はWhyが大事』です。

インドネシアの工場を見学させてもらうと、日系企業に限らず現地資本の企業においても、工場内の壁や掲示板には必ずと言って良いほど、整理・整頓・清掃・清潔・躾を謳った5Sのポスターが貼ってあります。
日本語の語源のまま5Sとしている所と、インドネシア語に翻訳しているところの違いはありますが、これを掲示していない工場を探すのは至難の技でしょう。

実はインドネシアの学校を卒業した従業員に、作業場の掃除をさせると面白い光景に出合います。
ゴミを掃き集めるのではなく、出口に向かって波状に掃き寄せて行って、最後は屋外に掃き出して終わりです。
ですからチリトリの意味を知らないし、使おうともしません。
どうも子供の頃からそのように躾けられているようなのです。

そこで、日本人の技術指導者は、まずはホウキとチリトリを使って、(正しい?)日本式の掃除の仕方から教えることになります。
そして、彼らは比較的素直にその方法を受け入れて、しばらくすると教えられた通りにその動作を守ることになります。
そして、どんな場合でもホウキとチリトリで掃除をしなくてはいけないと思い込むようになります。

これはなにも掃除に限ったことではなく、品質管理、改善活動、予防保全、危険予知など、あらゆる仕事において見られる行動特性で、いわゆる『言われたことをちゃんとやる』教育の成果であると思います。
インドネシア人従業員、そして日本人駐在員も、これについて何かおかしいと思うことは稀で、大体は良く出来ているとして満足してしまうのです。

そして、安心したのも束の間、異常事態が発生したり、何か全く新しい行動が求められたりした時、ほとんどの場合、彼らはなすすべを知らずに立ち往生してしまいます。
それに苛立った日本人が口にする言葉は『言われたことしか出来ないのか!!』となってしまいます。
このようなことが長期にわたり、頻繁に起きると、お互いに不信に陥ってしまい、仕事が上手く行くはずもありません。

何がいけないのでしょうか? 理由は簡単です。
日本人は、How toは一生懸命教えるのですが、Whyを教えることを忘れているのです。
何故に5Sを実践するのか?
何故に品質を管理するのか?
何故に改善活動をするのか?
何故に予防保全をするのか?
何故に危険予知を行うのか?
それが会社にとって、顧客にとって、そして自分にとってどんな意味があるのか?

このことは、特にスタッフやマネージャー達には、腹に落ちるように理解してもらわないと、『言われたことしか出来ないのか!!』の世界になってしまうのです。
そのためには、色々な施策の手法を個別に教えるのではなく、会社の仕事全体がどのような仕組みになっていて、その中で個々の施策がどのような働きをすべきなのか、そしてそれらの働きの成果が会社全体にどのような利益をもたらすのかを、出来るだけ体系的にビジュアル化して教える必要があります。

日本人はこの体系的にビジュアル化することが苦手のようで、日本発の方法論は無いようなのですが、欧米発のいわゆる『プロセスモデル』と言われるものがいくつかありますので、それらの中で使えそうなものを自社向けにアレンジして適用すれば良いと思います。

実は日本のある大学の学部生にこのモデルを使ってビジネス改善の実習をやらせたところ、ビジネスのことなどほとんど知らないのに、それなりに議論を戦わし、そして現状把握に基づく改善案を導き出すことが出来たのです。
これはひとえに、会社の仕事の全体像をビジュアルで把握出来、それらの仕事の目的や意図をくみ取ることが出来たからだと考えています。

一年中真夏の熱帯気候の中に居ると、筆者もそうでしたが、難しいことを深く考えることが疎ましくなって来ます。
ですから、仕事のWhyを教える場合でも、出来るだけ簡潔に、しかし南国の色鮮やかな植物のように、視覚に訴えるような工夫が必要なのです。
そして100人の中から1人でも良いから、Whyを追求する人材が見出せたら大成功です。

次回のテーマは、7. 現地業者との付き合い、です。ではまた来週お会いしましょう。

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小野 耕司

(インドネシアビジネスサポート)

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