市場動向 2013年11月15日
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中国ビジネスの成否のポイントは「オーナーシップ」
中国訴訟、原告になる欧米企業と被告になる日系企業
中国国内における外資系が絡む訴訟が年々増えている。その実態は、欧米企業と日系企業では大きな違いがある。前者は主に原告だが、後者は被告となるケースが圧倒的に多い。最近では、中国企業が外資系企業を相手に商標権侵害で初めて勝訴した事件が注目を浴びた。登録商標「千喜龍」の無断使用で、オリンパスが全面敗訴したのである。
中国商標法上、商標権者の許諾を得ない同一または、類似の商標使用は商標権侵害に該当するが、日本では、消費者に商標権者と誤認させなければ商標権侵害には当たらない。両国の経済法制における運用面での相違を踏まえれば、訴訟リスクは容易に回避できたのだが、日系企業の多くは中国ローカル・コンテンツへの対処でその都度本社決済を仰ぐため、事前のリスク・ヘッジやリーガル対策が後手となる。
加えて近年は、一般消費者から訴えられるリスクも高くなってきた。日本の経営思想やビジネス慣行を中国に持ち込むためだ。たとえば、そごう上海店では、福袋の販売に際して、告知をしたにもかかわらず、消費者が「知る権利」を阻害されたと訴え出た。いずれも日本のビジネス慣行の法的リスクを事前に十分検証しなかったために引き起こされたものだ。
オーナーシップ不在が引き起こす弊害
その体質は、日系企業の失敗例からも見て取れる。中国市場のニーズを把握し切れぬまま、商業地、特に駅前への出店にこだわり、「消費を楽しむ」という中国の消費者マインドを理解しない。カルフールなど欧米流通大手が大成功を収めたのは、現地の価値観を尊重した消費スタイルを提供したことにある。日系企業はそれを欧米その他の地域で行っているのに、なぜ中国ではできないのだろうか。
答えは明白である。日系の現地法人は、オーナーシップ不在なのだ。現地のマネジメント層の多くは定期的に入れ替わり、長期的発展という視点に欠ける。最大の問題は、欧米外資とは対照的に意思決定が遅く、対中投資予算も限定的なことである。先述の商標権等知的財産権に関していえば、対策を講じる日系企業は、日中投資促進機構の調査によれば六割に満たず、費用は年間一〇万円未満である。
現地従業員にしてみれば、同じ職務でも責任者によって待遇の差が大きく、日系企業は「利用価値」だけを見る存在である。ロイヤルティなど持ちえるはずもなく、事実、臨機応変に対応できる有能な人材は続々と欧米外資に流出している。それは消費者、サプライヤーにしても同じである。
日系企業が中国市場での長期的成長を目指すのであれば、何よりまず現地への権限委譲と、十分な投資予算の計上が課題であろう。中国ビジネスの成否は、オーナーシップの醸成にかかっている。
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