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海外ビジネス コラム

市場動向 2017年09月25日

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オーストラリアの不動産事情

永井 政光(NM AUSTRALIA PTY LTD)

“オーストラリアの不動産価格は絶対に下落しない!” 2000年にシドニーで約半世紀ぶりにオーストラリア開催となったオリンピック以降、オーストラリアの不動産業界は、リーマンショックなどのいくつかの一時的な下落がありましたが、おおむね順調に右肩上がりの成長を遂げてきました。

“不動産価格は絶対に下落しない” このフレーズはバブルが崩壊するまで、我々日本人にとってはある種の神話に近い不変の物で、オーストラリア人の考えも同様だと思われますが、その考えをそろそろ改める足音が聞こえ始めています。
 

明らかなオーバーバリューの不動産

シドニーはシティと呼ばれる市内や近郊に会社などが密集しています。またシドニーは急激に増えた人口に対して、交通手段等のインフラは脆弱で、通勤時間は朝は郊外から市内を目指す車で大渋滞になり、夕方は朝とは逆に帰宅を急ぐ車で大渋滞となっており、社会問題にも取り上げられております。近年政府はインフラ改善に力を入れており、企業もより近いの安価な郊外へとオフィス移転を進めておりますが、まだまだ十分だとは言えません。交通の便が良く、生活環境が整っている市内近郊に人口が密集してしまうのは必然的な事で、それに伴い地価が上昇するのも世の常と言えますが、それにしても不動産価格が異常だと言えます。

例えば2つのベッドルームと、シャワールーム、それにリビングのアパートメントタイプの物件が日本円で約一億円を超えるのは、物件に対する正当な価格だとはとても考えられず、オーバーバリューだと言えます。その背景には投資意欲旺盛なアジア人富裕層の攻勢が上げられます。物件が明らかにオーバーバリューであったとしても、それでも購入者が存在する限り高騰し続けます。

日本はグロバルスタンダードの観点から見ますと、少し変わった国で、日本国籍、永住権保持者でなくても不動産購入が可能ですが、オーストラリアをはじめ、ほとんどの国は安全保障上外国人の不動産購入に関しては認められておりません。ただ、地獄の沙汰も金次第とのことわざがある様に、世の中には必ずレギュレーションの横に小窓が用意されております。原則的に外国人が不動産を購入出来ないオーストラリアも例外ではなく、FIRB(外国投資審査委員会)の承認を受けていれば、購入が可能です。そして、物件の金額次第ではオーストラリアの永住権も取得出来る可能性があった事も、地価高騰に拍車を掛けたと考えられます。
 

国内外の世論と政策に振り回されるオーストラリア

ただ行き過ぎた地価高騰にオーストラリア国民もさすがに腹に据えかね、マスメディアも巻き込み、“外国人の物件買いあさりが地価の高騰を招き、結果マイフォームは一般人の手の届かぬものとなってしまった!” と騒ぎ始めました。オーストラリア政府は中国を中心としたアジアの富裕層の投資によって国庫を潤したい気持ちはありますが、実際選挙権を持つのはオーストラリア国民。板挟みの様な状態が何年も続きました。しかし、世界的な保護政策のトレンドや、中国政府が執行したかなり強引な資本流出制限もオーストラリア不動産業界に大きなインパクトを与えつつあります。

オーストラリア不動産への投資金額トップは、断トツで中国からとなっており、2016年中国からの投資金額はおよそ319億ドルと言われております。ただ、2017年度は比較的堅調だった取引オークション落差率が、資本流出制限がうわさされた、2017年中ごろ辺りから下がり始め、8月に入ると、過去10年間で最低の落札率を記録する様になりました。最終的な結果はまだ分かりませんが、2017年の中国からの投資金額は前年度から150億ドル程に減少するとの予想も出ております。

また今後東京オリンピックが開催される2020年頃までには、シドニー、メルボルンのオーストラリアを代表とする2大都市の地価が、およそ4、5%下落するとの予想も出ております。いずれにしましても現在オーストラリアの不動産業界に限らず、経済全般は中国からの影響を多く受けておりますので、今後の中国の政策次第でマーケットが大きく変化する可能性もあると言えます。

このコラムの著者

永井 政光

永井 政光

(NM AUSTRALIA PTY LTD)

<オーストラリアビジネスの専門家

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