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海外ビジネス コラム

市場動向 2015年05月01日

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17億人のマーケット! イスラム圏ってどんなところ?(3)

堀 明則(Hopewill Group)

世界人口の1/4を占めるイスラム教徒。全世界のムスリムの約60%がアジア太平洋地域に集中しています。本コラムでは、アジア太平洋地域のイスラムの国をピックアップし、その国の基本概要から、経済・政治・文化に関する最新情報をお届けいたします。

第3回はオーストラリアです。

ハラルフードを多く輸出し、ムスリムとの貿易関係が深い国

オーストラリアにおいて、ムスリムは人口のわずか2.2%を占める少数派であり、日本と同じく国内のイスラム市場規模は未だ大きくない国である。一方で、オーストラリアはおよそ2億8000万人ものムスリムを有するASEAN諸国に近く位置するという地理的要因からも、ハラルフードを多く輸出し、ムスリムとの貿易関係が深い国である。 非イスラム国であるオーストラリアにおけるイスラム市場に向けた取り組みを取り組みに迫る。

◆ オーストラリアのハラル認証機関

オーストラリアにおけるハラル認証機関の歴史は古く、1970年代オーストラリアン・フェデレーション・オブ・イスラミック・カウンシル (the Australian Federation of Islamic Councils=AFIC) が、オーストラリア在住のムスリムが購入する食品に対しての基準の設定や監査を開始したことに始まる。

現在オーストラリアには公式に発表されているだけでも24ものハラル認証機関が存在しているが、主なハラル認証機関は非営利組織である、AFIC、ハラル・サーティフィケーション・オーゾリティ・オーストラリア (the Halal Certification Authority Australia)、スプレーム・イスラミック・カウンシル・オブ・ハラルミート・イン・オーストラリア (the Supreme Islamic Council of Halal Meat in Australia)、イスラミック・コーディネーティング・カウンシル・オブ・ビクトリア (the Islamic Coordinating Council of Victoria) の4つとされている。

オーストラリアでは、ハラル認証 は、肉・肉製品において最も取得され、その他に、トーストに塗るオーストラリア伝統の塩辛いペーストのベジマイトや、オーストラリア定番のお菓子であるアンザックビスケットでの取得も見られている。

◆ AFICのハラル認証

オーストラリアン・フェデレーション・オブ・イスラミック・カウンシル (AFIC)は、インドネシア、シンガポール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール等、厳格なハラル認証を有する機関から認定されているオーストラリア国内有数のハラル認証機関である。AFICでは と畜から骨の除去、冷蔵・冷凍、梱包、配送まで、シャリーアに則った方法で行われているか検査をしており、オーストラリア国内の300-400社の商品にハラル認証を発行している。なお、ハラル認証の有効期間は1年間である。

◆ と畜方法について

と畜の許可は、AFICに登録を行い、身分証明書を有するムスリムのと畜人のみに与えられる。このと畜人は性格が良好で信仰心の深いムスリムでなければならず、オーストラリア在住のムスリム2人と、と畜人が通うモスクのイマームからの推薦状が必要である。

と畜される家畜はイスラム法にて許されたハラルでなければならず、生きている状態 (気絶を含む) でなければならない。牛をと畜前に気絶させる場合、「マッシュルーム・スタナー (Mushroom Stunner)」と呼ばれる器具で前頭部を殴打し、この際、死に至らしめてはならない。と畜する際は「Bismillah Allaho Akbar (偉大なるアッラーの為に) 」と唱え、喉仏より下方の部分によく切れるナイフで一度に切り込みを入れ、家畜を瞬時に死なせるために、気管、食堂、顎動脈、頸動脈を同意に素早く切断しなければならない。この際、首を切り落としたり、脊髄を傷つけてはならない。

と畜された家畜が加工される前には、ハラル・チェッカー (Halal Checker) がハラルに則った方法でと畜が行われたかを確認し、非ハラルであると判断された場合にはハラル肉と別に処理、保管、輸送される。ハラル肉の為に使用される場所や器具が、豚や非ハラル肉に使用されるものと混在されることは厳しく禁じられている。

◆ 出荷について

ハラル肉を処理場から出荷する際、と畜段階がハラルであったことを証明する「仮輸送証明書」を添付しなければならない。輸送および倉庫等に保管する際、ハラル肉は非ハラル肉から隔離されなければならず、非ハラル肉との間に感覚をあける、敷居を設置する、別々の場所で保管・輸送するなどの処置が取られる。豚肉や豚肉加工品と同じ場所に保管すること、同じ冷凍・冷凍庫に入れることは厳しく禁止されている。

オーストラリアのハラル市場は?

◆ 国内市場

オーストラリアはキリスト教徒が大多数を占める為、ムスリムは少数派である。しかしながら、隣国インドネシアやマレーシア、また、中東からの移民流入を背景にムスリムの人口が増加傾向にあり、2001年と比較してムスリムの数は約70%増加した。オーストラリア在住のムスリムは、イスラム教の戒律を厳しく守るムスリムから、西洋文化に順応して世俗化したムスリムまで多様であり、国内ムスリムがどの程度厳格にハラル食品を選択しているかは分かっていない。また、ハラル食品の小売業・外食業は個人経営の零細事業が中心で、大手の小売販路における存在感は大きくなく、大手スーパーにおけるハラルであることが明記された肉・肉製品の販売も見られていない。

◆ 海外イスラム市場への輸出
先に見た国内市場とは対照的に、ハラル食品の海外イスラム市場に向けた輸出が 急速に伸びてきている。オーストラリアは有力な食肉生産国であり、オーストラリア産の食肉は世界的に需要が大きい。イスラム諸国においては、食肉需要が高いため、事業拡大を狙うオーストラリアの食肉生産者にとって見逃せない市場となっている。 牛肉の輸出に関しては、 地理的に近いという要因から、東南アジアに向けた輸出が最も多く、中でもインドネシアへの輸出はおよそ930億円に及ぶ。 また中東諸国向けの牛肉の輸出も近年大幅に伸び、特にサウジアラビアに向けて、2013年度は輸出量が前年度の約4倍、輸出額が約6倍と急速な増加が見られた。また、羊肉の輸出は、中東諸国がオーストラリアにとって最大の輸出先となっている。

◆ 政府による支援

オーストラリア政府は牛肉・羊肉の輸出市場開拓を支援しており、中東諸国などのイスラム諸国向けの食肉・肉製品のハラル認証にも力を入れてきた。オーストラリア政府は、「2005年肉および肉製品輸出管理法」に基づいて、「オーストラリア政府認定ハラルプログラム (Australian Government Authorized Halal Program) 」を発令しており、ハラルの肉・肉製品の輸出について、家畜のと畜から解体、加工、保管、非ハラル食品との分離、証明書の発行、輸送方法などに渡る詳細を規定している。また、ハラル肉・肉製品を海外に輸出するには、連邦農業省が承認するイスラム団体 (Approved Islamic Organization=AIO) の認証を受けること、AIOが認定し身分証明書を持つと畜人 (Authorized Muslim Slaughterman) がイスラム教の戒律に則った方法でと畜をしなければならないこと等も定められている。

日本の参考にもなる信用度が高いハラル認証システム

オーストラリアはイスラム教国ではなく、かつ国内イスラム市場も小さいながらも、海外イスラム市場に向けた積極的な取り組みを行い、現在では肉・肉製品のイスラム諸国への輸出における重要な国となっている。その製品はイスラム諸国において高い需要があり、厳格なハラル認証を有する他国のハラル認証機関からも信頼が置かれている。

オーストラリアでは、政府による規定や支援の元でイスラム教の戒律に則った厳格なハラル認証が実施されているが、一方で、日本のハラル認証には政府の規定がなく、様々な機関がハラル認証を発行しており、ムスリムからの信頼度が高くない。それ故、イスラム市場に進出する日本企業は、他国のハラル認証 (JAKIM, MUIなど) の取得にて対応しているのが現状だ。しかし、これらの認証の取得には多額の費用がかかる為、日本企業をイスラム市場進出から遠ざける一因となっている。

日本企業が日本国内でムスリムからの信用度が高いハラル認証が取得できるよう、政府によるハラル認証に関する法整備が望まれると考える。

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堀 明則ほり あきのり

(Hopewill Group)

幅広い事業範囲を武器に

日本企業、個人に対し、香港・シンガポールをハブとした、『日本からア

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