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クリニックの訪日外国人マーケティング|旅行者の急病に対応して選ばれる医院になる方法

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旅行中に体調を崩した訪日外国人や在留外国人に選ばれるクリニックになるための実務を解説。医療通訳と翻訳ツールの使い分け、キャッシュレス決済による未払い防止、旅行保険の確認手順、Googleマップと公的リストを使った集患導線、自由診療の取り込み方までまとめました。

「訪日外国人の患者を受け入れるべきか」と考えるとき、多くの医療機関がまず思い浮かべるのは医療ツーリズムでしょう。しかし個人クリニックにとって現実的なのは、治療目的で来日する患者を海外から呼ぶことではありません。すでに日本にいる外国人に、地域の医院として選ばれることです。
観光庁の調査では、訪日旅行中に病気やけがをしたと答えた人は約4%で、そのうち約6割が風邪や発熱の症状でした(出典:観光庁「令和5年度 訪日外国人旅行者の医療に関する実態調査」)。つまり多くは、日常の診療範囲で対応できる患者です。
この記事では、旅行中の急病に対応できる体制の整え方から、見つけてもらうための集患導線、未払いを防ぐ実務までを解説します。

この記事でわかること

  • ・旅行中の急病対応と医療ツーリズムでは、準備すべきことが違う理由
  • ・医療通訳と翻訳ツールの使い分け、キャッシュレス決済による未払い防止
  • ・Googleマップ・宿泊施設・公的リストという3つの集患導線
  • ・未払いが起きたときの制度と、診療前に伝えておくべきこと

1. クリニックにとっての訪日外国人市場

訪日客の約4%が旅行中に体調を崩している

観光庁が国内5空港で実施した調査によると、訪日旅行中に病気やけがになったと回答した人の割合は約4%でした。症状の内訳を見ると約6割が風邪や発熱で、特殊な医療を必要とするケースばかりではありません(出典:観光庁「令和5年度 訪日外国人旅行者の医療に関する実態調査」)。
2025年の訪日外客数は4,268万人でしたから、単純計算でも相当数の旅行者が日本国内で医療機関を必要としていることになります。
ここで重要なのは、彼らが行き先を選べる立場にないという点です。旅先で体調を崩した人は、宿泊先の近くで、今日受診できて、言葉が通じそうな医院を短時間で探します。この探し方に対応できているかどうかが、そのまま受診数の差になります

「治療目的の渡航」と「旅行中の急病」は準備が違う

訪日外国人の医療というと医療ツーリズムが語られがちですが、両者は別物として設計する必要があります。
治療目的で来日する患者は、渡航前に医療渡航エージェントを通じて医療機関を選び、医療滞在ビザを取得し、費用の見積もりにも合意した上で来院します。準備期間は数ヶ月に及びます。
一方、旅行中に体調を崩した患者は事前の準備がまったくない状態で来院します。保険に入っているかもわからず、日本語も通じず、支払い手段も限られます。必要になるのは海外向けの営業活動ではなく、来院したその場で対応できる現場の手順です。治療目的の患者を呼び込む方法は医療ツーリズムの集客に関する記事で解説しています。

在留外国人の日常受診という第2の需要

見落とされやすいのが、日本に住んでいる外国人の存在です。出入国在留管理庁の統計によると、令和7年末時点の在留外国人数は412万5,395人で、前年末から9.5%増加し、初めて400万人を超えました(出典:出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」)。
在留外国人の多くは公的医療保険に加入しているため、支払いに関する不安は旅行者より小さく、継続的な通院も見込めます。留学生や技能実習生、その家族を含めれば、地域によっては無視できない規模です。
旅行者向けに整えた言語対応や案内表示は、そのまま在留外国人にも機能します。一度の投資で2つの需要に応えられると考えると、取り組む意味は大きくなります。

2. まず整えるべき受け入れ体制

言語対応は「医療通訳+翻訳ツール」の二段構え

語学が堪能なスタッフを雇うのは、小規模なクリニックには現実的ではありません。実務的なのは、場面によって手段を使い分ける方法です。
受付での案内や問診票の記入といった日常的なやり取りは、タブレットの翻訳アプリで十分対応できます。多言語の問診票をあらかじめ用意しておけば、さらに負担は減ります。
一方で症状の詳細な確認、検査結果の説明、治療方針の同意といった場面では、誤訳が医療事故につながりかねません。ここは電話やタブレットを介した遠隔の医療通訳サービスを使います。契約しておけば必要なときだけ呼び出せるため、常勤の通訳を置くより費用を抑えられます。どの場面で通訳を呼ぶかを院内で決めておくことが重要です。

支払い方法|キャッシュレス対応が未払いを防ぐ

未払いの原因は、支払う意思がないことよりも支払う手段がないことにある場合が少なくありません。手持ちの現金が足りず、クレジットカードも使えないとなれば、その場で回収できなくなります。
観光庁の調査では、民間医療保険に加入していない人に医療費が20万円程度かかった場合の支払い方法を尋ねたところ、7割が「自分が持っている現金・クレジットカードで支払う」と回答しています(出典:観光庁「令和5年度 訪日外国人旅行者の医療に関する実態調査」)。
裏を返せば、カード決済に対応していれば回収できるケースが多いということです。国際ブランドのクレジットカードへの対応は、外国人患者を受け入れる上での最低条件と考えてください。

旅行保険の確認手順と、未加入者への対応

訪日旅行者の民間医療保険の加入率は約73%です。未加入の理由としては、滞在日数が短いことや体力・健康に自信があることが多く挙げられています(出典:観光庁「令和5年度 訪日外国人旅行者の医療に関する実態調査」)。
受付時には、保険証券や保険会社のアシスタンス窓口の連絡先を確認します。保険会社によっては医療機関と直接やり取りしてキャッシュレスで精算できる場合があるため、患者本人ではなく保険会社に連絡を取るのが早道です
未加入の患者には、その場で全額を自己負担してもらう旨を診療前に伝えます。なお日本には入国後でもオンラインで加入できる訪日外国人向けの旅行保険があり、その存在を知らなかった人も多いことが調査で示されています。

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3. 見つけてもらうための集患導線

Googleマップと多言語のビジネスプロフィール

旅先で具合が悪くなった人は、まずスマートフォンの地図アプリで近くの医療機関を探します。したがってGoogleビジネスプロフィールの整備が、事実上の入口になります。
最低限やっておきたいのは、診療科目と診療時間を正確に登録すること、英語での説明文を追加すること、外観と入口の写真を載せることです。旅行者は建物を見つけられずに諦めることがあるため、写真の効果は想像以上にあります。
また、クレジットカードが使えること、英語での対応が可能な時間帯があることは、必ず記載してください。これらは受診をためらっている人の背中を押す情報です。口コミへの返信を英語でも行っておくと、対応力の証明になります。

ホテル・旅館・旅行業者との連携

旅行者が体調を崩したとき、最初に相談する相手は宿泊先のフロントです。宿泊施設側は近隣で外国人に対応できる医療機関を把握しておきたいと考えているため、この関係は双方にとって利点があります
具体的には、近隣のホテルや旅館に、対応可能な言語・診療時間・支払い方法をまとめた1枚の案内を渡しておきます。フロントが判断に迷わない形にしておくことが肝心で、内容は簡潔なほど使われます。
あわせて、地域の観光協会や旅行業者とも接点を持っておくと、団体客のトラブル時に相談が来るようになります。営業活動というより、地域の受け入れ体制の一部として登録されておく感覚に近いものです。

公的な受入医療機関リストへの掲載

訪日外国人向けには、日本政府観光局(JNTO)が医療機関を検索できるサイトを公開しており、旅行者向けの案内でも紹介されています。掲載されている情報は、都道府県が選定し国が取りまとめている外国人患者の受け入れ体制がある医療機関の情報がもとになっています。
掲載を希望する場合は、自院が所在する都道府県の担当窓口に問い合わせるのが確実です。要件や手続きは自治体によって異なります。
このほか、外国人患者の受け入れ体制を評価する認証制度もあります。取得には相応の準備が必要ですが、対外的な信頼の証明になるほか、院内の体制を点検する機会にもなります。まずは自治体のリストへの掲載から検討するとよいでしょう。

4. 自由診療で来訪需要を取り込む

観光のついでに受診される診療領域

急病対応とは別に、旅行日程の中に組み込まれる形で受診される領域があります。代表的なのは美容医療、歯科の審美治療、人間ドックや健診です。これらは緊急性がないぶん、渡航前に調べて予約されるという特徴があります
この層に届くには、施術内容と価格、所要時間、当日の流れを多言語で公開しておくことが前提になります。旅行者は日程が限られているため、1回の来院で完結するかどうかを重視します。
ただし、この領域は医療ツーリズムに近く、集患には海外向けの発信が必要になります。急病対応の体制が整ってから次の段階として取り組む方が、無理がありません。

価格の事前提示と決済の設計

自由診療で最も多いトラブルは、費用に関する認識の食い違いです。公的医療保険が使えない患者の診療費は医療機関が設定できますが、提示していなかった費用を後から請求する形は、確実に信頼を損ないます
基本の施術費に加えて、通訳の手配料、診断書などの書類作成料、時間外の対応料といった追加費用が発生しうるなら、その項目と金額をあらかじめ一覧にしておきます。金額を明示できないものは、算定の考え方を説明できるようにしておいてください。
予約時に一部を前払いしてもらう設計にすれば、無断キャンセルの防止にもなります。旅行日程の変更は起こりやすいため、キャンセル規定も同時に示しておきます。

5. トラブルを防ぐ実務

未払い対策と、入管庁への情報提供の仕組み

厚生労働省は、訪日外国人の受診者について一定額以上の医療費未払い情報を医療機関から収集し、出入国在留管理庁に提供する仕組みを運用しています。提供された情報は、その外国人が次に入国しようとする際の審査などで活用されます(出典:厚生労働省「訪日外国人受診者による医療費不払い防止のための支援資料の紹介及び不払い情報報告システムへの協力の御願いについて」)。
実務上重要なのは、この仕組みの存在を診療前に患者へ伝えておくことです。未払いが生じた場合に情報が提供されうると理解してもらうことは、それ自体が抑止力として働きます。
あわせて、高額になりそうな診療では概算を先に示し、必要に応じて預り金を求める運用も検討してください。

診療前の説明・同意と、文化や宗教への配慮

説明と同意は、言葉が通じにくい相手ほど丁寧に行う必要があります。口頭だけで済ませず、多言語の同意書を用意し、署名を得る形にしておくと後の行き違いを防げます。
配慮が必要な場面もあります。同性の医療者による診察を希望する患者、宗教上の理由で特定の成分を含む薬剤を避けたい患者、断食の期間中で服薬の時間を調整したい患者などです。すべてに応じる必要はありませんが、対応できることとできないことを事前に伝えられる状態にしておくことが信頼につながります。
なお医師には正当な事由がなければ診療を拒めない応召義務があり、外国人であることのみを理由とした診療拒否は適切ではないとされています。

6. よくある質問(FAQ)

Q1. 小規模なクリニックでも訪日外国人の受け入れは可能ですか?

可能です。旅行中の受診は風邪や発熱など一般的な症状が約6割を占めるため、日常の診療範囲で対応できるケースが大半です。まずは支払い方法と言語対応の手順を決めることから始めてください。

Q2. 医療通訳はどう手配すればよいですか?

電話やタブレットを使った遠隔通訳サービスを契約する方法が現実的です。日常会話は翻訳アプリで対応し、症状の確認や治療方針の説明など誤訳が許されない場面で通訳を使う、という二段構えが実務的です。

Q3. 医療費を払ってもらえない場合はどうなりますか?

厚生労働省は一定額以上の医療費未払い情報を医療機関から集め、出入国在留管理庁に提供する仕組みを運用しています。未払いが生じた場合に情報が提供されうることを、診療前に患者へ説明しておくことが推奨されています。

Q4. 外国人であることを理由に診療を断ることはできますか?

医師には正当な事由がなければ診療を拒めない応召義務があり、外国人であることのみを理由とした診療拒否は適切ではないとされています。断るのではなく、対応できる範囲を明確にして体制を整えることが現実的です。

Q5. 外国人患者向けの料金は自由に設定できますか?

公的医療保険が使えない自由診療では、医療機関が価格を設定できます。ただし通訳や書類作成にかかる実費を根拠とせず不当に高額とすることは信頼を損なうため、算定根拠を説明できる形にしておく必要があります。

7. まとめ

クリニックにとっての訪日外国人対応は、海外に向けて患者を募集することではありません。すでに日本にいる人に、今日受診できる医院として見つけてもらうことが中心です。旅行中に体調を崩す訪日客は約4%、うち6割は風邪や発熱であり、日常の診療で対応できる範囲に収まります。
優先順位をつけるなら、まず支払い手段の整備です。クレジットカード決済に対応するだけで、未払いのリスクは大きく下がります。次に言語対応の手順を決め、Googleビジネスプロフィールを多言語で整えます。ここまでが最初の一歩です。
そのうえで宿泊施設との連携や公的リストへの掲載に進めば、旅行者が困ったときに名前が挙がる医院になります。在留外国人が400万人を超えた今、この体制は一時的な対応ではなく、地域医療の日常的な備えとしての意味を持ちはじめています。

8. 優良な海外進出サポート企業をご紹介

「Digima〜出島〜」には、厳正な審査を通過した優良な海外進出サポート企業が多数登録しています。

外国人患者の受け入れ体制づくりは、医療通訳の手配、多言語の問診票や同意書の整備、決済手段の導入、海外向けの情報発信と、性質の異なる作業が同時に必要になります。多言語対応やインバウンド領域に実績のある企業に相談することで、自院の規模と診療科目に合った優先順位を無駄なく決められます。
「何から着手すべきか」「自院の体制で受け入れられるのか」といった段階のご相談でも構いません。無料でご相談いただけますので、お気軽にお問い合わせください。

参考文献

・観光庁「令和5年度 訪日外国人旅行者の医療に関する実態調査」(2024年6月)
 https://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_00002.html
・厚生労働省「訪日外国人受診者による医療費不払い防止のための支援資料の紹介及び不払い情報報告システムへの協力の御願いについて」
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202921_00012.html
・出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」(2026年)
 https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00062.html
・厚生労働省「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」
 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000601513.pdf
・日本政府観光局(JNTO)「具合が悪くなったとき」
 https://www.jnto.go.jp/emergency/jpn/mi_guide.html

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