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海外ビジネス コラム

法律・制度 2023年02月01日

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欧州委員会、Bukalapakを模倣品・海賊版ウォッチリストから削除

柳沢 孝一(カケモチ株式会社)

インドネシアの模倣品・海賊版市場は世界的に有名です。特に伝統的な市場では、ブランドバッグ、衣類、アクセサリーなどの模倣品をよく見かけます。昨今はこれに加えて、ECプラットフォームでの販売も増えていることが問題視され、欧州委員会の模倣品・海賊版ウォッチリストに大手ECプラットフォーム3社が掲載されていました。

しかし2022年12月、ウォッチリストに掲載されていた3社のうちBukalapak()がリストから削除されたことがわかりました。これを受け、本記事ではBukalapakが評価されたポイントや他のECプラットフォームの状況、政府の取り組みなど、インドネシアの模倣品市場について解説します。

※Bukalapak(ブカラパック):近年急成長を遂げているインドネシア有数のユニコーン企業、および同社が運営するインドネシア最大規模のECプラットフォーム

インドネシアの模倣品市場ついて

インドネシアは「模倣品大国」

東南アジアの国々は、世界最大の模倣品生産国として知られる中国と近く、中国産模倣品の主な共有先となっています。加えてインドネシアでは、安い労働力や材料を利用し、国内でも多くの模倣品が生産されています。このような事情から、インドネシアは東南アジアの中でも特に多くの模倣品が出回っている国と言われています。

経済協力開発機構(OECD)と欧州連合知的所有権局の共同報告書「Global Trade in Fakes: A Worrying Threat(偽物の世界的な取引: 憂慮すべき脅威)」によると、インドネシアは2017年から2019年にかけて、偽物のハンドバッグや革製品、衣類、香水や化粧品、履物、ゲーム、宝飾品の供給国として上位に位置しています。

欧州委員会(EC)が2021年に発表した「Report on the protection and enforcement of intellectual property rights in third countries(第三国における知的財産権の保護と執行に関する報告書)」では、知的財産権の保護に関する懸念が残っているとして、インドネシアはマレーシアやタイと共に「優先順位3位」のグループに入っています。

さらに、COVID-19の大流行によって以前に比べて多くの人がオンラインショッピングを利用するようになったことで、オンラインで売買される大量の模倣品がより問題視されるようになりました。さまざまな分野のEU関係者が、インドネシアのECでは大量の模倣品が販売されており、知的財産権保護に取り組むために執行当局が用いる法的救済措置も依然として効果が薄いと指摘しています。


参照:
Counterfeits in Indonesia and recommendations for brand owners」 European Commission


インドネシアの模倣品・知的財産権侵害品の例


インドネシアで流通している知的財産権を侵害している商品には、例えば以下のようなものが挙げられます。

■ 本、ゲーム、ビデオ、絵などの海賊版
■ 特定ブランドの商品の特徴または商標のデザインを模した模倣品
■ 偽造材料または偽造品で作られた製品
■ 特定ブランドの許可なく転売される正規品
■ ブランド名、商品名、ロゴなどを無断で使用して販売される類似の商品


P01

上掲の写真は、プラダのバッグの模倣品です。模倣品は正規品に比べ品質が低く、保証が付きません。一般的には正規品との類似度に応じて流通価格が異なります。

P02

上掲の写真は、ノーブランドのミニランプをIKEAの商品と偽って販売している例です。インドネシアのECプラットフォームでは、ノーブランド品であっても商品名や商品説明に特定のブランド名を記載している例を非常によく見かけます。

画像出展元:
Stop Jual Barang yang Melanggar HAKI dan Pahami Konsekuensinya」 bukalapak Blog


欧州委員会、Bukalapakを模倣品・海賊版ウォッチリストから削除


それでは、欧州委員会の模倣品・海賊版ウォッチリストからBukalapakが削除されたというニュースを扱ったdetikcom 「Komisi Eropa Hapus e-Commerce RI Ini dari Daftar Pembajakan」を元に、その経緯や意義を見ていきましょう。

Bukalapak、ウォッチリストから削除

欧州委員会は、2022年12月上旬に「Counterfeit and Piracy Watch List(偽造品および知的財産権侵害の監視リスト:模倣品・海賊版ウォッチリスト)」と題する報告書を発表しました。

この報告書は、欧州委員会が多くのブランドオーナー、著作権所有者、知的財産権保護に関する活動を行う協会や連盟、さらにはEC、ソーシャルメディアプラットフォーム、インターネットサービスプロバイダーなどの関連企業と協議した結果をまとめたものです。

この報告書では、インドネシアの大手ECプラットフォーム運営会社Bukalapakがウォッチリストから削除されたことが報告されました。欧州委員会は、Bukalapakが詳細なデータを提供し、同社のプラットフォームにおける盗用・盗作行為および知的財産権侵害に関する措置を説明したと述べています。

それでは、インドネシアのECプラットフォームの二大巨頭であるTokopediaとShopeeがこのリストに残る中、Bukalapakが除外されたことはどのような意味を持つのでしょうか。

BRI Danareksa Sekuritas(BRI ダナレクサ証券)のアナリストであるNiko Margaronis氏は、Bukalapakがウォッチリストから外れたことは、インドネシアのEC業界にとって「大きな風」になると評価しました。

またNiko氏は、「これ(Bukalapakがウォッチリストから削除されたこと)は、環境、社会、ガバナンス(ESG)のいずれの側面にとっても非常にポジティブだ。」と述べています。

Bukalapakは、インドネシアで特に存在感と影響力のあるスタートアップ企業の一つです。同社が知的財産権保護のための積極的な対策を講じ、それが国際的に評価されたことが、Bukalapak以外のEC企業や、これまで知的財産権侵害の問題が指摘されてきた他の産業に良い影響を及ぼすことが期待されます。

Bukalapakの知的財産権保護のための対策

Bukalapakは、ブランドオーナーや政府機関などと協力し、同社のマーケットプレイスで模倣品を監視するための最先端の技術を導入しました。また、プラットフォームを利用する売り手に対する本人確認も徹底しています。

加えてBukalapakでは、ブランドオーナーがBukalapakで販売されている模倣品の発見を報告するためのチャネルやバイリンガルの通報フォームを用意し、以前に比べて短時間で報告書作成と通報が行えるようにしました。

またBukalapakは、知的財産権を侵害したとして、2021年の1年間で1,206,809の商品をプラットフォームから削除したとしています。

参照:
Komisi Eropa Hapus e-Commerce RI Ini dari Daftar Pembajakan」 detikcom

参照:
bukalapak IP Protection」 Bukalapak


模倣品や海賊版などを販売した場合の罰則などについて説明するBukalapakのブログページ

P03

画像出典元:
Ruginya Jualan Barang Palsu/Bajakan untuk Kelangsungan Bisnis Onlinemu」 bukalapak Blog

2020年版「模倣品・海賊版ウォッチリスト」で指摘されたBukalapakの問題点

前回、2020年版の「模倣品・海賊版ウォッチリスト」によると、様々な産業分野の関係者が、Bukalapakが電子機器、衣類、アクセサリー、書籍、映画、携帯電話、自動車部品、工業製品などの模倣品や海賊版を販売しているとし、ウォッチリストに掲載するよう要請しました。

その際、関係者はBukalapakについて、以下のような課題があると指摘していました。

■ 模倣品、海賊版、その他の知的財産権を侵害している商品の削除に長い時間がかかること
■ 削除依頼に使用するウェブフォームが申請者に過度の負担を強いるものであること
■ 模倣品の検出と削除のための事前措置の数が少ないこと
■ 「レプリカ」などの問題となりえる表現の商品ページへの記載が禁止されていないこと

このような指摘に対し、当時Bukalapakは「利用規約でプラットフォーム上での知的財産権侵害品の販売を厳格に禁止している」とした上で、「プラットフォームから問題のある商品を削除するための通報や削除の手順は既に備わっており、フィルタリングおよびブロックといった積極的な措置を講じている」と説明していました。

それでも実際は模倣品や海賊版流通の温床となっていると見られ、ウォッチリストに掲載されてしまいましたが、以降2年間で上述のような改革を行い、汚名返上を果たしています。

参照:
COMMISSION STAFF WORKING DOCUMENT Counterfeit and Piracy Watch List 2020 | P.37 Bukalapak」 EUROPEAN COMMISSION


2022年版「模倣品・海賊版ウォッチリスト」で指摘されたShopeeとTokopediaの問題点


2020年版に続き、2022年版ウォッチリストにも掲載されているShopeeとTokopediaについての記載内容もご紹介します。

Shopee

Shopeeは東南アジア最大級のECプラットフォームであり、各国で大量の模倣品を流通させているとして、電化製品、ファッション、高級品、玩具などの分野の利害関係者が、ウォッチリストへの掲載を要請しました。

報告によると、事前措置の欠如、煩わしい通報システム、問題商品の削除にかかる時間の長さ、関係者が共有できる知的財産権保護に関する方針の欠如などが問題視されています。

このような指摘に対しShopeeは、通報システムの簡略化など既に対策強化のためのアクションを始めていることを報告しています。また、今後はより明確なユーザーポリシーを制定することや、セラーの審査と教育の強化、監視のための新しいツールの開発、通報への対応時間の短縮などを行うとしています。

Tokopedia

Tokopediaについても、様々な産業分野の利害関係者によって、ウォッチリストへの掲載の要請が行われました。関係者の報告では、Tokopediaの模倣品を検出してフィルタリングする対策は効果が薄い上、問題のある商品の削除に手間がかかることや、通報への応答に長い時間を要することなどが指摘されています。

また、Tokopediaが模倣品販売を減らすための対策として導入した「ブランドアライアンスプログラム」は、プラットフォーム上の「公式ストア」に限定して適用されるという面で不十分であるとされています。

Tokopediaは2020年の調査において、指摘された内容に対し行っている対策を報告していますが、2022年には新しい情報の提供はなかったということです。

参照:
COMMISSION STAFF WORKING DOCUMENT Counterfeit and Piracy Watch List 2022 | P.40 Shopee / P.42 Tokopedia」EUROPEAN COMMISSION


とはいえ、Tokopediaが何もしていないわけではありません。

Tokopedia の知的財産保護のマイクロサイトによると、同社 は2021年の1年間で、 知的財産権保護のため12,000 以上のブランドと協力し、知的財産権を侵害したとして25,000 以上のショップを閉鎖したとしています。

参照:
Marak Pelanggaran HKI, Ini yang Dilakukan Pemerintah untuk Berantas Barang Bajakan」 Kontan.co.id


インドネシア政府の知的財産権保護に関する取組み


2022年1月の報道によると、インドネシア観光創造経済省は、インドネシア出版社協会 (IKAPI)と共に、デジタル プラットフォームでの海賊版書籍の販売を防止するための審査システムを開発するよう各社に要請しました。その一環として、IKAPIとTokopediaの間で海賊版書籍の販売を防止するための覚書が交わされています。

観光創造経済省は、知的財産権所有者からの苦情があれば、政府は海賊版の販売者に対して法的措置を講じるとしています。

参照:
Marak Pelanggaran HKI, Ini yang Dilakukan Pemerintah untuk Berantas Barang Bajakan」 Kontan.co.id

インドネシア政府はその他の関連法や省令に関する改革にも熱心です。

本記事の冒頭で、欧州委員会が「Report on the protection and enforcement of intellectual property rights in third countries(第三国における知的財産権の保護と執行に関する報告書)」でインドネシアを優先順位3位のグループに入れているとご紹介しましたが、実は、以前は2位のグループに入っていました。

特許出願に関する新しい省令の発行、著作権違反Webサイトの閉鎖、意匠に関する新法案の準備など、インドネシア政府の積極的な取り組みが評価され、「優先度」が下げられたのです。

売り手と買い手双方の意識改革が必要


インドネシアで模倣品が多く出回っている背景としては、上述のように中国から近いことや、国内で安くたくさん作れるという共有側の事情があります。

一方で無視できないのが、模倣品に対する需要が高いという問題です。「高級なブランド品やメーカーの正規品を購入できなくても、最新のトレンドを追いかけ、自分をよく見せたい」という一般消費者たちが、模倣品とわかっていても手を出してしまうのです。

このような消費者心理に目を付けた売り手は、安く仕入れた模倣品に外国の商標ラベルを貼り、正規品よりもはるかに安い値段で売ります。このようなビジネスは、真似された本物のブランドの評判や売上げに悪影響を与えるだけでなく、インドネシアという国やインドネシアの経済界に対する信用を落とすことにも繋がりかねません。

インドネシアから模倣品を排除するためには、EC企業や政府、関連機関が仕組みを整えることと同時に、消費者への働きかけや教育も重要になってくるのではないでしょうか。売り手と買い手が模倣品を許さないという同じ認識を持ち、状況が改善することを期待したいところです。

このコラムの著者

柳沢 孝一

柳沢 孝一

(カケモチ株式会社)

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