ものづくり補助金「グローバル枠」の直近回(20~22次)採択案件傾向分析
海外展開を検討している中小企業にとって、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以下「ものづくり補助金」とします)の「グローバル枠」は、事業を加速するための有力な選択肢の一つです。
「海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組み」を支援するグローバル枠は、海外への直接投資、海外市場開拓(輸出)、インバウンド対応、海外企業との共同事業など、海外需要の獲得を目的とした設備投資・システム投資を支援します。本枠の補助上限額は最大3,000万円(特例適用時は4,000万円)、補助率上限1/2~2/3と、非常に魅力的です。
しかし、直近の採択結果を見ると、グローバル枠は応募件数が少ない上に、採択率は通常枠に相当する「製品・サービス高付加価値化枠」よりかなり低い傾向にあります。
この記事では、直近3回(20~22次)のものづくり補助金グローバル枠での採択傾向を分析し、採択されるためのポイントを徹底的に解説します。
▼ ものづくり補助金「グローバル枠」の直近回(20~22次)採択案件傾向分析
グローバル枠は「狭き門」:少ない応募者数と低い採択率
まず、グローバル枠の応募と採択の現状から解説します。
中小企業庁およびものづくり補助金事務局が公表している採択結果によると、第20次から第22次までのものづくり補助金での各枠の申請数・採択数は下表に示す通りです。
(表:ものづくり補助金製品・サービス高付加価値枠とグローバル枠の申請数、採択者数、採択率の比較(当社作成))
第20次は申請2,453者のうちグローバル枠が177者、採択は41者でした。第21次はグローバル枠105者の申請に対して23者の採択、第22次は101者の申請に対して27者の採択です。
直近3回を合算すると、通常枠に相当する製品・サービス高付加価値化枠の採択率は約35.6%であるのに対し、本枠は約23.8%にとどまります。つまり、グローバル枠は応募に至る案件数も少ない上、採択率も低い、難易度が高い「狭き門」の枠であるといえます
難易度分析:なぜグローバル枠は応募と採択が難しいのか
グローバル枠が難しい理由は、単に「海外」というテーマがあるからではありません。通常の設備投資計画に加えて、海外市場の選定、現地ニーズ、販売チャネル、競合、価格、規制、物流、商流、実行体制まで説明する必要があるからです。
そもそも応募できない!?~複雑で厳しい「応募要件」
グローバル枠への申請要件は、通常枠と共通の基本要件に加えて、類型ごとに追加の要件が課されます。特に輸出の場合は「製品等の最終販売先の2分の1以上が海外顧客となり、事業計画期間中の補助事業の売上累計額が補助額を上回る事業計画」を立てる必要があるなど、追加要件の内容が複雑で厳しいのが特徴です。
このような要件に対応しきれず、グローバル枠への申請をあきらめた事業者は少なくないものと思われます。
事業計画作成も大変~事業計画書作成の難易度の高さ
通常枠であれば、設備導入による生産性向上や新製品・新サービスの開発を中心に計画を組み立てることができます。
しかし、グローバル枠では、仮に応募要件がクリアできたとしても、「その商品・サービスが海外で本当に売れるのか」「どの国の、どの顧客に、どのように販売するのか」まで、具体的な事業計画書の策定が問われます。
しかも、応募申請時に、事前のマーケティング調査に基づく、想定顧客が具体的に分かる「海外市場調査報告書」(海外市場開拓(輸出)に関する事業)や、「インバウンド市場調査報告書」(インバウンド対応に関する事業)の提出も求められます。
グローバル枠への応募は「海外事業設計」、だから難しい
ここまでを一旦まとめましょう。
グローバル枠では「良い機械を入れて、良い商品を作る」計画を作るだけでは不十分です。海外で売れるビジネスモデルとして成立しているかが問われます。それを裏付けられる十分なエビデンスを集め、的確な事業計画を策定することが求められているのです。
グローバル枠は単なる補助金申請ではありません。グローバル枠は「海外事業設計」です。この設計の巧拙と裏付けが採択の重要なポイントだと言えます。
ここから先は、皆様が気になっている採択案件の傾向について、具体的に見ていきたいと思います。続けてお読みください。
傾向分析:採択されている案件のポイントは?
この記事では、ものづくり補助金事務局が公表している、第20次、第21次、第22次の採択者リストをもとに、受付番号に「G」が含まれる案件をグローバル枠の採択案件と推定し、事業計画名から読み取れる傾向を整理しました。
※なお、本分析は公開されている「事業計画名」からの推測であり、実際の申請書本文や審査内容までは確認できないため、業種分類や海外展開の類型には一定の推測を含みます。あらかじめご了承ください。
全体的傾向は「海外需要の取り込み」と「テクノロジーの活用」
目立つ分野は、食品・農水産品、酒類、日本茶・抹茶、伝統工芸、地域産品、部品加工、機械装置、IT・サービス、インバウンド対応などです。全体を通じて見える傾向としては、明確な海外需要の取り込みと、日本の文化とテクノロジーを融合した取り組みが採択事例が多い傾向にあります。具体的に見ていきましょう。
① 明確な海外需要の取り込み
例えば、海外で需要が年々高まっている抹茶や酒類関連は採択率が高いです。採択事例としては
【抹茶関連】
- 製造ラインの導入
- 加工場整備と海外展開
- 石臼挽き抹茶の開発と製造
【酒類関連】
- 生酛生酒リキュールの品質強化
- 清酒事業の再構築と輸出拡大
など、多数の採択案件が確認できます。
② 日本の文化×テクノロジー
日本の伝統的・文化的な資産の価値を、テクノロジーで底上げし、世界へ発信し、販路開拓につなげていこうという取り組みも目立ちます。採択事例としては
- 和楽器の魅力をグローバルにDXでプラットフォーム
- 寺社文化財のデータをデジタル保存して国際活用
- AI活用による盆栽文化の継承
- 伝統暖簾を欧州でECで展開
- 漫画作品の海外プラットフォーム構築
など、伝統的な産業に関するものや、サブカルチャー的な取り組みも採択されています。
重要なのは「採択後」:食品系は採択されやすいが、しかし・・・
海外需要の取り込みという観点からは、食品関連の案件は採択数が多い傾向です。しかし、採択後を考えないと、後で経営を圧迫する危険性もありそうです。具体的に詳しく見ていきましょう。
採択事例の多い、食品関連案件
グローバル枠と相性がよい分野の一つが食品関連の分野です。
具体的には、日本茶、抹茶、清酒、水産加工品、冷凍食品、畜産加工品、菓子、地域特産品などは、海外市場での需要を説明しやすく、設備投資との関連性も明確にしやすい分野です。
農林水産省と経済産業省は日本からの食品輸出を強く推進していることからも、審査では政策面で高い評価を受けやすく、追い風になっているともいえるでしょう。
採択事例としては、
- 海外需要に対応するための増産体制構築
- 地域の銘柄牛の高付加価値化と販路開拓
- 製造・冷凍冷蔵設備の強化
- 輸出先の規格や安全基準への対応、
- 小ロット対応、現地バイヤー向けの商品仕様変更
などがあります。
重要なのは「採択後」、継続的に要件達成できるか冷静に見極めが必要
ただし、ここで注意すべき点があります。ものづくり補助金は「採択されれば終わり」の制度ではありません。
第23次の公募要領では、補助事業終了後3〜5年の事業計画期間において、
「事業者全体の付加価値額を年平均成長率3.0%以上」
「従業員1人あたり給与支給総額を年平均成長率3.5%以上増加させること」
「事業所内最低賃金を毎年、地域別最低賃金より30円以上高い水準にすること」
を基本要件としています。
特に賃金の増加要件や事業所内最低賃金水準要件については、未達の場合に補助金返還を求められる可能性があり、グローバル枠の活用には慎重な検討が必要です。
食品業界では、円安と燃料不足、国際情勢の不安定化、日中の対立等で、原材料費、エネルギー費、物流費、人件費の上昇が続く一方で、取引先や消費者への十分な価格転嫁ができていないケースも少なくありません。また、労働生産性も他産業と比べて低く、賃上げ余力のある事業者は限られます。
仮に「日本食ブーム」という時代の波に乗って採択されても、販路開拓が思ったようにうまくいかずに経営悪化、賃上げできずに返納、導入した設備は遊休化・・・といった事態に陥れば、補助金事業が経営の足を引っ張る危険性もあります。
つまり、食品・農水産系の事業者がグローバル枠を活用する場合、単に「海外向け商品を作る」「冷凍設備を入れる」だけでは不十分です。
海外で確実に売れるのか、適正な価格で売り続けられるのか、その仕組みはどうか、海外取引特有のコスト(輸送費・関税・商社マージン・現地流通コスト等)を差し引いても利益が残るのか等、補助金採択後を見据えた、中長期の事業設計を、事前に慎重に検証する必要があります。
製造業・サービス:「海外で売れる根拠」が問われる
製造業は幅広い業種業態で採択されている
製造業では、部品加工、機械装置、自動車関連部品、半導体関連部品、素材、検査装置など、多くの分野で採択実績が見られます。これらの案件では、
- 海外仕様や規格、認証への対応
- 生産基盤構築による海外需要対応
- 海外生産体制構築
- 海外販路拡大
といった取り組みで、採択事例が多く見られます。
サービス関連は、インバウンド対応に注目
また、サービス関連では、インバウンドや多言語対応に関する案件も注目されます。具体的なジャンルでは、観光、医療、交通、地域体験、等の分野で採択事例がみられ
事業計画では多言語化、オンラインサービス、プラットフォーム開発などが採択されれています。
採択事例としては
- 多言語対応のオンライン注文住宅プラットフォーム
- インバウンド医療向けのソフトウェア
- 訪日客向けのプラットフォーム開発
等が上げられます。
いずれの分野でも共通するのは、設備投資と海外売上の因果関係を明確にすることです。どの国・地域を狙うのか、誰が顧客になるのか、なぜ競合に勝てるのか、どのような販路で販売するのか等、海外で勝てる道筋を具体的に示す必要があります。
まとめ:グローバル枠は「補助金申請」ではなく「海外事業設計」である
グローバル枠の採択を目指す上で重要なのは、小手先のテクニックで、申請書の体裁を整えることではありません。入念な市場調査を行い、海外市場で売れる商品・価格・販路・収益モデルを設計し、その実現に必要な投資として補助事業を位置づけることです。
特に、採択率が通常枠より低いこと、賃上げ・付加価値額向上の要件があること、未達時には返還リスクがあることを考えると、グローバル枠は自力だけで準備するには難易度の高い制度です。
海外展開を考えているが対象国や販路が曖昧な企業、輸出経験が少ない企業、設備投資と海外売上の関係をうまく説明できない企業は、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。
ものづくり補助金のグローバル枠は、海外展開を加速させる大きなチャンスです。しかし、リスクも大きいのが現実です。チャンスを活かし、リスクを回避するためには、「採択される『補助金申請』」だけでなく、「採択後に売れ続ける『海外事業設計』」が必要です。
自社の商品・技術・サービスが、どの国の、どの顧客に、どのような価値を提供できるのか。まずはそこから整理してみてはいかがでしょうか。
ものづくり補助金「グローバル枠」の申請支援ならサウスポイントへご相談ください
ものづくり補助金「グローバル枠」の申請支援なら、当社サウスポイントへお任せください。
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具体的にものづくり補助金グローバル枠の活用をご検討の方には
- ものづくり補助金の採択可能性診断+事業計画アドバイス
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- 採択後の実行支援と報告書、精算業務支援
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一例として
- 「自社の事業がグローバル枠に合うのか知りたい」
⇒ 低額でできる補助金事業診断サービス
- 「海外事業が成功するかどうか、市場調査をしたい」
⇒ 海外在住のエキスパートへの聞き取り調査
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など、申請までのサポートも提供しています。
もちろん「海外展開の計画を、採択率の高い補助金申請に落とし込みたい」という要望にも対応しています。
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