技能実習廃止・育成就労とは何が違う?2027年の制度移行を企業担当者向けに解説
「技能実習制度が廃止される」というニュースを耳にしながらも、「実際に何がどう変わるのか」「自社の採用計画にどう影響するのか」を整理できていない担当者の方も多いのではないでしょうか。
2024年6月、政府は「育成就労制度の創設等のための関係法律の整備に関する法律」を成立させ、2027年4月を目途に育成就労制度へ移行することを決定しました。この制度移行は単なる名称変更ではなく、制度の目的そのものが「国際貢献・技術移転」から「人材の育成と確保」へと根本的に転換し、転籍ルールや特定技能との連携にも大きな変更が加えられています。
施行まで1年余りに迫った今、人事担当者・経営者が理解しておくべき制度の違いと、今すぐ取り組むべき準備事項をわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- ・技能実習制度が廃止される背景と2024年法改正の概要
- ・育成就労制度の特徴と技能実習との具体的な違い(転籍ルール・在留期間・目的)
- ・企業が今すぐ取り組むべき実務的な準備事項
▼目次
1. 技能実習制度が廃止される背景
なぜ廃止されるのか(制度的な問題点)
技能実習制度は1993年に始まった制度で、日本の技術・知識を発展途上国に移転することで国際貢献を図る仕組みとして設計されました。しかし長年にわたり、「国際貢献」という建前とかけ離れた運用が横行しているとして、国内外から厳しい批判を受け続けてきました。
最も深刻な問題のひとつが失踪者数の急増です。外国人技能実習機構の統計によれば、技能実習生の失踪者数は2013年に3,566人だったのが2024年には6,510人と約2倍に増加しています(出典:外国人技能実習機構)。失踪の主な理由として挙げられているのは、低賃金・賃金の未払い・暴行・過重労働などの劣悪な労働環境です。技能実習生は原則として転籍が禁止されているため、たとえ劣悪な環境に置かれても転職による逃げ場がなく、失踪という手段をとらざるを得ない実態がありました。
国連人権理事会や国際労働機関(ILO)からも制度の見直しを求める勧告が出されるなど、日本の外交・経済的なイメージにとってもマイナスとなっていました。こうした制度の欺瞞性こそが廃止議論を後押しした根本的な要因です。
2024年の法改正の概要
こうした背景を受け、政府は有識者会議での約1年半の議論を経て、2024年6月に「育成就労制度の創設等のための関係法律の整備に関する法律」を成立させました。この法律の骨子は「技能実習制度を廃止し、新たに育成就労制度を創設する」というものです。施行時期は2027年4月が目標とされており、具体的な詳細は政令・省令で引き続き確定される予定です。
なお、特定技能制度については廃止されず存続します。制度の目的を「国際貢献(技術移転)」から「人材の育成と確保」に明確に転換した点が法改正の最大のポイントです。育成就労制度のもとでは外国人材は在留期間原則3年で一定の技能・語学力を習得し、修了後は特定技能1号への移行が標準ルートとして位置づけられています。対象分野は特定技能制度と同じ16分野が基本とされています。
2. 技能実習と育成就労の主な違い
① 制度の目的・設計思想
技能実習制度の建前上の目的は「国際貢献・技術移転」であり、実習生は「学ぶために来日する人」として扱われてきました。一方、育成就労制度の目的は「人材の育成と確保」です。外国人労働者を日本経済を支える担い手として明確に位置づけ直すことで、賃金水準の適正化・労働条件の透明化・転籍の自由化(一定要件あり)といった変更が生まれています。
企業側にも意識の転換が求められます。育成就労制度の下では「安い労働力を短期間使う」という発想ではなく、「育成に投資し、長期的に活躍してもらう」という視点でのマネジメントが不可欠です。
② 転籍ルール(育成就労の核心)
育成就労制度において企業が最も注目すべき変更点が、転籍(職場の変更)の自由化です。技能実習制度では転籍は原則禁止とされており、これが「逃げ場のない労働」を生む最大の問題点とされてきました。育成就労制度では、一定の要件を満たした場合に限り転籍が認められます。
転籍が認められる要件としては、①同一の業務区分の範囲内であること、②就労期間が1年以上(政令で2年以下の範囲で設定)であること、③CEFR基準(ヨーロッパ言語共通参照枠)で日本語能力がA1相当以上であること、④特定技能評価試験等に合格していること、が示されています。虐待・重大な法令違反など企業側に問題がある場合はこれらの要件によらず転籍が認められます。
この転籍ルールの変更は企業にとって「育てた人材を失うリスク」を意味しますが、見方を変えれば「外国人労働者に選ばれ続ける職場づくりの動機」にもなります。適正な賃金・快適な生活環境・キャリアパスの提示が、転籍リスクへの最も有効な対策です。
③ 在留期間・特定技能への移行経路
技能実習制度では技能実習1号〜3号を通じて最長5年の在留が可能で、3号修了後に特定技能1号への移行が認められていました。育成就労制度では在留期間が原則3年間に統一され、修了後に特定技能1号へ移行することが制度として標準ルートに位置づけられます。
「育成就労3年→特定技能1号(最長5年)→特定技能2号(更新制限なし)」という段階的キャリアパスが法制度として整備されたことで、企業は採用時点から長期的な人材活用を前提とした育成計画を立てることが求められます。
④ 企業側の手続き・体制
技能実習制度では「監理団体」を通じた間接型の受け入れが一般的でしたが、育成就労制度においても監理団体(名称・要件は変更予定)の活用は継続される見込みです。ただし監理・支援の要件が厳格化される方向で検討されています。
また育成就労制度では、受け入れ企業に対して日本語学習機会の提供が義務づけられる見込みです。外国人材が転籍要件のひとつであるCEFR基準(ヨーロッパ言語共通参照枠)で「日本語能力A1相当以上」を達成できるよう、企業が学習支援を提供する責任を負います。送出機関との契約内容についても、悪質な送出機関の排除が制度改正の重要テーマであり、早期の確認・見直しが必要です。
3. 育成就労→特定技能のキャリアパス設計
制度移行後の標準キャリアルートと企業のサポート
育成就労制度が始まった後の外国人材のキャリアルートは「育成就労(3年)→特定技能1号(最長5年)→特定技能2号(更新制限なし)」という流れが標準となります。育成就労の3年間を修了した後、特定技能1号に移行するためには、①当該分野の特定技能評価試験への合格と②CEFR基準(ヨーロッパ言語共通参照枠)でCEFR基準(ヨーロッパ言語共通参照枠)で日本語能力試験N4相当(A2水準)以上の取得が必要です。育成就労を良好に修了した場合は試験免除の特例措置も検討されています。
企業にとっては、採用時点から特定技能2号取得までの長期的なキャリアパスを外国人材に提示することが定着促進に有効です。「3年間頑張れば特定技能に移行でき、長期的に日本で働ける」という見通しを示すことは、求職者にとっても大きな魅力になります。日本語学習機会の提供・業務指導・生活サポートの充実など、育成期間中の支援体制を早期から整えることが「転籍されない職場づくり」に直結します。
4. 企業が今すぐすべき準備
在籍中の技能実習生の状況把握と移行計画
まず最初に取り組むべきは、現在雇用している技能実習生の在留状況・在留期限・修了時期の正確な把握です。2027年施行時点で在籍中の技能実習生は経過措置により従来制度が継続適用されますが、施行後は新規の技能実習入国が終了します。現在の技能実習生が修了・帰国した後の後継人材採用は、育成就労制度を前提に立て直す必要があります。
各技能実習生の修了予定時期と特定技能移行の可否(試験合格状況・語学力)を一覧化しておくことで、自社の人員計画への影響を正確に見極めることができます。特に2027〜2029年前後に修了者が集中する企業は、制度移行の影響を受けやすいため早期の計画策定が重要です。
受け入れ体制と「選ばれる職場」への整備
育成就労制度への移行に向けて、受け入れ体制全般の見直しも急務です。監理団体・登録支援機関が育成就労制度に対応した体制を整えているか早期に確認し、必要に応じて契約内容を見直しましょう。送出機関との契約が新制度の要件を満たしているかも確認が必要です。
転籍が一定条件下で認められる育成就労制度においては、外国人材に「この会社で働き続けたい」と思ってもらえる職場づくりが定着戦略の核心です。①日本人労働者と均衡のとれた適正な賃金水準の設定、②快適な居住環境の整備(寮の個室化など)、③特定技能2号取得までのキャリアパスの可視化、④日本語学習支援の提供、といった取り組みを今から進めることで、制度移行後の外国人材採用競争でも優位に立てます。
5. よくある質問(FAQ)
Q1. 技能実習制度はいつ廃止されますか?
2027年4月に廃止される予定です(政令による確定を経て前後する可能性があります)。2024年6月に「育成就労制度の創設等のための関係法律の整備に関する法律」が成立し、技能実習制度を廃止して育成就労制度に移行することが決まりました。施行時期の詳細は法務省・出入国在留管理庁の公式発表を定期的に確認することをお勧めします。
Q2. 現在雇用している技能実習生はどうなりますか?
2027年の制度施行時点で在籍中の技能実習生には経過措置が設けられ、引き続き従来の技能実習制度の枠組みが適用されます。ただし施行後は新規の技能実習入国が終了するため、新たな人材採用は育成就労制度を活用することになります。経過措置の詳細は今後の政令・通達で確定される見込みですので、最新情報を随時確認してください。
Q3. 育成就労で転籍を防ぐことはできますか?
転籍を完全に禁止することはできませんが、一定の要件(就労期間・語学力・技能試験合格)を満たした場合にのみ認められるため、制約があります。適正賃金・良好な居住環境・明確なキャリアパスの提示など、外国人材が長く働きたいと思える職場環境の整備が最も有効な対策です。
Q4. 育成就労から特定技能1号への移行はどのように行いますか?
育成就労で3年間の在留期間を修了し、特定技能評価試験と日本語能力試験(A2相当以上)に合格することで特定技能1号に移行できます。企業側は学習支援や試験対策の機会提供が求められます。育成就労を良好に修了した場合は試験免除の特例措置も検討されています。
Q5. 登録支援機関は引き続き活用できますか?
はい、育成就労制度においても登録支援機関・監理団体の活用は継続されます。ただし制度変更に伴い支援内容や要件が変わる場合があります。現在利用中の機関が育成就労制度に対応しているか早期に確認し、特に日本語学習支援の体制が整っているかを確認することが重要です。
6. まとめ
技能実習制度から育成就労制度への移行は、日本の外国人労働者受け入れ制度の根本的な転換です。重要なポイントを整理します。
制度廃止の背景として、技能実習制度は「国際貢献」の名目と実態(失踪者数の急増・人権侵害)の乖離が問題視され続け、2024年6月に廃止が法制化されました。育成就労制度の核心は、目的が「国際貢献」から「人材の育成と確保」へと転換した点にあります。転籍の自由化(一定要件あり)・在留期間3年への統一・特定技能への移行の標準化が主な変更点です。
企業への影響として最も重要なのは転籍ルールの変更です。外国人材が要件を満たせば転籍できるようになるため、「選ばれる職場づくり」が採用・定着戦略の核心になります。今すぐすべき準備は、①在籍中の技能実習生の在留状況把握、②育成就労移行タイムラインの作成、③監理団体・支援機関の対応確認、④職場環境・賃金水準の見直しです。
2027年の施行まで時間は残り少なくなっています。制度の詳細が確定次第すぐに動けるよう、今から準備を始めることが重要です。
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参考文献
・外国人技能実習機構「技能実習生の実習実施者に関する統計」
https://www.otit.go.jp/research_statistics/
・法務省・出入国在留管理庁「育成就労制度について」
https://www.moj.go.jp/isa/policies/policies/03_00045.html
・法務省・出入国在留管理庁「技能実習生の失踪者数の推移」
https://www.moj.go.jp/isa/content/001425159.pdf
・出入国在留管理庁「育成就労制度の創設等のための関係法律の整備に関する法律について」(2024年6月)
https://www.moj.go.jp/isa/
・厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ」(2024年10月)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45411.html
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