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海外で選ばれる理由をどう言語化するか|「日本製だから」が買い手の評価項目に入らない理由と、強みを1行に絞る4ステップ

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海外の取引先から「なぜ御社なのか」と聞かれて即答できない中小企業の経営者・事業責任者向けに、買い手が新しい仕入先に求める4項目(品質65.5%・価格64.9%・安定性52.1%・近さ48.6%)を確認し、自社の強みを3つ出して証拠を付け、競合も言えるものを消して1行に絞る手順を、架空企業の記入例と30日の進め方つきで解説します。

「なぜ御社なのか」。海外の取引先から投げられるこの問いに、30秒で答えられる日本企業は多くありません。

日本の魅力そのものへの評価は、たしかに上がっています。内閣府知的財産戦略推進事務局の資料によると、クールジャパン関連産業の海外展開は最新数値で27.1兆円。前回調査値の19.1兆円から8.0兆円、率にして41.92%増えました。ところが、日本に来てもらう形の売上は縮み始めています。日本政府観光局(JNTO)の推計では、2026年8月の訪日外客数は309万8,900人で、前年同月比9.6%減でした。

では、こちらから出ていけばよいのか。その先で待っているのは需要不足ではなく、競争です。ジェトロが3,369社から回答を得た調査では、輸出が減った理由として「他社製品との競合の激化」を挙げた企業が26.2%にのぼり、前年度から4.7ポイント増えました。需要が消えたのではなく、自社が選ばれなかったという理由が上位に入っています。

そして買い手が新しい仕入先に求める項目には、「日本製だから」という欄がありません。本記事では、買い手の評価軸を確認したうえで、自社が選ばれる理由を3つ出し、証拠を付け、競合も言えるものを消して1行に絞るまでの手順を、記入例と30日の進め方つきで整理します。

この記事でわかること

  • ・海外の買い手が新しい仕入先に求める4項目と、そこに「日本製」が入っていない理由
  • ・自社の強みを3つ出し、証拠を付け、競合も言えるものを消して1行に絞る手順(記入例つき)
  • ・商品そのものに差がない会社が、どこで差を見つけるか
  • ・その1行を最初に見せるべき相手と、30日で決めきるための週ごとの段取り

1. 海外の買い手は、御社の何を見て選んでいるのか

海外の買い手が新しい調達先を検討する際に重視する4項目の比率(全体と中小企業の比較)
図:買い手が新しい調達先に求める4項目(ジェトロ調査・全体と中小企業)

自社の強みを言語化する前に、相手が何を見ているのかを確かめます。買い手の評価軸が分からないまま強みを並べても、相手の採点表に載らない項目を説明することになります。まずは買う側の判断基準を、公的調査の数字で押さえます。

買い手の判断軸は、品質・価格・安定性・近さの4項目に集まる

ジェトロ(日本貿易振興機構)が2025年11月4日から12月3日にかけて9,647社に実施し、3,369社から回答を得た「2025年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(第24回)」に、そのものずばりの設問があります。新たな調達先(サプライヤー・仕入先)を検討するにあたって重視する要素です。

複数回答1,102社の集計で、品質の高さが65.5%、価格の安さが64.9%。続いて、生産地または販売先との関係で地政学リスクが相対的に低いという意味での安定性が52.1%、生産地・販売先への地理的近接性(輸送コストの低さ)が48.6%でした。FTAなど制度上のメリットの豊富さは27.3%、米国による関税措置の影響の小ささは12.9%で、上位4項目とは差が開いています。

この設問は、地政学リスクが調達に影響している(またはその懸念がある)と答えた企業を対象としたものです。つまり、供給の切れやすさを現実の問題として意識している買い手が、何を見て仕入先を選び直すかを示した数字だと読めます。

中小企業が相手でも、見られる順番は変わらない

取引相手が大企業か中小企業かで評価軸が変わるのではないかという疑問には、同じ調査が答えています。中小企業931社に限った集計では、品質の高さ63.4%、価格の安さ62.6%、安定性49.7%、地理的近接性46.5%。順位は全体とまったく同じです。

大企業171社では品質・価格がともに77.2%、安定性64.9%、近接性60.2%と、いずれの数値も高く出ます。相手の規模が大きいほど、4項目それぞれの要求水準が上がると考えたほうが実務に近いです。大企業を狙うなら、同じ4項目についてより固い証拠を用意する必要があります。

出典:ジェトロ「2025年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(第24回)」(2026年2月12日発表)

2. 「日本製だから」が、買い手の評価項目に入っていない

4項目を並べたときに気づくのは、そこに国籍を示す欄がないという事実です。日本という看板がどこまで効き、どこから効かなくなるのか。その境目を、親日度の調査データで確かめます。

看板が届くのは入口までで、評価されるのは会社単位の品質

買い手の評価項目にある「品質の高さ」は、日本製という国籍ではなく、その会社の品質です。「安定性」も、日本に本社があることではなく、供給が途切れないことを指します。

日本という看板は、最初のメールを開いてもらう段階までは効きます。展示会で足を止めてもらう、問い合わせのきっかけになる。そこまでは事実です。ただし、最後の一押しは「なぜ、この会社なのか」に答えられるかどうかで決まります。同じ国の会社が複数候補に並んだ瞬間に、国籍は比較軸から消えます。

日本への好意は、相手の国によって倍ちがう

看板の効き方そのものも、相手の国によって大きく変わります。内閣府知的財産戦略推進事務局が2025年10月3日に公表した「新たなクールジャパン戦略の推進」では、日本を「好きな国」とする率が全世界の国・地域平均で56.2%、アジア平均で60.3%、欧米豪平均で31.0%と報告されています。

国別に見ると、オーストラリア41.5%、米国36.7%、フランス27.7%、英国25.4%。順位で見ると、アジアではすべての国・地域で日本が「好きな国」の1位ですが、オーストラリアで2位、米国で3位、フランスで5位、英国では8位です。

つまり欧米向けの商談では、相手の7割前後にとって日本という看板は前提になっていません。「日本の伝統」から入る会社紹介を欧米のバイヤーに出しても、刺さらない相手が多数派だということです。看板を前に出すか、中身の数字を前に出すかは、相手の国を見てから決める判断になります。

出典:内閣府 知的財産戦略推進事務局「新たなクールジャパン戦略の推進」(2025年10月3日)

好かれていても、待っている形の売上は減り始めた

好意が高いことと、顧客が来ることは別の話です。日本政府観光局(JNTO)が2026年9月16日に発表した推計値では、2026年8月の訪日外客数は309万8,900人で前年同月比9.6%減。一方で韓国、台湾、香港、マレーシア、インドネシア、インド、米国、メキシコ、フランス、イタリア、スペイン、ロシア、北欧地域、中東地域の14市場では、8月として過去最高を記録しています。イタリアとスペインは単月として過去最高でした。

減っている市場と伸びている市場に、はっきり分かれています。全体の数字だけを追っていると、この分かれ方が見えません。特定の国からの訪日客に売上を乗せていた会社ほど、月ごとの数字が揺れているはずです。

内閣府の前掲資料も、クールジャパン関連産業の課題として「国内需要に依存したビジネスモデルからの脱却」を挙げています。待つのをやめてこちらから出るなら、相手の採点表に載る言葉を用意しておく必要があります。

出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年8月推計値)」(2026年9月16日発表)

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3. 国内の商談では要らなかった「証拠」が、海外では要る

同じ商品を売るのに、国内と海外で説明の仕方が変わる理由を整理します。変わるのは商品ではなく、相手が持っている前提の量です。

相手が持っているのは、送った資料と価格表だけ

国内の商談では、相手は自社のことをある程度知っています。業界での評判、納期を守ってきた実績、前任者との経緯。共有されている前提があるので、「いつもの品質で」という一言が通ります。

海外の商談では、その前提が全部ありません。相手の手元にあるのは、送った資料と価格表だけです。工場を見たこともなく、同業からの評判も聞いていません。共有された前提がない相手に対しては、品質の高さも供給の安定性も、こちらから証拠つきで示さないかぎり判断材料に入りません。

示せない強みは、相手にとって存在しない

社内で語られている強みの多くは、証拠の形になっていません。「品質にこだわっています」「柔軟に対応できます」。言えるけれど示せない内容は、相手にとっては無いのと同じ扱いになります。

証拠とは、数字か固有名詞です。最小ロットが何キログラムからか。直近1年で特注に何件応じたか。不良率が何%か。納期を何日で切っているか。どの規格の認証を取得しているか。相手が自社の社内会議で引用できる形になっていなければ、証拠として機能しません。海外の担当者は、上司や品質部門に説明して承認をもらう立場にいます。その説明に使える材料を渡すのが、資料の役割です。

証拠を出さなければ、比較軸は価格だけになる

示せる項目がなければ、相手が比べられるのは価格だけになります。価格だけの勝負に入った時点で、勝ち目は薄くなります。相手の候補リストには、もっと人件費の安い国の会社が並んでいるからです。

さらに、価格だけで比べられる場所では、為替が振れるたびに自社の立ち位置が動きます。品質を上げても、納期を短くしても、円の水準で勝ち負けが決まる。自社の努力と関係のないところで順位が入れ替わる状態は、事業として置きたくない場所です。

実際に、ジェトロの前掲調査で輸出が減った理由の2位は「原材料コスト上昇に伴う価格競争力の低下」で28.2%、3位が「他社製品との競合の激化」で26.2%でした。1位の「輸出先の国・地域における需要の減少」60.0%と違って、この2つは自社の打ち手が残っている領域です。

4. 選ばれる理由を1行に絞る4ステップ

選ばれる理由シートの4つの記入欄と、競合も言える理由を消して1行に絞る流れ
図:理由を出し、証拠を付け、競合も言えるものを消して1行に残す流れ

ここからは手を動かす作業になります。使う道具は、4つの欄がある一枚の表だけです。理由を出す、証拠を付ける、消す、1行にする。この順番で進めます。

ステップ1|自社が選ばれる理由を3つ書き出す

社内で聞けば、理由は30秒で出てきます。創業から何年の老舗である、原料にこだわっている、小ロットの特注に応じられる。多くの会社でこのあたりが出ます。

ここでは絞らず、まず3つ並べてください。絞る作業はステップ3で機械的に行います。最初から「いちばんの強みは何か」と考え始めると、社内で声の大きい人の意見が残るだけになります。並べてから消すという順番が、判断から主観を抜くための手順です。

ステップ2|それぞれの理由に、数字か固有名詞の証拠を付ける

3つの理由それぞれに、証拠の欄を埋めます。老舗であることの証拠は創業年です。原料にこだわっているなら、産地証明を出せるかどうか。小ロット対応なら、最小ロットの数量と直近1年の特注受注件数です。

この段階で、証拠を書けない理由は落ちます。社内では通っている表現でも、数字や固有名詞に置き換えられないなら、相手の判断材料にはなりません。証拠が見つからない場合は、無いのではなく数えていないだけというケースが多くあります。直近1年分を数えるところから始めてください。

ステップ3|同じ商圏の競合3社のサイトに、同じ言葉がないか確かめる

消し込みの基準は2つだけです。1つ目、その理由が同じ商圏の競合3社のサイトに同じ言葉で書かれていないか。書かれていれば消します。2つ目、その理由に数字か固有名詞の証拠を添えられるか。添えられなければ消します。

競合のサイトを見る作業は、1社あたり10分程度で終わります。会社概要と製品ページに、自社が書こうとしている言葉があるかどうかだけを見てください。「創業60年の老舗」「国産原料にこだわる」といった表現は、同業の多くが同じ言葉で書いています。事実であっても、相手が自社を選ぶ理由にはなりません。

ステップ4|残った1行を、30秒で言い切れる形にする

残ったものを、証拠の数字とセットにして1行に圧縮します。形は「〈数字〉から〈何〉ができる〈業種〉です」で足ります。理由を3つ並べて説明する会社より、1行を証拠つきで言い切る会社のほうが、相手の記憶に残ります。

全部消えてしまうこともあります。その場合は強みが無いのではなく、相手から見て自社と競合の区別がついていない状態だと分かったということです。そこから先は社内ではなく顧客側に答えがあります。直近で受注できた案件を並べて、相手がなぜ自社を選んだのかを聞き直す作業に移ります。

商品そのものに差がない場合は、取引の条件を見る

商品が汎用品で、スペック上の差が付けにくい業種もあります。その場合は商品ではなく、取引の条件で探してください。納期、最小ロット、仕様変更への対応速度、検査の細かさ、トラブル時の応答時間。ここに差が出ている会社は多くあります。

買い手が重視する4項目のうち「品質の高さ」と「安定性」は、製品仕様だけの話ではありません。注文どおりのものが、約束した日に、途切れずに届くかという運用面の評価を含みます。汎用品を扱う会社の勝ち筋は、たいていこちら側にあります。

英訳に取りかかるのは、日本語で1行が決まってから

英語ではどう書くべきかという質問を早い段階で受けますが、訳すのは最後です。日本語の段階で焦点が定まっていない文章を英語にしても、相手には伝わりません。

翻訳で解決するのは言語の壁だけです。何を売りにするかが決まっていないという問題は、翻訳では解決しません。1行が決まってしまえば、訳す対象はその1行と証拠の数字だけになり、初回の商談には足ります。

5. 3つの理由を横に並べて消し込む|架空の設定値による実演

手順を実際に通すと何が起きるかを、架空の会社で見ていきます。ここで使う会社名・年商・従業員数・最小ロット・受注件数は、手順を示すために設定した架空の数値です。実在の企業・実績を示すものではありません。

設定は、だしパックとめんつゆを作る年商15億円の食品メーカー

架空の会社として、だしパック・めんつゆ・業務用調味料を製造する「デジマ食品」を置きます。創業62年、年商15億円、従業員58名、海外売上比率は0%。展示会で名刺交換した相手から英語のメールが1通届き、「なぜ御社なのか」を問われている段階だという設定です。

社内で理由を聞くと、3つ出てきました。創業62年の老舗であること。国産の原料にこだわっていること。小ロットの特注に対応できること。ここまでは多くの会社で同じ並びになります。証拠を書き、競合も言えるかを埋めた結果が次の表です。

3つの理由の消し込み結果

出した理由 書けた証拠 競合も同じことを言えるか 残るか
創業62年の老舗である 登記上の創業年(1964年) 言える。同じ産地に創業100年超の同業が複数ある 消す
国産の原料にこだわっている 主要原料の産地証明を提出できる 言える。同業の多くが会社概要に同じ表現を載せている 消す
小ロットの特注に対応できる 最小ロット30kg、直近1年の特注受注142件 言えない。同規模の同業は最小ロットの数量を公表していない 残す

※表中の社名・数値は、手順を説明するために設定した架空の値です。

消えた2つは嘘ではなく、相手の選択理由にならないだけ

老舗であることも、国産原料であることも、事実です。嘘を書いたわけではありません。ただし競合も同じ言葉を言えるため、相手が自社を選ぶ理由にはなりません。

残った1行は「最小ロット30kgから特注に応じられる、だしの製造会社です」になります。1行しか残らなかったことを物足りなく感じるかもしれませんが、30秒で言える理由は、もともと1行あれば足ります。消す作業のほうが、出す作業より価値を生みます。消して初めて、自社だけが言えることが浮かび上がります。

1行は、証拠の数字とセットでなければ機能しない

「小ロット対応できます」だけでは、消し込みを通っていない状態と同じです。同業の多くが同じ表現を使います。数量と件数が付いて初めて、相手は他社と比べられます。

30kgという数量は、相手の発注計画に直接かかる情報です。142件という受注実績は、体制として回っていることの裏づけになります。数字のない1行は、消し込みを通ったように見えて実は通っていません。証拠の欄が埋まっているかを、必ず確かめてください。

6. その1行を最初に見せる相手は、現地パートナー候補である

1行を作ったあと、最初に誰へ向けて使うのかを決めます。最終顧客より前に、この1行で口説く相手がいます。日本企業の海外展開の実態データから、その相手を特定します。

海外展開で最も多くの企業がつまずくのは、現地パートナー探し

Digima〜出島〜が公表した「海外進出白書(2025-2026年版)」の第2部(海外ビジネス展開を検討したことのある担当者193社へのアンケート、調査期間2025年4月〜5月)では、海外展開で解決すべき課題として「現地パートナー探し」が57.0%で最多でした。海外事業を3年以上継続している企業に限ると63.5%とさらに高くなります。次に多いのが情報収集46.6%、現地調査の実施34.7%です。

同じ調査では、進出形態として「拠点は設けない(パートナー・代理店)」が53.4%で最多を占めます。販路拡大の方法も代理店・パートナー委託が57.5%で最多です。多くの日本企業にとって、海外の売上は代理店やパートナー経由で立ち上がります。つまり最初に「なぜ御社なのか」を問うのは、最終顧客ではなく代理店候補です。

支援する側から見ても、成否を分ける1位は現地パートナー

同じ海外進出白書の第3部(海外進出支援に携わる企業・専門家151社へのアンケート、調査期間2025年4月〜5月)では、海外進出の成否を分ける要因の1位が現地パートナーで68.9%。2位が調査・リサーチと現地ニーズの高さで各61.6%、次にスピード感44.4%、ローカライズと経営陣のコミットが各40.4%でした。

支援する側から見ても、進出企業側から見ても、パートナーが最大の分岐点になっています。そのパートナーは、自社の商品を扱う枠を他社の商品と競わせて決めます。代理店にとっても「なぜこの日本企業を扱うのか」を社内で説明する必要があり、そこで使えるのは1行と数字です。

出典:Digima〜出島〜「海外進出白書(2025-2026年版)」

展示会・商談会は、1行の効きを最短で試せる場になる

海外進出白書の第2部では、販路拡大の方法として展示会・商談会が26.9%、3年以上継続している企業では29.7%が挙げています。展示会は、同じ1行を短期間に何十社へぶつけられる場所です。相手の反応が鈍い項目と、質問が返ってくる項目が分かります。

作った1行を社内で磨き続けるより、相手に当てて削るほうが速く仕上がります。反応が返ってこなければ、証拠の数字を差し替えるか、消した理由を見直してください。

▶ 推奨アクション:
・ジェトロの引き合い案件情報「e-Venue」で、自社の業種に出ている海外企業の求める条件を読み、相手が何を条件に書いているかを確認する
・ジェトロのイベント一覧で、自社の業種に関係する海外見本市・商談会の公開情報を確認し、1行を試す場の候補を洗い出す
・ジェトロの投資コスト比較で、想定する相手国の人件費・輸送条件を確認し、価格以外で比べてもらう必要があるかを見極める
・代理店候補の探し方や1行の通用度について確認が必要であれば、Digima〜出島〜の無料相談から現地の専門家に相談する

7. 30日で「なぜ御社なのか」を決めきる段取り

選ばれる理由を1行に決めるまでの4週間の作業配分と担当部門
図:30日で1行を決めきる週ごとの作業と、聞きに行く先

作業を週ごとに割ると、社内と公開情報だけで1カ月で終わります。出張も調査会社も必要ありません。かかるのは、営業・経理・製造に聞いて回る時間だけです。期限を切らないと、この作業は永遠に着手されません。

1週目|直近1年の受注10件を並べ、相手が言った言葉をそのまま書き取る

直近1年で受注できた案件を10件並べ、なぜ自社が選ばれたのかを営業担当に聞きます。ここで大事なのは、担当者の推測ではなく相手が実際に口にした言葉をそのまま書き取ることです。

「価格が合ったから」「対応が早かったから」という言葉が並ぶなら、それが相手から見た自社の強みです。社内で信じられている強みと、顧客が挙げる理由がずれている会社は珍しくありません。国内案件でも構いません。判断の材料は、社外の言葉のほうが正確です。

2週目|同じ商圏の競合3社のサイトを開き、言葉を突き合わせる

自社が書こうとしている理由と同じ言葉が、競合3社のサイトに載っていないかを確かめます。見るのは会社概要と製品ページで、1社10分あれば足ります。

海外向けの英語サイトを持つ競合があれば、そちらも見てください。日本語では差が出ている表現が、英語にすると全社同じ文言になっている場合があります。海外の買い手が比べるのは英語のページです。

3週目|最小ロット・納期・不良率・対応件数を、経理と製造から集める

残った理由に、数字の証拠をそろえます。最小ロット、標準納期と短納期対応の実績、不良率、直近1年の特注対応件数、クレーム発生時の初動までの時間。経理と製造に聞けば出ます。

数字が社内に無い場合は、数えていないだけです。直近1年分を数える作業を、この週に入れてください。ここで集めた数字は、1行の証拠としてだけでなく、相手の品質部門から届く質問票への回答にもそのまま使えます。

4週目|1行に圧縮し、営業全員が同じ文言を言える状態にする

表を埋め、消し込みを行い、1行に圧縮します。ここで終わりにせず、営業担当が全員同じ1行を言える状態まで持っていってください。担当者ごとに説明が違う会社は、相手側に議事録が回った段階で信用を落とします。

1行と証拠の数字だけを先に英訳し、メール返信のひな型に組み込みます。次に英語の問い合わせが来たとき、返信までの時間が数日から数時間に縮みます。買い手が重視する「安定性」の評価は、こうした応答の速さからも始まります。

▶ 推奨アクション:
・直近1年の受注10件の一覧を今週のうちに営業から受け取り、受注理由の欄を設けて埋めてもらう
・競合3社の日本語サイトと英語サイトのURLを一覧化し、自社が使おうとしている表現との重複を書き出す
・最小ロット・標準納期・不良率・特注対応件数の4項目を、経理と製造に依頼して数値化する
・自社に合う進出の進め方から整理したい場合は、Digima〜出島〜の海外進出タイプ診断で現在地を確認する

8. よくある質問

実務のなかで繰り返し寄せられる質問に、要点だけ簡潔にまとめました。

「なぜ御社なのか」と聞かれたとき、何を答えればよいのですか。

自社だけが言える事実を1つ、数字か固有名詞の証拠とセットで答えてください。理由を3つ並べるより、1つを証拠つきで言い切るほうが相手の記憶に残ります。相手はその場で他社と比べているため、比較したときに差が出る項目でなければ答えになりません。創業年や国産原料のように競合も同じことを言える内容は、事実であっても決め手にはなりません。

「日本製だから」は強みとして使えないのですか。

入口の印象づくりには使えますが、最後の決め手にはなりません。ジェトロの調査で買い手が新しい調達先に重視する項目は品質・価格・安定性・地理的近接性の4つで、国籍そのものは選択肢に入っていません。また日本を「好きな国」とする率は欧米豪平均で31.0%にとどまり、アジア平均60.3%とは倍近い差があります。看板の効き方は相手の国によって変わります。

選ばれる理由が1つしか残らなくても大丈夫ですか。

1つで足ります。商談で自社を説明できる時間は30秒程度で、そこに入る情報量はもともと1行分です。むしろ理由が3つ残った場合は、証拠の弱いものや競合も言えるものが混ざっている可能性が高いため、もう一度消し込んでください。すべて消えた場合は、強みがないのではなく、まだ言葉と数字になっていないという状態です。

商品に特別な違いがない会社は、何を強みにすればよいのですか。

取引の条件を見てください。納期、最小ロット、仕様変更への対応速度、検査の細かさ、トラブル時の応答時間。商品そのものが同等でも、この4つ目5つ目の条件に差が出ている会社は多くあります。買い手が重視する4項目のうち「品質の高さ」と「安定性」は、製品仕様だけでなく供給が途切れないかという運用面の評価も含みます。

英語の資料はいつ作ればよいのですか。

日本語で1行が決まってからです。日本語の段階で焦点が定まっていない文章を英語にしても、相手には伝わりません。翻訳で解決するのは言語の壁だけで、何を売りにするかが決まっていないという問題は翻訳では解決しません。1行が決まれば、その1行と証拠の数字だけを先に訳せば商談には足ります。

9. 海外で選ばれる理由づくりはDigima〜出島〜に相談

買い手が新しい仕入先に求めるのは、品質65.5%、価格64.9%、安定性52.1%、地理的近接性48.6%の4項目でした。そこに国籍の欄はありません。日本という看板が効く範囲は相手の国によって変わり、欧米豪では日本を「好きな国」とする率が31.0%にとどまります。

やることは単純です。自社が選ばれる理由を3つ出し、数字か固有名詞の証拠を付け、競合3社のサイトに同じ言葉があるものを消す。残った1行を、証拠とセットで30秒で言い切れる形にする。今日から着手でき、費用もかかりません。

ただし、その1行が相手の国で強みとして通るのか、どの代理店候補に当てるのが正しいのかは、机の上では判断できません。海外展開の最大の課題は現地パートナー探しで57.0%、支援する側が見た成否要因の1位も現地パートナーで68.9%でした。ここは相手の市場を知っている人の手を借りる領域です。

Digima〜出島〜では、世界各国の進出支援に携わる現地専門家・法律事務所・会計事務所・実績ある日系企業を無料でご紹介しています。選ばれる理由の整理から、現地パートナー候補の選定、商談資料の現地化まで、貴社の状況に合わせたサポートが可能です。まずは無料の海外進出タイプ診断で、自社に合った進出スタイルを確認してみてください。

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