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海外ビジネス コラム

法律・制度 2017年06月28日

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オーストラリアの最低賃金改正について

永井 政光(NM AUSTRALIA PTY LTD)

オーストラリアを初めて訪れた人は、その物価の高さに驚かれると思います。世界的に見れば、日本も決して低い国ではないのですが、私個人的な感覚的では日本の物価の2倍くらいに感じます。

また街中のカフェで、コーヒーやお茶などを飲む際に、きちんとした門構えのお店では同じ飲み物をオーダーしたとしても、平日と週末では料金が異なります。更に祝日であれば、平日の2〜3割増しの所も少なくありません。

日本人の感覚からすれば、平日だろうと祝日だろうと同じ物をオーダーしているのに、料金が変わるのはおかしい! と思われるでしょうが、オーストラリアではこれが当たり前になります。

物価高や、祝日料金アップの一番の理由は、オーストラリアの人件費の高さにあります。オーストラリアではユニオンと呼ばれる労働組合の力が非常に強く、その頂上団体であるオーストラリア労働評議会(ACTU)の力は絶大で、要求が容れられない場合には、強行ストも厭わない剛腕ぶりを発揮しています。選挙の際にも彼らの影響力は大きく、各政党もACTUの言葉は無視出来ない状況になっています。

先日もオーストラリア公正労働委員会(FWC)から発表があり、来月7月1日からオーストラリア国内の最低賃金が週22ドル20セント引き上げられ、週694ドル90セントになる事が決定しました。2016年7月から2017年6月までの最低賃金が時給17ドル70セントでしたが、今後の最低賃金は時給18ドル29セントとなる見込みです。

昨年7月の引き上げ金額は、前年度最低賃金から2.4%引き上げ。今回はそれを上回る、過去6年で最大となる3.3%の引き上げになりましたが、古今東西雇用する側は、より低く、雇用される側はより高く要望するのが世の常。雇用側の要望金額のおよそ倍、労働組合側が希望する半分の引き上げ率で終結しました。

日本では毎年給与据え置きも珍しくない中、国内のインフレ上昇率およそ2%を上回る3.3%ものベースアップを決断した、オーストラリアがうらやましく思われるかもしれません。

しかしACTU側は今回の発表を不服とし、この微々たる引き上げ金額では、多くの貧窮労働者を助けるのには不十分だと、例年以上の強いコメントを残しました。また今回のFWCからの発表には最低賃金の引き上げだけではなく、祝日及び日曜日に出勤者に対して支払われる手当の大幅削減も同時に行われました。

オーストラリアの3割以上の人間が、ホスピタリティー業に関わる仕事に従事しており、その大半の雇用先は中小企業なのが実情です。中小企業に決まり事とはいえ、過度なレギュレーションを押し付けるのは、企業の負担も大きくなり、業績悪化、倒産の可能性もあり、雇用主、雇用者共に明るい未来が待っているとは言い難い部分もありました。特にホスピタリティー業とっては書き入れ時、祝日に支払わなくてはならない手当の負担は大きく、売上自体は上がったが、レギュレーション通りに手当を払ったら何も残らなかったと泣くに泣けない状況になる可能性も少なくありません。それが冒頭で述べた祝日、日曜日の料金アップにつながる訳です。

変更詳細ですが、フルタイムの従業員祝日手当は、現行の250%から225%に引き下げられます。日曜日手当に関してもホスピタリティー労働者は、現行の175%から150%に、ファーストフードに従事している従業員は、現行の150%から125%。小売業に限っては、現行の200%から150%の大幅引き下げとなっています。ACTUは祝祭日の手当削減は、雇用の促進を鈍らせサービスの質の低下につながると警告を鳴らしています。FWCも生産性に関してはある程度同意をしていますが、実際は手当を支払っていない企業も多く、引き下げた背景にはレギュレーションを緩やかする代わりに、手当支払いを厳守化を促す効果があると考えてる様です。またオーストラリア国内で過剰供給気味となっている、ホスピタリティー、小売業に対し段階的に雇用を削減、調整し、経済のランディングを図る目的もあると言えるでしょう。

オーストラリアにはアワードと呼ばれる、労働基準法が細かく定められております。オーストラリアに進出を考え、て現地で従業員を採用する予定の企業は、この細かく定められているアワードを理解する必要があります。

このコラムの著者

永井 政光

永井 政光

(NM AUSTRALIA PTY LTD)

<オーストラリアビジネスの専門家

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