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市場動向 2016年01月07日

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【特集2015年総括・2016年展望】オーストラリアでM&A案件が急増、その理由は?

永井 政光(NM AUSTRALIA PTY LTD)

2015年オーストラリアの経済を振り返る

2014年に大筋合意し、2015年1月に発効された日豪EPAのオーストラリア経済への影響ですが、インパクトは大筋合意がもたらされた2014年時点の方が大きかった印象があります。製造業、特に段階的に関税が完全撤廃される自動車産業への影響が大きく、日系のトヨタ、その他にもフォード、GM傘下のオーストラリアブランド、ホールデンの3社が国内での2017年までに生産を終了、工場閉鎖の発表もなされました。その背景には協定云々だけではなく、人件費が高く、生産コストが割高なオーストラリアで国内生産を続けていくのはメリットが少なかった事も撤退の大きな理由の一つ言えるでしょう。

協定発効後は、大元の製造業だけではなく、末端の自動車販売小売業への影響も少なくないと言えます。関税が撤廃されることにより、輸出関連の日系企業は朗報だと言えます。特に検疫などの関係上、従来はかなり困難とされていた農作物輸入の緩和や、電化製品なども関税撤廃の対象となるため、ビジネスチャンスが大いにあると考えられます。ただ反面、現地では製造業での工場閉鎖及び。人員削除の可能性が懸念されています。

今年オーストラリア国内で取り上げられたトピックといえば、M&A。この一言に尽きます。オーストラリア企業が国外の企業からの対象となり、M&A、株式取得などの投資が盛んに行われた一年でした。オーストラリアの企業がM&Aの対象になる背景には、オーストラリア市場の株安と豪ドル安による所と、元来オーストラリア市場は他の大陸主要国と比べ小さい為、企業規模も同様に小規模で買収金額を抑えられる点があげられます。

手頃な買収金額に対して、オーストラリア経済は堅調であり、人件費など他国に比べて諸経費が割高になるが、物価が高くリターンも多く見込める点も見逃せないと推測されます。

そういった諸条件により、海外企業によるオーストラリア企業を対象としたM&A(合併・買収)が拡大し、2015年9月までの1年間のM&A件数は、昨年度、同期比較に対し23%増加しました。

また、2015年1月から9月までの、オーストラリア国外からのM&A送金額は、353億豪ドル(日本円で約2兆9750億円)になり、現時点で、2014年度のM&A成立金額376億豪ドルを上回るハイペースで、統計局の予想よれば、2015年度は2011年に記録した年間最高M&A取引金額を遙かに上回るのではとの声明も発表されています。

米国(豪ドルの対米ドル為替レートは、今年に入り23%安となっている)や為替相場が、自国通貨が米ドルと連動しているアジア諸国から、オーストラリア企業とのM&Aについての関心が高くなっている点も投資力の一環を担っています。

2015年度のM&Aの実例

2015年度のM&Aは、7~9月に入り、中国企業による健康サプリの大手会社スイス・ウェルネスの買収や、米国企業による信用リスク情報サービスを提供しているベダ社への買収攻勢などが行われました。また、現在買収提案案件なども控えており、今後この数字が大幅に伸びるとの予想も出ています。

2015年度のオーストラリア国外からの大型M&A成立件は数多く上げられ、中でも日系企業からは、日本郵政が、オーストラリア国内での物流業務の最大手である、トール・ホールディングスの65億豪ドルで買収を発表し、市場に大きなインパクトを与えました。その他にも日本最大手の広告代理店電通も既に、オーストラリアの広告代理店BWM社の株式51%を取得し、2019年までには完全子会社化するとの発表も行われています。

またカナダの資産運用管理会社ブルックフィールド・アセット・マネジメントは、オーストラリア港湾・鉄道運営の最大手アシアノに対する89億豪ドルの買収すると発表し、この買収劇は今年アジアのM&Aでは最大の規模になります。

港湾・鉄道関連のインフラなど、オーストラリア国民の生活に直結しているライフライン関係企業への買収は、オーストラリアの投資局が、過去オーストラリア国外企業からの買収は認めないケースもあったので、今回の買収はオーストラリア国内では驚きを持って迎えられています。

アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)傘下の投資信託会社GEキャピタルはオーストラリアとニュージーランドの消費者金融事業を、米投資会社コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が主導するコンソーシアムに82億豪ドルで売却を完了。ニューサウスウェールズ州政府が管理する電力公社の株を売却すると公表しており、資産運用会社インダストリー・ファンズ・マネジメント(IFM)も、投資先である再生エネルギー企業パシフィック・ハイドロの放出をするとの声明を上げています。

2016年はM&Aの嵐が吹き荒れる

RBA(オーストラリア準備銀行)は2016年早々に公定歩合の引き上げを行い、現在の豪ドル安から、豪ドル高に誘導するとの情報もありますが、一時期の様に、明らかにオーバーバリュー的な為替相場にはならないと考えられています。よって買収金額がお手頃なオーストラリア企業は、2016年も2015年同様により多くの海外企業からのM&Aの対象となると予想されます。 

またオーストラリア政府は、他国よりも生産コストや、品質が劣り、国際競争力に乏しい自国企業を関税等の壁によって、手厚く保護してきましたが、TPP大筋合意の影響でその垣根が取り除かれるので、特に世界的に買収、統合、合併と業界編成が進んでいるインフラ、エネルギー関連の企業を中心に、今後世界的なメジャー企業が、M&Aに参戦してくると予想され、より一層オーストラリア企業へのM&Aの拍車が掛かると事でしょう。

日系企業はグローバル化を進めており、今後も海外企業の買収案件数は増えていくと言えますが、実際問題として日系企業のM&Aの成功率は、残念ながらかなり低いのが現状です。 何を持って成功なのか、その概念は各企業の趣旨によって異なるので、一概には述べることは難しいですが、日系企業がM&Aを進める場合には、文化や言語が共通な欧米企業よりも高いハードルを克服する必要があります。 短期決戦の欧米型のスタイルで経営権を買うのではなく、社風や文化をまず理解し、日本独自のスタイルを模索する必要があると考えられます。

今後日系企業がオーストラリア企業に対して、大掛かりなインフラ、エネルギー関連への投資や、日本郵政が行った様な大規模なM&Aが、現段階で発表される可能性は少ないかもしれませんが、投資金額が手ごろで、日本と時差も少ない利便性もあり、日系企業が買収する案件数は増えております。特にスモール、ミドル規模を中心に、水面下の交渉も含めて、トータル的な投資金額は増加する強い予想があり、2015年の実績を上回る可能性が高い一年となるでしょう。

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永井 政光

(NM AUSTRALIA PTY LTD)

<オーストラリアビジネスの専門家

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