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海外ビジネス コラム

市場動向 2015年04月17日

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17億人のマーケット! イスラム圏ってどんなところ?(2)

堀 明則(Hopewill Group)

世界人口の1/4を占めるイスラム教徒。全世界のムスリムの約60%がアジア太平洋地域に集中しています。本コラムでは、アジアのイスラムの国をピックアップし、その国の基本概要から、経済・政治・文化に関する最新情報をお届けいたします。

第2回はタイです。

タイでハラル認証取得済み製品の輸出産業が急速な成長

人口の95%あまりを仏教徒が占めるタイで、近年、タイ国内で生産されたハラル認証取得済み製品の輸出産業(ハラル・エクスポート)が急速な成長を遂げている。現在、タイにおけるハラル製品の輸出量は年間68億米ドルに上り、世界で6番目のハラル製品輸出国となっている。

なぜタイでイスラム市場に対する取り組みが拡大しているのだろうか。また、日本ではイスラム市場が次第に注目を浴び始め、多くの企業がマレーシアへの進出を足がかりに、世界のイスラム市場への取り組みを加速させていこうとしているということはすでに話題となっている。しかし、日本からのタイのイスラム市場への関心は高くないのか、インターネットにて検索を行っても多くの情報を得ることは難しい。

この、あまり注目されていないタイのイスラム市場に日本企業が参入するメリットはあるのか、また日本と同じくムスリムが少数派であるタイにおける取り組みから日本が学べることはあるのか。今週はそんなタイのイスラム市場に迫る。

【タイムスリムの概要】
「微笑みの国」タイは人口6,700万人の95%あまりを仏教徒が占めるが、同時に中華系やマレー系、クメール系など様々な民族を抱える他民族国家でもあり、多様なバックグラウンドをもつ人々が共存している。ムスリムは人口の4%に当たる400万人程を占め、現在タイには3,000以上のモスクと、ムスリムの為の宗教教育が行われる200以上のイスラム学校がある。タイのムスリムの70%はヤラーやパッターニー、ナラーティワート、サトゥーンの国境県と呼ばれる南部4県に居住しており、その殆どがマレー系である。

タイにおけるイスラムの歴史の始まりは、タイがまだシャムと呼ばれていたアユタヤ朝の時代(1350年から1767年)に遡り、マレー・インドネシア群島・ペルシャ・インド・ビルマ・中国・カンボジアからムスリムが南部に移住して来たことにはじまる。タイ南部はマレー王国として1902年までタイ国に統合されることなく、独自のコミュニティを作り上げて来たため、現在でもマレー系のムスリムが多い地域となっている。

以前タイでは仏教文化を背景とする少数民族の同化による統合政策が実施され、南部国境県に於いて分離独立運動の動きが高まった。しかし、現在では政治の民主化や教育の普及等とともにムスリムの政治参加も活発化し、タイ社会へのムスリムの統合が深まってきている。その他少数派のムスリムは、イエメン・ペルシャ・インド・パキスタン・ビルマ・中国・カンボジア・インドネシア・マレーシアに起源を持ち、タイ各地(特にバンコク)に散在しているが、宗教の違いにとらわれることなくタイ社会の一員として生活している。

【ハラル輸出産業(ハラル・エキスポート)とは】
現在世界の人口の4分の1程を占める17億人のムスリムをターゲットにしたハラル・エキスポートがタイ国内で大きな注目を集めている。ムスリムの人口はまだまだ拡大する傾向であるため、これからより大きな成長が期待される市場である。ムスリムの大多数はアジアに居住し、インドネシア単独で2億2300万人を誇るので、タイはその地理的優位性を活かした大きな市場のポテンシャルに着目したのだ。

主な輸出品目は農産物を中心としたハラル食品であり、年間68億米ドルものハラル食品を計57カ国へ輸出している。この数値はタイの輸出総額の約20%を占め、国内ハラル食品市場では年20%ペースでの成長が見られる。現在タイにある30,000の工場のうち800はハラル食品の為のものだ。

ハラル食品の国内消費額は未だ国内生産全体量の5%と大変低く、残り95%がASEAN加盟国を中心に、中東やナイジェリア、オマーンなどに輸出されている。また、先進技術の向上により化粧品・薬・パーソナルケア製品などの食品以外のハラル製品も輸出しており、厳格な要件を満たす製造及び運送を経て、特に中東市場で人気を博している。

【政府のハラル・エキスポートの支援】
タイは世界で有数の食料供給国であり、タイ政府は自国を「世界のキッチン」として推進していく方針を示している。世界19億人のムスリムをターゲットとしたハラル食品産業はその重要な要素のひとつであり、ハラル食品の輸出を推進する為、政府はムスリムの多いタイ南部パッターニー県にハラル工業団地を設立した。

タイ政府は2016年までにタイ南部をASEAN地域におけるハラル食品輸出のハブにすることを目標に、商業ベースでの原材料の質の向上、食品加工によるハラル食品に対する価値の付加、市場の拡大に力を入れている。この工業地帯へ投資する起業家や投資家の誘致も行っており、今後事業登録費用や所得税、法人税の減免といった優遇政策も導入するつもりである。

また、輸出時のタイ・ハラル認証の世界的な信頼度を高める為、ハラル認証機関に対して助成金を支援し、政府とハラル認証機関が協力して、タイ・ハラル認証の水準を高める取り組みがなされている。

【おわりに】
イスラム市場として日本での認知度が低いタイだが、実は年間60億米ドル以上のハラル食品をイスラム国に向けて輸出する世界で有数のハラル製品輸出国である。現在、多くの企業にてハラル対応の商品を製造しようとする試みが見られるが、ノウハウが無いことに加え、製造過程に厳しい要件が課されるため、どの企業も悪戦苦闘している。ハラル認証を取得しようとすれば莫大な費用がかかる。

そこで、既にハラル製品輸出国として台頭するタイに進出して製品の製造・輸出を行うのはどうだろうか。タイは非ムスリム国であるが、ハラル対応の商品を製造するノウハウがあり、また、タイのハラル認証を持つ商品は世界に多く輸出されている為そのムスリムからの信頼度も伺える。ハラル食品産業へ進出する企業は、政府の取り組みにより、減免を受けられることも魅力的だ。
現在日本では、マレーシアイスラム市場への進出が大きく注目されているが、タイイスラム市場も無視できない市場ではないだろうか。また、ムスリムが少数派であるタイの事例は、同じくムスリムの数が少ない日本が見習うことの出来る政策・ビジネスのモデルであると考えられるが、読者の皆様はどうお考えになるだろうか。

このコラムの著者

堀 明則

堀 明則ほり あきのり

(Hopewill Group)

幅広い事業範囲を武器に

日本企業、個人に対し、香港・シンガポールをハブとした、『日本からア

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