海外取引で重要な「為替リスクの考え方」と「為替リスクヘッジ方法」
海外取引で重要な「為替リスクの考え方」と「為替リスクヘッジ方法」と銘打って、海外取引における為替変動によるリスクである「為替リスク」と「為替リスクの回避方法」について詳しく解説します。
経済のグローバル化やインターネットの普及などで、海外との距離がぐっと近づいた現代において、海外ビジネスはすでに一般的なものとなりつつあります。とはいえ、距離が近づいても文化や商習慣の違いは歩み寄ることが難しいこともあり、さまざまなトラブルを生むことも。
海外との取引において異なるものといえば、文化や商習慣もですが、ビジネスになくてはならない「通貨」の存在があります。海外取引において、為替相場の変動が生む影響は非常に大きいものとなります。
本テキストを読んで、為替リスクの意味や、具体的な為替リスクヘッジの方法について、しっかりと知識を深めていきましょう。
▼海外取引で重要な「為替リスクの考え方」と「為替リスクヘッジ方法」とは?
- 1. 為替リスクとは? 為替リスクの考え方とは?
- 2. 為替リスクヘッジとは?
- 3. なぜ海外進出で為替リスクヘッジ対策が重要なのか?
- 4. 為替リスクヘッジ対策の方法
- 5. 為替リスクヘッジで重要な「円高と円安の仕組み」をわかりやすく解説
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1.為替リスクとは? 為替リスクの考え方とは?
為替リスクとは為替変動リスク、外国為替リスクとも言い、外貨建取引におけるリスクのことです。この項では、為替リスクが具体的にどのようなリスクなのか、為替リスクの種類にはどのようなものがあるのかを解説します。
為替リスクとは「為替相場が変動することによって起こるリスク
為替リスクとは、「為替相場が変動することによって起こるリスク」のことです。投資における「リスク」とは「不確実であること」を言います。為替相場とは円と外貨の交換相場のことですが、この為替相場は常に変動しており、国の状況や世界の経済状況によって大きく動くことも。
輸出取引の場合は外貨に対して円の価値が下がる、いわゆる円安では為替差益が発生しますが、円高によって円の価値が上がると、差損が発生してしまいます。輸入の場合はこの真逆となり、円安で差損が発生し、円高で差益が発生します。
為替リスクの種類
為替リスクとは、常に起こる為替相場の変動によって損益が不確実なものになることはすでに述べたとおりですが、為替相場の変動にはキャッシュフローに影響を与えるかどうか、変動が長期的か短期的かなどの観点から見て、3つの種類に分けられます。
■① 取引リスク(Transaction Risk)
取引リスクとは、外貨建取引において決済する時の為替相場によって収益が変わるリスクであり、実際のキャッシュフローに影響します。
例えば、日本の企業が米ドルで商品を輸出し、受取りが数ヶ月後であれば、その間に円/ドルの為替レートが変動することによって、円での収益が予測よりも増減する可能性があります。
現地で部品を調達するなどしてこのリスクへの対策を行う企業も多いようです。
■② 経済リスク(Economic Risk)
経済リスクは、為替レートの変動が企業の市場価値や競争力に長期的に影響を及ぼすリスクのことで、採算性や競争力など、企業の構造そのものに変化を与えます。
このリスクは、為替レートの変動によって国際市場での企業の製品価格や需要が変化することから生じます。たとえば、円高になると日本の輸出製品は外国市場で価格競争力を失い、売上が減少する可能性があります。
■③ 翻訳リスク(Translation Risk)
翻訳リスクは、外国為替レートの変動が多国籍企業の財務諸表に影響を及ぼすリスクです。
企業が複数の国に子会社を持つ場合、それぞれの国の通貨で記載された財務諸表を本国通貨に換算する必要があります。この換算過程で為替レートが変動すると、報告される財務状況が実際と異なることがあります。
2. 為替リスクヘッジとは?
為替リスクヘッジとは、外国為替の変動リスクから企業の財務を守るための戦略です。この項では、為替リスクヘッジの定義と、その重要性および目的について解説します。
為替リスクヘッジとは外国為替の変動リスクを避ける戦略
為替リスクヘッジとは、外国為替レートの変動による財務上の不確実性を軽減するための戦略です。
海外ビジネスを行う日本企業にとって、為替レートの変動は利益に直接影響を及ぼします。例えば、円高になると輸出企業の競争力は低下し、逆に円安になると輸入企業の原材料コストが上昇します。これらの変動リスクを管理し、予測可能な財務状況を作るのがヘッジの目的です。
為替リスクヘッジの目的と事例
為替リスクヘッジの主な目的は、不確実な為替レートの変動から企業の利益を保護することです。これにより、企業はより予測可能な財務計画を立て、長期的な戦略を実行できます。
具体的な事例を挙げると、日本の自動車メーカーが米国で販売する際、ドル/円の変動リスクにさらされます。為替リスクヘッジを行うことで、この自動車メーカーは円高リスクから収益を守り、安定した財務計画を立てることが可能になるのです。
3. なぜ海外進出で為替リスクヘッジ対策が重要なのか?
為替リスクと円高・円安について理解できたところで、なぜ海外進出において為替リスクヘッジ対策が必要なのかを改めて考えておきましょう。
海外取引の間の為替変動が為替リスクへとつながる
経済のグローバル化によって海外との取引が当たり前のものとなり、日本市場の今後の縮小を予想した多くの企業が海外へと進出していますが、海外進出について回るのが為替リスクであり、これはお互いに外貨同士のやり取りである以上、避けて通ることはできません。
他国である以上、為替相場の変動によって、どちらかがリスクを負担することになるのは予め決まっていることなのです。海外取引の場合は契約が成立してから代金を回収するまでに時間がかかるケースが多く、その間に為替変動が起きることが為替リスクへとつながります。
そして当たり前のことですが、外貨建資産を多く保有していればいるほど、為替リスクも高くなります。海外進出を考える際には、必ず起こり得るリスクとして、対策をじゅうぶんに行っておくことが重要です。
4. 為替リスクヘッジ対策の方法
為替リスクへの対策が必須ということがわかったところで、この項では海外進出の際に必ず知っておきたい為替リスクヘッジ対策の具体的な方法について解説します。
① 為替予約
為替リスクのリスクヘッジ対策として最も一般的なのがこの為替予約と通貨スワップ、通貨オプションの3つです。
為替予約とは決まった期日に取引する通貨の種類と値段の売買を銀行に予約することを言います。為替予約をしておくことで、取引当日の相場が変わっても、前もって予約しておいた相場で売買を行うことができます。
為替予約は銀行において事前の審査が必要なサービスなので、取引が発生する前に銀行に相談しておくとスムーズです。
② 通貨スワップ
為替リスクのリスクヘッジ対策として最も一般的な3つの手法の2つ目がこの通貨スワップです。スワップとは交換という意味です。 通貨スワップとは、外貨同士の間の金利と元本を交換する取引を言います。例えばドル建て社債を発行し、通貨スワップで円に換えることで、ドル金利を受け取って円金利を支払うことができます。
③ 通貨オプション
為替リスクのリスクヘッジ対策として最も一般的な3つの手法の3つ目が通貨オプションです。通貨オプションとはある特定の通貨を、前もって決められた期間や期日に、これも前もって定めてあった為替レートで売買できる取引のことを言います。
通貨オプションには「コールオプション」と「プットオプション」があり、その2種類それぞれに「売り」「買い」の2種類があるため、全部で4種類に分けられます。
「コールオプション」とは外貨を買う権利のことで、「プットオプション」とは外貨を売る権利のことです。例えば、円を売ってドルを買う通貨オプション取引のことを「円プット・ドルコール・オプション」と言います。
これらは権利の売買であり、現物のやり取りは発生しません。
④ 日本円(自国通貨)で取引する
為替リスクは外貨とのやり取りがある際に発生するリスクであり、自国の通貨であれば発生しないリスクです。そのため、円建ての取引を行うことで為替リスクをなくすことができます。
ただしこれは、取引相手に全面的に為替リスクを負わせることとなるので、リスクに対するそれなりの対価が必要になることもあります。
⑤ リーズ・アンド・ラッグズ(Leads and lags)
輸出する側、あるいは輸入する側が相場に合わせて外貨による決済時期や入金時期を変更することで為替リスクに対応することをリーズ・アンド・ラッグズと言います。リーズは早めることを意味し、ラッグズ(ラグズとも)は遅くすることを意味します。
為替相場を予測するのは非常に難易度の高いことですし、決済時期や入金時期が状況によって早くなったり遅くなったりするのは、よほどの信頼関係がないと不信感を持たれかねないので、あまりおすすめはしない方法です。
⑥ 為替マリー(Exchange Marry)
為替マリーとは、輸出で得た外貨をそのまま輸入したものへの支払いにあてることで為替リスクを軽減する方法です。債権と債務を同額持っていることが必要となります。
⑦ ネッティング
輸出と輸入、どちらも同じ相手と取引しているならこの方法が使えます。ネッティングとは、輸出額と輸入額を相殺することを言います。相殺した余りには為替リスクが発生します。
送金回数も1度で済むため、銀行手数料も削減することができます。
5. 為替リスクヘッジで重要な「円高と円安の仕組み」をわかりやすく解説
為替リスクの基礎知識を確認したところで、最後の項では、為替リスクにおける円高と円安の仕組みをわかりやすく解説します。
円高と円安の仕組み
円高とは日本円が高くなることであり、円安とは日本円が安くなることですが、国内の取引において日本円の価値が変わることはありません。円高・円安とは外国通貨に対しての日本円の価値が変動することを言います。
■円高
例えば1ドルが100円から80円に下がったとしたら、同じ金額でこれまでより多くのドルが買えるということになりますから、ドルに対して日本円の価値が上がったということになります。これを円高と言います。
■円安
1ドルが100円から150円に上がったとしたら、これまでよりも多くの円を支払わないとドルが買えないということなので、ドルに対して日本円の価値が下がったということです。これを円安と言います。
円高と円安のメリット&デメリット
円高と円安は、どちらにもメリットとデメリットがあり、どちらかが必ずいいとは限りません。
■円高のメリット&デメリット
円高によって生じるメリットと言えば、何といっても海外の製品やサービスが安く買えるようになることです。海外旅行なども行きやすくなるので消費者にとっても嬉しいことですが、輸入企業にとってもありがたいのが円高です。製品やサービスをより安く日本市場に提供することができます。
デメリットは、外貨を円に換える時に円安の時と比べて利益が減ってしまうことでしょう。これを補填しようと価格を上げると海外で売れなくなってしまうリスクがあるため、消費者や輸入企業にとっては嬉しくても、輸出企業からするとあまりありがたくないのが円高です。
■円安のメリット&デメリット
円高とは逆で、輸出企業にとって、円安は多くのメリットがあります。外貨を円に換える際に円高の時と比べて利益が上がる上、海外での価格を下げることができるので、製品やサービスを売りやすくなります。
それに対して、円安のデメリットを多く受けることになるのが消費者と輸入企業です。海外の製品やサービスが割高になってしまうため、輸入企業は日本市場における競争力が下がってしまいますし、消費者にとっては海外製品の物価が上がるので、あまりありがたくないというのが正直なところです。
6. 優良な海外進出サポート企業をご紹介
為替リスクを知り、為替リスクヘッジ対策をすることが重要
輸出入などの海外ビジネスにおいて避けて通れないのが為替リスクです。現地で部品を調達するなどの対策はあるものの、国の経済状況とも密接に関連するため、常にアンテナを張っておきたいリスクのひとつです。
海外進出には為替リスク以外にもカントリーリスクなどさまざまなリスクがあります。それらのリスク対策を考えるためには対象国のことをよく知ることが重要ですが、何から始めたらいいのかわからない、相談したいが誰に相談したらいいかわからないといったお悩みをお持ちであれば、海外ビジネスの専門家にご相談することをおすすめします。
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