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海外ビジネス コラム

その他 2012年09月24日

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インドネシア進出は人を育てる。得難い経験と日本という国の再発見が一生の糧になる

小野 耕司(インドネシアビジネスサポート)

このコラムは3ヵ月間にわたり毎週一回、合計12回の連載でお送りします。

12回目、最終回のテーマは、『インドネシア進出は若い人を育てる』です。

色々な面で閉塞感に包まれている今の日本で、30代から40代の普通の若手中堅社員が、組織の歯車では無いことを実感し、会社の仕事全体に責任を持つなどという機会は滅多に無いと思われます。
年齢人口の構造が益々逆ピラミッド型になって行く日本では致し方の無いことでしょう。

彼らに残された可能性はインドネシアのような発展途上国の現地法人に駐在し、そこの責任者あるいは経営陣として、日本では発揮する機会の無い能力を、思う存分開花させることであると思います。
ただし、あくまでも将来的に経営陣に加わることを期待される人間に限るべきで、専門技術の分野で活躍を期待される社員は避けるべきでしょう。
当たり前のように聞こえますが、結構このミスマッチな人事を行うことで、本人の将来が潰されてしまい、現地法人の経営も上手くいかない事例を見て来ましたので、人選は永い目で慎重に行うべきです。

現地法人の規模にもよりますが、だいたい現地社員100人に対して日本人駐在員1名が標準的で、中小企業の多くは従業員数100人くらいから始めることを前提にすると、最初の駐在員は初代社長または工場長として赴任するケースが多いと思います。
そして、製造現場にはベテランの技能職社員を長期出張で招聘(しょうへい)するのが普通でしょう。

会社設立については、第三回の『立上までの長い道のり』でお話ししたので、ここでは操業開始後のことに触れたいと思います。
まず、日本人駐在員は、普通の会社にある全ての組織機能について注意を払わなくてはなりません。
経理伝票と帳簿、従業員の採用と解雇、人事労務評価、輸入材の手配状況、為替をチェックしながらの決済資金のやり繰り、生産の予実績確認と問題解決、品質状況の確認、設備保守点検の監視、長期出張者のアテンドとフォロー、本社への諸事報告とテレビ会議、工業団地内企業の寄り合いやその他日本人社会とのお付き合い、等々、手帳は分単位のスケジュールで真っ黒になることでしょう。

そして会社の規模が大きくなって社員が増えて来ると、労働組合問題に直面することでしょう。
日本にいたころはメーデーに参加した程度の組合活動経験しかなくても、ここでは雇用者側として労働組合と対峙しなくてはなりません。
そして毎年やって来る税務調査。時として一方的で不条理な税務署からの課税通告に対してどう対処すべきか。
現地の監査法人や本社と相談するのは当然ですが、最後は自分で腹を決めなくてはなりません。
下手な手段を使うと、見せしめのために刑務所行きとなるリスクも全くない訳ではありません。

予想外の守備範囲の広さに驚くかもしれませんが、赴任前からこれら全てについて準備が出来ている人はまず居ないと思いますので、毎日の仕事を通じて一つ一つ学習しながら、時には失敗して大変な思いをしながら、自身のノウハウやナレッジとして身に付けて行くことになります。
そして、気が付かないうちに体で覚えた貴重な財産になるはずです。

しかし、決して毎日の仕事に追われるばかりではありません。
インドネシアに住んでいればこそ、人間として学べることも多くあると思います。
筆者の場合は特に、日本国内に居ては当たり前過ぎて気が付かない、その価値の大きさ、有り難さを改めて痛感することがいくつかありました。

中国系インドネシア人の会社社長に、失礼ながらお金最優先の生き方について質問した時の彼の回答は、『日本人は日本国発行のパスポートに護られている。
しかし我々を護ってくれるのはインドネシア政府が発行したグリーン色のパスポートではなく、グリーン色の紙幣(アメリカドル)なのだよ』でした。

筆者の妻と二女がデング熱に罹ってしまったことがありました。
40度くらいの発熱が続き、飲み物や食べ物を一切受け付けなくなり、立ち上がることも出来なくなるのです。
デング熱と判明した後は、ワクチンはまだ開発されていないので、一週間ばかり病院で点滴を続けるだけでした。
死亡率は最初の発症で10%、二回目の発症で50%、三回目の発症で90%と言われています。
一週間の点滴で治るのに、何故毎年数百人も亡くなっているのか疑問でしが、点滴は高価で貧しい家庭では治療が望めないことが後で判りました。

特にジャカルタは水質汚染が進んでいるため、高機能の浄水装置を備えた高級ホテルでも、シャワーの水は少し色が付いており、しかも微妙な臭いがします。
もちろん飲み水はペットボトルの水に限られます。
実は筆者の家にあったジャンボボトルの水を調べたところ、大量の大腸菌が入っていることが判明し慌てたことがありましが。
日本に出張で帰った時には、到着した空港内の最寄りの洗面所で、蛇口に口を付けて水を飲むことが一つの楽しみでした。
その時、日本は本当に良い国だと、つくづく思ったものでした。

今回で連載は終了です。三ヵ月間、ご愛読頂きましてありがとうございました。

このコラムの著者

小野 耕司

小野 耕司

(インドネシアビジネスサポート)

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