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市場動向 2013年06月30日

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ブラジルは大きな転換期。大規模デモの原因とブラジル進出への影響

萩島 貴(アヴァンテ株式会社)

公共交通機関の運賃引き上げに市民が激怒

現在、ブラジルではサッカーワールドカップの前哨戦である、コンフェデレーションズカップが開催されております。日本は残念ながらグループリーグ敗退となりましたが、1年後の本番が楽しみとなる戦いぶりを見せてくれました。

その、コンフェデレーションズカップの開催都市などで、一般市民によるデモが頻繁に行われております。サンパウロの中心部、メインストリートのパウリスタ大通りにおいても大規模なデモが発生し、警官隊と衝突する場面もみられました。

きっかけとなったのは、公共交通機関の運賃引き上げで、6月から電車が3レアル(約130円)から3.2レアル(約140円)に、バスが2.75レアル(約120円)から2.95レアル(約130円)に上昇しました。たった10円と思われるかもしれませんが、最低賃金が月額3万円未満のブラジルでは、公共機関の値上げは一般市民にとって大きな負担となります。

根底にあるのは政府に対する不信感

今回のデモは公共交通機関の上昇が最後の引き金となった形で、不満の根底にあるのは、物価上昇と政府に対する不信感です。前回も紹介させて頂きましたが、近年物価上昇が続いており、特に食品価格の上昇が深刻です。トマトは昨年に比べ約2倍の価格になっており、イタリア系移民の多いサンパウロではトマトは食卓に不可欠な食材でもあるため、市民の不満は高まっておりました。
また、通貨レアル安も物価上昇に拍車をかけており、輸入食品、家電、衣類などが軒並み上昇しております。

こうした状況下で、ブラジル政府はワールドカップのプロジェクトにスタジアムの新設、改修、都市建設も含めて300億レアル(約1兆3200億円)を投じる予定であり、工期の遅れなどから更に費用が掛かる見通しになっております。

そして、ついに市民の不満は爆発し、スタジアムよりも社会保障や教育などにお金を使え!公共料金を値上げするな!と訴えるデモに発展しました。
この抗議デモの激化を受け、サンパウロ市、リオデジャネイロ市は6月19日に電車とバスの値上げ撤回を発表致しました。
しかし、値上げ撤回発表後もデモは収まらず、ジルマ大統領もテレビでの演説を通じて国民に呼びかけましたが、まだデモは続いております。

国民の心からの訴えを活かし、更なる発展を!

今回のデモは日本にも影響があり、ブラジルのジルマ大統領の訪日が延期になりました。安部首相と資源、食料の安全保障などに関して協議することになっていたため、この機会が失われた事は非常に残念です。

最後に、今回のデモを前向きに捉えると、テロや人種差別などが無いブラジルで、このように一般市民が立ち上がり、政府に抗議したことは大きな意味があると思います。
高い税金、そしてその税金が福祉や教育などに使われず、汚職などのニュースが頻繁に飛び交っているブラジルは一般の国から見ればいびつな構造になっています。
その構造がいびつだということを国民は気づいていながらも、今までは声を上げずに我慢してきました。今回のデモは国民の心からの訴えであり、その声がきちんと政府に届き、社会保障や教育に税金が使われるようになれば、更なるブラジルの発展が期待できます。
今回の抗議デモがブラジルの将来に繋がる良いきっかけになるよう願っております。

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萩島 貴

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