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海外ビジネス コラム

市場動向 2015年10月22日

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アセアンの中心地・タイにおける和食ビジネス その4

水野 聡子(Infinitie Wings BP(Thailand)Co., Ltd)

もともと親日国であるタイには以前から和食店はいくつかあった。ただほとんどが在住日本人向けの価格高め設定店、またはローカル向けのいわゆる「なんちゃって和食店」の二極化した状態であった。

しかし、10年ほど前からの政府間経済協定によって、関税をはじめとする様々な規制緩和が行われた。そして、2013年からの短期訪日ビザ免除により日本を訪れ和食の良い点に接し、タイ人も「本物の和食を食べたい、和食の良い点を日常生活に取り入れたい」という要望が高まったこと、また、日本企業としては国内の少子高齢化で海外へ市場を求めようとする潮流、このほか複数の要因を背景にして現在バンコクには様々な工夫を凝らした多様な和食店が豊富にできている。そこで、そうした事例をいくつか取り上げ、バンコクにおける飲食ビジネスおよび食材ビジネスのチャンスを探りたい。

和食店経営者に聞く、飲食ビジネスおよび食材ビジネスのチャンス

多様な和食店があるということは、言ってみれば競合が非常に多いともいえる。和食店経営者は常に「いつ使ってもらう、誰に使ってもらう、何を楽しんでもらう、どういう風に維持運営する」を意識している。2015年現在の人気店を訪問し長年の人気の秘訣、進出する際に考えておきたいこと、そして店舗運営上重要事項の一つである食材の調達についても聞いてみた。

第4回は「KISSO」

「楽しめる食事とは何か。酒類を味わうとは何か。食文化のきめ細かさを表現するとはどういう事か。提示できる選択肢は本当にたくさんある」とタイ以外の国でも和食ビジネスの経験がある米川シェフは、現在のタイにおける和食ビジネス激化に対し複数の選択肢を設定することで顧客に選んでもらえる運営を心掛けている。


(アセアンでの和食ビジネス経験が長い米川シェフ)

現在の客層について

平日ランチは企業駐在員の妻である日本人主婦が6-7割、タイ人3割、と満席に近い状態。夜は日本人とタイ人半々ぐらい。企業駐在員の接待需要は個室から満席になっていく。

他国での和食ビジネス経験も含め、ここ最近の食材ビジネスの変遷について

タイ人の和食消費が増えたのに伴い店舗も増えた。さらにそれに伴って業者も増えている。食材業者数自体は2倍ぐらいになったのでないか。日本産酒類の輸入兼卸業者も2.5倍ほどに増加している。ビールもタイブランドはもちろん、外国ブランド輸入物、タイ産日本ブランド、周辺国日本ブランドなどを取り扱う業者も増えている。鮮魚で言えば業者はもちろん、空輸の回数も増えている。店舗側としては、選択肢は潤沢にある状態。取引業者はその中から精査し採用となる。

和食ビジネスに伴う食材ビジネスで気になるところについて

まずタイ人の和食に対する知識が以前と比べ物にならないほど増え、厚くなっているという変化がある。昔は魚を見れば何でも「サカナ」と呼ぶ程度だったが、近頃ではギンダラや太刀魚といった固有名詞で名前を憶え、どういう味かを記憶している。

一方、業者側の脱皮はお客さんより時間がかかっている。地場系業者であれば食材を丁寧に扱う事も和食の一つという事を失念し、搬入の際に重量のある魚を上に乗せて身をつぶしてしまったりということもある。日系業者であれば日本人的対応とサービスや気遣いを期待して、多少高くとも日系から購入するが普通に日本人に期待するレベルまで達しないサービスであることもある。

こう見ると、安くて良い商品を納品するのが食材ビジネスの根本ではあるが、結局は人の管理がビジネスの重要ポイントだと言えるだろう。

食材や酒類の採用を決定するポイントについて

日系、タイ系業者に関わらず、当店で食事をしたことがないにも関わらず売り込みに来たり、売り込みの際に質問すると「事務所に確認します」など自分の売ってる商品を良く知らなかったりということがある。こういう状態だと話は聞くが採用までには辿り着かない。

タイ系業者でよくあるのは、日本で鮮魚などの手配がつかず発送が出来ていないことを連絡してこない、当日納品がないので問い合わせたら自分は悪くないという言い訳に終始するといったことだ。手配がつかなかったことはいいとして、手配がつかなかったことが判明した時点で連絡があればメニュー変更などの対応が出来るのにそれがない。いきなり契約をやめることはないが継続して付き合いたいというポテンシャルも低くなる。

日系業者であれば日系企業のクオリティーを維持してほしい。時間通りに注文通りのものを数をそろえて持ってくる、昔はそれで十分だったかもしれないが、当節の業者増競争増の中でそれは当たり前ななり、売りにならない。こうなると差は緻密な連絡と気遣いとなってくる。意外とそこが出来ていなかったりもする。

食材・酒類業者と販売促進を目的とした共同企画を施すことについて

販売促進の目的ももちろんあるが、和食店の競争が激化しているバンコクにおいて当店では「自分に合ったメニューが出てくる」をコンセプトに様々な料理と酒類のセットメニューを設定している。もちろんグランドメニューとしてコースや会席なども提供しているが人気があるのはやはり「自分のためのコース」と思える柔軟対応を施したもの。基本は5品に合わせて5種の日本酒が味わえるもの、これをベースに本人のリクエストに合わせてカスタマイズしていく。面白い試みだとタイ人富裕層から支持を得ている。
(編集部注:この企画は不定期開催のイベントやプロモーション時にお楽しみいただけます)

アセアンで和食および周辺ビジネスをしたい人にメッセージを

あらゆる面で研究してきてほしい。海外なので何とかなるだろう、ではないことを知ってほしい。例えばアポなしで訪問してくる業者も多いがそういうのを見ると今後もそういう付き合いなのかと最初から危惧してしまう。購買部からの申し込みでも良いし、来店し食事後話しかけてもらい面談は改めて日時を設定するなど、日本から進出してくる場合はここは日本だと思って活動すること、という基本に常に立ち返ることを推奨したい。


(日本人企業駐在員に人気のコースセット。米川シェフが厳選した日本酒との組み合わせも自由自在に楽しめる。※ メニューは撮影時のものです)

このコラムの著者

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水野 聡子

(Infinitie Wings BP(Thailand)Co., Ltd)

<タイ産業調査の専門家>

IWBPではタイの一般市場調査および産業調査、コーディネート業務、メディア対応業務などを承っております。

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