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インバウンド車椅子対応で集客を伸ばす方法|バリアフリー整備の実践ポイント

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訪日する車椅子ユーザーや障害のある旅行者は年々増加していますが、バリアフリー未対応による機会損失も見過ごせません。観光庁など公的データをもとに、宿泊施設・飲食店・小売店が実践できるバリアフリー対応と、集客につながる情報発信のポイントを解説します。移動・宿泊・情報不足という3つの課題への対応策も紹介します。

2025年の訪日外国人数は4,268万人に達し、過去最高を更新しました(出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」2026年1月発表)。
この拡大するインバウンド市場の中には、車椅子を利用する方や障害のある旅行者も含まれていますが、宿泊施設のアクセシブル・ルーム不足や事前情報の乏しさを理由に、訪日そのものを諦めてしまうケースが少なくないことをご存知でしょうか。
観光庁のユニバーサルツーリズムに関する調査でも、高齢者・障害者を含む旅行需要は今後さらに拡大する潜在力を持つと分析されています。
本記事では、車椅子ユーザーが訪日旅行で直面する課題と、宿泊施設・飲食店・小売店・交通事業者がすぐに取り組めるバリアフリー対応の実践ポイントを、公的データとともに解説します。

この記事でわかること

  • ・車椅子利用者・障害のある旅行者の訪日市場規模と、バリアフリー未対応が招く機会損失
  • ・移動、宿泊施設の設備、事前の情報不足という訪日旅行者が直面する3つの課題
  • ・宿泊施設・飲食店・小売店・交通事業者が実践できるバリアフリー対応と、集客につながる情報発信の方法

1. なぜ今、車椅子ユーザー向けインバウンド対応が求められるのか

訪日する車椅子利用者・障害のある旅行者の市場規模

日本政府観光局(JNTO)によれば、2025年の訪日外国人数は4,268万人となり、過去最高を更新しました(出典:JNTO「訪日外客数」2026年1月)。訪日市場が拡大するなか、車椅子ユーザーや障害のある旅行者への対応は一部企業だけの課題ではなくなりつつあります。
観光庁の「ユニバーサルツーリズムに関する調査業務」(令和5年3月)では、高齢者・障害者を含む現状市場規模は延べ宿泊旅行者数の3,316万人(全体の14.3%)、潜在市場規模は4,686万人と推計されています(出典:独立行政法人経済産業研究所(RIETI)「旅行者としての高齢者、障がい者の潜在力」)。日本の65歳以上人口は3,627万人で総人口の29.1%を占め、障害のある方などを含めると対象は人口の3分の1に達するとの指摘もあります。

バリアフリー未対応が招く機会損失

Accessible Japanと株式会社JTB総合研究所が2024年に共同実施した「海外在住障害者の日本アクセシブル・ツーリズム認識調査」(35カ国・地域221名対象)では、訪日前の日本のイメージとして「寺や庭など車椅子利用が困難」との回答が67.0%にのぼりました。訪日経験者74名のうち、困った点として「アクセシブル・ルームの不足」を挙げた割合は50.0%に達しています。
観光庁が2024年12月から2025年1月に主要5空港で実施した受入環境調査(回答4,189件)でも、「困ったことはなかった」との回答は51.1%にとどまりました。
情報や設備の不足から訪日自体を諦めてしまう車椅子ユーザーも一定数存在するとみられ、機会損失は本人だけでなく同行する家族・友人の予約見送りにも広がります。

2. 車椅子ユーザーが訪日旅行で直面する3つの課題

移動・交通アクセスの課題

国土交通省によれば、鉄道駅など公共交通機関の旅客施設の段差解消率は令和6年度末時点で94.3%、障害者用トイレの整備率は92.4%まで進んでいます(出典:国土交通省「公共交通機関におけるバリアフリー化の状況について」令和6年度実績)。
一方、前述のAccessible Japan・JTB総合研究所の調査では、訪日経験者の40.5%が「観光地の足場が悪い」と回答しており、歴史的建造物や自然景観のエリアでは石畳や階段が多く移動が難しい場所が依然として多いことがうかがえます。都市部は対応が進む一方、地方や小規模な観光地ほど整備が遅れやすい地域差も判断材料になっています。

宿泊施設の設備面の課題

バリアフリー法の改正により、床面積2,000平方メートル以上かつ客室総数50室以上のホテル・旅館は、車椅子使用者用客室を「客室総数の1%以上」設置することが2019年9月1日から義務化されています(出典:国土交通省「建築物におけるバリアフリーについて」)。この基準を満たさない中小規模の宿泊施設は法的義務の対象外で、対応は各施設の任意に委ねられています。
前述の調査で「アクセシブル・ルーム不足」が最も多い不満点として挙げられた背景には、こうした施設が数多く存在することがあります。手すりのみで出入口の段差や移乗スペースが確保されていない、形式的な対応にとどまるケースも見られます。

事前の情報不足という課題

車椅子ユーザーにとって、訪日旅行の可否を左右する最大の要素は「事前に必要な情報が得られるかどうか」です。日本語版にはバリアフリーの「よくある質問」があっても、英語版では同等の情報が掲載されていない事例も指摘されています。
Accessible Japan・JTB総合研究所の調査でも、必要とされる配慮として「アクセシブルな観光地・施設情報」を挙げた回答が76.9%と高い割合を占めました。客室の寸法や段差の有無といった情報が言語を問わず得られるかが、訪日の決断を左右します。

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3. 施設別・バリアフリー対応の実践ポイント

宿泊施設(客室・エレベーター・スロープ)

国土交通省の「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」(令和3年3月改正)では、客室・浴室の出入口の有効幅80センチメートル以上、ベッドの片側に最低80センチメートルの移乗スペースを設ける基準が示されています。スロープは屋内で12分の1(約8.3%)以下、屋外で15分の1(約6.7%)以下の緩やかな勾配が推奨されています。
全客室を一度に改修するのは難しくても、一部の客室から優先的に進める運用でも効果があります。エレベーターの位置や動線を段差の有無も含めて事前に写真付きで発信しておくことも有効です。

飲食店・小売店(入店動線・トイレ)

飲食店・小売店では、出入口に段差を設けず、有効幅80センチメートル以上、通路幅90センチメートル以上を確保することが望ましいとされています。多目的トイレは、車椅子が方向転換できるよう内法で200センチメートル四方程度のスペースを確保し、手すりは床から60〜70センチメートル程度の高さが推奨されています。
車椅子に座ったまま食事ができるよう可動式の椅子席を用意しておくと選択肢が広がります。既存店舗でも、段差がある場合はスロープ板を常備するなど小さな工夫から着手できます。

交通・移動のサポート体制

宿泊施設や観光施設単体でバリアフリー対応を完結させるのは難しいため、空港や駅からの送迎、車椅子対応タクシーの手配、レンタル車椅子の案内といった移動全体を支えるサポート体制が集客力を左右します。駅の段差解消率は94.3%まで進んでいますが、駅から施設までの移動支援は個々の事業者の工夫に委ねられている部分が大きいのが実情です。
あらかじめ最寄り駅からの経路を案内資料にまとめておく、車椅子対応車両を持つ地元タクシー会社と提携しておくなど、移動の不安を解消できる体制を整えることが来訪の後押しになります。

4. 集客につなげる情報発信と受け入れ体制の作り方

バリアフリー情報の多言語・具体的発信

「日本語版のホームページにはバリアフリー情報が載っているのに、英語版に切り替えると情報が出てこない」——訪日を検討する障害のある旅行者向けサイト「Accessible Japan」の運営者も、こうした情報格差を実際の課題として指摘しています(出典:国土交通省「歩行空間DX研究会」寄稿記事)。多言語発信を後回しにしないことが重要です。JNTOも15言語のウェブサイトに加え、22の海外市場向けにSNSを運用し、実用情報を発信しています(出典:JNTO「ウェブサイトやSNSを通じた訪日観光情報の提供」)。自社サイトでも客室や店内の寸法、段差の有無、多目的トイレの位置を、日本語版と同じ水準で英語版にも掲載することが求められます。
文章だけでなく、実際の入口やトイレ、客室の写真を添えることで、訪問前に判断しやすくなります。

スタッフ対応と「心のバリアフリー」

観光庁は2020年12月、「観光施設における心のバリアフリー認定制度」を創設しました。この制度は設備の有無ではなく、車椅子の貸し出しや視覚・聴覚に障害のある方への声かけといった、ソフト面での取り組みを認定基準としている点が特徴です。
設備投資に時間がかかる施設でも、スタッフが車椅子の操作方法を理解し、自然に声をかけられる「心のバリアフリー」の姿勢はすぐに始められます。認定を受けた施設には認定マークが交付され、対外的なアピール材料としても活用できます。

認証制度・国のガイドラインの活用

前述の心のバリアフリー認定制度に加え、観光庁は宿泊施設のバリアフリー化改修を後押しする補助金制度も設けています。改修検討時は、国土交通省の「建築設計標準」を参照すると、根拠のある基準に沿って進めやすくなります。
国際的には2021年制定のISO21902というアクセシブル・ツーリズムの国際規格もあり、公的な認証制度やガイドラインの活用は、対応内容の妥当性を旅行者に伝えるうえでも説得力を持ちます。

5. よくある質問(FAQ)

Q1. 車椅子ユーザーの訪日旅行者は実際にどのくらいいるのでしょうか?

正確な人数の公的統計はありませんが、観光庁の調査では高齢者・障害者を含むユニバーサルツーリズムの潜在市場は現状の1.4倍にあたる4,686万人と推計されています。2025年の訪日外国人数は4,268万人と過去最高を更新しており、今後さらに重要性が高まる分野です。

Q2. 中小規模の宿泊施設でも車椅子対応の義務はありますか?

バリアフリー法上、車椅子使用者用客室の設置が義務づけられているのは床面積2,000平方メートル以上かつ客室総数50室以上の施設です。それ未満は法的義務の対象外ですが、任意対応や情報発信は集客上の差別化につながります。

Q3. バリアフリー改修に大きな費用をかけられない場合はどうすればよいですか?

客室やトイレの改修には費用がかかりますが、段差の注意書きやスタッフの声かけ、車椅子の貸し出し手配、多言語での情報発信など、設備投資なしで始められる対応も数多くあります。まずは入店・移動動線の見直しから着手できます。

Q4. 「心のバリアフリー認定制度」とはどのような制度ですか?

観光庁が2020年12月に創設した制度で、設備面ではなく車椅子の貸し出しや視覚・聴覚障害のある方への声かけといったソフト面の取り組みを評価します。認定を受けると認定マークを使用でき、対外的なアピールにもつながります。

Q5. バリアフリー情報を多言語で発信する際に気をつけることは?

日本語ページにはある情報が英語版には掲載されていないケースが指摘されています。段差の有無や客室・通路の寸法、多目的トイレの有無など、不安を解消できる具体的な情報を主要言語で同じ水準に発信することが重要です。

Q6. バリアフリー化の改修費用に使える補助金はありますか?

観光庁は宿泊施設のバリアフリー化を支援する補助制度を設けています。年度により内容が変わるため、観光庁や自治体の最新情報を確認したうえで活用を検討するとよいでしょう。

6. まとめ

車椅子ユーザーや障害のある旅行者を含むユニバーサルツーリズムの市場は、訪日外国人数が過去最高を更新するなかで、今後さらに拡大が見込まれる分野です。一方で、宿泊施設のアクセシブル・ルーム不足、観光地までの移動の難しさ、多言語での情報不足という3つの課題が、訪日を諦めさせる要因になっています。
宿泊施設・飲食店・小売店・交通事業者が、物理的な整備と多言語での情報発信、そして「心のバリアフリー」に基づくスタッフ対応をあわせて進めることが、集客につながる受け入れ体制の構築につながります。
すべてを一度に完璧にする必要はありません。国のガイドラインや認定制度を参照しながら、取り組みやすい部分から着手していくことが、新たな顧客層の獲得につながる第一歩です。

7. 優良な海外進出サポート企業をご紹介

「Digima〜出島〜」には、厳正な審査を通過した優良な海外進出サポート企業が多数登録しています。

とはいえ、バリアフリー設備の改修計画や多言語発信、受け入れ体制づくりを自社だけで進めるのは容易ではありません。訪日外国人向けの受け入れ支援に強い専門企業への相談や、無料相談窓口での情報収集、インバウンド関連セミナーへの参加から、まずは一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

参考文献

・日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」(2026年1月発表、2025年12月推計値)
 https://www.jnto.go.jp/news/press/20260121_monthly.html
・独立行政法人経済産業研究所(RIETI)「旅行者としての高齢者、障がい者の潜在力」
 https://www.rieti.go.jp/jp/columns/s24_0019.html
・株式会社JTB総合研究所「海外在住障害者の日本アクセシブル・ツーリズム認識調査」(2024年11月)
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000122426.html
・観光庁「訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査を実施しました」(2025年)
 https://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_00022.html
・人・ロボットの移動円滑化のための歩行空間DX研究会「訪日を諦める障害者を減らしたい――バリアフリーな日本旅行を支援する外国人向けWEBサイト『ACCESSIBLE JAPAN』の取り組み」
 https://www.walkingspacedx.go.jp/post-939/
・日本政府観光局(JNTO)「ウェブサイトやSNSを通じた訪日観光情報の提供」
 https://www.jnto.go.jp/projects/overseas-promotion/market-projects/web-sns.html
・国土交通省「公共交通機関におけるバリアフリー化の状況について」(令和6年度実績)
 https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo09_hh_000425.html
・国土交通省「建築物におけるバリアフリーについて」(建築設計標準)
 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutakukentiku_house_fr_000049.html
・観光庁「心のバリアフリー認定制度」
 https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/kokorono_barrier-free/index.html

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