【入門編】外国人派遣の基礎知識|在留資格の種類から雇用の注意点まで徹底解説!

近年、日本国内の人手不足に対応する選択肢の一つとして、外国人労働者の派遣活用に注目が集まっています。少子高齢化が進行するなか、製造業、介護、建設など多くの業界で労働力確保が急務となっており、外国人派遣は即戦力人材を柔軟に確保できる実践的な手段として関心を集めています。
一方で、外国人を「派遣」という形で雇用・活用するには、日本人の派遣とは異なる点をいくつも理解しておく必要があります。たとえば、在留資格によって派遣が可能かどうかが決まることや、派遣先での業務内容に制限があるケースなど、法的な前提や運用上の配慮が欠かせません。また、外国人労働者が安心して働ける環境を整えるうえでも、派遣元・派遣先の双方が適切な体制を構築することが求められます。
本記事では、「外国人派遣」とは何かという基本的な概要から、活用できる在留資格の種類、メリットとデメリット、そして法的な留意点までをわかりやすく解説します。初めて外国人派遣の導入を検討される企業のご担当者様にも理解いただける内容を意識しておりますので、ぜひ導入の判断材料としてご活用ください。
▼ 【入門編】外国人派遣の基礎知識|在留資格の種類から雇用の注意点まで徹底解説!
外国人派遣とは?
外国人派遣の基本的な仕組みと雇用関係
外国人派遣とは、派遣会社が雇用する外国人労働者を、別の企業(派遣先)へ一定期間派遣し、業務に従事させる雇用形態を指します。この仕組みにおいて、労働者と雇用契約を結ぶのは派遣元企業であり、実際の就労先となるのは派遣先企業です。つまり、労働者が指揮命令を受けるのは派遣先である一方で、給与の支払いや雇用管理などは派遣元が担うことになります。
このモデルは、日本人の派遣労働と同様に運用されますが、外国人の場合は“在留資格”の適法性という重要な要素が加わります。つまり、在留資格によっては「派遣勤務が可能かどうか」「どのような業務に従事できるか」が厳しく定められているため、就労前に法的な要件をしっかりと確認することが欠かせません。
外国人派遣の主な活用シーンと業界
近年、外国人派遣のニーズは製造業、介護、農業、建設、物流などの現場労働が中心の業界において特に高まっています。これらの業界では、人手不足が慢性化しており、即戦力となる人材を確保する手段として、派遣という形態が注目されています。また、短期間・繁忙期限定のニーズにも対応しやすいため、正社員やアルバイトに比べて柔軟な人材配置が可能となる点も、企業側の導入メリットの一つです。
一方で、事務職や専門職の分野では「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格が必要になるため、派遣先での業務内容との適合性を事前に慎重に検討する必要があります。つまり、業種によっては自由に外国人派遣を行えるわけではなく、法令や制度に則った適切な手配が求められるということです。
適法な派遣運用には綿密な体制構築が必要
外国人派遣は、労働力不足を補う実践的な解決策である一方で、適法に運用しなければ罰則やトラブルにつながる可能性もあるため、非常に慎重な対応が求められます。とりわけ、派遣先企業と派遣元企業との間で「どのような業務を依頼するのか」「指揮命令系統はどうなっているか」「在留資格と業務内容の適合性は確認済みか」など、業務委託の内容や範囲について書面で明確に定めておくことが重要です。
また、労働条件通知書の交付や労災保険の適用など、日本国内法に基づく労働者保護の手続きを怠らないことも大前提です。外国人派遣を円滑かつ適法に進めるためには、派遣元と派遣先の役割分担を明確にし、外国人労働者の就業環境を整えるための支援体制も不可欠となります。
外国人派遣で活用できる在留資格の種類
在留資格によって派遣の可否は異なる
外国人労働者を派遣として受け入れる際には、まずその方がどのような在留資格を持っているかを確認する必要があります。日本において外国人が就労するためには、出入国在留管理庁が定める在留資格のいずれかを保有していることが条件となりますが、その中でも「派遣」という就労形態が認められているかどうかは、資格の種類によって明確に異なります。これは、日本人と違い、外国人労働者は在留資格ごとに就労内容や就労先、就労形態に制限があるためです。
とりわけ注意すべきなのは、一般的な就労系の在留資格(例:「技術・人文知識・国際業務」)では、業務内容の適正性とあわせて「派遣先での業務内容が資格の範囲内かどうか」が問われることです。派遣契約そのものは不可能ではありませんが、在留資格の主旨から外れるような業務を任せた場合、不法就労として問題視される可能性があるため、非常に慎重な運用が必要です。
派遣が可能な代表的な在留資格
まず、比較的自由度が高く、派遣労働も可能とされる在留資格としては、「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」といった「身分に基づく在留資格」があります。これらは就労活動に制限がなく、派遣という雇用形態であっても、業務内容に制約がないため、派遣元企業にとっても柔軟に人材活用しやすいといえます。
また、製造業や建設業、介護など一部の産業分野では、「特定技能」制度のもとで外国人派遣が認められているケースもあります。たとえば、特定技能1号に関しては、受け入れ可能分野に限り、一定条件下で派遣型就労が許容されており、地方の中小企業などでも積極的に活用が進んでいます。ただし、送り出し機関や登録支援機関との連携が必須となるため、派遣元企業には制度運用への理解と専門的なサポート体制が求められます。
派遣不可の在留資格に対する注意
一方で、「技能実習」や「留学」「家族滞在」などの在留資格を持つ外国人については、原則として派遣労働は認められていません。技能実習制度は実習先企業が直接監督・指導を行うことが前提であり、第三者への派遣は制度趣旨に反する行為となります。また、資格外活動許可を取得した留学生がアルバイトで働く場合も、派遣形態での労働は対象外となるため、注意が必要です。
このように、派遣が可能かどうかは在留資格の内容次第であるため、雇用前に法的な確認を徹底することが、後々のトラブル回避につながります。派遣元・派遣先ともに、制度理解と運用ルールの遵守が必須であることを認識したうえで、適正な人材活用を目指すことが重要です。
外国人派遣のメリットとデメリット
企業にとってのメリット:柔軟性と即戦力確保
外国人派遣を活用することで、企業は人手不足の解消に向けた柔軟な対応が可能となります。特に製造業や介護、物流、建設といった業種では、繁忙期の人員確保や急な欠員対応が重要課題となっており、派遣形態であれば短期間から即戦力となる人材を導入しやすくなります。また、派遣会社が選考や雇用管理を担ってくれるため、企業側の採用業務や法務手続きの負担も軽減される点は大きなメリットです。
さらに、外国人材は語学力や異文化対応力を持つことも多く、インバウンド業務や多国籍チームとの協働においても貴重な戦力となり得ます。多様性への対応やダイバーシティ推進の観点からも、外国人派遣は現代の企業経営にマッチした人材戦略の一つと言えるでしょう。
労働者にとってのメリット:日本でのキャリア構築の足がかり
派遣という雇用形態は、外国人労働者にとっても就労機会を得やすい形式です。特に、来日間もない段階で日本語力に不安がある場合や、正社員登用までのステップを踏みたい人にとっては、派遣という形で経験を積むことで、長期的なキャリア形成につながる可能性があります。複数の業種や勤務地での業務経験を通じて、日本のビジネス慣習に触れながらスキルを高めていける点は、外国人にとっての成長機会にもなります。
また、派遣会社が生活面の支援や相談対応を行う体制を整えているケースも多く、初めて日本で働く人にとって安心感のある環境を提供できる点も評価されています。
留意すべきデメリット:法的リスクと定着の難しさ
一方で、外国人派遣には留意すべき点も存在します。まず重要なのが、法令遵守に関するリスクです。在留資格の適正確認が不十分なまま派遣を行った場合、不法就労助長罪などの処罰対象となる可能性があり、企業の社会的信用にも大きな影響を与えかねません。派遣元だけでなく、派遣先にも「適法な受入体制」の責任が求められるため、両者で明確な連携が必要です。
また、派遣という雇用形態上、雇用の安定性に課題が生じやすく、外国人労働者が長期的に定着しにくいという側面もあります。待遇や労働環境への不安、将来への不透明感などが早期離職につながることもあるため、職場環境の整備と定期的なフォロー体制が不可欠です。
外国人派遣の注意点と法的留意事項
在留資格の確認と適正な業務内容の照合
外国人を派遣社員として雇用する際、最も重要な点の一つが「在留資格」と「業務内容」の整合性です。就労可能な在留資格を持っていたとしても、その内容によっては派遣という就労形態や、派遣先での業務が認められていないケースがあります。たとえば、「技術・人文知識・国際業務」などの資格では、通訳、エンジニア、マーケティングといった特定の業務が対象となっており、単純労働や現場作業は基本的に認められていません。
また、派遣元企業と派遣先企業が契約している業務内容と、実際に労働者が行っている業務とが異なる場合、不法就労とみなされるリスクもあります。法的リスクを回避するためには、在留カードの確認だけでなく、業務内容の明文化や派遣契約書への正確な記載が不可欠です。
派遣契約と労働条件の明示
外国人派遣を行う際には、労働基準法をはじめとする労働関係法令の遵守が求められます。特に重要なのが「労働条件通知書」の交付と「雇用契約書」の明示です。言語の壁がある場合には、母国語や英語での併記も検討し、労働条件に関する誤解や不信を避ける努力が求められます。給与体系、勤務時間、休日、福利厚生、社会保険などについて、明確かつ具体的に伝えることが、労使トラブルの予防につながります。
さらに、派遣元企業は労働者に対して労災保険や雇用保険の適用対象であることを説明し、必要な手続きを正しく行う義務があります。派遣先での安全衛生教育や、業務上の注意事項についても、丁寧に説明を行うことが望まれます。
外国人雇用状況の届出と行政対応
日本で外国人を雇用する企業には、雇用時と離職時に「外国人雇用状況の届出」が義務付けられています。これは派遣元企業が行うべき手続きであり、ハローワークに対して、労働者の氏名、生年月日、在留資格、在留期間、就労先などの情報を正確に報告する必要があります。届出を怠った場合には、罰則が科されることもあるため注意が必要です。
また、派遣労働者に関する労働局や入管当局の監査が入ることもあります。その際、就労資格証明書の提出や業務記録の提示を求められるケースがあるため、日頃から適切な書類管理と報告体制の整備を心がけることが重要です。
まとめ|制度理解と丁寧な運用が外国人派遣の成功を左右する
外国人派遣は、慢性的な人材不足に悩む日本企業にとって、非常に有効な人材確保の手段となります。特に製造業や介護、物流など即戦力を求める分野においては、派遣という柔軟な形態を活用することで、迅速かつ効果的に現場の人手を補うことが可能です。また、外国人労働者にとっても、日本でのキャリアの第一歩として、スキルや経験を積む貴重な機会となります。
一方で、在留資格や法的要件に対する理解が不十分なまま派遣を進めてしまうと、不法就労のリスクや労使トラブルを招きかねません。雇用主としての責任を果たすためには、在留資格の確認、業務内容の明確化、労働条件の丁寧な説明、法令遵守の体制づくりが不可欠です。さらに、外国人派遣を成功させるには、文化的な違いへの配慮や、就業後のフォロー体制の充実も重要なポイントとなります。
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本記事を参考に、自社に最適な外国人材の活用戦略を検討してみてはいかがでしょうか。
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