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市場動向 2012年12月11日

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『「借景」国家、シンガポール』

堀 明則(Hopewill Group)

シンガポールでは毎日多くの日本企業様が当地に入られ、自社の未来を模索されています。

お客様のシンガポール事情把握の一環でシンガポールの不動産を視察しました。
シンガポールの街をあるいているときに気になることは「タワークレーンの数」。
不動産開発が相当量見受けられます。

デベロッパーを訪問し、いくつかの開発物件の内容、状況をききとりました。

そこでデベロッパーから聴く言葉に頻繁にでてきたワードは「インドネシア」です。
インドネシアの資本が相当量流れ込んできており、
高級マンションなどはインドネシア人がまとめて買い上げてゆくとのこと。

香港における中国人の存在と近いかもしれませんね。

もちろん欧米の金融緩和政策により刷られた紙幣も、行き場を求めてシンガポールに落ちてきています。

しかし何と言ってもアセアンの力、特に後発発展組のインドネシアの力を感じました。

周辺諸国の成長力を上手に取り込んで、自国の成長エンジンを強化するシンガポール。
この「借景」戦略はやはりすごいものだ、と感心した次第です。

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「借景」という言葉をご存知かと思います。
借景とは、周囲の景色を借りて景観をつくりあげるというものですね。
裏山が春夏秋冬それぞれに色を変え、建築物・造形物の美を引き立ててくれます。
四季が明確な日本、また本来自然と共生することが得意な日本人に際立った美意識かもしれませんね。
フランスでは「借景」が「Shakkei」と言われるほどに、この美意識が評価されているようです。

シンガポールで、ある日本人経営者の方とお会いさせていただきました。

この方はシンガポールの魅力を「借景」になぞらえて分かりやすく説明をしてくださいました。

借景とは周辺の景色を取り込んで、景観を完成させることと上述しました。

シンガポールの成長は、まさに借景そのものだそうです。
それは次のような解釈です。

シンガポールは明快な方針のもと、規制を限界まで撤廃し、だれもが活用できる国家を目指してきたわけです。

この規制を制限することで、外部との垣根が取り払われ、外部とのちょうどよい融合(距離感)が生まれるわけです。
シンガポールは、その周辺にあるマレーシア、インドネシア、インド、他アジア新興地域の活力を背景に取り込み、まさに「シンガポール」という価値(景観)を完成させている、というわけです。

借景は背景との一体感が大切です。
しかし一体物となってしまっては借景ではなくなります。
周囲の特徴をよく理解し、その特徴を景観の一部として活用することが借景です。

シンガポールは、周囲の環境を理解し、シンガポールと言う国家がどうあるべきかを明快に示し、そして違和感のない融合を遂げています。

借景となるシンガポール周辺地域の経済の力が、シンガポール経済を引き上げてくれます。
またシンガポールの機能性の向上は、周辺地域へ経済効果として波及してゆきます。

もしも日本が文化としてもっている「借景」を、国家の成長戦略としても活用していたら、日本もシンガポールのようにアジアのハブとして機能していたかもしれません。

周辺地域の特徴を理解して、日本がどう存在することが、周辺地域と日本にとって効果的な融合関係が構築できるのか。
この根本となる部分の議論があまりにもなされずに、日本は一方的に日本のポジションを作り上げようとしているのかもしれません。

そこには融合やハーモニーがないため、結果相乗効果が生まれず、やがて機能しなくなる。
日本の政策に、アジア周辺地域を借景として取り込んで「日本」と言う景観・価値を完成させると言う、器の大きさ、あるいは大局観に基づく判断力、こんなものがかね備わっていると、日本はもっともっと発展を遂げるのかもしれません。

20世紀のアジアは日本がリードしてきたことは間違いないところでしょう。
当時の日本は、製品開発力と貿易力を活用し欧米地域を借景とし、その時にあったポジションを確保して世界的にプレゼンス(存在感)を発揮してきたと考察することができます。
それは戦略的に借景を活用したと言うよりも、結果借景となった、と言う方が正しいのかもしれませんが・・・。

時代はかわり21世紀。

世界中の価値観に大きな地殻変動がおきました。
パワーバランスは欧米地域・先進地域から、アジア地域・新興地域に分散しました。
欧米一辺倒の世界経済は、欧州経済圏、アジア経済圏、米経済圏へと分散し、アジア経済圏が存在感を示すようになりました。

今後10年後、20年後を考えると、ここにアフリカ経済圏なるものが加わるのかも知れませんね。

このようなダイナミックなパラダイムシフトが起きる中、貿易を主軸として、欧米市場を借景とした、日本経済という景観構造が通用しなくなっているわけです。

21世紀はアジアの時代です。
日本は過去の価値ではなく、今現在の日本の価値をきちんと再査定し、そして近隣で勃興するアジア経済圏を借景として活用し、「日本」という景観を完成させてゆくことを考えねばなりませんね。

しかし、シンガポールの戦略は明快で、したたか。
「国家が繁栄するためには何をすべきか」が、判断基準のほぼすべてです。

シンガポールの借景戦略、日本政府もぜひ研究してもらいたいものです。

皆さんはいかが思われますか?

このコラムの著者

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堀 明則ほり あきのり

(Hopewill Group)

幅広い事業範囲を武器に

日本企業、個人に対し、香港・シンガポールをハブとした、『日本からア

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