『千と千尋の神隠し』から考える、エンタメの中国進出の可能性
その規模は100兆円とも言われる世界のエンタメ市場、その中でも成長著しいのが中国市場です。一方、日本のエンタメ市場は12兆円程度で、段々と縮小傾向となっています。日本のエンタメ企業にとっても海外進出が急務となっているのです。 そんな中、宮崎駿監督作品『千と千尋の神隠し』が、18年の歳月を経て中国にて劇場公開がされました。 『千と千尋の神隠し』といえば日本映画における興行収入歴代1位の308億円を記録した作品です。 そこで本記事では、『千と千尋の神隠し』は、なぜヒットしたのかを紐解き、エンタメ分野における中国進出の可能性・ポイントを考察していきます。是非、御社の海外ビジネスにお役立てください。
▼ 『千と千尋の神隠し』から考える、エンタメの中国進出の可能性
1. 最新作『トイ・ストーリー4』を凌ぐ初週興行に
『千と千尋の神隠し』といえば日本映画における興行収入歴代1位の308億円を記録した作品です。 その『千と千尋の神隠し(中国名:千与千尋)』は2019年6月21日に中国で劇場公開されました。公開6日目(2019年6月26日)には興行収入が2.78億元、日本円にして40億円を突破しました。 中国市場においてこれはヒットなのかと言えば、大ヒットと断言ができます。 日本では2019年7月12日から公開となる『トイ・ストーリー4』が中国で『千と千尋の神隠し』と同日に公開されましたが2倍以上の興行収入を叩き出しているのです。待望の新作『トイ・ストーリー4』に、18年前に日本で公開された『千と千尋の神隠し』が勝ったということです。これは大ヒットを超えて驚異的な現象と言っても過言ではないです。 映画というのは宣伝がうまく機能すれば、仮に期待値以上の鑑賞満足度とならずともヒットはするものです。しかし、『千と千尋の神隠し』は宣伝が機能しただけでなく、評価も抜群です。 とりわけ、既に中国で劇場公開されている『となりのトトロ』などから宮崎駿監督のファンとなった層が18年の時を経て、宮崎駿監督最高傑作とも言われる『千と千尋の神隠し』を劇場で見れて喜びを各方面で爆発させているようにも見えます。 そういった熱い感想、口コミは今後の客足に確実に貢献すること間違いありません。
2. 今までの日本アニメと比べてどの程度ヒットしているのか
『千と千尋の神隠し』は順調な客足であることはおわかりいただけたと思います。では、このヒットは今までの中国市場における日本アニメと比べてどの程度の客足なのでしょうか。
まず、『となりのトトロ』との比較ですが、『千と千尋の神隠し』は既に『となりのトトロ』の最終興収を超えています。『となりのトトロ』の最終興収は1億7368万元(日本円で約27億6000万円)。
続いて『STAND BY ME ドラえもん』との比較を行います。『STAND BY ME ドラえもん』は最終興収は2億900億元(日本円で約33億7000万円)。この数字も既に抜き去っています。
最後に中国市場における日本映画歴代最高の興行収入作品との比較を行います。ずばり『君の名は。』です。『君の名は。』の最終興収は5億7662万(日本円で約95億円)です。この数字はまだ抜き去っておりません。
公開から3日間の興行収入は『君の名は。』が2億8700万元(約45億9000万円)、『千と千尋の神隠し』が1億9200万元(約30億7000万円)であるため、『君の名は。』を抜いて中国市場歴代1位の日本映画になるかは2019年7月1日現在まだ定かではありません。
3. なぜ"今更の公開"でヒットをしたのか
では、なぜ『千と千尋の神隠し』は18年の時を経て大ヒットを記録したのでしょうか。 これには大きく3つの要因があります。
(1)2018年の『となりのトトロ』劇場公開によるニーズの醸成
スタジオジブリの作品において、中国で劇場公開された作品は『となりのトトロ』のみです。しかし、初公開と言えども(2)で述べる海賊版DVDや正規品DVD(日本での購入・持ち込み含む)によって既にファンが出来上がっていたのです。その劇場公開によって、よりファンは増えました。その翌年に満を持しての『千と千尋の神隠し』と考えればこのヒットは納得のいくものと言えます。
(2)海賊版DVDの普及によるニーズの醸成
中国では海賊版DVDや違法ダウンロードが非常に多く出回っています。その問題はここでは深掘りしませんが、それによって多くの中国人が既に宮崎駿作品や『千と千尋の神隠し』そのものを鑑賞していることは自明の理です。仮に既に鑑賞をしていても、海賊版で見たのであれば正規の劇場公開クオリティを見たくなるのは必然です。ファンが生まれニーズが醸成された上での公開。こちらも(1)同様に満を持してという言葉が最適と言えます。
(3)政治的緊張の緩和
先日開催されたG20大阪サミットにおいて、安倍晋三首相が中国の習近平主席へ来週国賓での来日を打診し、習近平主席は好反応を見せました。日本と中国の間には様々な政治的・歴史的問題があるのは事実ですが、それでもここ数年は緊張は緩和をしています。現在の日本と韓国との首脳会談すら開かれない事態と比較すればイメージは付きやすいでしょう。その緊張緩和は、国民の日本イメージの緩和に繋がっています。『千と千尋の神隠し』に限らず、『君の名は。』もヒットした要因はこれと言えるでしょう。
4. まだまだ小さい日本映画市場
ここまで『千と千尋の神隠し』や『君の名は。』などの数字を示してきましたが、ヒットこそしているものの大旋風を巻き起こしているレベルではありません。 中国の映画市場規模は、アメリカに次ぐ世界第2位です。(意外なことに第3位は日本です) そんな中国市場における昨年の興行収入トップ10を見てみましょう。
<2018年 中国市場での興収ランキング>
※「中国票房」のデータを参照 1位『オペレーション:レッド・シー』 =36.5億元(589億円) 2位『僕はチャイナタウンの名探偵2』 =33.9億元(547億円) 3位『ニセ薬じゃない!』 =30.9億元(499億円) 4位『Hello Mr. Billionaire』 =25.5億元(412億円) 5位『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』 =23.9億元(386億円) 6位『Monster Hunt 2(英題)』 =23.4億元(378億円) 7位『アクアマン』 =19.9億元(321億円) 8位『ヴェノム』 =18.7億元(302億円) 9位『ジュラシック・ワールド/炎の王国』 =16.9億元(273億円) 10位『レディ・プレイヤー1』 =13.9億元(224億円) 第10位の『レディ・プレイヤー1』ですら『君の名は。』の2倍です。もちろん『君の名は。』も『千と千尋の神隠し』も大ヒットです。しかし、中国市場においてはまだまだ上がいるのです。 これは逆に言えば、中国市場において日本映画はまだまだ上を目指せる伸びしろとも言うことができるでしょう。
5. 中国のエンタメ市場で日本企業は存在感を見せれるか
では、ビジネスの視点で、エンタメ市場のおいて日本企業はどの程度勝算があるのでしょうか。
映画においては今の政治的緊張緩和が続き、確固たるニーズに響けばヒットをする土壌はあるでしょう。特に日本アニメは、中国に限らず全世界でそのクオリティは認められ、多くのファンを日々生み出しています。
そう考えると、まだまだ市場にはチャンスが多く眠っていると言って間違いはないです。
まず、エンタメに限らずですが中国は世界最大の経済マーケットです。また、豊富な労働力や安価な賃金、開発区の優遇政策なども考えるとただ単にエンタメを日本から持ち込むだけでなく、中国との協業の可能性も視野に入ってまいります。
ただし、国家による外資規制が存在したり、独特のビジネスコミュニケーション、独特の購買原理などもあるため、「市場をしっかりと知る」その下準備はしっかりと行うべきです。
つまり、先例を知り、戦略をしっかりと立てることが最重要と言えますので、本記事を起点に様々な情報を確認してみてください。
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