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海外ビジネス コラム

市場動向 2016年01月06日

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【特集2015年総括・2016年展望】変化する日系企業のタイ進出

但野 和博(Accounting Porter Co., Ltd.)

2015年、日系企業のタイ進出に変化はあったか?

毎年恒例のこちらのテーマですが、今年は例年以上に早く時が過ぎたというのが実感です。前年同タイトルのコラムの中で、進出案件の小型化、スモールスタートでの進出検討をされる企業が増えると想定しておりましたが、実際に2015年前半は当社だけでも毎月1社以上のお客様の法人設立のお手伝いをさせていただき、気づいけば2015年も残すところ数ヶ月といった状況でした。そのほとんどがやはりスモールスタートの案件でした。

このスモールスタートの定義というものがあるのかと言われると、感覚的で便宜的にすぎませんが、400万バーツまでの資本金ということで概ね整理できると思います。タイに在住の皆さんはよくお分かりでしょうが、最近多いサービス業での進出などにおいては外国人である日本人のVISAや労働許可証の取得が法律上制限されており、200万バーツ毎に1名の枠しか確保できません。日系としては、少なくとも日本人1人は現地に在住することが多いので、ミニマムの200万バーツで始めることがあります。あるいは、最初からある程度の拡大も視野に400万バーツにするか、そのどちらかに決められる企業が多いです。

マクロ的な面では、今年はタイ式民主主義とも言われる軍事政権が1年を通じて安定して政権を担った年でしたが、外資受け入れに引き続きポジティブであることは、BOI(投資委員会)の改訂で程度間口が広がったことからも窺えます。

ただし、BOIの発表する総額と件数は、2014年度に比べるといずれも減少しており、BOIの制度変更前の駆け込み申請の反動とも読み込めます。

その一方で、BOIは基本的に独資でできる業態という括りとも言えるため、最初に当社の事例で取り上げたようなBOI適用外のサービス業についてはこの統計には反映されません。他のデータをあたる限りでも日系が一部出資する形態でのデータは統計として出ていないようなので、これはタイ国の商務省に登録されているデータを丹念に拾うことでしか本当の姿は分かりません。少なくとも肌感覚としては2015年を通じてそれほど減少したとか横ばいだったかという気はしておらず、むしろタイ資本の出資を必要とするサービス業に限っていえば、対前年度比としては増えているのではないかというのが実情です。

ASEAN経済圏の発足が、日系企業にも影響を及ぼしそうな2016年

さて、次に2016年の展望に目を移したいと思います。つい先頃には半ば駆け込みの様相でASEAN経済圏(AEC)の発足の宣言も正式に出され、いよいよ東西、南部回廊を始めとする経済回廊も本格的に整備が始まることが期待されてます。実際のところどれだけ期待できるかというところですが、結論から言うと目先の2016年ということではほぼ何も変わらないであろうというのがここ1~2年で周辺諸国のベトナム・ラオス・カンボジア・ミャンマーとまわってきた実感でもあります。

というのも、タイはその回廊の中心にあるわけですが、タイ以外の国は押し並べて右車線の国で左ハンドルが主流になっていることが一つのネックです。タイから南に下るマレーシア、シンガポールはタイと同じ左車線の国ですが、ことAECの経済回廊の意味がサプライチェーンの国を跨いだ広がりということで言うと、このために貨物の積み替えが必要なこともあると聞いている中では若干懸念を感じるところです。

また、とある精密機器を取り扱う企業からの相談を受けている方から最近聞いた話では、ベトナム・ダナン市からの東西経済回廊の陸路はまだまだ道の凸凹が残り、多くの区間は未整備で、移動中の揺れに影響を受ける精密機器はとてもではないが取り扱いが難しい状況とのことでした。AECの恩恵を将来に渡って享受するためのポイントはこのように経済回廊の一つをとっても、各国がどれだけ主権を発揮しながらも利他のバランスをとって連携できるかにかかっていると言えます。タイはASEANの盟主ということを喧伝しているので期待するところ大なのですが、どのようにバランスをとって調整していくのか推移を見守っていきたいところです。

そんな中での2016年の展望ですが、AEC発足後の動きというところでは時間がかかるであろうことが想定されつつも、日系企業としては国を跨るサプライチェーンの形成を前提とした動きが活発になっていくことが予想されます。既にBOIのITCという商社機能に適用するカテゴリーでは、3国間貿易や一定の完成品の取扱が認められるなど投資恩典制度もそれを見据えたものとなってきております。タイと日本間だけでのオフショア的なサプライチェーンに留まらず、タイ周辺諸国全般を対象として、どの機能をタイに残し、どの機能を他国へ移すかなどを検討しながら進出する案件もいよいよ本格化するのではと感じております。

そういった流れの中では、周辺諸国の外資規制などとの比較をしたうえでの進出案件もそろそろ出てくる頃かと感じております。つまりは一般的に規制の厳しいタイという認識の中で、本当にその事業を展開するのにはタイがベストなのかという、タイにいながらも逆説的なご案内をする必要が出てくる時代が間もなくやってくるのではということです。

前回と同じような結びにはなりますが、今後ともタイのみならずASEAN全般に展望を向けて事業活動を広げる展望を持った日系企業の進出に期待しております。

このコラムの著者

但野 和博

但野 和博

(Accounting Porter Co., Ltd.)

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