在留外国人の活用が日本企業の海外ビジネスを変える

2020年の東京オリンピックに向け、インバウンドビジネスの熱量はますます激しいものとなっています。それに対して「現在のブームはインバウンドのひとつの側面しか見ていない」と指摘するのが、株式会社YOLO JAPANの代表取締役・加地太祐氏。
日本初の「外国人向けオンラインハローワーク」を運営する加地氏が注目するのは「在留インバウンド」と呼ぶべき、日本に住む外国人が生み出す新たな市場。
日本企業の海外進出にも大きなインパクトを与える「在留インバウンド」とは何なのか? その秘めた可能性と、海外ビジネスにおける大きなメリットについて、わかりやすく解説していただきました。インバウンドもアウトバウンドも含めた、海外ビジネスに関わるすべての人が必見のインタビューです!
1. 「在留インバウンド」とは?
忘れてはいけないのは「日本に住み、働いている外国人」
ーー まずは御社について教えてください
加地:
現在、大阪・東京・フィリピンに拠点を持ち、英会話の家庭教師の派遣事業を展開しています。実は…私がもともと生徒として通っていた英会話学校を助ける形での創業で、様々なエピソードがあるのですが、スペースに収まりきらなくなってしまうので、それはまたの機会にしましょう(笑)
先述の英会話講師の派遣業に加えて、日本に住む外国人を対象とした求人サイト「YOLO JAPAN」というサービスを展開しています。2018年4月時点で、208国籍・3.7万人が登録している求人サイトとなっています。実は本インタビューのテーマにもつながるのですが、この「YOLO JAPAN」は非常に大きな可能性を持ったサービスなんです。

ーー では、今回のテーマである「在留インバウンド」とは何なのでしょうか?
加地:
みなさんが「インバウンド」という言葉からイメージするのは、「訪日外国人」ですよね。彼らにいかにお金を使ってもらうか、ということがインバウンドビジネスの主軸になっていると思います。
しかし、忘れてはいけないのは「日本に住み、働いている外国人」です。彼らの存在も立派な「インバウンド」なのです。
2017年6月末時点の在留外国人数は247万人にもなり、毎年15%以上の勢いで増えています。もちろん国外に出ていく人もいるので、新たに日本に来て働き始める人数は毎年40万人ほどとなります。一方で、日本の労働人口は2030年までに800万人減ると言われています。このままでは、日本の労働力は足りなくなってしまうでしょう。そのギャップを「在留インバウンド」によって埋めてもらうのです。
彼らが日本企業に提供できるリソースは様々です。労働力だけではありません。当然、いわゆるグローバル人材としての能力も高いものがあります。さらに、外国語での接客や翻訳、外国マーケットのニーズ調査、モニター調査など、そのニーズは多岐に渡ります。
私はこの「在留インバウンド」の活用こそが、インバウンドを含めた日本企業の海外ビジネスの切り札になると考えています。そして、それをオンラインサービス化したのが「YOLO JAPAN」であり、後ほどお話しするシェアオフィスの「YOLO BASE」なのです。
2. 在留外国人の人脈をフル活用したサービス
「人脈」の力をフル活用できるシステム
ーー それでは「YOLO JAPAN」について詳しく教えてください。
加地:
私たちがつちかってきた在留外国人の人脈をフル活用したサービスとなっています。
在留外国人の方にとっては、採用マッチングサイトとして、自身の職探しやスポットの調査案件などを請け負うことができるサービスです。また、サイト独自の「ハンター」というシステムがあり、仮に自分には合わない求人案件であっても、知人をレコメンドすることで、双方で利益を得ることができます。
そして企業側にとっては、この「ハンター」のシステムによって、これまでリーチできなかった人材にアプローチできるメリットがあります。「知り合いを6人経由すれば、世界中の誰にでも繋がることができる」と言われていますが(「六次の隔たり」)、その「人脈」の力をフル活用できるシステムになっています。
また、海外市場向けの商品開発に必要とされる「市場ニーズ調査」や「モニター調査」の人員を確保することも容易に可能です。
例を挙げると、ひとつのモニター案件で、100名の募集に対し数1,000件の応募があるほどで、企業側は質の高いモニターを選ぶことができます。モニターやニーズ調査の場合、性別や宗教、身長・体重など、様々な募集要件があると思いますが、「YOLO JAPAN」なら容易に見つけることができるはずです。
現在、外国人の登録者は3.7万人、利用企業は大手を中心に80社ほどになっています。2020年までには登録者は30万人を超える想定です。
3. 日本在住の外国人の地位向上、日本社会の労働力不足の改善を目指す
日本で働く外国人が「正規の労働者」として活躍できる世界を
ーー では逆に、外国人労働者を活用する際の課題とは何でしょうか?
加地:
やはり求人案件との「ミスマッチ」ですね。もちろん日本人との間でも生じるものですが、言葉や文化の違いによって、外国人労働者の場合はミスマッチが起きやすい傾向があるかもしれません。
ですから、そうした課題に関しても「YOLO JAPAN」では解決できるシステムがあります。まず、「一次面接での適正診断」を徹底しています。日本語能力のチェックはもちろんのこと履歴書や経歴書ではわからない性格、職業適性も見極めています。また、企業側の求人・募集案件に関してもヒアリングした上で、最適な形へと編集した上で情報をアップしています。これらによってミスマッチを未然に防ぐことができます。
さらに、在留外国人の方々に、日本で働くための教育を受けてもらうことで、より高度で効率のいい仕事をできるようになってもらうことも必要です。現在は、外国人労働者向けの研修などを行っていますが、2019年には、先ほどお話しした、「YOLO BASE」という、日本初の外国人教育訓練施設兼シェアオフィスを、大阪の一等地に立ち上げる計画を進めています。
ーー 在留外国人の方々の存在には、とても大きな可能性を感じますね。最後に今後の展望をお願いします。
加地: 私たちのミッションとして、日本在住の外国人の地位向上、日本社会の労働力不足の改善があります。 今回お伝えした数字の目標などを別にするならば、私たちの活動によって「不法労働者」を減らしていければと思っています。私たちのサービスを通して、日本で働きたい外国人の方々が「正規の労働者」として活躍できる世界を目指していきます。
プロフィール:加地 太祐(かじ たいすけ) 株式会社YOLO JAPAN 代表取締役 大阪府出身。2004年に英会話スクールを創業。その後、東京・大阪での英会話家庭教師事業、オンライン英会話事業などを経て、2016年に、外国人雇用のノウハウを活かした「YOLO JAPAN」をローンチ。 東京大学法科大学院などで講師として登壇に立つほか、書籍「成功する人の考え方」(ダイヤモンド社)も出版。
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