【2026年最新版】なぜ中国と台湾はTPPへの加盟を申請したのか?加盟の行方と日本企業への影響を解説
結論から言えば、中国と台湾が相次いでTPP(環太平洋パートナーシップ協定、現在のCPTPP)への加盟を申請した背景には、それぞれ異なる政治的・経済的な狙いがあります。中国は西側諸国による包囲網に対抗する政治的なけん制と、国際経済関係からの孤立回避を狙っており、台湾は中国への対抗姿勢の表明と、対中依存からの経済的な脱却を目的としています。両者の加盟申請は単なる貿易協定への参加希望にとどまらず、経済安全保障や地政学的なパワーバランスを反映した動きとして読み解く必要があります。2021年9月16日、中国はTPPへの正式な加盟申請を発表しました。その数日後、9月22日には台湾も追随して申請しています。トランプ政権下の2017年1月にTPPから離脱したアメリカは、バイデン政権下でも復帰していません。中国の習近平国家主席は2021年11月のAPEC首脳会議で、中国がTPP参加を積極的に検討していると表明していました。2026年現在、CPTPPは英国の加盟(2024年12月に正式発効)によって12カ国体制へと拡大した一方、中国・台湾の加盟審査については新規加盟には全加盟国の同意(コンセンサス)が必要という制度上、依然として明確な進展が見られない状態が続いています。本記事では、TPP(CPTPP)の基本的な枠組み、中国と台湾がそれぞれTPP加盟を申請した背景、加盟審査の現状、そして日本企業が経済安全保障の観点から留意すべきポイントについて解説します。
この記事でわかること
- ・TPP(CPTPP)の基本的な枠組みと加盟国の変遷
- ・中国がTPP加盟を申請した2つの背景(対西側諸国の牽制・国際経済関係の維持)
- ・台湾がTPP加盟を申請した2つの背景(対中国の牽制・経済の脱中国依存)
- ・加盟審査の現状と、日本企業が留意すべき経済安全保障上のリスク
▼【2026年最新版】なぜ中国と台湾はTPPへの加盟を申請したのか?加盟の行方と日本企業への影響を解説
1. TPP(CPTPP)とは?加盟国の変遷を理解する
TPP(Trans-Pacific Partnership:環太平洋パートナーシップ協定)は、太平洋を取り囲む国々の間で貿易の自由化を促進することを目的とした協定です。その起源は2006年、シンガポール・チリ・ニュージーランド・ブルネイの4カ国によるP4協定に遡ります。2009年以降、アメリカの参加提案を受けて12カ国が交渉に加わりましたが、2017年1月にトランプ政権がアメリカのTPP離脱を決定したことで、枠組みは「TPP11」として再構築されました。
2017年11月に正式合意した新協定は「CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)」と改称され、オーストラリア・ブルネイ・カナダ・チリ・マレーシア・メキシコ・ニュージーランド・ペルー・シンガポール・ベトナム・日本の11カ国でスタートしました。その後、英国が2024年12月に正式加盟し、CPTPPは12カ国体制となっています。関連する経済連携協定の枠組みについては、FTAとEPAの違いとは?日本の主要EPAと関税削減の活用方法をわかりやすく解説やCPTPPとは?TPPとの違い・加盟国一覧・関税メリットをわかりやすく解説【2026年最新】も併せてご参照ください。
2. なぜ中国はTPP加盟を申請したのか|背景1:西側諸国との関係悪化
中国がTPP加盟を申請した第一の背景は、西側諸国との関係悪化にあります。2021年9月、バイデン大統領は日本・アメリカ・オーストラリア・インドによる「Quad(クアッド)」の初の対面会合を開催しました。これは「自由で開かれたインド太平洋」の推進を掲げる枠組みですが、実質的には中国を念頭に置いた包囲網としての性格を強めています。
同時期には、オーストラリアの原子力潜水艦配備を支援する米英豪の安全保障パートナーシップ「AUKUS(オーカス)」も発表されました。これも西側諸国による対中けん制の連携強化を象徴する動きです。
3. 中国のTPP加盟申請の狙い|アメリカへの牽制材料として活用
中国はTPP加盟申請を通じて、西側主導の対中包囲網に楔を打ち込むことを狙っているとみられます。しかし、中国が実際にTPPに加盟できる現実的な可能性は極めて低いのが実情です。TPPは自由で公正な国際貿易を重視する協定であり、不公正な輸出規制や制裁的関税を課してきた中国の実績を踏まえると、加盟実現は容易ではないと中国自身も認識している可能性があります。
つまり、この申請は加盟そのものよりも、政治的なシグナルを発信し、TPP加盟国の反応を試しながらアメリカへの圧力材料として利用する意図が強いと考えられます。
4. なぜ中国はTPP加盟を申請したのか|背景2:国際経済関係の維持
近年、中国の国際的な影響力の陰りを示す事例も見られます。2021年9月、リトアニア国防省はシャオミの5G端末について、「チベット解放」や「台湾独立」といった検索を検知する検閲機能があるとして、国民に購入しないよう警告しました。ドイツもこれを受けて調査を開始しています。
こうした事例が示すように、中国は小規模な国々からの離反リスクに直面しています。TPP加盟の実現可能性は低いとしても、加盟申請自体が国際的な経済チャネルへのアクセスを維持するための一手段として機能している側面があります。
5. なぜ台湾はTPP加盟を申請したのか|背景1:対中国の牽制
台湾が中国と同時期にTPP加盟を申請したことは、主に政治的な独立性を示す狙いがあります。蔡英文政権は「台湾は台湾である」ことを北京に示し、中国の方針に追従しないという姿勢を明確にすることを目指しています。フランス・オーストラリア・日本など、価値観を共有する民主主義国家との関係強化も、これを補完する目的として位置づけられます。
2021年10月にはフランスの上院議員団や、オーストラリアの前首相トニー・アボット氏が台湾を訪問し、政治・経済関係を深めました。CPTPP加盟国の多くは台湾の加盟を前向きに受け止める可能性があり、CPTPPが「多国間の対中経済連携枠組み」としての性格を強める展開も想定されます。
6. なぜ台湾はTPP加盟を申請したのか|背景2:経済の脱中国依存
経済的な観点では、台湾の加盟実現可能性は中国よりも高いとみられています。台湾の半導体産業は世界的に不可欠な存在であり、欧州各国も台湾との関係強化を加速させています。加えて、中台関係の悪化は、貿易モデルの多角化を必要とする直接的な要因となっています。
2021年9月、中国は病害虫汚染を理由に台湾産の釋迦(バンレイシ)や蓮霧(レンブ)の輸入を停止しました。同年3月にはパイナップルの輸入も停止しています。台湾はこうした経緯から、中国への依存を脱し、代替的な経済パートナーシップを模索する必要性に迫られています。
7. 加盟審査の現状と日本企業が留意すべき経済安全保障上のリスク
中台関係の緊張は今後も続くと見られます。台湾が譲歩する可能性は低く、中国も異論を容認する姿勢を見せていません。日本企業は中国での経済的な結びつきを維持しながら、市場・拠点として台湾にも依存しているケースが多く、両者の動向は日本企業にとって無視できないテーマです。
中国と台湾のTPP(CPTPP)加盟申請が政治的なポジショニングの一環である以上、今後も経済的な波紋が生じる可能性は否定できません。もし中国が「日本は台湾を優先している」と判断した場合、対抗措置を講じる可能性も想定しておく必要があります。
2021年に施行された中国の「反外国制裁法」は、中国を対象とした制裁措置を実施する主体・個人に対して、査証拒否、国外退去、資産凍結などを可能とする法律です。日本は制裁措置の主要な実施主体ではありませんが、ユニクロの事例が示すように、中国のサプライチェーンに組み込まれている企業は一定の脆弱性を抱えています。米中対立の広がりや対中制裁の応酬が日本企業に及ぼす影響については、米中対立の今後と日本企業への影響-バイデン政権によって広域化する世界の貿易摩擦や米中対立による「経済制裁合戦」の行方 | 中国の「反外国制裁法」に対して日本企業が留意すべきことは?でも詳しく解説していますので、併せてご確認ください。
こうした申請の動きを、経済安全保障の枠組みが変化しつつあるシグナルとして読み解くことで、企業は事前の危機対応策を検討することが可能になります。
8. よくある質問(FAQ)
Q. 中国と台湾はいつTPP加盟を申請しましたか?
中国は2021年9月16日、台湾は同月22日にそれぞれTPP(現CPTPP)への正式な加盟申請を発表しました。両者はほぼ同時期に申請したことで国際的な注目を集めました。
Q. 中国がTPPに加盟する可能性はどの程度ありますか?
現実的な可能性は低いとみられています。TPPは自由で公正な貿易を重視する協定であり、不公正な輸出規制や制裁的関税を課してきた中国の実績を踏まえると、加盟実現は容易ではないと考えられます。
Q. 台湾の加盟実現可能性は中国と比べてどうですか?
経済的な観点では台湾の方が実現可能性が高いとみられています。世界的に不可欠な半導体産業を持つことに加え、欧州各国との関係強化が進んでいることがその理由です。
Q. 中国がTPP加盟を申請した本当の狙いは何ですか?
西側諸国による対中包囲網(Quad、AUKUSなど)に楔を打ち込む政治的なけん制と、国際的な経済チャネルへのアクセスを維持することが主な狙いとみられています。
Q. 台湾がTPP加盟を申請した狙いは何ですか?
中国への対抗姿勢を示す政治的な狙いと、中台関係の悪化を受けた経済の脱中国依存という2つの狙いがあります。パイナップルなどの輸入停止措置も、この動きを後押しした要因のひとつです。
Q. CPTPPの加盟国は現在何カ国ですか?
2024年12月に英国が正式加盟したことで、CPTPPは12カ国体制となっています。新規加盟には全加盟国の同意(コンセンサス)が必要とされており、中国・台湾の加盟審査については明確な進展が見られていません。
Q. 日本企業はこの動向にどのように備えるべきですか?
中国の「反外国制裁法」など、経済的な対抗措置のリスクを踏まえたサプライチェーンの分散や、中台両方に依存しすぎない事業体制の構築が重要です。経済安全保障の専門家に相談し、最新動向を継続的に把握することをおすすめします。
9. 優良な海外進出サポート企業をご紹介
今回は、中国と台湾がTPP(CPTPP)への加盟をあいついで申請した理由と背景、そして加盟審査の現状や日本企業が留意すべき経済安全保障上のリスクについて解説しました。
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