法律・制度 2022年07月13日
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【いったん中国に投資したお金は引き上げられない】という伝説のウソ
15年くらい前でしょうか。まだ私が銀行勤めのサラリーマンだったころ、大阪の同じ支店で働いていた先輩が上海に出張に来られ、お会いした時のことです。
先輩
「呉君、中国って投資した金を持って帰れないんやろ?」
私
「そんなことないですよ。投資した金を持って帰る方法にはちゃんとルールがあって、そのルール通りにやれば持って帰れますよ。持って帰れないのがわかってて投資する人なんているわけないでしょ!」
などという会話をしたことがあります。
中国業務にかかわりのない人でこのように思う人っているものなのかと思ったものです。当時も今も中国本がたくさん売られていますが、中国という国はハチャメチャで、当たり前のことが当たり前ではないというような内容が書かれたものがたくさんあり、もちろん全部が全部間違っているわけではないのですが、嘘くさい内容から相当誇張した内容までかなりの幅があり、これを信じてしまうと先輩のように思ってしまう人がいるのもいたしかたのないことなのかもしれません。
このような認識は今現在どのように変わってきているでしょうか。
昨年のことですが、とあるYouTubeチャンネルで中国進出のリスクについて話しているものを見ましたが、内容的には疑問に感じられることだらけでした。以下はこの動画で言っていたおおよその内容と、それに対する私のコメントです。
① なぜ中国進出するのか。大企業は先のことを読まず目の前のことを考え(投資したお金を本国に戻すことまで考えていない)、またサラリーマンなので投資するのは自分のお金じゃない
⇩
サラリーマンが自分の金で投資するのではないはそうですが、大企業は先のことを読まず目の前のことしか考えないから中国なんかに進出するというのは「?」を感じました。
私のお客さんでも中国に進出して結構な期間がたち、がっつり儲けているところはあります。ほかにも中国で儲けている会社は少なくありません。というか、中国で儲けていない会社ばかりであれば、私は今の仕事を辞めてしまってます。
② 大企業よりも中小企業のほうが自分の身銭を切ることもあり、中国進出については慎重
⇩
中小企業が身銭を切る分慎重になるというのは確かにそうだと思います。
③ 共産主義は個人が会社を持てない、オーナーにはなれない
⇩
これは×。個人オーナーの会社なんていくらでもあります。
④ 資本の回収はできない。投資分は回収できない。投下資本回収するのは難しい。投下資本は置いて帰れという考え方なので、持ち帰れないのは当たり前
⇩
これも昔よく聞いた話です。資本の回収にも考え方はいくつかあるかと思いますが、まず資本を投下して利益が上がった場合、それを配当することができるか否かで言うと、当然配当することはできますし、そんな実例はいくらでもあります。
次に、資本投下した資金そのものを回収するということであれば、わかりやすいのが会社清算ですが、これも手続きを間違えなければちゃんと投資者に残預資金を送金することができます。実際に弊社がハンドリングした案件でもしっかりと日本に送金できています。
⑤ 企業の売却市場もない。だから引き上げるから株を売りたいといったって当局が認めない
⇩
これも違います。撤退の手法として清算もありますが、持分譲渡の方法もあります。これも実際に弊社がハンドリングした案件があり、その譲渡代金も譲渡者側(日本企業)にしっかりと送金できています。
ここで④で紹介した資本の回収、具体的には清算時に資金を引き上げられるか否かの部分について考えてみます。
ひょっとすると私の知らないところでそういうことが実際にあったのかもしれません。しかし弊社は過去に何度も撤退案件を手掛けてきておりますが、残余資金の送金できないケースに巡り合ったことがありません。もちろん面倒なケースは確かにあると思いますが、業界仲間からも投資資金を持ち帰れなかったというような話を聞いたことがありません。
もしそれがあったとすれば、考えられるのは定められたルール通りに事務を進めなかったからではないかと思われます。
例えば、会社清算業務をどこかに依頼したとします。現地の手続き代行会社で会社清算業務をやたらと安い値段で引き受けているところがありますが、こういうところに頼んでしまったケースでは最後に残余資金を送金できていないケースはあるかもしれません。こういう現地の一部の代行業者は会社清算、つまり会社登記の抹消という業務自体は確かに終わらせることはできるのですが、後ろにある残余資金を送金するところにまで気を配っていないではないかと思われます。
そのため、送金できないという問題が起こったとしても、「私たちが依頼されたのは会社清算(登記抹消)業務だけ」といい、それ以上の責任を取ろうとしません。資金を引き揚げられないというのはこういうケースではないかと思われます。
行うべき事務手続きを行わず、結果として残余資金の送金ができなかった一部の企業の話が膨れ上がった結果、中国から資金を引き上げることはできないという伝説のような話が広まってしまったといえるでしょう。しっかりとしたところに清算手続きを依頼し、事務手続きさえしっかりと行えば残余資金の送金は可能です。
ご安心ください。
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