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商社のビジネスモデルは手数料から事業投資へ|中小製造業の2割が行う間接輸出と、海外の販売経路の決め方【2026年最新】

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商社のビジネスモデル(トレードと事業投資)を2026年3月期決算で確認し、中小企業が行う間接輸出と直接輸出の違い、販売店と代理店の違い、海外進出白書の相談データを、一次データで整理します。商流マップ・販売経路の比較表・販売パートナーの確認表の3つの表の書き方を、モデルケースの記入例と4週間の進め方つきで解説します。

「自社の商品は、海外でいくらで売られていますか」。この質問に、すぐ答えられるでしょうか。国内の商社や卸売業者を通して輸出している場合、海外での販売価格、販売している国、販売している企業が分からなければ、海外での販売は取引先に任せたままになっています。

中小企業庁『2025年版 中小企業白書』によると、製造業の中小企業(回答数5,713)のうち、国内の商社や卸売業者を通す間接輸出を実施している企業は20.1%で、自社の名義で通関する直接輸出の12.3%より多くなっています。輸出している製造業の中小企業では、商社に販売を任せる形のほうが多いということです。

では、商社とはどのような企業で、何から利益を得ているのでしょうか。三井物産と三菱商事の2026年3月期の決算では、2社とも、決算の持分法による投資損益(出資先の利益のうち自社の持分にあたる金額)が1年間に4,000億円を超えていました。売買をつなぐ手数料だけで稼いでいる企業ではありません。

本記事では、この決算で商社の利益の中身を確認したうえで、間接輸出と直接輸出の違いを、モデルケースのやりとりに沿って説明します。後半では、商流マップ・販売経路の比較表・販売パートナーの確認表の3つの表を自社の内容で書き、海外での販売経路の案を作る手順を、4週間の進め方つきで解説します。

この記事でわかること

  • ・総合商社の利益の中身(三井物産・三菱商事の2026年3月期決算)と、トレード・事業投資の違い
  • ・間接輸出と直接輸出の違い、中小企業の実施割合(中小企業白書)、販売店と代理店の違い
  • ・海外進出白書で見る販売パートナー探しの実態(相談の首位は海外販路拡大の22.9%)
  • ・商流マップ・販売経路の比較表・販売パートナーの確認表の書き方と、モデルケースの記入例

1. 商社のビジネスモデル|トレードと事業投資(2026年3月期決算)

三井物産・三菱商事の2026年3月期の当期利益と持分法による投資損益の比較(持分法はどちらも4,000億円超)
図:総合商社2社は、持分法による投資損益が年4,000億円を超えている

商社は何から利益を得ているのかを、2026年3月期の決算の数字で確認します。そのうえで、売買をつなぐトレードと、出資して経営に関わる事業投資の違い、中小企業が輸出で取引する商社の種類を、順に見ていきます。

トレード|売り手と買い手をつないで手数料を得る基本の事業

商社とは、商品を作る企業と、商品を買う企業のあいだに入って、売買を成立させる企業です。その中で、エネルギーから食料まで幅広い分野の商品を扱う大手の商社を、総合商社と呼びます。三菱商事や三井物産が、これにあたります。

一般社団法人日本貿易会『商社ハンドブック2022』は、商社の伝統的な事業を、世界中の情報網・物流網・資金力を使って、顧客の代わりに売り先や買い先を探し出してつなぎ、手数料(口銭)を得る事業と説明しています。この売買の事業を、トレードと呼びます。

出典:一般社団法人日本貿易会『商社ハンドブック2022』(2022年9月)

決算|三井物産・三菱商事の持分法による投資損益は、どちらも4,000億円超

2026年5月に発表された2026年3月期の決算を見ます。三井物産の1年間の最終的な利益(親会社の所有者に帰属する当期利益)は8,340億円でした。決算書には持分法による投資損益という項目があり、三井物産は4,474億円です。

これは、商社が出資している企業の利益のうち、出資の割合に応じて商社の利益として計上される金額です。この4,474億円は、出資先から実際に受け取った配当の金額とは別のものです。同じ1年間に、三井物産が持分法を適用している企業から受け取った配当は3,703億円でした。

三菱商事も同じです。最終的な利益は8,005億円で、持分法による投資損益は4,679億円でした。どちらの企業も、持分法による投資損益が1年間に4,000億円を超えています。

商品の売買をつなぐ事業に加えて、出資先の事業の成績が、商社の利益に大きく関わっています。数値は決算短信の開示時点のものです。

出典:三井物産「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年5月)

出典:三菱商事「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年5月)

事業投資|出資して経営に関わり、手数料に加えて工賃と配当を得る

企業や事業に出資し、その経営に関わって利益を得ることを、事業投資と呼びます。トレードとの違いを、商社ハンドブック2022は牛肉の輸入を例に説明しています。

トレードの場合、商社が行うのは、牛肉の生産者と、牛肉を買う加工業者や外食産業とをつなぐことです。牛を育てるのも、肉を加工するのも、別の企業です。商社の利益は、売買をつないだ手数料です。

事業投資の場合は、商社が牧場の経営に投資し、さらに食肉の加工場にも投資して、買う側の希望に合わせて牛肉を加工します。この場合の商社の利益は、手数料に加えて、加工の工賃と、投資した事業からの配当です。

違いは、他の企業の商品をつなぐだけなのか、生産や加工の経営にも関わるのか、という点にあります。

中小企業が輸出で取引する商社の種類|輸出商社・卸売業者

ここまでは総合商社の話でした。ただし、商社は総合商社だけではありません。商社ハンドブック2022でも、商社は総合商社、専門商社、販売代理店、問屋など多岐にわたる、と説明しています。

中小企業が海外に商品を売るときに取引する商社は、総合商社とは限りません。国が中小企業の輸出を支援する新規輸出1万者支援プログラムでは、国内の輸出商社との個別商談会を開いています。ジェトロのガイドブックによると、商品の海外販売や貿易の実務は、この輸出商社が担います。

そこで本記事でこのあと「商社」と言うときは、総合商社に限らず、国内で商品を仕入れて海外に販売する商社や卸売業者を指します。

出典:ジェトロ「新規輸出1万者支援プログラム ガイドブック」(閲覧:2026年10月)

2. 間接輸出と直接輸出の違い|契約の相手・通関・買い手との接点

海外に商品を売る方法は、大きく間接輸出と直接輸出の2つに分かれます。誰と契約し、誰が通関の手続きを行い、誰が海外の買い手と話をするのかを、モデルケースの株式会社デジマ食品(だしパックを作る食品メーカー)で比べます。

間接輸出|国内の輸出商社に販売し、海外への販売と通関を任せる形

間接輸出とは、国内の商社や卸売業者、輸出代理店などを通して行う輸出です。デジマ食品が国内の輸出商社と取引する場合、デジマ食品は輸出商社に商品を販売します。海外の買い手を探して販売するのも、輸出するときに税関に申告して許可を受ける手続き(通関)を行うのも、輸出商社です。

ジェトロのガイドブックは、輸出商社との取引について、商品の海外販売や貿易の実務は輸出商社が担うため、実質的に国内取引で完結する仕組み、と説明しています。デジマ食品から見ると、取引の相手は国内の企業だけです。

直接輸出|海外の買い手の探索・契約・通関を自社で行う形

直接輸出とは、自社の名義で通関の手続きを行う輸出です。デジマ食品がシンガポールの食品の輸入業者に直接販売する場合は、まず輸入業者を自社で探し、価格・数量・納期・支払いの条件を直接交渉して、契約を結びます。そして、自社の名義で通関の手続きを行い、商品を発送します。代金は、海外の輸入業者から自社が受け取ります。

通関の手続きや輸送の作業は、専門の業者に依頼することもできます。ただし、海外の買い手を探すこと、条件を交渉すること、代金を回収することは、自社の仕事になります。

比較表|間接輸出と直接輸出の3つの違い

比較軸 間接輸出 直接輸出
1. 契約の相手 国内の商社・卸売業者 海外の買い手(輸入業者など)
2. 通関の手続きを行う企業 商社が行う 自社の名義で行う(専門業者への依頼も可)
3. 海外の買い手との接点 海外の買い手と話をするのは商社 自社が海外の買い手と直接やりとりする
自社の負担 小さい 大きい(買い手探し・交渉・代金回収)

※モデルケースの説明を表にまとめたものです。

表の1行目は契約の相手です。間接輸出は国内の商社や卸売業者と契約し、直接輸出は海外の輸入業者などと契約します。2行目の通関の手続きは、間接輸出なら商社が行い、直接輸出なら自社の名義で行います。

専門業者に依頼することもできます。3行目の海外の買い手との接点は、間接輸出では商社が持ち、直接輸出では自社が持ちます。そのぶん、直接輸出は買い手探し・交渉・代金回収が自社の負担になります。

選び方|自社の体制に合わせた使い分け

間接輸出は、自社の負担が小さい方法です。直接輸出は、負担が大きいかわりに、海外の買い手の声が自社に直接届きます。どちらが正しいということではなく、自社の体制に合わせて選ぶものです。

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3. 中小企業の輸出の実施状況|製造業は間接輸出20.1%・直接輸出12.3%

中小企業の輸出の実施状況(全体n=24,588と製造業n=5,713)。製造業は間接輸出20.1%が直接輸出12.3%を上回る
図:製造業の中小企業は、間接輸出が直接輸出より多い

日本の中小企業は、どちらの方法を選んでいるのでしょうか。中小企業庁『2025年版 中小企業白書』の調査で、全体と製造業の実施状況を確認します。そのうえで、間接輸出のメリットと注意点、商社との取引条件の決め方を整理します。

全体|輸出を実施したことがない企業の割合(82.4%)

この調査(帝国データバンク「令和6年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」、回答数24,588)では、直接輸出を実施している企業が5.9%、間接輸出を実施している企業が8.1%、輸出していたが今はしていない企業が3.7%でした。そして、実施したことがないと答えた企業が82.4%です。中小企業の8割以上は、輸出を実施したことがありません。

出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書」第2部第2章第3節(2025年)

製造業|間接輸出20.1%が直接輸出12.3%を上回る

製造業の中小企業(回答数5,713)に限ると、直接輸出を実施している企業は12.3%、間接輸出を実施している企業は20.1%でした。この調査では、直接輸出と間接輸出の両方に取り組んでいる企業は、売上高が大きいほうで集計されています。

つまり、製造業の中小企業の5社に1社は、国内の商社や卸売業者を通す輸出が中心です。商品を作る中小企業が海外に売る場合、自社で直接売るよりも、国内の取引先を通す形のほうが多い、ということになります。

間接輸出のメリット|貿易の経験がない企業でも始めやすい

海外の買い手を探す、外国語で交渉する、通関の手続きを行う。こうした仕事を自社で行わなくてよいため、間接輸出は始めやすい方法です。国の支援でも選択肢として示されており、新規輸出1万者支援プログラムでは、直接輸出に取り組むことが難しい中小企業に、国内の輸出商社や越境ECなどを通じた間接輸出を提案しています。越境ECとは、インターネットの通信販売で海外の顧客に販売することです。

このプログラムには、2024年11月の時点で2万者を超える事業者が登録し、そのうち2,800者を超える事業者が輸出を実現しています。

出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書」第1部第1章第2節(2025年)

間接輸出の注意点|海外での販売価格や販売先の情報が入りにくい

間接輸出では、海外の買い手と話をするのは商社です。自社は海外の買い手と直接の取引がないため、海外でいくらで売られているのか、どの店に並んでいるのか、買った人がどう評価しているのかといった情報は、自社に入りにくくなります。日本政策金融公庫によると、商社の海外での販売先などの情報は開示してもらえないことが多いようで、その場合は、現地の販売先や、商品を使う人の評価を得るのが難しくなります。農林水産省の北陸農政局の資料も、間接輸出のデメリットとして、直接の情報が届きにくく、売れ行きや販売の動向が見えにくいことを挙げています。

情報がないと、判断の材料が不足します。原材料の価格が上がって値上げをしたいとき、海外での販売価格を知らなければ、どこまで値上げできるのかを検討できません。売れている国が分からなければ、次にどの国に広げるかを決める根拠もありません。

出典:日本政策金融公庫「輸出コラム・第3回『輸出の方法』」(令和7年11月)

出典:農林水産省 北陸農政局『「輸出」基礎の基礎』(2022年11月改訂)

取引条件の決め方|書き出す・共有の範囲を入れる・任せる範囲を決める

対処の手順は3つです。ただし、取引の進め方は企業によって異なります。1つ目は、取引を書き出すことです。

自社の商品が、どの企業を通って、最終的に誰に届くのかを、分かる範囲で書きます(このあとの「5. 商流マップの書き方」で実際に書きます)。2つ目は、情報を共有してもらう範囲を、商社との取引条件に入れることです。日本政策金融公庫によると、品質についてのクレームなどの連絡を受けることや、現地の展示会への出張に自社が関わることを、商社との取引条件に入れる方法があります。

これから商社と取引を始める企業は、商談の段階で、販売する国、販売先の種類、販売の状況をどこまで共有してもらえるかを確認してください。販売先の種類とは、小売店なのか、飲食店なのか、現地の卸売業者なのか、ということです。すでに商社を通して輸出している企業は、同じ内容を取引先の商社に相談します。3つ目は、商社に任せる範囲と自社で把握する範囲を決めることです。

すべてを自社で行う必要はありません。貿易の手続きは任せ、販売の状況は定期的に共有してもらう、という決め方もできます。

輸出を続けた企業の売上高|2013〜2022年度の比較

同じ白書に、輸出を続けた企業と輸出をしていない企業の売上高を比べた調査があります。2013年度を100とすると、2013〜2022年度まで継続して直接輸出を実施している企業(回答数1,890)は2022年度に128.0、同じ期間に一切実施していない企業(回答数7,449)は110.8でした。白書は、他の要素を排除しきれないため一概にはいえないと断ったうえで、輸出の実施が成長につながる可能性が示唆される、としています。

出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書」第2部第2章第3節(2025年)

4. 販売パートナー探しの実態|海外進出白書の相談・アンケート結果

間接輸出でも直接輸出でも、海外で商品を売ってくれる相手が必要です。Digima〜出島〜が毎年発行する海外進出白書(2025-2026年版)のデータで、相談の内容と、企業が挙げた課題を確認します。そのうえで、販売パートナーの種類と、販売店と代理店の違いを整理します。

相談データ|海外販路拡大が22.9%で首位(2025年度・4,218件)

2025年度にDigima〜出島〜へ寄せられた海外ビジネスの相談は4,218件でした。相談内容で最も多かったのは海外販路拡大(営業代行・販売代理店探し)の22.9%です。2番目は、輸出入・貿易・通関の10.3%でした。

海外販路拡大の相談を業種別に見ると、卸売・小売業が41%、製造業が26%で、商品を売る企業からの相談が合わせて67%を占めています。

出典:Digima〜出島〜「海外進出白書(2025-2026年版)」

アンケート|課題の最多は現地パートナー探しの57.0%

海外進出白書では、自社の海外ビジネス展開を検討したことのある担当者193名にアンケートも行っています。海外展開における課題で最も多かった回答は、現地パートナー探しの57.0%でした。現地パートナーとは、進出先の国で自社の事業に協力してくれる企業のことです。2番目は情報収集の46.6%、3番目は現地調査の実施の34.7%でした。

海外事業を3年以上続けている企業に限ると、現地パートナー探しを挙げた割合は63.5%で、全体より高くなります。海外事業を続けている企業にとっても、パートナーを探すことが課題になっています。

販売パートナーの種類|国内の輸出商社・現地の販売店・現地の代理店

本記事では、自社の商品を海外で販売してくれる企業を、販売パートナーと呼びます。販売パートナーには、国内の輸出商社、現地の販売店、現地の代理店があります。間接輸出なら海外で商品を売るのは国内の商社で、直接輸出なら現地の輸入業者や販売店です。どちらの方法でも販売パートナーが必要になります。

販売店と代理店の違い|売買契約の当事者になるかどうか

ジェトロの貿易・投資相談Q&Aは、販売店(ディストリビューター)と代理店(エージェント)の違いを次のように説明しています。

比較軸 販売店(ディストリビューター) 代理店(エージェント)
売買契約の当事者 なる(自社から商品を買い取る) ならない(自社の代理として販売を広げる)
現地での販売価格 販売店が自由に決める —
商品と代金の流れ 自社から買い取った商品を、現地の顧客に販売する 商品は自社から顧客へ直接送り、代金も顧客から自社へ直接支払われる
代金の回収 販売店が責任を負う 回収できないときの損失は自社が負担する
受け取るもの 自社から買った商品を売った差額 実績に応じた手数料

日本でいう販売代理店や特約店という名称だけでは、どちらなのかを区別できません。契約を結ぶときは、相手が商品を買い取るのかどうかを最初に確認してください。

出典:ジェトロ 貿易・投資相談Q&A「代理店契約と販売店契約の相違点:日本」(2025年8月更新)

販路拡大の方法|販売代理店・パートナーへの委託が57.5%

海外進出白書のアンケートで、実際に販売先を増やした方法として最も多かったのは、販売代理店やパートナーへの委託で、全体の57.5%(海外事業を3年以上続けている企業では60.8%)でした。2番目は現地法人や営業拠点の設立で、全体32.6%、3年以上続けている企業39.2%です。越境ECは、全体の24.9%に対して、3年以上続けている企業では13.5%と低くなっています。

わかるのは、3年以上続けている企業のほうが、販売パートナーへの委託と、自社の拠点の設立の割合が高い、というところまでです。委託すれば海外事業が続く、とは言えません。ただ、販路を広げた企業の半数以上が、販売代理店やパートナーへの委託を使っていることは、数字から読み取れます。

5. 商流マップの書き方|自社から最終顧客までの関係者(モデルケース)

商流マップの記入例。デジマ食品から国内の輸出商社、現地の輸入業者、小売店、最終顧客までの価格と社名の把握状況(不明は5か所)
図:商流マップの記入例(不明は5か所)

ここからは実践です。紙かパソコンを用意して、自社の内容を書いてください。最初に書くのは、商品が自社から最終顧客に届くまでの売買の流れを示す商流マップです。

書き方|縦に企業を1社ずつ、横に3つの欄

商流とは、商品が自社から、最終的に商品を使う顧客に届くまでの、売買の流れのことです。表の縦に、商品が通る企業を上から順に1社ずつ書きます。いちばん上が自社で、その下に国内の商社、現地の輸入業者、現地の小売店と続き、いちばん下が最終的な顧客です。

横には3つの欄を置きます。その企業の役割、その企業が次の企業に販売する価格、そして、その企業の社名と担当者を自社が知っているかどうかです。分からない欄には、不明と書いてください。

記入例|だしパックを輸出するデジマ食品(モデルケース)

企業 役割 次の企業への販売価格 社名・担当者の把握
自社(デジマ食品) だしパックの製造・販売 500円(1袋) —(自社)
国内の輸出商社 海外への販売・通関 不明 把握している
現地の輸入業者 輸入・現地での販売 不明 不明(社名も不明)
現地の小売店 店頭での販売 1,800円(展示会で会った人から聞いた店頭価格) 不明(店名)
最終顧客 購入・使用 — 不明

※表中の社名・価格は、手順を説明するために設定したモデルケースの値です(実在しません)。

この表では、デジマ食品が500円で販売した1袋が、国内の輸出商社、現地の輸入業者、現地の小売店を通って、最終顧客に届きます。自社が価格を把握しているのは、自社の500円と、展示会で聞いた小売店の店頭価格1,800円だけです。輸出商社と輸入業者の販売価格、輸入業者の社名、小売店の店名、最終顧客の情報が不明で、あわせて5か所になります。

読み方|不明が5か所、500円の商品が現地では1,800円

不明は5か所ありました。500円で販売した商品が、現地では1,800円で売られています。その差の1,300円が、輸送費や、輸入のときにシンガポールでかかる税金、それぞれの企業の利益にどう分かれているのかを、デジマ食品は把握していません。

不明が3か所以上の場合|取引先の商社への確認

不明が3か所以上あった場合は、「3. 中小企業の輸出の実施状況」で説明した内容(販売する国・販売先の種類・販売の状況の共有範囲)を、取引先の商社に確認してください。これから海外展開を検討する企業は、売りたい国を仮に決め、商品が通る企業を想定して書くところから始めます。

6. 販売経路の比較表|4項目の点数で候補を比べる(モデルケース)

次に書くのは、海外で売る経路の候補を並べて、自社に合うものを選ぶための販売経路の比較表です。候補ごとに4つの項目を3点から1点で採点し、合計点と、自社が重視する項目で第一候補を決めます。

書き方|候補3つを縦に、4つの項目を横に

縦に候補を3つ書きます。国内の商社を通す間接輸出、現地の販売店との直接契約、自社による直接販売です。自社による直接販売とは、自社のECサイトや現地の拠点を使って、自社が現地の顧客に直接販売することです。

横には4つの項目を並べます。初期費用が小さいか、必要な人手が少ないか、販売価格を自社で決められるか、顧客の情報が自社に入るか、です。それぞれ、自社にとって最も有利なら3点、最も不利なら1点を付けて合計を出します。点数は、自社で比較するための目安です。

記入例|デジマ食品の採点(モデルケース)

販売経路の候補 初期費用 人手 販売価格 顧客の情報 合計
国内の商社を通す間接輸出 3点 3点 1点 1点 8点
現地の販売店との直接契約 2点 2点 2点 3点 9点
自社による直接販売 1点 1点 3点 3点 8点

※点数はモデルケースの設定値です。

間接輸出は初期費用と人手が3点で、販売価格と顧客の情報が1点のため、合計は8点です。現地の販売店との直接契約は、初期費用・人手・販売価格が2点、顧客の情報が3点で、合計は9点です。自社による直接販売は、販売価格と顧客の情報が3点ですが、初期費用と人手が1点で、合計は8点です。合計点では現地の販売店との直接契約が1点上回りますが、差は小さいため、次の判断が必要になります。

決め方|合計点が並ぶ場合の判断(重視する項目)

このように、合計点に大きな差が出ないこともあります。その場合は、4つの項目のうち、自社がどれを重視するのかで決めます。デジマ食品は顧客の情報を重視すると決めていました。

ただし、現地の販売店との直接契約は直接輸出にあたり、輸出の担当者が必要です。デジマ食品は、企画の担当者1名が輸出を兼務できることを社内で確認しました。そのうえで、現地の販売店との直接契約を第一候補にし、国内の商社との取引は続ける、と判定しました。

7. 販売パートナーの確認表|5つの質問と面談に進む基準(モデルケース)

最後に書くのは、販売パートナーの候補が見つかったときに、面談や契約に進むかどうかを判断するための確認表です。縦に候補の企業を書き、横に5つの質問を並べて、丸かバツを付けます。

5つの質問|分野・販売実績・競合商品・発注条件・販売報告

質問は次の5つです。自社と同じ分野の商品を扱っているか。これまでの販売先を具体的に示せるか。

競合する商品を扱っているか、扱っている場合はどう売り分けるのか。最低の発注量と支払いの条件を書面で出せるか。販売の状況を毎月報告できるか。

判定基準|丸が4つ以上なら面談、3つ以下なら見送り

丸が4つ以上なら面談に進む、3つ以下なら見送る、という基準を、候補に会う前に決めておきます。この基準は一例です。丸の数は、自社で決めてください。実際に契約するときは、このほかに、相手の企業の信用調査や契約書の確認も必要です。

記入例|A社・B社・C社の判定(モデルケース)

候補 丸の数 判定の内容
A社(シンガポールの食品の輸入業者) 4つ バツは「販売の状況を毎月報告できるか」の1つ。基準に沿って面談に進む
B社 2つ これまでの販売先を示せず、条件も書面で出せなかった。見送る
C社(いま取引のある国内の輸出商社) 3つ すでに取引があるため、バツの2つの質問をあらためて商社に確認する

※候補の会社・丸の数はモデルケースの設定値です(実在しません)。

丸が4つのA社は、基準に沿って面談に進みます。バツが付いた「販売の状況を毎月報告できるか」は、面談で報告の方法を確認します。丸が2つのB社は、これまでの販売先を示せず、条件も書面で出せなかったため、見送ります。丸が3つのC社は基準に届きませんが、すでに取引のある商社なので、バツの2つの質問をあらためて確認します。

基準を先に決める理由|同じ質問への答えで比べる

基準を先に決めておくと、相手の担当者の印象や熱意ではなく、同じ質問への答えで比べることができます。

8. 販売経路の案を作る4週間の進め方|商流マップから確認表まで

動画で書いた3つの表を、確認を重ねて4週間で書き直す進め方
図:動画で書いた3つの表を、4週間で書き直す流れ

動画で3つの表を一度書いたあと、不明のままの欄や、想定で書いた欄を確認して、表を書き直していく進め方を、1週間ごとに分けて提案します。必要な期間は、商品や社内の体制によって変わります。

1週目|不明の欄と、想定で書いた欄に印を付ける

商流マップの不明の欄と、想定で書いた欄に印を付けます。そして、それぞれの欄を誰に確認するのかを決めます。

2週目|印を付けた欄を確認する

これから海外展開を検討する企業は、公的な相談窓口を使えます。ジェトロによると、国の政策にもとづいて中小企業を支援する機関である中小企業基盤整備機構(中小機構)では、登録された専門家が、輸出の可能性についての相談に無料で応じています。こうした窓口で、その国の一般的な商流を確認します。すでに商社を通して輸出している企業は、販売している国、販売先、現地での価格を、取引先の商社に確認します。

出典:ジェトロ「新規輸出1万者支援プログラム ガイドブック」(閲覧:2026年10月)

3週目|確認できた内容で、販売経路の比較表の点数を付け直す

確認できた内容で、販売経路の比較表の点数を付け直します。動画を見ながら決めた第一候補が変わらないかを確かめてください。

4週目|3つの表を社内で共有し、進めるかどうかを話し合う

3つの表を社内で共有し、第一候補の販売経路で進めるかどうかを話し合います。進めると決まったら、販売パートナーの確認表を使って、候補の企業を探し始めます。

商社への質問のしかた|目的の伝え方と開示の範囲

商社に販売先や価格を質問すると、取引をやめるつもりだと受け取られないか。そう心配する方もいると思います。質問の目的は、商社との取引をやめることではありません。

どの国の、どの顧客に売れているのかが分かれば、その顧客に合わせた商品の改良や、現地の言葉での資料づくりに、自社も協力できます。販売を増やすために情報を共有したい、と目的を伝えて質問してください。

ただし、商社が販売先の情報をすべて開示するとは限りません。その場合は、国と、おおよその販売価格だけでも共有してもらえないかを相談します。どこまで共有してもらえるかも、販売経路を選ぶときの判断材料になります。

進め方の要点|任せる範囲と、自社で把握する範囲

共有される範囲は、商社によって異なります。商社を通すことは、海外に商品を売るときの有効な方法です。ただ、任せる範囲を決めないまま任せると、自社の商品が海外でどう売られているのかが分からなくなります。

不明の欄が残っていても構いません。何が分かっていないのかが明らかになれば、次に誰に何を聞けばよいかが決まります。

▶ 推奨アクション
・今週のうちに、自社の商品が誰を通って最終顧客に届くかを、分かる範囲で商流マップに書き出す
・取引のある商社に、販売している国・販売先の企業・現地での販売価格の3つを確認する
・ジェトロ「代理店契約と販売店契約の相違点」で、候補の相手が商品を買い取るのかを確認する観点を押さえる
・販売パートナーの候補が見つからない場合や、販売経路が合っているか確かめたい場合は、Digima〜出島〜の無料相談から専門家の紹介を受ける

9. よくある質問

商社のビジネスモデルと、間接輸出・直接輸出、販売経路の決め方について、よくいただく質問に、要点だけ簡潔にまとめました。

商社は、何から利益を得ていますか。

総合商社は、売り手と買い手をつなぐ手数料に加えて、出資先の事業にも関わっています。2026年3月期の決算では、持分法による投資損益が三井物産で4,474億円、三菱商事で4,679億円でした。どちらの企業も、持分法による投資損益が1年間に4,000億円を超えています。

間接輸出と直接輸出は、何が違いますか。

契約の相手と、通関を行う企業が違います。間接輸出は国内の商社に販売し、海外の買い手探しと通関は商社が行います。直接輸出は海外の買い手と自社が契約し、自社の名義で通関します。間接輸出は自社の負担が小さく、直接輸出は海外の買い手の声が自社に直接届きます。

中小企業は、間接輸出と直接輸出のどちらが多いですか。

製造業の中小企業では、間接輸出のほうが多くなっています。中小企業庁『2025年版 中小企業白書』では、製造業(回答数5,713)で間接輸出が20.1%、直接輸出が12.3%でした。中小企業全体(回答数24,588)では、輸出を実施したことがない企業が82.4%です。

販売店と代理店は、何が違いますか。

売買契約の当事者になるかどうかが違います。販売店は商品を買い取って現地で販売し、価格を自由に決め、代金回収の責任を負います。代理店は売買契約の当事者にならず、実績に応じた手数料を受け取り、代金を回収できない損失は自社が負担します。名称だけでは区別できないため、買い取るかどうかを最初に確認してください。

商社に販売先や価格を聞くと、取引をやめるつもりだと思われませんか。

目的を伝えれば、取引をやめる意思表示にはなりません。販売を増やすために情報を共有したい、と伝えて質問してください。商社が情報をすべて開示するとは限らないため、その場合は国とおおよその販売価格だけでも相談します。どこまで共有してもらえるかも、販売経路を選ぶ判断材料になります。

10. 商社を通す輸出・海外の販路探しはDigima〜出島〜に相談

海外に商品を売るときに、商社に任せる範囲と、自社で把握する範囲を、自社で決めることが出発点です。製造業の中小企業の5社に1社は国内の商社や卸売業者を通して輸出しており、海外進出白書では、相談の首位が海外販路拡大(22.9%)、課題の最多が現地パートナー探し(57.0%)でした。

やることは、商流マップ・販売経路の比較表・販売パートナーの確認表の3枚を、自社の内容で書くことです。確認を重ねれば、4週間で社内で検討するための資料になります。

ただし、販売パートナーの候補が見つからない、いま選んでいる販売経路が合っているのか確かめたい、という場面は、書類の上だけでは判断できません。Digima〜出島〜では、世界各国の進出支援に携わる現地専門家・法律事務所・会計事務所・実績ある日系企業を、無料でご紹介しています。販売経路の見直しから、現地の販売パートナー探しまで、貴社の状況に合わせたサポートが可能です。まずは無料の海外進出タイプ診断で、自社に合った進出スタイルを確認してみてください。

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