外国人材の定着率を上げる方法|離職を防ぐ職場環境づくりと実践施策まとめ
外国人材を採用したものの、「思ったより早く辞めてしまった」「なぜ離職したのかわからない」と悩む企業は少なくありません。外国人材の採用には求人広告費・紹介手数料・ビザ申請費用など、日本人採用と比較して多くのコストがかかるケースがほとんどです。加えて、OJTや研修に費やした育成コスト、引き継ぎの工数まで含めると、1名の早期離職による損失は数十万円〜100万円以上にのぼることもあります。
しかしながら、外国人材の定着率は「採用力」だけでは決まりません。入社後の職場環境、キャリアの見通し、生活面のサポートなど、受け入れ体制の整備が定着率に直結します。
本記事では、外国人材が離職する主な原因を整理したうえで、中小企業でもすぐに取り組める具体的な定着率向上施策を網羅的にご紹介します。採用した大切な人材に長く活躍してもらうための職場環境づくりの参考にしてください。
この記事でわかること
- ・外国人材が離職しやすい3つの主な原因
- ・入社前から始められるオンボーディング・生活支援の具体策
- ・職場全体で外国人材を受け入れる文化・マネジメントのつくり方
▼目次
1. 外国人材が離職する主な原因
コミュニケーション・孤立感
外国人材が職場で感じる最大の課題のひとつが、「言葉の壁」と「孤立感」です。日本語でのコミュニケーションに不安がある場合、業務上の疑問を質問できなかったり、ランチや休憩時間に日本人スタッフの輪に入れなかったりすることが続き、精神的な疲弊につながります。
特に問題となるのが、「なんとなく伝わっていない」状態が積み重なるケースです。日本語が一定レベルあっても、職場の暗黙のルールや社内独自の略語・言い回しが理解できず、業務でミスが起きやすくなります。こうした経験が繰り返されると、「自分はこの職場に向いていない」という自己評価につながり、離職を決断する引き金になりやすいです。
また、母国の家族・友人と離れた環境での生活は、精神的な孤独感を招くことがあります。職場の中に「気軽に話せる人がいる」かどうかは、定着率に大きく影響します。コミュニケーションを促進する仕組みをつくることが、離職防止の第一歩です。
キャリアパスの不透明さ
「この会社でどこまで成長できるのか」「昇給・昇格はどういう基準で決まるのか」が不明確だと、外国人材はモチベーションを維持しにくくなります。外国人材の多くは、スキルアップと収入向上を目的に来日・転職しているため、将来の見通しが描けない状況は離職を検討する大きな要因となります。
日本企業では、年功序列的な昇進・昇給制度が根強く残っているケースも多く、外国人材からすると「どれだけ頑張っても評価が変わらない」と感じることがあります。成果や貢献が適切に評価・反映される仕組みがなければ、より条件の良い他社に転職されてしまうリスクが高まります。
さらに、在留資格の更新や将来的な永住・帰化を見据えた場合、「この会社にいることが自分のキャリアに有利か」という点も外国人材は考えます。中長期的なキャリアプランを一緒に描ける関係性を構築できている企業は、外国人材の定着率が高い傾向にあります。
なお、2027年の「育成就労制度」施行を見据えると、この流れはさらに加速します。育成就労制度は、外国人材を「使い捨て」にするのではなく「育成して特定技能へ移行させる」ことを前提に設計されており、企業には在籍中のスキルアップ支援やキャリアパスの明示が実質的に求められます。単なる労働力の確保ではなく、「この会社で成長できる」と外国人材が感じられる環境づくりが、今後の採用競争力と定着率向上の両方に直結するのです。
待遇・評価への不満
外国人材の離職理由として、待遇・評価への不満は非常に多く挙げられます。特に、「同じ仕事をしているのに日本人社員より給与が低い」「残業代が正しく支払われていない」など、不公平感を感じるケースは関係の悪化に直結します。日本の労働基準法は外国人にも平等に適用されますが、制度の説明不足や運用の不徹底が不信感を生むことがあります。
また、評価基準が曖昧なまま運用されていると、外国人材は「なぜ評価されないのか」がわからず、不満が蓄積します。日本語の評価シートを渡すだけでは内容が理解できないケースもあり、評価面談での丁寧なフィードバックが不可欠です。
加えて、社会保険・雇用保険への未加入や、有給休暇の取得を暗黙のうちに制限する文化も、外国人材が「この職場は違法・ブラックかもしれない」と感じる原因となります。法令遵守の徹底と透明性の高い待遇設計が、信頼関係の土台になります。
2. 定着率向上のための具体的な施策
入社前・オンボーディング期間の丁寧なフォロー
外国人材の定着率を高めるうえで、入社前から関係構築を始めることが非常に重要です。採用決定から入社日までの間は、外国人材にとって不安が最も高まる時期でもあります。内定後に「入社のしおり」を多言語で送付したり、担当者から定期的にメッセージを送ったりするだけで、安心感と会社への信頼感が大きく変わります。
入社初日・初週のオンボーディングプログラムも、定着率に直結します。業務説明だけでなく、社内のルール・文化・よく使う言葉の説明を丁寧に行うことが重要です。「わからないことを質問していい雰囲気」をつくるため、最初の1週間は質問専用の時間を設けたり、担当者が積極的に声がけをしたりする工夫が効果的です。
また、入社後1ヶ月・3ヶ月のタイミングで定着状況を確認するアンケートを実施することも有用です。「困っていることはないか」「職場に溶け込めているか」を定量・定性で把握することで、問題が深刻化する前に対処できます。特定技能・技能実習の在留資格をもつ外国人材については、支援計画に基づく定期面談が義務付けられていますが、それ以外の在留資格の外国人材についても自主的に実施することをおすすめします。
メンター・バディ制度の導入
外国人材が職場で孤立しないための有効な手段として、メンター制度・バディ制度があります。メンター制度とは、先輩社員が新入社員の相談役となり、業務や職場環境への適応をサポートする仕組みです。バディ制度は、メンターより気軽に話せる「同期や近い年次の社員」を相談相手として設定するケースが多く、両方を組み合わせる企業も増えています。
メンターを選ぶ際は、異文化への理解がある人・外国語(英語など)が多少話せる人・コミュニケーションが得意な人を優先的に選定しましょう。ただし、メンターへの負担が過度にならないよう、定期的にメンター自身の状況も確認することが大切です。必要であれば複数名でサポートを分担する「チームメンタリング」の形式も検討してみてください。
制度を導入する際は、メンターに対して基本的な異文化理解研修や傾聴スキルのトレーニングを行うと効果が高まります。「やって当然」という雰囲気ではなく、メンター活動を正当に評価・表彰するしくみを設けることで、制度が組織に定着しやすくなります。
定期的な1on1と目標設定
外国人材の定着率を高めるために、月1回以上の1on1ミーティングを実施することを強く推奨します。1on1は、業務の進捗確認だけでなく、「今の仕事に満足しているか」「困っていることはないか」「今後どうなりたいか」を対話できる場として活用することが重要です。特に外国人材は、グループミーティングでは発言しにくい文化的背景をもつケースもあるため、1対1の場でこそ本音を引き出せることが多くあります。
目標設定については、入社時に「3ヶ月・6ヶ月・1年後のゴール」を明文化し、上司と本人が合意したうえで業務に臨めるようにしましょう。目標は「業務スキル」「日本語力」「チームへの貢献度」など複数の軸で設定すると、外国人材の成長を多面的に評価できます。
また、達成した目標はきちんと称賛・記録し、昇給・昇格の評価材料として活用することで、「頑張れば報われる」という信頼感が生まれます。日本語での書面が難しい場合は、英語・母国語でも対応できるフォーマットを用意するとよいでしょう。
生活支援(住居・行政手続き)のサポート
外国人材の定着を支えるうえで、業務面のサポートと同じくらい重要なのが生活面のサポートです。来日直後は、住居の確保・銀行口座の開設・住民登録・社会保険の手続きなど、短期間に多くの行政手続きが集中します。これらを一人でこなすのは言語の壁もあり非常に負担が大きく、サポートの有無が「この会社に来てよかった」という実感に直結します。
住居については、社宅・寮の提供が最も手厚い支援ですが、それが難しい場合でも不動産業者への同行・保証人の提供・家賃補助といった形で支援することができます。外国人の部屋探しは断られるケースも多いため、対応実績のある不動産業者と事前に連携しておくことが有効です。
行政手続きの同行については、市区町村の窓口での住民登録・マイナンバーカードの申請・健康保険証の取得などを担当者が一緒に行うことが理想的です。社内にそのリソースがない場合は、行政書士や外国人材支援の専門機関と連携する方法もあります。スマートフォンの契約サポートも、日常生活と業務連絡の両面で必要性が高いため、入社時のサポートリストに含めることをおすすめします。
3. 職場全体で受け入れ文化をつくる
日本人スタッフへの意識啓発
外国人材の定着率は、受け入れる側の日本人スタッフの意識・行動にも大きく依存します。いくら制度を整えても、職場の雰囲気が閉鎖的だったり、外国人材を「特別扱い」するような視線があったりすると、当事者は居心地の悪さを感じます。職場全体でダイバーシティ(多様性)を前向きに受け入れる文化を醸成することが、定着率向上の根本的な解決策です。
具体的な取り組みとして、まず管理職・リーダー層への異文化理解研修を実施することが効果的です。「外国人材の文化では、上司に反論することが失礼にあたらない」「宗教上の習慣で特定の食べ物を食べられない」といった基本的な知識を共有することで、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)を減らすことができます。
また、外国人材の出身国の文化・料理・言語に触れる機会を社内でつくることも有効です。「外国人材に教えてもらう」という姿勢が生まれると、日本人スタッフと外国人材の関係が対等に近くなり、双方向のコミュニケーションが活性化します。月1回程度のランチ交流会や、社内報での出身国紹介コーナーなど、コストをかけずにできる取り組みから始めてみましょう。
多様性を活かすマネジメント
外国人材が職場に増えてくると、従来の「日本式」マネジメントだけでは対応しきれなくなるケースが増えてきます。たとえば、「言わなくてもわかる」「空気を読む」といった日本特有のコミュニケーションスタイルは、異文化背景をもつ社員には伝わりにくいことがほとんどです。指示や期待値を言語化・明文化する習慣を組織全体でつくることが、多様なメンバーが働きやすい環境の基盤となります。
また、外国人材のもつ強み(語学力・異なる視点・海外ネットワークなど)を積極的に業務に活かす機会をつくることも重要です。「外国人材だから」と同じ定型業務だけを担当させるのではなく、通訳・翻訳・海外向けコンテンツ作成・インバウンド対応など、その人ならではの価値を発揮できる役割を与えることで、当事者のやりがいと職場への貢献実感が高まります。
評価制度の観点でも、日本語でのプレゼンテーション能力だけでなく、成果・行動・チームへの影響といった軸で多面的に評価する仕組みを整えることで、外国人材が公平に評価されると感じられる環境をつくれます。マネージャー向けに「外国人材のマネジメントガイドライン」を整備している企業では、定着率の改善に有意な効果が出ているという報告もあります(参考:厚生労働省「外国人雇用管理指針」)。
4. よくある質問(FAQ)
Q1. 外国人材の平均的な離職率はどのくらいですか?
厚生労働省の調査によると、外国人労働者の離職率は日本人と比較して高い傾向にあります。特に入社から1年以内の早期離職が多く、採用・育成コストの損失につながるため、入社直後のオンボーディング強化が最優先の対策となります。
Q2. メンター制度を導入する際のポイントは何ですか?
メンターには、異文化への理解がある従業員を選ぶことが重要です。また、メンター自身への研修・フォロー体制を整え、負担が一人に集中しないよう複数人でサポートする仕組みをつくることが長続きさせるコツです。
Q3. 外国人材に対してキャリアパスを示すにはどうすればよいですか?
入社時に「3年後・5年後にどのポジションを目指せるか」を言語化した資料を用意し、定期的な1on1で進捗を確認することが有効です。昇給・昇格の基準を数値化・見える化しておくと、外国人材の納得感が高まります。
Q4. 言語の壁はどう対処すればよいですか?
業務マニュアルの多言語化や、翻訳ツールの活用が基本的な対策です。加えて、日本語教育支援(社内勉強会・外部スクールの費用補助)を行うことで、本人のスキルアップと職場コミュニケーションの改善を同時に進めることができます。
Q5. 生活支援として企業が対応できることはどんなことがありますか?
住居の確保(社宅・寮の提供や不動産仲介サポート)、銀行口座開設・役所手続きの同行、スマートフォン契約のサポートなどが代表的です。特に入社直後は行政手続きが集中するため、専任の担当者またはサポート窓口を設けると効果的です。
Q6. 日本人スタッフが外国人材を受け入れやすくするために何ができますか?
異文化理解研修や、外国人材の出身国の文化・習慣を共有するランチ会・社内勉強会が有効です。経営者や管理職が率先してダイバーシティの重要性を発信することで、職場全体の意識が変わりやすくなります。
Q7. 1on1ミーティングで外国人材に聞くべき内容は何ですか?
業務上の困りごと・目標の進捗・日本での生活面の不安・将来のキャリア希望の4点を定期的に確認することが推奨されます。日本語に不安がある場合は、母国語で書けるフリーコメント欄を設けるとより本音を引き出しやすくなります。
5. まとめ
外国人材の定着率向上は、採用後の受け入れ体制の整備が鍵を握ります。離職の主な原因として「コミュニケーション・孤立感」「キャリアパスの不透明さ」「待遇・評価への不満」の3点が挙げられますが、これらはいずれも、制度と文化の両面から対策を講じることで改善が可能です。
具体的には、入社前からの丁寧なフォロー、メンター・バディ制度の導入、定期的な1on1と目標設定、生活支援(住居・行政手続きサポート)といった施策を段階的に整備することが効果的です。また、日本人スタッフへの意識啓発と、多様性を活かすマネジメントスタイルへの転換を通じて、職場全体で外国人材を迎え入れる文化をつくることが定着率向上の根本的な解決策となります。
「外国人材を採用するだけでなく、長く活躍してもらう」組織づくりに取り組むことで、採用コスト・育成コストの無駄を削減しながら、組織の多様性・競争力を高めることができます。今日からできる小さな一歩を積み重ねることが、数年後の定着率向上につながります。
【開国エンジン用締め文がここに入ります】
6. 外国人採用・定着をサポートする専門企業をご紹介
「開国エンジン~縁人~」には、外国人材の採用・定着支援に実績のある専門企業が多数登録しています。
オンボーディング設計・メンター制度の構築・生活支援のアウトソーシングなど、自社だけでは対応が難しい課題にも、専門家のサポートを活用することでスムーズに解決できます。外国人材の定着率向上に向けて、まずは無料でご相談ください。
参考文献
・厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ」(令和7年10月末時点)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_68794.html
・厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gaikokujin13/sisin01.html
・厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/index.html
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