訪日外国人の属性調査の方法|国籍・年齢・消費行動データの集め方と活用術
2025年に訪日外国人数が3,600万人を超え、インバウンド市場は過去最大規模に成長しました。しかし、「訪日客が増えているのに売上が伸びない」と感じている事業者は少なくありません。その原因の多くは、訪日外国人を一括りにしたまま施策を打っていることにあります。国籍や年齢層、旅行形態によって消費行動は大きく異なり、同じ「訪日客」でもニーズはまったく違います。
そこで重要になるのが、訪日外国人の属性調査です。属性データに基づいてターゲットの解像度を上げることで、マーケティング施策の精度は格段に向上します。
本記事では、属性調査がなぜ必要なのかという基本から、押さえるべきデータの種類、無料の公的統計の活用法、自社でのデータ収集方法、施策への落とし込み方までを体系的に解説します。
この記事でわかること
- ・訪日外国人の属性調査に必要なデータの種類と、無料で使える公的統計データソースの活用法
- ・アンケート・POSデータ・SNS分析など、自社で属性データを収集する具体的な方法
- ・収集した属性データをペルソナ設計やチャネル選定に活かし、インバウンド施策の精度を高める方法
▼目次
1. なぜ訪日外国人の属性調査が必要なのか
「訪日客」を一括りにするリスク
インバウンド施策を考えるとき、「訪日外国人」という大きなくくりのまま戦略を立ててしまうケースは珍しくありません。しかし、この姿勢は大きなリスクをはらんでいます。
たとえば、訪日外国人消費動向調査によると、中国からの訪日客の1人あたり旅行支出は約30万円を超える一方、韓国からの訪日客は約10万円前後にとどまります。購入する商品カテゴリも、中国人旅行者は化粧品や医薬品に集中する傾向がある一方、欧米からの旅行者は体験型消費に重点を置きます。
属性を無視して「訪日客向け」の一律な施策を展開すると、どの層にも刺さらない中途半端なプロモーションになりかねません。限られた予算を有効に活用するためにも、ターゲットの属性を正確に把握することが出発点となります。
属性データがマーケティング精度を変える理由
属性データを活用する最大のメリットは、施策の「当たる確率」を飛躍的に高められる点にあります。ターゲットの国籍・年齢層・旅行目的が明確になれば、どの言語で情報を発信すべきか、どのSNSチャネルを使うべきか、どんな商品を前面に押し出すべきかが具体的に見えてきます。
たとえば、自社の顧客に台湾人の30〜40代女性が多いとわかれば、繁体字でのInstagram発信やGoogleマップの口コミ対策に注力するという判断ができます。逆に属性データがなければ、「とりあえず英語で発信しよう」といった曖昧な施策に終始してしまいます。観光庁の調査でも、訪日前の情報収集手段は国籍によって大きく異なることが明らかになっており、属性を踏まえたチャネル設計がインバウンドマーケティングの成果を左右します。
2. 押さえておくべき属性データの種類
国籍・地域・言語
属性調査の最も基本的な軸が「国籍・地域・言語」です。
訪日外国人の国籍構成は、東アジア(中国・韓国・台湾・香港)が全体の約7割を占めますが、近年は東南アジアや欧米豪からの訪日客も着実に増加しています。国籍データを把握することで、たとえば「自社エリアには台湾と香港からの来訪者が多い」といったファクトが判明し、対応すべき言語(繁体字)や情報発信チャネルを特定できます。同じ「中国語圏」でも、中国本土・台湾・香港では使用するSNSや好まれるコンテンツの傾向が異なるため、国籍と地域の粒度で分けて把握することが重要です。マーケティング精度を高めるには、この基本軸を丁寧に押さえることが欠かせません。
年齢層・旅行形態(個人/団体/FIT)
国籍と並んで重要なのが、年齢層と旅行形態の把握です。
20〜30代の若年層はSNSやOTA(オンライン旅行代理店)を駆使して個人旅行(FIT=Foreign Independent Travel)を組み立てる傾向が強く、体験型コンテンツへの関心が高いのが特徴です。一方、50代以上のシニア層はツアーを利用する割合が高く、買い物やグルメに予算を多く配分します。旅行形態についても、団体ツアーの場合は旅行会社を通じたBtoBアプローチが有効ですが、FITの場合はGoogleマップの口コミやSNSが来訪のきっかけとなるため、デジタルマーケティングが直接的な成果に結びつきます。訪日外国人の個人旅行比率は年々上昇しており、ターゲットの旅行形態に合ったアプローチ手段を選ぶことが求められます。
消費金額・購買カテゴリ・滞在日数
消費金額・購買カテゴリ・滞在日数のデータは、マーケティング施策の具体化に直結する重要な指標です。
訪日外国人の1人あたり旅行支出は平均で約20万円台後半ですが、国籍によって2倍以上の差があります。たとえば、オーストラリアからの訪日客は平均滞在日数が12日を超え宿泊費や交通費の割合が高い一方、韓国からの訪日客は3〜4泊の短期滞在が中心で飲食や買い物に集中投下する傾向があります。こうした消費パターンの違いを把握することで、「高単価商品を訴求すべきか、リーズナブルな体験メニューを充実させるべきか」といった具体的な施策に落とし込めるようになります。滞在日数は訪問エリアの広さにも関係するため、自社の立地が初訪日者の周遊ルートに入っているかの判断材料にもなります。
3. 無料で使える公的統計データソース
観光庁「訪日外国人消費動向調査」の読み方
訪日外国人の属性調査で最初に活用すべき情報源が観光庁の「訪日外国人消費動向調査」です。
四半期ごとに公表され、国籍別・目的別の旅行支出額、購入商品カテゴリ、満足度、再訪意向などが網羅されています。データはExcelで公開されており、自社分析に合わせた加工も容易です。
読み方のポイントとして、まず「全体平均」と「国籍別」の比較から始めましょう。全体平均だけでは実態を見誤る場合があるため、ターゲット国籍のデータを個別に確認することが大切です。さらに経年変化を追うことでトレンドを把握できます。コロナ前と比較して旅行支出の内訳がどう変わったか、体験型消費の比率がどの程度伸びているかを読み取ることで、施策の方向性を定める材料になります。調査結果は観光庁のウェブサイトから無料でダウンロードできます。
JNTO統計・出入国管理統計の活用法
観光庁の消費動向調査と合わせて活用したいのが、JNTO(日本政府観光局)の訪日外客統計と出入国在留管理庁の出入国管理統計です。JNTO統計では国籍別の訪日者数が毎月速報値で公開されており、「前年同月比で東南アジアからの訪日客が20%増加している」といったマクロトレンドを素早く把握できます。出入国管理統計は空港別の入国者数も含まれるため、自社拠点の地域にどの国籍の訪日客が多いかを推定するのに役立ちます。これらの公的統計は単体で見るのではなく、掛け合わせることで精度が高まります。JNTO統計で訪日者数トレンドを把握し、観光庁調査で消費パターンを深掘りする組み合わせが効果的です。いずれも無料で、コストをかけずに属性調査の基盤を整えられます。
4. 自社で属性データを収集する方法
アンケート・ヒアリング調査の設計ポイント
公的統計では「マクロの傾向」はわかりますが、自社の顧客に特化した属性データは自分で集める必要があります。最もシンプルで効果的な手法がアンケート調査です。
設計のポイントとして、まず設問数は5〜8問に絞りましょう。訪日外国人は旅行中の限られた時間のなかで回答するため、10問を超えると離脱率が大幅に上がります。設問内容は、国籍・年齢層・旅行目的・来店のきっかけ・満足度の5項目を基本とし、自社の目的に応じて1〜3問を追加する形が理想的です。実施方法としては、店頭でのタブレットアンケートや、レシートにQRコードを印刷してオンラインフォームに誘導する方法があります。多言語対応(最低でも英語・中国語簡体字・繁体字・韓国語)を施すことで回答率がさらに向上します。収集したデータは月次で集計し、国籍別の傾向変化を定点観測していくことが重要です。
POSデータ・予約データ・SNS分析の活用
アンケート以外にも、既存の業務データから属性情報を抽出する方法があります。
まずPOSデータですが、免税対応レジを導入していれば、免税処理時にパスポート国籍と購入内容が紐づいたデータを蓄積できます。「台湾人旅行者は化粧品の購入率が高い」「米国人は購入金額が大きい」といったファクトを導き出せます。予約データも貴重な情報源です。ホテルや体験アクティビティの予約システムには国籍・人数・予約経路が記録されている場合が多く、集計するだけでターゲット属性が浮かび上がります。
さらにSNS分析も有効です。InstagramやGoogleマップのレビュー、Xiaohongshu(小紅書)で自社関連の投稿をモニタリングすれば、どの国籍のユーザーがどんな切り口で発信しているかがわかります。複数のデータソースを組み合わせることで、属性の全体像が明らかになります。
5. 属性データを施策に落とし込む方法
ペルソナ設計への応用
収集した属性データを施策に活かすには、「ペルソナ設計」のステップが欠かせません。ペルソナとは、ターゲット顧客を具体的な1人の人物像として描いたものです。属性調査で得られたデータを組み合わせ、たとえば「30代の台湾人女性、個人旅行、年2回訪日、旅行支出は15万円、情報収集はInstagramとGoogleマップが中心、グルメと美容に関心が高い」といった人物像を描きます。
重要なのは、願望ではなくデータに基づいた実態を反映することです。ペルソナは主要な国籍や属性パターンごとに2〜3パターン作成すると、施策の優先順位づけがしやすくなります。ペルソナが明確になれば、「訪日前にどこで情報を探すか」「店頭でどんな体験を求めるか」というカスタマージャーニーを想定でき、施策全体の一貫性を保てます。
チャネル選定・コンテンツ企画への反映
ペルソナが固まったら、次はチャネル選定とコンテンツ企画です。ターゲットの情報行動に基づいて、どのチャネルにリソースを集中すべきかを判断します。
たとえば台湾人旅行者がメインターゲットであれば、Googleマップの口コミ対策とInstagramでの繁体字コンテンツ配信が優先施策です。中国本土からの訪日客がターゲットなら、WeChatやXiaohongshu(小紅書)での情報発信が必須です。欧米豪のFIT旅行者を狙うのであれば、TripAdvisorやGoogle検索での英語SEOが効果的です。
コンテンツ企画についても、属性データがあれば「何を伝えるべきか」が明確になります。「体験型消費」の比率が高い国籍には、商品紹介よりも体験ストーリーを軸にしたコンテンツが響くでしょう。分析結果はチーム全体で共有しておくことが、施策の精度を高め続ける鍵です。
6. よくある質問(FAQ)
Q1. 訪日外国人の属性調査は無料でできますか?
はい。観光庁の「訪日外国人消費動向調査」やJNTOの統計データは無料で公開されています。国籍別・四半期別の消費額や旅行形態などを把握できるため、まずは公的統計から着手するのがおすすめです。
Q2. 属性調査で最低限押さえるべきデータ項目は何ですか?
国籍・年齢層・旅行形態(個人旅行かツアーか)・消費金額・購買カテゴリの5項目が基本です。この5つがあれば、ターゲット像の大枠を描くことができ、施策の方向性を定めるのに十分な解像度が得られます。
Q3. 自社でアンケート調査を行う場合、サンプル数はどのくらい必要ですか?
統計的に信頼性のあるデータを得るには、最低でも100〜200サンプル程度が目安です。ただし、特定の国籍に絞った調査や傾向の把握が目的であれば、30〜50サンプルでも十分に有益な示唆を得られます。
Q4. POSデータから訪日外国人の購買行動は把握できますか?
免税対応POSレジを導入している場合、免税処理のデータからパスポート国籍・購入商品・金額などを紐づけて分析できます。決済手段別の集計と組み合わせると、より精度の高い購買行動データが得られます。
Q5. SNS分析で訪日外国人の属性データは取れますか?
直接的な属性データの取得は難しいものの、投稿言語・位置情報・ハッシュタグの傾向から、国籍や関心カテゴリを推定できます。特にInstagramやXiaohongshu(小紅書)は訪日客の投稿が多く、定性的なインサイトの収集に有効です。
Q6. 属性調査の結果はどのくらいの頻度で更新すべきですか?
観光庁の統計データは四半期ごとに公表されるため、少なくとも四半期に一度は最新データを確認しましょう。自社データについては、繁忙期と閑散期でターゲット層が変わることも多いため、シーズンごとの更新が理想的です。
7. まとめ
訪日外国人の属性調査は、インバウンドマーケティングの成果を左右する重要な基盤です。「訪日客」を一括りにせず、国籍・年齢層・旅行形態・消費行動といった属性データに基づいて戦略を立てることで、施策の精度は大きく向上します。まずは観光庁やJNTOの無料統計でマクロの傾向を把握し、次にアンケートやPOSデータ、SNS分析で自社に特化したインサイトを収集しましょう。得られたデータをペルソナ設計やチャネル選定に反映させ、ファクトに基づいた施策を展開することが成功への近道です。属性データは一度集めて終わりではなく、四半期ごとに更新し、変化する市場に柔軟に対応していくことが求められます。属性調査やインバウンド施策の進め方にお悩みの方は、ぜひ専門家への相談もご検討ください。
「Digima〜出島〜」には海外進出サポート企業が多数登録しています。訪日外国人の属性調査の設計から、データに基づくインバウンドマーケティング戦略の立案、多言語対応や消費者行動分析まで、インバウンド施策を包括的にサポートできる専門企業をご紹介いたします。「どの国籍をターゲットにすべきかわからない」「属性データを集めたが施策への落とし込み方がわからない」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。






























