訪日外国人の消費トレンド2025-2026|最新データで読み解くインバウンド市場の変化
コロナ禍を経て、日本のインバウンド市場は急回復を遂げています。2024年の訪日外国人数は約3,687万人と過去最高を更新し、旅行消費額も8兆円を超えました。しかし、数字の回復以上に注目すべきなのは、訪日外国人の「消費の中身」が大きく変化している点です。
かつての「爆買い」に象徴されるモノ消費は縮小し、食事や文化体験、アドベンチャーツーリズムといった「コト消費」が拡大しています。訪問先も東京・大阪・京都の三大都市圏から地方へと分散が進み、富裕層向けの高付加価値サービスも成長を続けています。
本記事では、2024〜2025年の最新統計データをもとに訪日外国人の消費トレンドを整理し、2025〜2026年に向けて企業が押さえるべき5つの注目トレンドと具体的な対応策を解説します。
この記事でわかること
- ・2024〜2025年の訪日外国人数・消費額・消費内訳の最新データと変化のポイント
- ・2025〜2026年に注目すべきインバウンド消費トレンド5選
- ・トレンドを踏まえた企業の具体的な対応策(高付加価値化・デジタルマーケティング・多言語対応)
1. 訪日外国人の最新統計データ(2024-2025)
訪日者数と国別シェアの推移
日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2024年の訪日外国人数は約3,687万人に達し、コロナ前の2019年(3,188万人)を約16%上回る過去最高を記録しました。
国・地域別では、韓国が約880万人で最大のマーケットとなり、次いで中国が約700万人、台湾が約560万人と続きます。注目すべきは東南アジアからの訪日客の伸びで、ベトナム、フィリピン、インドネシアはいずれも2019年比で30〜50%増加しています。欧米豪からの訪日客も堅調で、アメリカは約270万人と2019年比約73%増を記録しました。訪日市場はアジア圏を中心としつつも、多国籍化が一層進んでいます。
1人あたり消費額の変化
観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、2024年の訪日外国人旅行消費額の総額は8兆1,395億円で、2019年(4兆8,135億円)の約1.7倍に達しました。1人あたりの旅行支出は約22.7万円で、2019年の約15.9万円から約53%増加しています。
この増加の背景には、円安による割安感、世界的なインフレに伴う物価上昇、そして旅行スタイルの変化があります。特に欧米豪の旅行者は1人あたり消費額が高く、オーストラリアは約38万円、イギリスは約34万円とアジア圏の平均を大きく上回っています。量(訪日者数)だけでなく質(1人あたり消費額)の両面でインバウンド市場が成長しています。
消費内訳の構造変化(モノ消費→コト消費)
訪日外国人の消費内訳を見ると、かつて中心だった「買い物代」の構成比が年々低下し、代わりに「飲食費」「娯楽等サービス費」「交通費」の割合が拡大しています。2024年の消費内訳では、買い物代は全体の約30%にとどまり、2015年の約41%から大幅に低下しました。一方、飲食費は約24%、宿泊費は約29%を占め、「体験」や「滞在の質」にお金を使う傾向が鮮明になっています。
この変化は、いわゆる「モノ消費からコト消費へ」の移行を端的に表しています。以前は家電や化粧品を大量に購入する「爆買い」が注目されましたが、現在は高級レストランでの食事、茶道・着物体験、アウトドアアクティビティなど、日本でしかできない体験への支出が伸びています。
企業にとってこの変化は、商品の単純な販売だけでなく、「体験」を組み込んだ付加価値の提供が求められていることを意味します。インバウンドビジネスの戦略を考えるうえで、この構造変化を正しく理解することが出発点になります。
2. 2025-2026年の注目トレンド5選
体験型消費の拡大(アドベンチャーツーリズム等)
2025〜2026年にかけて最も注目されるのが、体験型消費のさらなる拡大です。観光庁が推進する「アドベンチャーツーリズム」は、自然・文化・アクティビティの3要素を組み合わせた旅行スタイルで、世界的な市場規模は約90兆円(ATTA調べ)とも言われています。
日本では、北海道でのバックカントリースキー、熊野古道のトレッキング、日本酒の酒蔵見学、禅寺での座禅体験などが欧米豪の旅行者を中心に人気です。観光庁の「観光ビジョン実現プログラム2025」でも体験型コンテンツの充実が重点施策に掲げられています。体験型消費は単価が高くリピーター獲得にもつながるため、企業にとって収益性の高い領域です。
地方分散と「二度目の日本」需要
2024年の調査では訪日回数が2回以上のリピーターが全体の約65%を占めています。リピーターは初回訪問で東京・大阪・京都を訪れた後、「次は地方に行きたい」というニーズを持つことが多く、この「二度目の日本」需要が地方分散を加速させています。
北海道、九州、中部(高山・白川郷)、東北などへの外国人宿泊者数は右肩上がりで増加しており、InstagramやTikTokで紹介された「隠れた名所」が急速に注目を集めるケースも増えています。地元企業にとっては、これまでアプローチできなかったインバウンド需要を取り込むチャンスです。ただし、交通アクセスや多言語対応、宿泊施設の整備といった受け入れ態勢の充実が課題となっています。
高付加価値・富裕層向け市場の成長
観光庁は「高付加価値旅行」を成長戦略の柱のひとつに位置づけており、2025年までに訪日外国人旅行消費額の単価向上を目指す方針を掲げています。実際に、1泊10万円以上の高級旅館やラグジュアリーホテルの稼働率は好調で、リッツ・カールトンやアマン、パーク ハイアットなどの外資系高級ホテルの日本進出も相次いでいます。
富裕層旅行者は、プライベートガイド付きの文化体験、ミシュラン星付きレストランでの食事、温泉旅館での貸切滞在など、「特別感」のある体験に高い支出を惜しみません。観光庁の推計では、富裕層(旅行支出100万円以上)の1人あたり消費額は一般旅行者の5〜10倍にのぼるとされています。
この市場を取り込むには、画一的なサービスではなく、パーソナライズされた提案力が求められます。通訳ガイドの質の向上、特別なアクセス(通常非公開の文化財見学など)の提供、きめ細かなホスピタリティが差別化のポイントとなります。
デジタル決済・キャッシュレス化の加速
訪日外国人の決済手段は急速にキャッシュレス化が進んでいます。観光庁の調査では、クレジットカードの利用率が約80%を占め、QRコード決済の利用も年々増加しています。中国のAlipay・WeChat Pay、韓国のKakaoPay、東南アジアのGrabPayなど、国籍に応じた決済手段への対応が来店・購買の判断材料になっています。
日本政府も大阪・関西万博を見据えたキャッシュレス環境の整備を推進しており、主要観光地や交通機関でのタッチ決済対応も拡大しています。企業にとってキャッシュレス対応は利便性の向上にとどまらず、決済データを活用した顧客分析やリピーター施策にもつながるマーケティング基盤としての価値があります。
サステナブルツーリズムへの関心
世界的にサステナブルツーリズム(持続可能な観光)への関心が高まっており、Booking.comの調査(2024年)では旅行者の約75%が「サステナブルな旅行をしたい」と回答しています。この傾向は欧米豪の旅行者に特に顕著です。
日本では農泊(農家民宿)、エコツアー、地域の伝統工芸を守る体験プログラムなどが注目されています。環境省の「国立公園満喫プロジェクト」も外国人観光客の支持を集めています。
サステナブルな取り組みは、環境意識の高い旅行者への訴求だけでなく、ブランド価値の向上にもつながります。欧米豪市場をターゲットにする企業にとっては、サステナビリティへの姿勢が選ばれる理由のひとつになり得ます。
3. トレンドを踏まえた企業の対応策
商品・サービスの高付加価値化
消費トレンドの変化を受けて、企業がまず取り組むべきは商品・サービスの高付加価値化です。単にモノを売るだけでなく、「体験」を組み合わせた提案が求められています。
たとえば、小売業であれば商品の背景にあるストーリーや職人の技を紹介する体験型の売り場づくりが有効です。飲食業であれば、料理教室や酒蔵見学とのセットプランを提供することで、食事以上の付加価値を生み出せます。宿泊業であれば、地域の文化体験と組み合わせた滞在プランの設計が差別化につながります。
高付加価値化のポイントは、日本ならではの「本物感」と「特別感」を打ち出すことです。量産型のサービスではなく、その場所・その企業でしか提供できない独自の価値を磨くことが、訪日外国人の高い消費意欲に応える鍵となります。価格を上げることが目的ではなく、価格に見合った体験価値を提供する発想が重要です。
デジタルマーケティング強化
訪日外国人の情報収集はほぼすべてデジタルで行われており、デジタルマーケティングの巧拙がそのまま集客力の差に直結します。
基本施策としては、Google ビジネス プロフィールの多言語対応と口コミ管理、Instagram・TikTokでのビジュアルコンテンツ発信、トリップアドバイザーやKlookなどのOTA(オンライン旅行予約サイト)への掲載最適化が挙げられます。Googleマップ経由での来店が増えているため、正確な営業情報や口コミへの返信といった地道な運用も重要です。
ターゲット市場によって主要プラットフォームが異なる点にも注意が必要です。中国にはWeibo・RED(小紅書)、韓国にはNaver、東南アジアにはFacebook・Instagramが効果的です。自社のターゲット市場に合ったチャネルに集中することが成果につながります。
多言語・多文化対応の進化
多言語対応は、従来の「翻訳」から、より深い「多文化対応」へと進化が求められています。AI翻訳ツールの精度は向上していますが、文化的背景を理解した接客や、宗教・食事制限への配慮が訪日外国人の満足度を大きく左右します。
ムスリム旅行者向けのハラール対応、ベジタリアン・ヴィーガン対応のメニュー表記、アレルギー情報の多言語表示などは、対応しているだけで口コミ評価の向上につながります。キャッシュレス決済やWi-Fi環境の整備も「当たり前」の期待値になりつつあります。
人手不足が深刻な中、AI通訳ツールやQRコードを活用した多言語情報提供、チャットボットなど、テクノロジーを活用した効率的な対応が主流になっていくでしょう。ツール導入と現場スタッフの異文化理解研修を組み合わせることが重要です。
4. よくある質問(FAQ)
Q1. 2024年の訪日外国人数はどれくらいですか?
2024年の訪日外国人数は約3,687万人で、コロナ前の2019年(3,188万人)を約16%上回り、過去最高を記録しました。韓国、中国、台湾がトップ3を占め、東南アジアや欧米豪からの訪日客も増加しています。
Q2. 訪日外国人の1人あたり消費額はいくらですか?
2024年の訪日外国人旅行消費額は8兆1,395億円で、1人あたり約22.7万円です。円安や旅行スタイルの変化により、2019年比で約53%増加しています。欧米豪からの旅行者は滞在日数が長く、1人あたり消費額も高い傾向にあります。
Q3. モノ消費からコト消費への変化とは何ですか?
以前は家電や化粧品などの買い物が中心でしたが、近年は食事・文化体験・アクティビティなど「体験」への支出が増加しています。2024年の消費内訳では買い物代の構成比が約30%に低下し、飲食費や娯楽サービス費の割合が拡大しています。
Q4. 地方にもインバウンド需要は広がっていますか?
はい。リピーター比率が約65%に達しており、「二度目の日本」需要として地方への訪問が増えています。北海道、九州、東北、四国など、自然や食を楽しめるエリアへの関心が高まっています。
Q5. 訪日外国人向けのキャッシュレス対応はどこまで必要ですか?
クレジットカード(Visa・Mastercard)に加え、中国のAlipay・WeChat Pay、韓国のKakaoPay、東南アジアのGrabPayなど、ターゲット市場に応じたQRコード決済への対応が重要です。キャッシュレス対応の有無が来店判断に影響するケースが増えています。
Q6. インバウンドビジネスで今後注力すべき分野は何ですか?
体験型消費、富裕層向け高付加価値サービス、サステナブルツーリズムが成長分野です。デジタルマーケティングの強化と多言語・多文化対応の深化もあわせて取り組むことで、競争力のあるインバウンドビジネスを構築できます。
5. まとめ
訪日外国人の消費トレンドは、量の回復にとどまらず質的な変化が進んでいます。2024年に訪日者数3,687万人・消費額8兆円超を記録したインバウンド市場は、モノ消費からコト消費へのシフト、地方分散、富裕層市場の成長、キャッシュレス化、サステナブルツーリズムといった5つのトレンドを軸に進化を続けています。
企業がこの変化に対応するためには、商品・サービスの高付加価値化、デジタルマーケティングの強化、多言語・多文化対応の深化が不可欠です。重要なのは、すべてを一度にやろうとするのではなく、自社のターゲット市場と提供できる価値を明確にしたうえで、優先順位をつけて取り組むことです。
インバウンド市場の変化のスピードは速く、最新データに基づいた戦略の見直しが常に求められます。自社だけでの対応が難しい場合は、インバウンドマーケティングの専門家に相談することも有効な選択肢です。
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