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海外ビジネス コラム

生活・文化 2013年09月20日

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中国指導者層に問われていた理系的資質への推察と変化の兆し

劉 未(J-Payment 上海)


私は人のプロフィールが見るのが好きなので、社会で活躍している方々の経歴をよくみています。下の図は、日本とアメリカと中国のトップ1・2の方の名前と最終学歴を並べてみたものです。
さて、皆様はここから何か気づくことはありますでしょうか?

日本 アメリカ 中国
No.1 安倍晋三首相
成蹊大学法学部 オバマ大統領
ハーバード・ロースクール 習近平国家主席
清華大学化学工程部
No.2 石破茂幹事長
慶應大学法学部 バイデン副大統領
シラキュース・ロースクール 李克強首相
北京大学経済学博士
そう、錚々たる面子の中で理系の方がただ一人います。

日本を抜きGDPが世界2位となり、間もなく国力がアメリカに肩を並べるであろう中国の習近平国家主席はただ一人理系出身なのです。こんなことも、ただ偶然じゃないのかと仰る方もいらっしゃると思いますが、中国の歴代政治指導者層は何故か理系が多く、李克強首相の法律学士、経済修士・博士というのが珍しいくらいなのです。

今までの中国トップ 国家主席最近3世代の最終学歴をみてみます。

在位期間 国家主席 最終学歴
1993-2003 江沢民 上海交通大学(清華大学、北京大学に次ぐ理系の難関大学)
2003-2013 胡錦濤 清華大学 水力エンジニアリング部
2013~ 習近平 清華大学 化学工程部
中国トップが3世代に渡って、理系出身だったということから、少なくとも政治家の素養として理系も問題無いという傾向が中国にはあるのではないかと思います。これは政治家トップの国家主席だけではなく、江沢民時代の副主席、李嵐清首相(企業管理学科)。胡錦濤時代の温家宝首相(地質学)といった政府首脳も理系です。これは何か要因があるのでしょうか。ネットサーフィンからの推察ですが、4つ思いましたので述べさせていただきます。

政治的イデオロギーで過激な人が少ない

日本の某有名ジャーナリストが中国で共産党の幹部が理系過多なのは、現在の幹部陣が学生時代に文化大革命が起き、優秀な文系学生が粛清されたため、理系学生が残ったと過激な内容を述べていましたが、思想に凝り固まった文系学生よりも、そういった思想よりも科学的に根拠を集める理系人材の方が上司から見ると使いやすいという面はあったかと思います。

マルクス主義の考え方

中国は建前上、マルクス主義を標榜する共産国家であり、唯物史観(人間の心理は物理的環境に左右されるというマルクス主義の基本的な考え)がベースとなっており、指導者には物理法則に基づいて計画経済を推進する必要性から、理工系の人材を重視していたそうです。実際ソ連も設立から約70年の間で、治金学を専攻したフルシチョフとブレジネフが書記長に就任したりと幹部人事では、理系優遇の傾向がみられました。

近代の歴史的事実により理系コンプレックス

中国では漢詩作成能力を重視した「科挙」試験があり、そこでは主に問われていたのは人文科学・社会科学の能力でした。中国は中世までは第一等の国家でしたが、「科挙」試験が跋扈し始めてから、科学技術が発達し始める中世終わりからは中国はだんだんと第一等の国からは後退していき、近代では西欧列強・日本にも敗退してしまいます。
そういった科学技術を軽視した背景からの国力後退の現実が根強く中国国民に根付いたため、中国国民は技術重視の傾向が強くなり、それは政治首脳まで及んだという考え方です。
もう中国の技術発展はかなり進んだため、そのコンプレックスも薄れ、政治の中枢である中国政治局常務委員も文系割合が高まったという考えです。

中国の出世コースに理系の論理的思考力・技術力が必要であった

1981年に鄧小平副主席(当時)は、省級党委員会書記の全体会議を召集し、若手幹部の起用が共産党政権の命運にかかわる重要な問題であるとし、解決策として古参幹部から率先してポストを若手に譲ることを要求しました。その際、鄧小平は、若手幹部の採用に基準を示し以下の通りとしています。

1.年齢は45歳以下。
2.共産主義青年団での仕事の経験がある。
3.高学歴で末端組織での職歴がある。
4.政治思想面に問題がない。
大変素晴らしい基準だと思いますが、特に3の“末端組織での職歴がある”というのが良いと思われます。実際、地方勤務が長かった習近平も今後の若手幹部採用には地方での職歴経験があることを述べています。その地方勤務には大学時代みっちりと勉強した技術に関する知識と論理的思考力が地方勤務での地方の成長率を高めるのに大変貢献したという考えです。

まとめ

私自身は(1)政治イデオロギーで過激な人が少ない(3)理系コンプレックスがある が要因ではないかと思われますが、中国の最高指導部である中央政治局常務委員会には李克強首相(法律学・経済学博士)、張徳江常務委員長(北朝鮮語・経済学専攻)、王岐山氏(歴史学専攻)、張高麗副総理(経済学専攻)と今まででは考えられないほど文系割合が高まっています。間もなく国力でアメリカと肩を並べるであろう中国は技術に対し自信を持ち始め、理系学問のような技術だけでなく、経済をはじめとした文系型の人間を重視している現れなのではないでしょうか。この理系と文系がうまくハイブリッドされた指導部が以前に比較すれば鈍化したと言われる中国経済の舵取りをうまく捌けるか、是非注視していきたいです。

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劉 未

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