ステーブルコインで貿易決済はできる?仕組みと日本の制度・国内の実証・導入の手順
ステーブルコインとは、日本円や米ドルなどの法定通貨と価値が連動するように作られたデジタルの支払手段です。価格が大きく動く暗号資産と違い、受け取った額の価値が保たれやすいため、海外の取引先との貿易決済に使う動きが国内でも始まっています。
ステーブルコインの仕組みと日本の制度、銀行や商社が進めている貿易決済の実証、送金や信用状と比べたメリットと課題、海外の制度の動き、自社の取引で検討するときの手順を解説します。
この記事でわかること
- ・ステーブルコインの仕組みと貿易決済で注目される理由
- ・日本でステーブルコインを発行・取り扱える事業者
- ・銀行と商社が進める貿易決済の実証の内容
- ・送金や信用状と比べたメリットと課題
- ・自社の貿易決済で検討するときの手順
▼目次
1. ステーブルコインとは?貿易決済で注目される理由
ステーブルコインは、ブロックチェーンの上で送れるお金のようなものです。ビットコインのような暗号資産とどこが違い、なぜ貿易の代金のやり取りで期待されているのかを、仕組みから整理します。
法定通貨と連動するデジタルの支払手段
ステーブルコインは、発行者が受け取った日本円や米ドルを預金などで管理し、その額に見合う分だけデジタルの支払手段を発行する仕組みです。1単位が1円や1ドルと同じ価値になるよう設計されているため、ビットコインのように価格が大きく上下することは想定されていません。日本では2022年の資金決済法の改正で「電子決済手段」という区分が設けられ、法定通貨と価値が連動するステーブルコインがこの区分で扱われるようになりました。
貿易の代金のやり取りで期待されていること
貿易の代金は、銀行の海外送金や信用状(L/C)を使って支払うのが一般的です。海外送金は複数の銀行を経由するため着金まで日数がかかることがあり、信用状は船荷証券などの紙の書類を郵送し、手作業で照合する手間がかかります。ステーブルコインはブロックチェーン上で相手に直接届くため、着金までの時間の短縮や、書類の情報と支払いを連動させた事務の効率化が期待されています。
2. 日本のステーブルコインの制度|発行できる事業者は3種類

日本のステーブルコインは、誰が発行するかで使える範囲が変わります。自社の取引で使えるかを考えるには、発行する事業者の種類と、海外で発行されたものを国内で扱う仕組みを知っておく必要があります。
銀行・資金移動業者・信託会社が発行する
資金決済法では、ステーブルコインの発行と償還は送金と同じ扱いになるため、発行できるのは銀行、資金移動業者、信託会社に限られます。資金移動業者が発行する形では1回の送金に上限がある一方、信託会社が受託者となる形は流通の上限額がなく、大きな額の企業間決済に向いています。2025年には資金移動業者として登録したJPYCが日本円建てのステーブルコインを発行し、2026年には大手銀行が信託の形で共同発行する実証も行われました。
海外のステーブルコインは取扱業者を通す
米ドル建てのUSDCのように海外で発行されたステーブルコインを国内で売買・管理するには、電子決済手段等取引業の登録を受けた事業者を通します。国内で初めてこの登録を受けたのはSBI VCトレードで、2025年3月からUSDCを取り扱っています。海外の取引先が米ドル建てのステーブルコインでの支払いを望む場合も、国内では登録を受けた事業者を通して受け取り、日本円に換えることになります。
出典:金融庁「香港・米国・日本のステーブルコイン規制」(2026年11月確認),CoinPost「SBI VCトレード、ステーブルコインUSDCの一般取引開始へ 26日から」(2026年11月確認)
3. 貿易決済でのステーブルコインの実証
2026年に入り、国内の大手銀行や商社が、ステーブルコインを貿易や海外拠点との決済に使う実証を相次いで発表しました。どちらも金融庁の「FinTech実証実験ハブ(決済高度化プロジェクト)」の支援を受けた取り組みです。
輸出書類と決済を連動させる実証
2026年9月29日、貿易プラットフォームのトレードワルツ、NTTデータ、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ信託銀行の6社による実証が金融庁の支援案件に採択されました。輸出企業が貨物や船積みの情報を示す書類をプラットフォーム上で銀行に提出し、銀行が輸出債権の買い取りを承認した情報を起点に、ステーブルコインで決済する流れを検証します。将来は輸入側の銀行や輸入者まで広げ、輸出企業が代金を早く受け取れるようにすることを目指しています。
大手銀行の共同発行と拠点間の決済
三井住友銀行、みずほ銀行、三菱UFJ銀行の3行は、三菱UFJ信託銀行とTISIとともに、日本円建てのステーブルコインを共同で発行する実証を2026年7月に行いました。信託の形で発行し、三菱商事の日本の拠点と海外の拠点の間の決済を対象に、発行・送付・償還の一連の流れと、マネーロンダリング対策などの実務を確かめています。各社は結果をもとに、実用化に向けた検討を続けるとしています。
出典:三菱UFJ信託銀行ほか「TradeWaltz活用の貿易決済に関する実証実験が金融庁PIP支援案件に採択」(2026年11月確認),三井住友銀行ほか「複数銀行によるステーブルコイン共同発行およびクロスボーダー決済高度化に関する実証実験を実施」(2026年11月確認)
4. 送金・信用状と比べたメリットと課題

ステーブルコインは、今の貿易決済の手段をすべて置き換えるものではありません。銀行の海外送金や信用状と比べて、何が良くなり、どこにまだ課題があるのかを並べて見ていきます。
着金の早さと事務の効率化
ステーブルコインは、ブロックチェーン上で取引先のウォレットに直接届くため、銀行の営業日や中継の銀行に左右されにくくなります。輸出書類の確認や買い取りの承認と支払いを連動させれば、書類の郵送や照合の手間も減らせます。米ドル建てのステーブルコインで受け取って必要なときに日本円に換えるなど、為替を交換する時期を自社で選びやすくなる点も、海外の取引先との決済で期待されている点です。
制度と取引先の対応にはまだ差がある
課題は、使える場面がまだ限られていることです。取引先の国でステーブルコインの扱いが認められているか、取引先のウォレットや銀行が対応しているかは国と企業によって違います。受け取ったあとの日本円への交換、会計処理、マネーロンダリング対策の本人確認など、社内の手続きも整える必要があります。信用状のように銀行が代金の支払いを約束する仕組みは、ステーブルコインで送るだけでは得られないため、代金の回収の確実さは別に考えます。
5. 米国・香港・EUのステーブルコイン規制
貿易決済で使うには、日本だけでなく取引先の国の制度も関わります。2024年から2025年にかけて、主要な国と地域でステーブルコインを対象にした法律が相次いで整いました。主な動きをまとめます。
米国はGENIUS法・香港は条例を施行
米国では2025年7月に、ステーブルコインの発行者に裏付け資産の保有や情報開示を求めるGENIUS法が成立しました。香港では同じ年の8月にステーブルコイン条例が施行され、発行者に免許を求める制度が始まっています。EUでは暗号資産市場規則(MiCA)が2024年に完全施行されました。日本は2022年の改正資金決済法で、発行と仲介のそれぞれに登録を求める制度を早くから整えています。
取引先の国の制度で使えるかが決まる
制度が整った国と地域では、登録を受けた事業者が発行・管理するステーブルコインで取引できる環境が広がりつつあります。一方で、ステーブルコインの扱いをまだ定めていない国や、外貨の持ち出しや送金を厳しく管理している国もあります。取引先がある国でステーブルコインによる支払いが認められているか、受け取った代金を自国の通貨に換えられるかを確かめることが、検討の出発点になります。
6. 自社の貿易決済で検討するときの手順

ステーブルコインによる貿易決済は、まだ実証や一部の取引で使われ始めた段階です。自社で検討するときは、いきなり切り替えるのではなく、条件を確かめながら小さく試す順番で進めると、取引先との行き違いを防げます。
取引先と国の条件を先に確かめる
最初に、取引先がステーブルコインでの支払いや受け取りを望んでいるか、どの通貨のステーブルコインを使うかを聞きます。次に、取引先の国でステーブルコインの扱いが認められているか、外貨の送金に制限がないかを調べます。あわせて、今の決済方法で困っていることが、着金の遅さなのか、手数料なのか、書類の手間なのかを整理しておくと、ステーブルコインで解決できる範囲が見えてきます。
取扱業者を選び小さな取引から試す
条件が合えば、電子決済手段等取引業の登録を受けた事業者や、取引のある銀行が提供するサービスを比べます。受け取ったステーブルコインを日本円に換える手順と時間、手数料、会計処理の方法も事前に決めておきます。最初は少額の取引や海外の自社拠点との決済で試し、着金までの時間や社内の事務の負担を確かめてから、対象の取引を広げていく進め方が安全です。
7. よくある質問(FAQ)
Q1. 中小企業でもステーブルコインで貿易決済できる?
海外で発行された米ドル建てのステーブルコインは、国内で登録を受けた取扱業者を通して受け取り、日本円に換える形になります。法人で口座を開けるか、取引の上限や手数料はいくらかは取扱業者ごとに違うため、先に確かめます。ただし、取引先が同じステーブルコインに対応していることが前提です。大手銀行の実証のように、書類と支払いを連動させた仕組みはまだ実用化前なので、当面は今の送金や信用状と使い分けることになります。取引額や頻度が小さい企業ほど、まずは送金の手数料と日数を見直すほうが効果が出やすい場合もあります。
Q2. ビットコインで支払いたいと言われたら?
ビットコインなどの暗号資産は価格が大きく動くため、代金を受け取ってから日本円に換えるまでの間に受取額が変わるおそれがあります。貿易代金として受け取る場合は、契約で通貨と価格の決め方、日本円に換える時期をはっきりさせる必要があります。価格が法定通貨と連動するステーブルコインで受け取る方法を提案する、または従来の送金を続けるなど、価格の変動を自社が負わない形を取引先と話し合います。
Q3. ステーブルコインは安全に使える?
日本の制度では、発行者は銀行・資金移動業者・信託会社に限られ、海外のステーブルコインも登録を受けた事業者を通して扱うため、利用者を守る仕組みが設けられています。一方で、ウォレットの管理を誤って送り先を間違えると取り戻しにくいことや、取引先の国の制度が変わる可能性は残ります。社内で送り先の確認や承認の手順を決め、少額で試してから広げることが、安全に使うための基本です。
8. 海外取引の決済方法の見直しをDigima〜出島〜に相談する
ステーブルコインを含めた決済方法の見直しは、取引先の国の制度、取引の条件、社内の手続きをあわせて考える必要があります。自社で進める場合と相談する場合の違いを並べました。
| 項目 | 自社で調べて決める | Digima〜出島〜に相談する |
|---|---|---|
| メリット | 取引先と直接話して決められる | 貿易と決済の実務に詳しいサポート企業と進められる |
| 向いている企業 | 貿易の担当者がいて取引先が決まっている | 決済方法の選び方から見直したい |
| かかる手間 | 相手国の制度とサービスの比較 | 今の取引と困っていることを伝える |
| 費用 | 調査の人件費 | 紹介は無料(支援の費用は依頼先と決める) |
Digima〜出島〜に相談するメリット
1つ目は、着金の遅さ、手数料、代金の回収といった今の決済の困りごとを整理するところから始められることです。2つ目は、取引先の国や取引の形に合わせて、貿易や海外送金の実務に詳しいサポート企業を紹介してもらえることです。3つ目は、決済だけでなく、輸出入の手続き、販路の開拓、現地法人の設立まで、海外取引に関わる実務をまとめて相談できることです。新しい決済手段を試す前に、今の取引の条件を見直すきっかけにもなります。
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