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海外ビジネス コラム

その他 2012年08月28日

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労働組合とは気長に話し合え。インドネシア進出時のリスク対応法とは?

小野 耕司(インドネシアビジネスサポート)

このコラムは3ヵ月間にわたり毎週一回、合計12回の連載でお送りします。8回目のテーマは、『リスクとクライシスへの対応』です。

リスクとクライシスの違いはお分かりですよね?
実際には未だ起きていないけれどもその危険性があるものがリスクで、実際に起きている事態がクライシスです。
筆者の住んでいる浜松は東南海沖地震のリスクは高いのですが、幸いなことに未だそのクライシスには遭遇していません。

では、インドネシアで仕事をする場合、そして生活をする場合のリスクとは何でしょうか。
まず、リスクの中でも自分の努力では防ぎようがなく、発生してしまった場合のクライシスにおいて被害を最小限にしなくてはいけないのが自然災害です。
忘れられないのが2004年12月26日に発生し、インドネシアだけでも約30万人の命を奪った、スマトラ北部海底地震とそれによる津波でしょう。
この後も毎年のように死者を出す地震が、スマトラ島やジャワ島で発生しています。

日本人は地震対策については子供の頃から学校や地域、そして家庭の中で色々と指導を受けているので、普段からどのような対策をとる必要があるのか、あえて述べることもないと思います。
しかし、インドネシアにおける実際の仕事場や住居の建物は耐震構造になっているでしょうか?
建物の管理者やオーナーに確認すると間違いなく『大丈夫です!!』の返事が返って来ます。
最近、特にジャカルタでは超高層ビルが立ち並び始めています。
現在では、高さ150メートルを超える超高層ビルが75カ所もあり、さらには高さ638メートルの超高層ビル「シグネチャー・タワー」建設の計画もあると聞きます。
入居する際には、せめて建設会社とオーナーの身元くらいは確かめておく必要があるでしょう。

自然災害で次に大きなものは集中豪雨による洪水と土砂災害です。
これらは発展途上国に良く見られるような、森林の乱伐と排水設備の不備による人災の要因も大きいのですが、個人としては如何ともしがたい災害の一つでしょう。

インドネシアのニュースで毎日のように報道されるのが、火事と交通事故、そして集団による闘争です。
火事のほとんどの原因は屋内配線のショートによる発火のようですが、真因は判りません。
特に住宅密集地帯や古い雑居市場などはその危険性が高いようですので、近くにそのような環境がある場合は、延焼の危険性がないかどうか、火事場泥棒の備えは十分かどうか、普段から意識しておく必要があるでしょう。

交通事故で一番多くて悲惨なものは長距離バスの整備不良によるものですが、それ以外にもジャカルタなどの都市部は車が溢れており、ルールを守らないのが普通です。
日本人はその環境に慣れて、万が一事故に巻き込まれても対処出来るだけのインドネシア語能力を身に付けるまでは、自分で運転するのは避けるべきでしょう。
筆者もこれまでに何回か追突、衝突の被害に遭っていますが、幸いなことに大きな怪我に見舞われることはありませんでした。
運転手には普段から安全運転をするように注意しても、周囲には出鱈目な運転をする車が走っているので、ベンツやボルボとは言いませんが、もし出来るならサイズが大きめの車に乗ることをお薦めします。

不幸にして加害者になってしまった場合は、人間として被害者救済を最優先するのが当然のことですが、出来るだけ早く警察の保護を受けることが肝要です。
怖くなってしまい、逃げようとする行動は決して取るべきではありません。
そのような行動を取った加害者が、その場で集団リンチを受けて殺害された事件は今でも頻繁にニュースになっています。

インドネシア人の中でも特にジャワ人は温厚であると言われます。
確かに個人個人を思い出すとそうであるように感じます。
しかし、都市部での高校生の集団同士の喧嘩は、素手ではなく、投石、鉄パイプ、挙句の果てには日本刀まで持ち出しての闘争です。
筆者もその闘争に巻き込まれ、投石によって車をボコボコにされて、這う這うの体(ほうほうのてい)で逃げ出した経験があります。
問題を起こす高校はだいたい特定されていますから、その近くにはなるべく行かないことですね。

ニューギニア島のイリアンジャヤやセレベス島の地方では、いまだに部族間や宗教間の抗争が続いていますので、冒険心はあっても、出来る限りその地方へは行かないようにしたいものです。
同じイスラム教徒であっても、インドネシアでは多数派のスンニ派と、少数派のシーア派は教義が異なるので、特に東部ジャワのマドゥーラ島周辺では争いに発展することがあります。

また、筆者がいまだにトラウマになっているものに、夜中の強盗事件があります。
屋根伝いにやって来て、屋内に入るところを探しているのが足音で判るのです。
すぐに室内の全ての照明を点けて、窓から大声で助けを呼んだことで強盗は逃げ去ったのですが、二度も怖い思いをしました。
それ以来、今でも夜中の物音に過剰反応してしまいます。
今は日本の警備保障会社も進出していますので、是非利用したいものです。

少し生活面に偏ってしまいましたが、仕事をする上で気になるのが労働問題だと思います。
今年も日本企業が多く進出しているジャカルタ東部の工業団地群で、賃上げや雇用契約条件の改善を要求する派手なデモやストライキが何回か発生しています。
これまでのところ、政府の仲介により長期の操業停止に追い込まれた企業があるとは聞いていません。
しかし、某スポーツ用品の委託生産を請け負っていた企業が、長期にわたり時間外手当を支払っていないことが原因で、大規模なストライキに発展し、裁判の結果、高額の支払を命令され、元請けのブランドに汚点を残した事例もあります。

インドネシアには古くから争い事を解決するための文化として、ムシャワラ・ムファカットと言うものがあります。
これは話し合いで全員の合意を得ることを意味しています。
インドネシアの労働法では、10人以上の従業員の合意があれば、労働組合を作ることが可能で、会社はこれを拒絶出来ないとされています。
今では多くの組合連合が組織され、殆どの企業にはいずれかの運動員が入り込んでいると考えるべきでしょう。

大事なことはこちらもムシャワラ・ムファカットの精神を尊重し、出来るだけ話し合いに応じるだけでなく、こちらからも積極的に話し合いの機会を作ることだと思います。
理不尽な要求を当たり前のように突き付けて来るかもしれません。
子供じみたおねだりを言ってくるかもしれません。
それでもお互いの立場を、気長に誠意を持って話し合うことで解決策が見付けられると思います。
ここでも『あせるな、あわてるな、あたまにくるな、あてにするな、あきらめるな』を思い出して下さい。

次回のテーマは、9. 政府役人とのお付き合い、です。ではまた来週お会いしましょう。

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小野 耕司

(インドネシアビジネスサポート)

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