市場動向 2015年11月13日
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若いムスリムをターゲットとする市場に迫る!
近年中東地域や東南アジアの富裕層・中間所得層の増加や、東南アジアからの訪日ビザの規制緩和、2020年の東京オリンピック開催決定に伴い、多くの日本企業がイスラム市場に目を向けている。イスラム市場は、世界で15億人以上の人口を有し、その殆どが若者である。今回は、ムスリムの若者をターゲットとした各市場の動向に迫る。
【イスラムファッション市場】
ムスリムの若者をターゲットとした市場は、主要ブランドや多国籍企業にとって未開拓の市場である。現在、若いムスリム向けの商品が十分に普及しておらず、アーバン・ムスリム (Urban Muslim) 、特に欧米のムスリムを中心として、若いムスリム向けのファッションを求める動きが見られる。
昨年、ダナ・キャラン・ニューヨーク (DKNY) がラマダン・コレクション (Ramadan Collection) を中東のムスリムをターゲットとして開催し、中東で大きな反響を呼ぶ成功となった。一方、ラマダン・コレクションは中東のみで開催された為、欧米のムスリムは看過される形となった。欧米に住むムスリムにとってダナ・キャラン・ニューヨークは普段目にする馴染みあるブランドである。それ故、多国籍企業にとって欧米のムスリムは主要顧客と成り得る市場セグメントであり、決して看過できない顧客層である。
また、主要ブランド各社は、インスタグラムを通じてヒジャブ・ビューティー (Hijab Beauty) と呼ばれるムスリムの女性の間でのファッションへの意識の高まりを認識しはじめ、ムスリムの女性向けのファッションの展開を検討している。SNSはブランド地位の確立や宣伝効果に大きく貢献する為、主要ブランド各社はSNSを通じたムスリムファッション市場での展開を視野に入れている。
【ムスリムトラベル市場】
ムスリムトラベル市場も、アーバン・ムスリムの間で急成長する市場の一つであり、昨年度は1億800万人ものムスリム旅行者が1400億米ドルを越える消費を行ったと推測されている。
ムスリムトラベル市場は世界の観光市場の中で最も急速に成長する市場であり、その成長率は中国人観光客市場を上回る。この動向を受け、世界各国の観光業従事者がムスリム旅行者をおもてなしする対応をはじめている。ドイツのホテル、ザ・リッツ・カールトン・ベルリン (The Ritz Carlton Berlin) ではムスリム旅行者に向けたハラルフードの提供を行い、オーストラリアのグランドホテルウィーンはムスリム旅行者のニーズに対応する為にレバノン人のシェフを登用し、アメリカフロリダ州のオーランド国際空港ではムスリム旅行者の為の祈祷室を、成田空港ではハラルフード専門の小売店と祈祷室を整備する、等の対応を行っている。
【ハラルeコマース】
ムスリムトラベルのプラットホームであるウェブサイト/携帯アプリケーション「Irhal」を運営するIrfan Ahmad氏は、「ムスリムの数は世界で15億人以上であり、その殆どが若者である。eコマースがヤング・ムスリムをターゲットとする上で最も効果的であるが、娯楽の為の携帯アプリケーションもヤング・ムスリムにアプローチする上で大きな効果が期待できる。動画はスマートフォンで最も利用されているサービスであり、携帯ゲーム市場もまた巨大な市場である。ハラルであることを第一とし、世界的な流行に合わせたサービスを開発することでヤング・ムスリムにアプローチできるだろう。欧米市場で既に成功した例をモデルにムスリム向けの新たなサービスを開発することも、ムスリム市場で展開する手段の一つである」と語っている。
Irfan Ahmad氏はイスラム経済へ目を向けることが重要であるとも以下のように語る。「世界一のハラルeコマースを作るには、大きなビジョンを持って小さなことから始める意識が重要である。まずはハラルフードを販売する小さな店を作り、小さな資金を集める。集まった資金でムスリムファッションの販売も始め、より多くの資金を集める。その資金を用いて販売する商品数を増やし、更に資金を増やしていく。この繰り返しにより、国内のみでなく世界で展開するeコマースへとビジネスを拡大することが可能である」
ムスリム市場では近年、少額決済の重要性が高まっている。ムスリム市場は15億人を有する巨大市場である為、多くの少額決済が大きな利益を生み出すことが可能である。
【イスラム金融】
「ムスリム人口で大多数を占める若者の間で、スクーク (Sukuk) を含む資産運用等イスラム法シャリーア (Sharia) に遵守した商品を利用したいと考えるムスリムが増えている」とドバイのノール・バンク (Noor Bank) 消費者金融部門Waleed Barhaji氏は語る。
しかしながら、現状ではローカルに地場を張る銀行が多国籍銀行より有利であることも事実である。多国籍銀行を好むムスリムもいるが、以下が利用する銀行を選ぶ際の決定要因となっており、ローカルの銀行を選ぶムスリムが多い。
・商品の種類と特徴
・アクセスのしやすさと利便性
・支店数、
・オンライン/モバイルバンキングの機能性
・サービスの質
イスラム圏におけるローカルの銀行は、ムスリムのニーズに対応した金融サービスを提供しているという点で、多国籍企業より優位に立っている。
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