アポスティーユとは?国際文書認証の基礎知識や申請方法を解説
アポスティーユ (Apostille) とは、日本の公文書を外国の官公庁に提出する際に必要とされる、〝その書類が確かに日本の公的機関から認証されて発行された公文書である〟ことを証明する付箋による証明を指します。
海外にて、会社設立、婚姻・離婚・出生、査証取得、不動産購入などの各種手続きをする際に、日本の公文書を提出する必要が生じた際、その国の提出先機関から日本の外務省の証明を取得するよう求められた場合に必要なのが、本テキストで解説する「アポスティーユ (Apostille)」の認証となります。
例えば、海外に支店を持つ日本企業が、現地で新規事業を行う場合や、現地の会社に出資する場合に登記事項証明書などにアポスティーユが必要とされるケースがあります。
あるいは、海外の子会社に駐在員を派遣するために就労ビザを取得する際に、その手続を進める中で、現地の法律事務所から「アポスティーユ」が必要と指示される場合があります。
本テキストでは、そんな「アポスティーユの基礎知識」について解説します。前半では、アポスティーユ・公印確認・領事認証の3つについて解説。後半では、アポスティーユの対象となる文書、アポスティーユ・公印確認・領事認証の申請方法について詳しく解説します。
海外で公文書などを提出する際に必要な「アポスティーユの申請方法」の基本についてしっかり理解しておきましょう。
▼アポスティーユの申請方法 | アポスティーユの認証が必要なケースとは?
- 1. アポスティーユ (Apostille) とは?
- 2. 海外ビジネスにおけるアポスティーユが必要とされるケースとは?
- 3. アポスティーユの対象となる文書について
- 4. アポスティーユ・公印確認・領事認証の申請方法
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1. アポスティーユ (Apostille) とは?
アポスティーユ・公印確認・領事認証の違いとは?
結論から言うと…アポスティーユ (Apostille) とは、日本の公文書を外国の官公庁に提出する際に必要とされる、〝その書類が確かに日本の公的機関から認証されて発行された公文書である〟ことを証明する付箋による証明(書)です
ただ、このセクションではアポスティーユについて解説しますが、アポスティーユ同様に日本の官公署・自治体などが発行する外務省の証明である、「公印確認」「領事認証」についてもあわせて理解しておくことをおすすめします。
「アポスティーユ」「公印確認」は、どちらも日本の官公署・自治体などが発行する、公文書に対する外務省の証明であり、「領事認証」は日本にある大使館・領事館の領事による認証となります。
それら3つの認証は、各種手続きや提出できる国など、それぞれ異なる点もあります。このセクションではそれらの違いをわかりやすく解説します。
アポスティーユとは
アポスティーユとは「認証不要条約(外国公文書の認証を不要とする条約)」にもとづく、付箋による外務省の証明のことです。
具体的には、「外国公文書の認証を不要とする条約(略称:認証不要条約)」(1961年10月5日のハーグ条約)に基づく付箋(=アポスティーユ)による外務省の証明のことです。
例えば、登記事項証明書、戸籍謄本、住民票、納税証明書などの日本の公文書を外国機関に提出する際に、提出先に日本国外務省のアポスティーユを求められる事があります。
通常であれば、海外にて、日本で発行された公文書であることを証明する際は、日本の外務省による公印確認と、提出先国の駐日外国領事による認証(領事認証)が必要です。
しかし、ハーグ条約(外国公文書の認証を不要とする条約)に加盟している国に書類を提出する場合は、駐日大使館の領事認証を取得する必要はなく、提出する公文書に対して、日本の外務省によるアポスティーユ(付箋)が付与されていれば、そのまま直接相手国(地域)に提出できるのです。
つまり、アポスティーユは公文書に直接押印せず付与でき、駐日領事による認証がなくとも、認証があるものと同等のものとして、提出先国で使用することができるのです。
ただ、ハーグ条約・認証不要条約を締約している国であっても、領事認証が必要なケースもあるので注意しましょう。また、ハーグ条約に加入していない国の場合は、提出する公文書の証明は全て公印確認となります。
公印確認とは
公印確認とは、駐日領事による認証を取得するために事前に必要となる外務省の証明のことです。アポスティーユと異なり、公文書に直接押印が必要です。
外務省では公文書上に押印されている公印について、公文書上での証明を行っており、外務省で公印確認を受けたあとは、駐日領事による認証を取得する必要があります。
外務省における公印確認後は、必ず駐日領事による認証を受けてから提出国関係機関へ提出しなければいけませんが、注意しておきたいのは、提出先機関の意向により、日本ではなく現地の日本大使館や総領事館の証明が求められる場合です。
日本の外務省で公印確認証明を受けた書類は、現地日本大使館や総領事館で重ねて証明することはできないので、上記は証明を受ける前にしっかり確認しておきたい点です。
領事認証とは
駐日領事による認証を指します。領事認証とは、日本で発行された公文書の真正性を担保することが目的となります。
提出先である国の機関は、自国の領事が認証していることで、その文書の真正性を推定することができるのです。
ちなみに国によっては、「大使館認証」「領事査証」「署名認証」「サイン認証」と呼ばれるケースもあります。
また実際の続きでは「公印確認→領事認証」の流れとなっており、前述した外務省による公印確認の後に必要な手続きが「領事認証」となりますが、アポスティーユが発効される場合は不要となります。
2. 海外ビジネスにおけるアポスティーユが必要とされるケースとは?
海外ビジネスにおけるアポスティーユの事例
このセクションでは、実際に海外ビジネスにおいて「アポスティーユ」が必要となるケースについて解説します。
海外ビジネスにおけるアポスティーユが必要とされるケースとしては複数あり、…
例えば…海外に支店を持つ日本企業が、現地で新規事業を行う場合や、現地の会社に出資する場合に登記事項証明書などにアポスティーユが必要とされるケースがあります。
あるいは…海外の子会社に駐在員を派遣するために就労ビザを取得する際に、その手続を進める中で、現地の法律事務所から「アポスティーユ」が必要と指示される場合もあります。
3. アポスティーユの対象となる文書について
アポスティーユの対象となる文書は下記の3つの条件を満たす公文書
続いては「アポスティーユ」の対象となる具体的な文書の種類について見てきましょう。
前項までで解説したように、アポスティーユの提出先国はハーグ条約締約国のみですが、アポスティーユの対象となる文書は下記の3つを満たす、公的機関が発行した書類や公証役場で作成する公証人認証書などの公文書です。
■アポスティーユの対象となる文書が満たしている3つの条件
(1)発行日付が記載されていること(発行日より3ヵ月以内のもの)
(2)発行機関(発行者名)が記載されていること
(3)個人印や署名ではなく、公印が押されていること
また、後述しますが、私文書については公証人押印証明が必要となります。
以降では、「登記簿」「公文書」「私文書」「翻訳文」「私立学校の証明書」の5つの公文書のケースで見ていきましょう。
■登記簿
会社及び不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)など、登記簿の場合は、担当登記官の所属する法務局長による登記官押印証明を取得しなければなりません。登記官、法務局長のいずれにアポスティーユ証明を付与するかは機関によって異なることがあるので、提出先に前もって確認する必要があります。
■公文書
前述したとおり、アポスティーユ証明を取得できる公文書は「公印」と「日付」のある公文書の原本であり、発行後3ヶ月以内のものに限ります。署名のみの公文書や公文書のコピーではアポスティーユ証明はなされません。
■私文書
外国向け私署証書(私文書)の認証手続きについては注意が必要です。証明が必要な書類が下記のような私文書だと、外務省では直接証明ができません。
・個人が作成した文書
・会社が作成した文書
ただし、公証役場で公証人の認証を受け、その公証人の所属する(地方)法務局長による公証人押印証明があれば、公証人が認証した公文書として外務省の証明を取得することができます。
■翻訳文
履歴書や定款、議事録や委任状、源泉徴収票、財務諸表、公文書の英訳文などは私文書にあたるため、直接アポスティーユ証明の対象にはなりません。ですが、前述の「私文書」の項で説明したとおり、公証役場で公証人の認証を受ければ、アポスティーユ証明を取得できるようになります。
■私立学校の証明書
私立学校が発行した卒業証明書や成績証明書には直接アポスティーユは付与されません。公証人の認証を受け、アポスティーユ証明を取得しましょう。
また、独立行政法人に移行した国立および公立の教育機関(大学、小・中・高等学校)により発行された卒業証明書、成績証明書、健康診断書などについても、法人化移行後に発行されたものはアポスティーユの対象となりません。ただし、こちらはアポスティーユの代わりに公印確認を受けることができます。
4. アポスティーユ・公印確認・領事認証の申請方法 / その1
続いては、「アポスティーユ・公印確認・領事認証の申請方法」ついて見ていきましょう。
このセクションである「その1」と次のセクションである「その2」の2つのセクションにわけて解説していきます。
まず本セクションである「その1」ですが、具体的な申請方法の手順としては…
① 提出先の国がハーグ条約加盟国か非加盟国かを調べる
↓
② 提出する書類が公文書か私文書を確認する
の2段階の手順となります。
例としては、先述したように、海外の企業となんらかの契約する際に、日本でアポスティーユ・公印確認・領事認証を取得するように求められるケースがあります。
英語表記で「Notarization」「Legalization」「Authentication」「Apostille」を求められた際には、まずは提出する国がハーグ条約加盟国かを確認し、求められている書類の種類を確認してください。
では、下記より「アポスティーユ・公印確認・領事認証の申請方法」ついて見ていきましょう。
① 提出先の国がハーグ条約加盟国か非加盟国かを調べる
■(そもそも)ハーグ条約とは
まず、提出先の国がハーグ条約加盟国か非加盟国かを調べましょう。
そもそもハーグ条約とは、ヘーグ条約とも呼ばれる条約のこと。アポスティーユに直接関係あるのは全15条から成り立っています。
外国公文書に関する認証を要求する制度の廃止を定める多国間条約『外国公文書の認証を不要とする条約(Convention Abolishing the Requirement of Legalisation for Foreign Public Documents)』です。この条約はハーグ国際私法会議において審議され、1961年に採択となりました。
アポスティーユはハーグ条約にもとづいて発行されるものなので、このハーグ条約に加盟している国にしか効力はありません。
…ということで、下記よりハーグ条約加盟国について解説します。
■ハーグ条約加盟国一覧
ハーグ条約に加盟している国は2020年5月14日時点で118ヵ国あります。
ハーグ条約加盟国については、下記の外務省のサイトをご参照ください
『「外国公文書の認証を不要とする条約(ハーグ条約)」の締約国(地域)』
また、下記に記載している諸国(フランス・ポルトガル・オランダ・イギリス)の海外領土(県)でも使用することができます。
・フランス:
グアドループ島、仏領ギアナ、マルチニーク島、レユニオン、ニューカレドニア、ワリス・フテュナ諸島、サンピエール島、ミクロン島、仏領ポリネシア
・ポルトガル:
全海外領土
・オランダ:
全海外領土
・イギリス:
ジャージー島、ガーンジー島、マン島、ケイマン諸島、バーミューダ諸島、フォークランド諸島、ジブラルタル、モンセラット、セントヘレナ諸島、アンギラ、 タークス・カイコス諸島、英領バージン諸島
② 提出する書類が公文書か私文書を確認する
では、次の手順である「提出する書類が公文書か私文書かを確認」しましょう。
前述のとおり、アポスティーユ証明を取得できる公文書は「公印」と「日付」のある公文書の原本であり、発行後3ヵ月以内のものに限ります。証明が必要な書類が私文書の場合は、公証役場で公証人の認証を受ける必要があります。
戸籍謄本などの公文書を日本語表記の原本で提出する場合は公文書に該当しますが、公文書を現地の言葉に訳した書類を添付する必要がある場合、この翻訳文は私文書として取り扱われるので注意が必要です。
5. アポスティーユ・公印確認・領事認証の申請方法 / その2
このセクションからは「その1」を踏まえた上で、次の手順となる「その2」として解説します。
具体的には、「アポスティーユ・公印確認・領事認証の申請方法」における、ハーグ条約加盟国orハーグ条約非加盟国 × 公文書or私文書=合計4つのケースの申請方法について解説していきます。
以降より4つのケースについて見ていきましょう。
ケース① ハーグ条約加盟国に公文書を提出する場合
ハーグ条約加盟国に公文書を提出する際の手続きはシンプルです。外務省に直接持参、または郵送手続きでアポスティーユを取得します。発行後3ヵ月以内のものであること、コピーではなく原本であることなどに注意しましょう。
郵送の場合は返送まで10日程度の日数がかかるので、提出までのスケジュールに余裕がない場合は持参か行政書士を通して手続きを行うと良いでしょう。持参の場合は申請した翌日にアポスティーユを取得した書類を受け取ることができますが、現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、東京の外務本省(※外務省は東京の「外務本省」と、世界150ヵ国にある「在外公館」(大使館・総領事館・政府代表部) で構成される)と大阪分室については郵送での受付のみとなっているようです。
ただし、日本語の書類をそのまま外国へ提出しても提出先が読めないことが多いため、ほとんどのケースでは翻訳した書類を添付してアポスティーユを取得する必要があります。その際は、翻訳文が私文書にあたるため、②のケースとなります
ケース② ハーグ条約加盟国に私文書を提出する場合
ハーグ条約盟国に私文書を提出する際は、下記のような流れとなります。
1.公証役場(公証人の認証取得)
↓
2.地方法務局(法務局長の公証人押印証明を取得)
↓
3.外務省(アポスティーユ申請)
↓
4.外務省(受け取り)
このようにそれぞれの機関に合計4回赴く必要があります。
公証人の認証を取得する際、私文書においては、対象文書に宣言書を添付して認証を取得します。戸籍謄本や登記簿謄本など、公文書の翻訳文を添付して認証を受ける場合も宣言書を最初のページに添付しましょう。
宣言書には宣言文、日付、署名を記載します。提出する書類や提出先からの依頼によって宣言文の内容や言語は変わりますので、注意が必要です。
ケース③ ハーグ条約非加盟国に公文書を提出する場合
ハーグ条約に加盟していない国に公文書を提出する際には、まずは外務省で公印確認を取得し、次に駐日大使館の領事認証を取得します。申請の流れは下記のようになります。
1.外務省(公印確認取得申請)
↓
2.外務省(受け取り)
↓
3.駐日大使館(領事認証取得申請)
↓
4.駐日大使館(受け取り)
このようにそれぞれの機関に合計4回赴く必要があります。
外務省の公印確認を取得する際には、書類を外務省に直接持参するか郵送で手続きをすることが可能です。
郵送の場合は返送まで10日程度の日数がかかるので、提出までのスケジュールに余裕がない場合は持参か行政書士を通して手続きを行うと良いでしょう。
持参の場合は申請した翌日に公印確認を取得した書類を受け取ることができますが、現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、東京の外務本省と大阪分室については郵送での受付のみとなっているようです。
ケース④ ハーグ条約非加盟国に私文書を提出する場合
ハーグ条約に加盟していない国に私文書を提出する際は、まずは公証役場にて公証人の認証が必要です。申請の流れは下記のようになります。
1.公証役場(公証人の認証取得)
↓
2.地方法務局(公証人押印証明の取得)
↓
3.外務省(公印確認の取得申請)
↓
4.外務省(受け取り)
↓
5.駐日大使館(領事認証の取得申請)
↓
6.駐日大使館(受け取り)
このように、合計6回、該当機関に足を運ぶことになります。他の手続きに比べると手間がかなり増えてしまいます。
公証人の認証を取得する際、私文書においては、対象文書に宣言書を添付して認証を取得します。戸籍謄本や登記簿謄本など、公文書の翻訳文を添付して認証を受ける場合も宣言書を最初のページに添付しましょう。
宣言書には宣言文、日付、署名を記載します。提出する書類や提出先からの依頼によって宣言文の内容や言語は変わりますので、注意が必要です。
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今回は「アポスティーユの基礎知識」として、前半は…アポスティーユ・公印確認・領事認証の3つについて解説。後半は…アポスティーユの対象となる文書について、 アポスティーユ・公印確認・領事認証の申請方法について解説しました。
アポスティーユとは、日本の公文書や私文書を外国の官公庁に提出する際に必要な、お墨付きの証明書です。
大切な証明ですが、そのぶん手続きも面倒な部分も多く、特に私文書の場合は公文書に比べて格段に手間がかかります。認証をしてくれる機関は平日の限られた時間しか受付をしていないため、出向くのもなかなか大変……。
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(参照文献)
「公印確認・アポスティーユとは」外務省
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