日本企業は海外事業のプロセスにおいて、どんな業務を自社で行い、どんな業務を専門家にアウトソーシングしたのか？

毎年、海外ビジネス支援プラットフォーム「Digima～出島～」では1年間の進出相談と海外進出企業ならびに、海外進出支援企業を対象に実施したアンケートをもとに「海外進出白書」を作成しています。

本記事では、「海外進出を実施する際のプロセス/業務」に関するアンケート結果をベースに、それらのプロセス/業務を「自社のみで行った業務」「専門家にサポートを依頼した業務」の2つの切り口に分けて、「海外進出を展開している日本企業は海外事業のプロセス/業務において、どんな業務を自社で行い、どんな業務を専門家に依頼したのか？」というテーマで解説していきます。

海外進出を実施していくためには、市場調査や会社設立、プロモーションや人材採用と行った様々な「プロセス／業務」が重要となってきます。そこで「Digima〜出島〜」では、「海外進出を実施する際に行ったプロセス／業務」についての質問を実施しました。

自社が海外ビジネス展開時に行うべき「プロセス／業務」について考える上で、「自社のみで実施できること」と「専門家に依頼すべきこと」を知っておくことは、予算や工数を検討する上でも重要なポイントでしょう。

そこで、どういったことを実施したかだけでなく、「自社のみで実施したこと」と「専門家に依頼したこと」を切り口とし、「自社のみで行った業務」と「専門家にサポートを依頼した業務」と分けて回答をいただきました。

さらに関連記事である『日本企業が海外展開をした際の進出形態は？|『海外進出白書（2021-2022年版）』より』にて掲げた、「海外事業を3年以上実施している企業」を「成功企業」と定義し、「成功企業=海外事業を3年以上実施している企業」の行ったことについてもクロス集計を実施。記事後半にて、それらを比較した解説をしていきます。

全体においては「自社でできることを中心に海外展開をしていく傾向」が見られる

まずは、全体の回答における「専門家に依頼した業務」と「自社のみで行った業務」の比較から見ていきましょう。

下記がそれぞれのアンケート結果のグラフになります。




全体的な割合を見てみると、「専門家に依頼した業務」の最上位が28.3％であるのに対し、「自社のみで行った業務」の最上位が45.3%であり、自社でできることを中心に海外展開をしていく傾向が読み取れます。

その上で、専門家に依頼した業務に関しては、「税務・会計」「調査」「法務」「コンサルティング」「登記代行」など、専門性の高い業務が上位を占めています。当然ではありますが、専門性の高い業務・プロセスこそ、優先して予算を確保しておくべき事項といえるでしょう。

一方で、第1部で最も多く相談が寄せられていた「販路拡大（営業代行・販売代理店探し）」に関しては、15.1％という数値となっています。課題として相談は多いものの、専門家の活用が進んでいない、というギャップが生まれています。

一方、自社のみで行った業務に関しては、「戦略立案」をはじめ、「海外視察」や「市場調査」「代理店探し」など、足や手を動かすことが重要な業務が上位を占めています。

ただし、「市場調査」に関しては、専門家に依頼をしている企業も27.5％と少なくありません。合わせると70％を超える企業が実施している業務・プロセスとなっており、海外ビジネスの成否を分ける重要な業務であるということが明白であり、それを自社のみで行なうか、専門家のサポートを受けながら行なうかは、慎重に判断していくべき事項と言えます。

海外展開に成功している日本企業は「専門家の活用に積極的であり、重要なプロセスに関しての実行率が高い」

全体に続いては、海外事業を3年以上実施している「成功企業」に限定した割合も見ていきましょう。

下記が「成功企業」による「専門家に依頼した業務」と「自社のみで行った業務」の各グラフになります。




まず、目が行くのはその割合です。成功企業においては、「専門家に依頼した業務」「自社のみで行った業務」ともに、特に上位のプロセス／業務の割合が大きくなっています。

つまり専門家の活用に積極的であり、重要なプロセスに関しての実行率が高いことが伺えます。

さらに専門家に依頼している項目で、「成功企業」にて、特に割合が大きくなり順位も変動していたものは「海外法務」や「海外企業との契約書作成・リーガルチェック」といった法律に関するものと、「海外人材採用・紹介」「就労ビザ申請代行」といったものでした。

海外事業を継続させていく上では、これらへの対応が必須となるのは容易に想像ができます。

特に、「海外人材採用・紹介」はキーポイントと言えそうです。

これからの時代は日本人のリソースが不足する時代です。そして、販路拡大が主な目的となる海外ビジネスにおいて、現地への販売の担い手は現地の人材であるのがベターです。そういった意味でも、成功を目指す企業は、海外展開初期段階から「海外人材採用・紹介」に取り組んでおくべきと言えるでしょう。

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