訪日外国人マーケティングの相談窓口ガイド|無料の公的機関と民間支援の使い分け
2025年の訪日外客数は4,268万3,600人で、前年比15.8%増と過去最高を更新しました(出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2025年12月推計値)」)。一方で「誰に相談すればいいのか」で止まる事業者も少なくありません。
相談先は大きく2種類あります。JNTOや商工会議所など無料で使える公的機関の窓口と、多言語化や広告を実務として引き受ける民間の支援会社です。この記事では、中小企業の経営者・担当者に向けて、各窓口の特徴と目的別の選び方、相談の成果を上げる準備を整理します。
この記事でわかること
- ・訪日外国人向けマーケティングで相談できる公的機関と民間支援の違い
- ・JNTOの無料対応でできること・できないこと
- ・補助金を使いたいときに相談すべき窓口
- ・相談前に整理しておくべき5項目と、実行までの進め方
▼この記事の目次
1. 訪日外国人マーケティングで相談できる窓口は大きく2種類
無料で使える公的機関の窓口(JNTO・地方運輸局・自治体・DMO)
JNTO(日本政府観光局)は、インバウンド事業に携わる、または携わる予定の自治体・企業等に向けて、訪日インバウンド旅行の動向の説明を無料で行っています(東京の本部で約1時間)。ただし、相談者の経営方針や市場調査、広告宣伝、販売活動への関与は対象外で、施策や計画策定への助言は有料メニューです(出典:JNTO「地域へのインバウンドサポート受託事業」)。
地方運輸局は観光庁の地方組織で、観光庁の補助事業の窓口にもなります(出典:観光庁「組織・体制」)。
地域単位では、自治体の観光担当部署や観光協会、DMO(観光地域づくり法人)が窓口になります。DMOは、地域の関係者と協働して観光地域づくりの戦略を策定・遂行する法人です。観光庁の登録制度があり、令和8年4月1日現在、広域連携DMO10法人、都道府県DMO38法人、地域DMO280法人が登録されています(出典:観光庁「観光地域づくり法人(DMO)の登録一覧を更新しました」)。
中小企業向けの経営相談窓口(商工会議所・商工会・よろず支援拠点)
観光の専門機関ではありませんが、中小企業にとって身近な経営相談の窓口でも、インバウンド対応を「販路開拓」や「集客」の課題として相談できます。
商工会議所は全国516か所にあり、対象地域で事業を営む方や創業予定の方であれば法人・個人を問わず原則無料で経営相談を利用できます。販売促進の支援や補助金の紹介、事業計画書の策定支援にも対応しています(出典:日本商工会議所「経営相談」)。
商工会は商工会法に基づく団体で、主に平成の大合併以前の町村部を中心に設置され、小規模事業者の支援に特化しています。無料相談を基本に、経営指導員が窓口や巡回で相談に応じます(出典:全国商工会連合会「商工会とは」)。
よろず支援拠点は、国が47都道府県に設置した無料の経営相談所です。経営上のあらゆる相談に何度でも無料で対応しています(出典:よろず支援拠点全国本部)。
民間の支援会社・マッチングサービス
公的窓口が情報提供や経営相談を担うのに対し、施策を実務として引き受けるのが民間の支援会社です。多言語サイトの制作、SNS運用、海外向け広告、現地調査など、手を動かす部分を任せられます。
依頼先を探す手段には、JNTOの「インバウンド関連サービス検索サイト」があります。JNTOの賛助団体・会員を、通訳・翻訳、コンサルティング・調査、外国人の集客、映像制作・広告・海外向けのWeb制作といった種別から検索できます。
「Digima〜出島〜」のように、相談内容をもとに支援会社を紹介するマッチングサービスもあり、何を頼むかが固まっていない段階でも使えます。窓口ごとの違いは次のとおりです。
| 窓口 | 費用 | 主に相談できる内容 | 向いている段階 |
|---|---|---|---|
| JNTO | 動向の説明は無料(助言は有料) | 訪日市場の動向、市場別の基礎情報 | 情報収集・対象国の検討 |
| 地方運輸局・自治体・DMO | 機関・制度ごとに異なる | 補助事業(自治体との連携が前提)、地域の観光施策 | 補助金の活用・地域との連携 |
| 商工会議所・商工会 | 原則無料 | 販路開拓、補助金、事業計画 | 施策を事業計画に落とす |
| よろず支援拠点 | 無料(何度でも) | 経営上のあらゆる相談 | 課題の整理・継続的な相談 |
| 民間の支援会社 | 有料(内容により異なる) | 多言語化、SNS、広告、調査 | 施策を実行する |
2. 相談の目的別に選ぶ窓口
市場の動向や国別の特徴を知りたい
「どの国の旅行者を狙うべきか」を考える段階では、公開情報と公的機関を先に使うのが効率的です。
JNTOは「訪日インバウンド市場別情報」として、ビジット・ジャパン重点市場の基礎データや市場動向トピックスを無料で公開しています。候補国を比べる出発点になります。そのうえで疑問が残れば、JNTOの無料の動向説明を利用する方法があります。
注意したいのは、この無料対応は動向の説明であり、自社の戦略づくりは対象外という点です。「自社はどの国に何を打ち出すべきか」という個別の判断は、商工会議所やよろず支援拠点で経営課題として相談するか、民間の支援会社に調査や提案を依頼します。
補助金・助成金を使いたい
補助金は制度ごとに窓口が決まっているため、使う制度によって相談先が変わります。
中小企業が販路開拓に使いやすいのが小規模事業者持続化補助金です。チラシ作成や広告掲載、店舗改装などの経費が対象で補助率は2/3、上限は最大250万円です。申請には地域の商工会議所・商工会への相談と計画書の確認が必須で、一般型通常枠の次回受付は2026年11月5日〜12月15日です(出典:中小企業庁 ミラサポplus「小規模事業者持続化補助金」)。計画書の確認には時間がかかるため、締切直前ではなく早めに相談しましょう。
観光庁の補助事業は、自治体やDMOが中心となるものが多く、令和8年度の「観光地の面的受入環境整備促進事業」でも、自治体以外が申請する場合は関係する自治体との連携が必要とされています(出典:観光庁)。まずは自治体の観光担当部署やDMOに相談するのが近道です。
自治体独自の制度もあります。東京都と東京観光財団の「インバウンド対応力強化支援事業補助金」(令和8年度)は、都内の宿泊施設や中小の飲食店・小売店などの多言語対応やキャッシュレス機器の導入などを支援しています(出典:東京観光財団)。申請の流れは「インバウンド補助金の申請方法」で解説しています。
多言語化・SNS・広告など具体的な施策を進めたい
対象国が定まり、「多言語サイトを作りたい」「海外向けSNSを始めたい」「広告を出したい」という段階に進んだら、実務を担える相手が必要です。
予算が限られる場合は、商工会・商工会議所に相談するのも一つの方法です。商工会では、ホームページやSNS等を活用した情報発信の支援も行っています(出典:全国商工会連合会「支援内容を探す」)。
一方、対象国の言語や文化に合わせた発信や、継続的な改善が必要な広告運用は、インバウンド領域の実績がある民間の支援会社に任せたほうが成果につながりやすくなります。前述の検索サイトやマッチングサービスで複数社を比べましょう。
比べる際は、対象国での支援実績と成果をどの数字で測るかを必ず確認してください。費用相場は「インバウンドコンサルの依頼料金と選び方」でまとめています。
3. 相談の成果を上げる準備と進め方
相談前に整理しておく5項目(対象の国・予算・体制・現状の数字・期限)
相談の質は、持ち込む情報で大きく変わります。次の5項目をまとめておけば1回目から具体的な話ができます。
1つ目は対象の国・地域です。未定でも、来店が多い国籍や問い合わせの多い言語など手がかりを用意します。
2つ目は予算です。年間の上限や補助金を前提にするかで、提案される施策が変わります。
3つ目は体制です。外国語対応できるスタッフの有無や、SNS更新に割ける社内の工数を整理します。
4つ目は現状の数字です。訪日客の来店数や売上に占める割合、海外からのサイトアクセス数など、把握できる範囲で構いません。施策の効果を測る基準にもなります。
5つ目は期限です。繁忙期や補助金の公募締切から逆算して、いつまでに何を始めたいかを決めておきます。たとえば持続化補助金を使うなら、11〜12月の受付に間に合わせる必要があります。
無料相談から施策の実行につなげるまでの流れ
窓口の使い分けは、次の4段階で進めると無駄が少なくなります。
最初は情報収集です。JNTOの市場別情報などで対象国の候補を絞り、必要なら動向の説明を受けます。
次は課題と計画の整理です。商工会議所・商工会やよろず支援拠点で、インバウンド対応を自社の経営課題として事業計画に落とし込みます。補助金を使う場合は、この段階で制度と締切を確認します。
3つ目は依頼先の選定です。5項目を示して複数の支援会社から提案を受け、費用と内容、成果の測り方を比べます。
最後が実行と見直しです。小さく始めて数字を確認しながら広げるのが現実的で、成果が見えにくいときは再び無料の経営相談で第三者の意見を聞くのも有効です。
4. よくある質問(FAQ)
Q1. 訪日外国人向けマーケティングを無料で相談できる窓口はありますか?
あります。JNTOは自治体・企業等に訪日インバウンド旅行の動向を無料で説明しています。経営全般の相談なら、商工会議所・商工会は原則無料、よろず支援拠点は何度でも無料で利用できます。
Q2. JNTOに自社の集客戦略を相談できますか?
無料対応は東京の本部での動向の説明で、相談者の経営方針や市場調査、広告宣伝への関与は対象外です。施策や計画づくりの助言は有料メニューとして用意されています。
Q3. インバウンド対策の補助金はどこに相談すればよいですか?
制度ごとに異なります。小規模事業者持続化補助金は商工会議所・商工会、観光庁の補助事業は自治体やDMOとの連携が前提のものが多く、まず自治体の観光担当部署に、自治体独自の補助金は各自治体や観光財団が窓口です。
Q4. 商工会と商工会議所はどちらに相談すればよいですか?
事業所のある地域の組織に相談するのが基本です。商工会は主に平成の大合併以前の町村部を中心に設置され、小規模事業者の支援に力を入れています。
Q5. 民間の支援会社にはどの段階で相談すればよいですか?
対象国と予算がおおよそ固まり、多言語化やSNS、広告を実際に動かす段階が目安です。対象国での実績と成果の測り方を確認し、複数社を比べて選びましょう。
5. まとめ
訪日外国人向けマーケティングの相談先は、無料の公的機関と実務を担う民間の支援会社に分けて考えると整理しやすくなります。
市場の動向はJNTOで把握し、自社の戦略は経営相談の窓口か支援会社に、施策の実行は対象国での実績がある支援会社に相談します。
どの窓口でも、対象の国・予算・体制・現状の数字・期限の5項目をまとめてから相談すると話が早く進みます。関連記事は「訪日外国人向けマーケティング」の一覧からご覧ください。
6. 優良な海外進出サポート企業をご紹介
「Digima〜出島〜」には、厳正な審査を通過した優良な海外進出サポート企業が多数登録しています。
訪日外国人向けマーケティングは、対象国の選定から多言語化、SNSや広告の運用、効果測定までが一続きです。インバウンド領域に実績のある企業に相談することで、自社の業種と予算に合った進め方を早い段階で描けます。
「何から始めればよいか分からない」「どの支援会社に頼むか比べたい」といった段階のご相談でも構いません。無料でご相談いただけますので、お気軽にお問い合わせください。
参考文献
・日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2025年12月推計値)」(2026年1月)
https://www.jnto.go.jp/news/press/20260121_monthly.html
・日本政府観光局(JNTO)「地域へのインバウンドサポート受託事業」
https://www.jnto.go.jp/projects/regional-support/tariff.html
・日本政府観光局(JNTO)「訪日インバウンド市場別情報」
https://www.jnto.go.jp/statistics/market-info/
・日本政府観光局(JNTO)「インバウンド関連サービス検索サイト」
https://members.jnto.go.jp/matching/guest/index.php
・観光庁「組織・体制」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/soshiki/soshiki_taisei.html
・観光庁「観光地域づくり法人(DMO)とは」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/dmo/dmotoha.html
・観光庁「観光地域づくり法人(DMO)の登録一覧を更新しました(令和8年4月1日現在)」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/topics04_00080.html
・観光庁「令和8年度『オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業』」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/kobo08_00057.html
・日本商工会議所「経営相談」
https://www.jcci.or.jp/support/soudan/index.html
・全国商工会連合会「商工会とは」
https://www.shokokai.or.jp/about/chamber/organization.html
・全国商工会連合会「支援内容を探す」
https://www.shokokai.or.jp/about/chamber/support.html
・よろず支援拠点全国本部
https://yorozu.smrj.go.jp/
・中小企業庁 ミラサポplus「小規模事業者持続化補助金」
https://mirasapo-plus.go.jp/subsidy/jizokuka/
・東京観光財団「インバウンド対応力強化支援事業補助金」
https://www.tcvb.or.jp/jp/project/infra/welcome-foreigner/
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