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海外ビジネス コラム

市場動向 2014年02月20日

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タイ・サポート実録記3(メナーム社編)「現場リソースの提供をしながらサポート」

但野 和博(Accounting Porter Co., Ltd.)

第3話 「新たなる出番、そしてその先」

あれから時間も経ち、しばらくの間特段の連絡もなくメナーム社については少し安心している頃だった。

多少気になったのは新たに締結したという上流系コンサルタントの方との進捗状況のご案内が特になかったことくらいである。

当初上流系のコンサルタントに入ってもらい抜本的改革に向けて指導してもらう話の中で、
「現場でサポートしている当社ともどこかのタイミングで引き合わせの場を設定してもらい改善の過程の中で双方が有機的に機能できるようにしましょう」
という流れだったと記憶していたが、何かの機会があって聞いたときも、
「今進めています」
という感じのことだったので、
「進んでいるのであればそのうち出番としての声掛けもあるだろう」
という思いで、それほど気にかけずに待っていたような頃だった。
「またご相談がありまして……」
という少し決まりの悪そうな外町社長からの連絡で取り急ぎ現状の再確認を含めて話す機会を持つことになった。

出番は思いがけない形でいつもやってくるものなのである。
「コンサルティングはほぼ終わったが、現場ではそれをどうして良いか分からない」
今回の出番は要するにこういうことらしい。

それなりの時間・労力をかけて、コンサルタントに見てはもらったもののイメージしていたような対処療法的なものではなく教科書的なものだった、と。なので、相変わらず現場での業務の流れや業務内容が不明のままで、この先どのように対応していけば良いかを含めてお手伝いしてほしいとのこと。

外町社長の電話のトーンからすると何となくそういう状況になっているのではないかと危惧があり、いつ誰から電話がきてもおかしくないと思っていたが、それが当たっていたようだ。この仕事を始めてからは最初の第一声の言葉とトーンでその後の内容を先取りして察するありがたくない勘のようなものが働くようになってしまった。

こうなったら当社でも一度覚悟したからにはとことんやっていきましょうという姿勢で、
「まずは経理現場のフローを作成します」
という約束をした。

こういうときは、発する言葉に気持ちと笑顔をのせると自分も乗っていけるし、お客様も安心する。

そして、この言葉を発したその時から新たな出番も同時に始まったのである。

それは、地味な作業でもある。新しい出番といっても何か目新しい革新的な事が始まるわけでもなく、さっと現れて問題をあっという間に解決するような華麗なものでも何でもない。

送りこんでいる当社社員の横で現場作業を見せてもらいながら関係者間の書類のやり取りや順序、その際の確認事項やシステムへの入力事項などを拾いあげ、それをクリティカルパス的な工程表に落としこみ、現状での問題点を炙り出す、という普通は社内でも内部統制部門やISO対応部門など一部の審査的な対応を担う部門の担当者くらいしかやりたがらないような業務だ。

ということで、早速自分も現場に入りながら送りこんでいる当社スタッフに具体的な業務内容を聞きに入ったのである。それは経理仕訳上の適用と呼ばれる自由記載欄に書いてある内容などといった微に入り細に入ることも確認しながらメモを取り、問題になりそうな点をある程度イメージしながら頭の中に叩き込むという作業でもある。

それからしばらくしてそれらをまとめ上げて外町社長・靜本さんにご案内したが、さて本題はここからだ。

「ここからどうしましょう」

ということで始まったわけだが、内容としてはフロー上に決定的な問題があるわけではなく、どうやら営業部門などとの社内コミュニケーションにおけるコミュニケーション不足や考え方の違いが業務フロー上の問題点になっているようだ。これは事前に外町社長からも靜本さんからもよく聞いていたのでまさにその通りのことを実際にも確認できただけである。

その後システム開発請負部門でそういった状況の渦中にいる川木さんが打ち合わせに加わってから、さらにコミュケーションの実態を実感することとなった。

「当社では請負業務について、基本的になんちゃって発生主義で対応しております」
何のことかと思いよく聞いてみると、請負期間中で経理伝票を計上するためには対応期間ごとの請求書を発行してもらう必要があり、それができないと監査上もまずいという話を一方的にされ、発注先のクライアントさんとの調整が大変になっているという。

結局のところキャッシュベース寄りの処理にせざるを得ないともいう。

「多分、うちの経理がそういった請負形態のビジネスを経験したことがないことに尽きるんでしょうねえ」と川木さんが達観的かつ冷静に言葉を続けた。

確かにそうなのだ。

よくありがちだが、タイの経理の現場では考えている以上に分業化が進んでいることと、新しい領域に対する抵抗感があり、本来出来るはずのことでも出来ないとなる場合が往々にしてあるのだ。

今回のメナーム社の場合、これまで主に専門商社機能として単一の事業に近かったのだが、最近は請負業務も手掛けるようになり今後はこの領域も事業として拡げていこうという矢先であった。

それにしても、現場で一番苦労している川木さんとの引き合わせは大変ありがたく、多忙な川木さんには悪いが現場で苦労しているだけに問題意識と改善の必要性を感じている方の参加は、内部から会社を改善するにあたってはサクセス要素として重要でありこの先もできれば参加してもらいたい。

彼の参加は当社も協力を惜しまずやっていこうと意を新たにするには十分な存在であった。

「では経理上も適切な発生主義での計上がタイムリーにできるように、具体的にどこをどうすれば対応できるようになるのかを見極めていきましょう。そのためにも事業部門含めたクリティカルパスを取り込んだフローを経理スタッフ自身の自覚を促すためにも彼ら自身で作成し、それをもとに展開していきましょう」
という話にようやく行きついたところ、それから数日後……。

「出てきたものですが、これです……」
といって見せていただいたものが、
「あっ、これ自分の担当業務書いただけですね……。業務メモです」
ということになり、
「こちらで御社のこれまでの話を聞いたことを整理した上で、想定しうるものを青写真として提供し、それを埋めていく形にしましょうか」
ということに落ち着きをみせ、今はまだ未着手ながらも、これから進むべき方向性は何となくでも見えてきたところである。今後、引き続きまだ2段階くらいは何かあるかもしれない。

とはいえ、ひとまずこれまで全くと言ってよいほど活かされていなかった財務諸表をManagementが使えるようにするためのフェーズに本格的に着手していく段階に入った感もあり、これからが本当の役割になる。サポートをしっかり続けていく。

外町社長が、
「もう来なくて良いです。」
と期待はずれ感の漂う苦渋の顔でなく、笑顔で言ってくれるその日まで、続くのである。
この仕事は、早くお役御免になることがある意味最大の貢献なのだと言い聞かせながら、今日も頭の片隅に外町社長の顔を浮かべながら進むのである。

(メナーム社編 終わり)

※クライアント様の匿名性を保つために社名・人名等をはじめ一部事実とは異なり表現を変えている部分があります。また同様の理由にて事実から離れすぎない程度に一部脚色している部分もあります。

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但野 和博

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