パリ条約(パリルート)とPCT国際出願(PCTルート)の違いを解説
海外で特許を申請する際の2大ルートとされる、「パリ条約による優先権を主張した直接出願(パリルート)」と「「PCT国際出願(PCTルート)」の違いをわかりやすく解説します。
パリ条約による優先権を主張した直接出願とは、別名「パリルート」と呼ばれており、〝パリ条約〟に基づいて、権利を取得したい国に出願する方法です。
PCTとは特許協力条約(PCT = Patent Cooperation Treaty )を指し、PCTに従って行う出願が「PCT国際出願」とされており「PCTルート」と呼ばれています。
海外で特許を取得するには、この「PCTルート」と「パリルート」の2つがありますが、この2つのルートのどちらを選択すればよいのか迷うケースが多々あります。
本テキストでは、この「PCTルート」と「パリルート」のそれぞれの特徴、メリット&デメリット、申請方法を比較して解説。あなたの海外事業に最適な国際特許の出願方法を選択するヒントを提供します。
▼「パリ条約」と「PCT国際出願」の違いについてわかりやすく解説
- 1. 海外における特許権取得の必要性について
- 2. 「パリ条約」と「PCT国際出願」の違い
- 3. パリ条約の優先権を主張した直接出願(パリルート)とは?
- 4. PCT国際特許出願(PCTルート)とは?
- 5. パリ条約の優先権を主張した直接出願(パリルート)の申請の流れ
- 6. PCT国際特許出願(PCTルート)の申請の流れ
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1. 海外における特許権取得の必要性について
「PCTルート」と「パリルート」の2つの特許出願について比較する前に、まずは外国へ特許を出願する際の基本的な方法について確認しておきましょう。
特許権は国ごとに出願して権利を取得する必要がある
特許権は、属地主義と言って、基本的に権利を取得した国でのみ保護されるものです。例えば、日本の特許法に基づいて取得した特許権は、日本国内のみで有効となります。そのため、特許取得の必要な国ごとに特許を出願し、権利を取得しなければなりません。
海外展開で知的財産権を管理しないとリスクが生じる
続いては、海外展開における知的財産戦略の重要性について簡潔に解説します。
海外展開において知的財産をしっかり管理していないと、下記のようなリスクが発生してしまいます。
・知的財産に係る出願・登録がなされておらず、じゅうぶんに保護されていない
・出願はしているが、実体と合わない内容での出願・登録となっている
・現地での調査不足により、第三者の知的財産権を侵害してしまう
・第三者による成り済ましにより出願・登録されてしまう
・侵害品や模倣品の流通
・技術の流出
・企業秘密の漏洩
もちろん、不測の事態により、避けられないトラブルが起きることもありますが、事前に「知的財産戦略」を準備しておくことで、リスクを最低限に抑えることができます。
2. 「パリ条約」と「PCT国際出願」の違い
国際的な特許保護を目指す際に「パリ条約(パリルート)」と「PCT国際出願(PCTルート)」のどちらを選択するか迷う方も多いと思います。
このセクションでは、「パリ条約」と「PCT国際出願」の基本情報に加えて、両者の違いについて簡潔に解説します。
パリ条約とは?
パリ条約は、1883年に締結された国際条約で、加盟国間での知的財産の保護を規定しています。
この条約の主要な特徴は、「優先権」と呼ばれる原則です。これにより、ある加盟国で特許を申請した後、他の加盟国で申請する際に、最初の申請日から12ヵ月以内であれば、最初の申請日が優先とされます。
PCT国際出願とは?
PCT国際出願は、1970年に設立された制度で、1つの国際出願により多数の国や地域で特許を申請できるシステムです。
PCT出願は、初期段階で各国の特許庁に個別に出願する必要がなく、国際調査と国際予備審査を通じて特許可能性の評価を受けることができます。
パリ条約とPCT国際出願の違い
続いては、パリ条約とPCT国際出願の違いについて、各項目別に比較してみましょう。
▼ 適用範囲とプロセス
パリ条約:
個別の国々に直接出願する必要があります。各国での手続きと審査が必要です。
PCT国際出願:
1つの国際出願で多国間での特許取得を目指せます。初期段階では、個別国の詳細な審査は行われません。
▼ 費用と時間
パリ条約:
各国ごとに申請するため、費用と時間が多くかかる可能性があります。
PCT国際出願:
初期の費用は高いですが、長期的にはコスト効率が良く、手続きの簡素化により時間の節約につながります。
▼ メリット
パリ条約:
特定の国のみをターゲットにする場合に適しています。
PCT国際出願:
多国間での保護を検討している場合に適しています。また、国際段階での評価を受けた後に、どの国で申請を進めるかを決めることができます。
パリ条約とPCT国際出願の選択のポイント
最後に、パリ条約とPCT国際出願の選択のポイントについて、各項目別に見ていきます。
▼ ターゲット市場
特定の国々のみを狙う場合はパリ条約、多数の国での保護を望む場合はPCT国際出願が適しています。
▼ コストと時間
長期的な視点でコストと時間を節約したい場合はPCT国際出願が有利です。
▼ 戦略的柔軟性
特許戦略において柔軟性を持ちたい場合、PCT国際出願の利用が望ましいです。
どちらのルートを選ぶかは、ビジネス戦略やターゲット市場である国・地域によって異なります。最終的には専門家と相談した上で。最適な選択をすることをお勧めします。
3. パリ条約の優先権を主張した直接出願(パリルート)とは?
ここからは、「パリ条約」と「PCT国際出願」のそれぞれを詳しく解説します。まずは「パリ条約の優先権を主張した直接出願(パリ条約ルート)」について見ていきましょう。
「パリ条約ルート」とは、〝パリ条約〟に基づいて、権利を取得したい国に出願する方法
「パリ条約ルート」とは、〝パリ条約〟に基づいて、権利を取得したい国に出願する方法のことを言います。「パリルート」と呼ばれることもあります。
1883年に締結された、アメリカおよびヨーロッパの主要国を始め、中国や韓国などの約170ヵ国が加盟する知的財産権に関する国際条約が「パリ条約」ですが、日本から外国への多くの特許申請手続きに、この「パリ条約」の〝優先権制度〟および、特許協力条約による国際出願制度が適用されています。
パリ条約の優先権を主張した直接出願の特徴
特許を出願したい国に対して個別にそれぞれ出願をするやり方が「パリ条約ルート」です。それぞれの国の言語で、それぞれの国の法律で定められた出願書類を作成するのが基本です。
基礎の日本出願が存在する場合、日本の出願日から1年以内であれば、「優先権の主張」を伴う特許出願が可能となっています。これは、日本で特許を出願して1年間は、パリ条約に加盟している国に出願すれば、日本と同じ扱いで特許出願ができるということです。
「優先権の主張」を伴う特許出願を行うと、実際の外国出願の出願日よりも早い日本の出願日を基準とし、新規性や進歩性などの登録要件が各国において審査されることになるため、とても有利な手法と言えます。
パリ条約の優先権を主張した直接出願のメリット
そして「パリ条約ルートのメリット」は下記の4つになります。
・特許を取得したい国が少数の場合はコストを抑えることができる
・権利化までの期間が短い
・国ごとに出願内容を変更・修正ができる
・PCT非加盟国にも出願が可能
以下よりひとつずつ見ていきましょう。
■メリット① 特許を取得したい国が少数の場合はコストを抑えることができる
PCT出願にかかる費用は下記の3つの費用の合計です。
出願費用
再審査費用(任意)
各国への国内移行にかかる費用
出願国の数が2ヵ国国程度と少ない場合は、パリ条約ルート出願の方がコストを低く抑えられることがあります。
■メリット② 権利化までの期間が短い
パリ条約ルートは、直接外国の特許庁に出願する方式なので、各国における権利化の手続きを迅速に進めることができます。
■メリット③ 国ごとに出願内容を変更・修正ができる
特許を取得したいそれぞれの国に対して別々に手続きを行うため、国ごとの法令や、特許戦略に合わせて出願の内容を臨機応変に変えることができます。
■メリット④ PCT非加盟国にも出願が可能
例えば台湾はPCT非加盟国です。PCTに加盟していない台湾で権利化を希望する場合は直接出願する必要があります。台湾はパリ条約非加盟国でもあるのですが、日本と台湾間には優先権の相互承認の協約が結ばれており、パリルート出願と同様な出願ができます。
パリ条約の優先権を主張した直接出願のデメリット
続いては「パリ条約ルートのデメリット」についてですが、下記の2つが挙げられます。
・多くの国に出願する場合は手続きが煩雑になる
・短期間に集中してコストがかかる
以下より見ていきましょう。
■デメリット① 多くの国に出願する場合は手続きが煩雑になる
複数かつ多くの国に出願する際には、パリ条約ルートでは国ごとに手続きが必要なので、手続きが煩雑になってしまうのが大きなデメリットとなります。
■デメリット② 短期間に集中してコストがかかる
猶予期間が日本での出願から1年以内と短いため、多数の国に出願を行うケースでは、短期間に集中してコストがかかることになります。PCT出願のように、長い猶予期間の間に資金を用意する、ということができません。
4. PCT国際特許出願(PCTルート)とは?
「パリ条約(パリルート)」続いては、外国へ特許を出願する際の2つの出願ルートのもうひとつ「PCT国際特許出願」について詳しく見ていきましょう。
PCT国際特許出願の特徴
PCT国際特許出願のもっとも大きな特徴は、複数の国に対してシンプルに特許出願の手続きができることです。
申請された発明に対して特許権を付与するかどうかは、それぞれの国の特許法に基づいて行われています。アメリカと中国で特許を取得しようと思ったら、その2カ国に対して特許出願をしなければなりません。
さらに多く、複数の国で特許を取得しようとしたら、手続きは非常に煩雑になってしまいますが、PCT出願で日本国特許庁等の指定官庁に国際出願の手続きを行えば、複数の国に特許を出願したのと同じ効果を得ることができます。
出願手続きは、1つの言語で作成した出願書類を提出するだけ。
ただし、これは複数の国での特許権を一律に取得できるものではありません。PCT出願だけでは特許権を取得することはできず、出願後は特許権の取得を希望する条約加盟国の国内手続きへ移行し、その国の審査を通過してやっと特許取得となります。国内手続きの移行期限は条約加盟国によって異なり、優先日から30ヵ月を移行期限とする国が多いようです。
PCT国際特許出願のメリット
そして「PCT国際特許出願」のメリットは3つあります。
・外国への特許出願手続が簡素
・発明を評価するための調査結果を事前に確認できる
・原則30ヵ月の猶予期間を得られる
■メリット① 外国への特許出願手続が簡素
PCT国際特許出願の手続きはとても簡素化されています。
ひとつの文書(国際的に統一された様式で記載)を自国の特許庁が定める言語で作成し、自国の特許庁に 1 通提出するだけで、すべてのPCT加盟国に対してPCT国際出願と同じ日に各々の国に国内特許出願をしたのと同じ効果を得ることができます。それぞれの国に対して、わざわざそれぞれの形式で手続を行う必要がありません。
■メリット② 発明を評価するための調査結果を事前に確認できる
すべてのPCT国際出願は、出願した発明に関する先行技術があるか否かを国際調査機関が調査する「国際調査」の対象となります。出願人はその調査の結果を入手できる上に、発明の特許性に関する見解を特許審査官から得ることができます。
また、任意で国際予備調査を受けることができます。これは国際調査の結果を踏まえ、改めてその特許性に関する見解を入手したいときなどに受けられる審査です。
提供された特許性判断のための材料をもとに手続を進めることができれば、特許取得の成功率はぐんと上がりますし、調査の結果が芳しくなければこの時点で手続を断念できるので、無駄なコストがかかりません。
■メリット③ 原則30ヵ月の猶予期間を得られる
海外で特許を取る際には、翻訳文の作成や権利取得する国の選定など、どうしても時間がかかってしまう作業が多数発生しますが、PCT出願なら猶予期間が長いため、余裕を持って手続きにあたることができます。
PCT国際特許出願のデメリット
そして下記の2つが「PCT国際特許出願」のデメリットになります。
・ケースによっては費用が余分にかかることがある
・非加盟国には出願することができない
■デメリット① ケースによっては費用が余分にかかることがある
出願する国がすでに決定していて、これから選定する必要がなく、出願を「アメリカだけ」「中国だけ」に絞る、というようなケースにおいては、PCT国際出願の方がコストがかさむことがあります。
■デメリット② 非加盟国には出願することができない
PCTに加盟していない国へは出願することができません。例えば台湾はPCTには加盟しておらず、PCT国際出願によって特許を出願することができません。
PCT国際出願における注意点 | 国内移行手続について
ここでは「PCT国際出願における注意点」について見ていきましょう。
PCT国際出願はあくまでも「出願手続」であって、最終的に各国で権利を取得できるかどうかは各国特許庁の実体審査で決まります。
PCT国際出願の手続きが完了したら、それぞれの国において特許出願をし直す「国内移行(各国移行)」の手続きに移ります。これは優先日から原則30ヶ月までに行う必要があります。
国内移行手続の際は、指定国の官庁に対して、各指定国が求める言語に出願の内容を翻訳した翻訳文が必要となります。また、手数料がかかることもあります。
海外で特許を取るまでには、下記の順で手続きが必要です。
PCT出願 → 国内移行 → 審査請求
上記のように、本来は国内移行手続をした上で審査請求という流れですが、国内移行期限と審査請求期限が近いため、手続きは同時期に行うことがほとんどのようです。
5. パリ条約の優先権を主張した直接出願(パリルート)の申請の流れ
続いては「パリ条約の優先権を主張した直接出願の申請の流れ」について解説していきます。パリルートによる出願の流れを図で表すと以下のとおりになります。
パリ条約の優先権を主張した直接出願の申請の流れ
パリ条約の優先権を主張した直接出願に必要な費用
パリ条約ルートでの出願は、それぞれの国に対して直接出願を行うため、費用もまちまちになってしまいますが、平均的な目安として、現地代理人費用と出願費用で60万~120万円ほどかかると言われています。主に必要となる費用の項目は下記の4つでしょう。
・各国への出願手数料
・翻訳代
・現地代理人費用
・国内代理人費用(利用する場合)
6. PCT国際特許出願(PCTルート)の申請の流れ
最後に「PCT国際特許出願の申請の流れ」について解説していきます。
PCT国際特許出願(PCTルート)の申請の流れ
最初にPCTルートを大まかな図で解説すると以下の流れになります。
さらに具体的な項目としては以下の5つ。
(1)出願書類を準備して提出する
(2)出願に対する国際調査の結果を受け取る
(3)出願が国際公開される
(4)[必要に応じて] 国際予備審査を請求する
(5)国内移行する国を決めて手続を行う
では、ひとつずつ見ていきましょう。
(1) 出願書類を準備して提出する
出願に必要な書類を準備し、オンライン・窓口・郵送・FAXなどで提出します。
まずは出願に必要な書類を準備します。提出はオンライン・窓口・郵送・FAXなどで行います。オンライン出願を利用すると¥32,700減額されるので、せっかくですからオンラインで手続きを行うことをおすすめします。
オンライン出願の場合は特許庁が提供している出願ソフトを事前にダウンロードして使用することができますし、書面の場合はWIPO又はJPOのHPから様式をダウンロードすることができます。
認定要件は下記の6つです。
① 出願人適格の有無
② 国際出願の作成言語
③ 国際出願をする意思の表示の有無
④ 出願人の氏名(又は名称)の記載の有無
⑤ 明細書であると外見上認められる部分の有無
⑥ 請求の範囲であると外見上認められる部分の有無
要件が満たされていた場合は国際出願受理日が国際出願日として認定されます。要件が満たされていない場合は受理官庁による補完指令が出され、補完された場合は補完受理日を国際出願日として認定。補正されない場合は取り下げとなります。
(2) 出願に対する国際調査の結果を受け取る
国際調査機関は、国際調査報告(ISR)と国際調査機関の見解書(WOSA)を、調査用写しの受領から3ヵ月、または優先日から9ヵ月のどちらか遅い日までに作成し、出願人に送付します。
(3) 出願が国際公開される
WIPO国際事務局(IB)が優先日から18ヵ月経過後に出願を公開します。国際公開は毎週木曜日にパテントスコープ上で行われ、WIPO国際事務局のサイト内のパテントスコープから閲覧や入手ができます。
(4) [必要に応じて] 国際予備審査を請求する
国際予備審査は出願者の任意であり、必ず行わなくてはいけないものではありません。請求するメリットは「国際調査機関の見解書を受けて明細書等を補正することができる」「補正後の国際出願の特許性について、改めて判断してもらえる」「審査官との意見交換ができる」などが挙げられます。
予備審査請求時には「予備審査手数料」と「取扱手数料」を国際予備審査機関に納付します。
(5) 国内移行する国を決めて手続を行う
どの国で特許を取得するか選定し、その国に対して国内移行の手続きを行います。国内移行の手続き期限は通常、優先日から30ヵ月以内です。期限までに下記の3つを行いましょう。
・翻訳文の提出(外国語特許出願の場合)
・国内手数料14,000円の納付
・国内書面の提出
- 出願人の氏名又は名称、および住所又は居所
- 発明者の氏名、および住所又は居所
- 国際出願番号 など
審査請求期限は国際出願日から3年です。
PCT国際出願に必要な費用とは?
最後のセクションでは「PCT国際出願に必要な費用」について解説します。
PCT国際出願にかかる費用は、おもに下記の7つの項目となっています。
結論から言うと、PCT国際出願にかかる費用は、上記の「出願」と「予備審査」にかかる費用の合計となります。
・国際出願手数料
・送付手数料
・調査手数料
・国際調査の追加手数料
・予備審査手数料
・予備審査の取扱手数料
・予備審査の追加手数料
※その他、文献の写しの請求や証明書の交付など一件につき1,400円かかります
出典:特許庁ウェブサイト(https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/kokuryo.html)
PCT国際出願に最低減必要な費用とは?
ここでは、上記を踏まえて、実際の出願手続きをシミュレートしてみましょう。出願時に必要な費用の最低減の項目としては…
・国際出願手数料
・送付手数料
・調査手数料
…以上の3つになります。国際出願手数料は枚数によって金額が変動します。またオンラインで出願すると減額があります。
予備審査請求時にかかる費用とは
さらに、予備審査に必要な費用としては…
・予備審査手数料
・予備審査の取扱手数料
…以上の2つになります。これらは予備審査を行わない場合は不要となります。
先述したように、PCT国際出願にかかる費用は、上記の「出願」と「予備審査」にかかる費用の合計となります。
さらに、出願を完了したら、これもまた先述したように、PCT国際出願はあくまで「出願手続」であるため、別途「国内移行手続」が必要となります。次項では、国際出願を含めた上で、実際にかかる費用をシミュレートしてみましょう。
実際にかかる費用をシミュレート
例えば、国際出願日が2020年5月1日で下記の条件だとしましょう。
・日本語で出願し、日本国特許庁が国際調査を行う
・オンラインで出願(出願書類30枚)
・国際予備審査を請求
・日本へ国内移行手続
・出願審査請求(請求項の数12)
それぞれの手順ごとにかかる費用は下記です。
【出願にかかる費用】
・送付手数料:10,000円
・調査手数料:70,000円
・国際出願手数料:110,900円(143,200円−32,300円)
(30枚までの基本の国際出願手数料とオンライン出願による減額)
出願にかかる費用は190,900円となります。
※出願書類が30枚を超える場合は、用紙1枚につき1,600円かかるので、書類の枚数が増えると、その分費用も増えることとなります
【予備審査請求時にかかる費用】
・予備審査手数料: 26,000円
・取扱手数料: 21,500円
予備審査にかかる費用は47,500円となります。
※国際出願を英語で行う場合は、予備審査手数料は58,000円となります
このケースの場合、PCT国際出願にかかる費用は合計で238,400円となりました。
そしてさらにコストを下げられる制度もあります。軽減申請書を申請時に提出すれば費用が軽減できる制度や、願書又は予備審査請求書が受理された通知書の発送日後、かつ、手数料納付後6ヵ月以内に交付申請書を提出すれば交付金が受けられます。こういった制度もぜひ活用してみてください。
PCT国際出願が完了したら、いよいよ国内移行の手続きを行います。
【国内移行にかかる費用】
国内移行にかかる費用は国ごとに異なります。
特許庁が国際調査報告を作成した国際特許出願に係る出願審査請求料は83,000円+請求項数×2,400円となっており、請求項数12の場合は111,800円となります。
参考までに、特許庁以外が国際調査報告を作成した国際特許出願に係る出願審査請求料の場合は124,000円+請求項数×3,600円となっています。
参照:
https://www.jpo.go.jp/system/process/tesuryo/kaisei/2019_ryoukinkaisei.html
また、それとは別に「国内手数料」(14,000円)の納付も必要となります。
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今回は、海外で特許を申請する際の2大ルートとされる、「PCT国際出願(PCTルート)」と「パリ条約による優先権を主張した直接出願(パリルート)」を比較して解説しました。
それぞれメリットデメリットがあるパリ条約ルートとPCTルート。
少数の国で、迅速に権利化したい場合はパリ条約ルート、多数の国に対して出願したい場合はPCTルート、というのが一般的な使い分けですが、自社の製品はどちらが適しているのか、判断するのはなかなか難しいのが実情です。そんなときは専門家に相談するのも選択肢のひとつです。プロであれば現地の最新情報も熟知しているはず。判断に迷ったらまずはアプロートしてみることをオススメします。
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(当コンテンツの情報について)
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