インバウンド免税対策ガイド|2026年リファンド方式導入に向けて日本企業が備えるべきこと

インバウンド需要が急速に回復する中、日本の小売業や観光関連事業者にとって、訪日外国人客向けの免税販売は売上拡大の重要な柱となっています。しかし、こうした免税販売の現場は、2026年11月に大きな転換点を迎えることになります。それが、現行の購入時免税方式に代わって導入される「リファンド方式」です。この制度変更により、免税手続きの流れや店舗・企業側の業務オペレーションは大きく変わる見込みであり、今からの備えが欠かせません。
これまでの購入時免税方式では、購入時に消費税が免除される仕組みが採用されていましたが、リファンド方式では訪日客が帰国時に消費税の還付を受ける仕組みに変わります。これにより、制度の透明性向上や不正防止が期待される一方、企業にとってはシステム対応や業務フロー見直しといった実務的な準備が求められます。
本記事では、インバウンド免税制度の基本から、2026年のリファンド方式導入の詳細、日本企業が今から講じるべき具体的な対策、そして成功・失敗事例に学ぶ留意点までを体系的に解説します。免税制度の変化をビジネスチャンスに変え、持続的なインバウンド対応力を高めるためのヒントとして、ぜひ最後までお読みください。
▼ インバウンド免税対策ガイド|2026年リファンド方式導入に向けて日本企業が備えるべきこと
インバウンド免税制度の基本と現行ルール
現行の免税制度の仕組みと手続き(購入時免税の流れ)
現行のインバウンド免税制度は、訪日外国人旅行者が店舗で商品を購入する際、購入時点で消費税が免除される仕組みです。購入時免税方式とも呼ばれ、訪日客にとってはその場で消費税分が差し引かれた価格で商品を購入できるため、非常に分かりやすく、購買意欲を後押しする仕組みとなっています。免税手続きは、店頭でのパスポート確認、購入記録票の作成、商品への免税シール貼付といった一連の流れで進められ、店舗側にはこれらの書類管理や後日の税務報告といった実務的負担が発生します。
免税対象者・対象商品・条件の基本知識
現行制度で免税販売の対象となるのは、短期滞在ビザなどで日本に滞在している外国人旅行者です。対象商品は、一般物品(家電製品、雑貨、衣類など)と消耗品(食品、化粧品、医薬品など)に分かれ、購入金額が一定額以上(一般物品で5,000円以上、消耗品で5,000円以上かつ50万円以下)であることが条件です。また、免税対象品は転売目的ではなく、個人の使用に供することが前提となっています。企業側としては、免税対象者の確認や条件を遵守した取引を行う必要があり、店頭での説明や確認作業は重要な責任の一つです。
免税店登録と企業側の実務負担
免税販売を行うには、税務署への届出を行い、正式に免税店として登録される必要があります。免税店としての登録後も、企業側には定期的な書類保存、購入記録の管理、税務署への報告義務などが課せられます。特に、紙ベースでの記録管理や各種帳票の保存は業務負担が大きく、オペレーションの煩雑さや人為的ミスのリスクもつきまといます。このため、近年ではPOS連動型の免税システムやモバイルPOSの導入により、業務負担軽減やデータ管理の効率化を進める店舗も増えてきています。
2026年11月導入予定「リファンド方式」とは?
リファンド方式の概要とこれまでの制度との違い
2026年11月から導入が予定されている「リファンド方式」は、現行の購入時免税方式とは大きく仕組みが異なります。これまでの制度では、訪日客は店頭での購入時に消費税が免除され、その場で税負担なく商品を持ち帰ることができました。一方、リファンド方式では、訪日客は一旦消費税込みの金額で商品を購入し、出国時に空港などのリファンドカウンターや指定機器を通じて税還付の手続きを行います。つまり、免税の確認と還付のタイミングが「購入時」から「出国時」に変更されることが最大の特徴です。これにより、免税の実態確認がより確実に行えるようになり、不正防止や制度の透明性向上が期待されています。
リファンド方式導入の背景(不正防止・制度透明化)
リファンド方式が導入される背景には、現行制度での不正利用や制度運用上の課題があります。たとえば、一部では免税対象者以外への転売目的での購入や、出国せずに国内での消費が行われるといったケースが問題視されてきました。リファンド方式では、出国の確認を条件に還付手続きが行われるため、こうした不正を物理的に防ぐことが可能となります。また、免税販売の透明性を高めることで、制度全体への信頼性が向上し、適正な運用が促進されることも期待されています。国際的にも欧州などで採用されている還付方式に近い形となり、日本の免税制度も国際基準に合わせた形へと進化することになります。
訪日客・企業双方にとってのメリットと留意点
リファンド方式の導入は、訪日客・企業双方に一定のメリットをもたらします。訪日客にとっては、出国時に一括で還付を受けられることで、手続きの明確化と安心感が得られます。また、還付事業者によるキャッシュレス対応や多言語サポートの拡充により、利便性向上も期待されています。一方、企業にとっては、免税手続きにかかる事務作業や帳票管理の負担が軽減され、販売業務に専念できるという利点があります。
ただし、企業側にはシステムや業務フローの見直しが求められ、導入初期にはオペレーションの混乱や訪日客への説明不足によるトラブルリスクが懸念されます。新制度対応のための準備は、早期から計画的に進める必要があります。
日本企業が求められる免税対策とは
リファンド方式移行に伴うシステム対応・販売オペレーション変更
リファンド方式への移行に伴い、企業はこれまでの購入時免税対応とは異なる業務フローを設計し直す必要があります。従来は店頭でパスポート確認、購入記録の作成、免税対象商品へのシール添付といった作業が求められていましたが、リファンド方式ではこれらの作業の大部分が不要になります。その代わり、消費税込み価格で販売を行い、リファンド事業者とのデータ連携や出国時還付のための販売データ登録といった新たな業務が求められます。このため、POSシステムや販売管理システムがリファンド事業者のプラットフォームとスムーズに連携できるよう改修する必要があります。既存システムの改良だけでなく、新たな免税対応型POSや管理ソリューションの導入を検討する企業も増えるでしょう。
POS・免税管理システム・モバイル端末の見直しポイント
リファンド方式に対応するためには、POSシステムや免税販売管理システムの見直しが避けられません。具体的には、リファンド事業者とのデータ自動連携機能、多言語対応のレシート発行、購入情報のデジタル保存・送信機能の整備が求められます。また、訪日客への説明負担を軽減するために、モバイルPOSやタブレット端末を活用し、店頭で簡易な説明や案内ができる体制を整えることも重要です。小規模店舗の場合、クラウド型の簡易システムやリファンド事業者が提供する標準ソリューションを早期に採用し、段階的に対応を進める方法も現実的です。システム選定の際には、初期コスト、運用コスト、サポート体制、将来的な拡張性までを含めた比較検討が求められます。
社内教育・マニュアル改訂・外部ベンダー選定の準備
リファンド方式では、訪日客への説明内容や接客オペレーションも大きく変わります。このため、店舗スタッフや関連部門への社内研修、マニュアルの改訂は不可欠です。「購入時は税込価格での精算となる」「出国時に還付を受ける仕組みである」など、訪日客が誤解しやすいポイントを的確に説明できる接客力が求められます。また、システム導入や運用を委託する外部ベンダーの選定も早期に進め、リファンド方式に精通した信頼できるパートナーと連携することが重要です。2026年11月は遠いようでいて、準備期間としては限られています。段階的な対応スケジュールを策定し、早期の着手が企業競争力に直結する時代が到来しています。
インバウンド免税の成功事例と失敗しないための留意点
免税手続きを効率化して売上拡大に成功した小売・商業施設の事例
免税対応の工夫によって売上拡大を実現した事例として、ある大手商業施設の取り組みが挙げられます。この施設では、免税対応専用のPOSシステムとバックオフィスの管理システムを一体化し、購入記録の自動登録・保存を徹底しました。また、免税手続きを担当する専任スタッフを配置し、外国語対応や手続きの迅速化を実現。これにより、訪日客の店頭での滞在時間が短縮され、他の商品を見て回る時間が生まれ、結果として全体の客単価向上にもつながりました。リファンド方式の時代においても、このような「顧客目線の効率化」と「業務負担の削減」の両立は、引き続き大きなポイントとなります。
運用ミスによる不正リスク・トラブル事例から学ぶポイント
一方、免税販売においては運用ミスや管理不足により、不正やトラブルに発展したケースも存在します。たとえば、パスポート確認が不十分だったために免税対象外の取引が行われ、税務調査で指摘を受けた事例や、購入記録の不備で後日の税務申告が煩雑化した事例があります。こうした失敗は、制度に対する社内の理解不足や、マニュアル・オペレーションの不徹底に起因することがほとんどです。リファンド方式導入後も、販売データの正確な登録、出国確認に必要なデータの管理、訪日客への適切な説明は不可欠であり、内部統制を徹底することがトラブル防止につながります。
今から取り組める段階的対策と業界の最新動向
リファンド方式対応は、2026年11月を見据えて段階的に準備を進めることが重要です。まずは、現行業務の見直しと、どこに負担やリスクが集中しているのかを洗い出すことから始めましょう。次に、POS・販売管理システムのベンダーと相談し、リファンド方式対応の技術的要件やスケジュール感を確認します。加えて、業界団体や行政が主催する最新の免税制度セミナー、リファンド事業者による説明会などに積極的に参加し、最新情報をキャッチアップすることが不可欠です。変化の大きな制度転換期だからこそ、他社の動向を参考にしつつ、自社にとって最適な準備を早期に着手する姿勢が求められます。
まとめ:2026年リファンド方式を見据えた持続可能な免税対応
2026年11月に導入されるリファンド方式は、日本企業のインバウンド対応にとって大きな転換点となります。現行の購入時免税方式から大きく制度が変わる中で、企業は単なる制度対応にとどまらず、この変化をビジネスチャンスと捉え、持続可能な免税対応体制を構築する必要があります。リファンド方式は、不正防止や制度の透明性向上といった社会的メリットが期待される一方、企業にとっては販売オペレーションやシステム、接客方法を抜本的に見直す契機ともなります。
今後は、免税手続きそのものの効率化はもちろん、訪日客にとって「分かりやすく、安心して利用できる免税サービス」を提供する視点が重要です。そのためには、システム刷新や外部ベンダーとの連携、スタッフの教育、訪日客向けの説明ツール整備などを段階的かつ計画的に進める必要があります。また、変化するインバウンド市場の動向や制度運用の詳細について常に最新情報を把握し、柔軟に対応策をアップデートする姿勢が、企業の信頼性と競争力を高める鍵となるでしょう。2026年の新制度に備え、今から一歩ずつ着実に準備を進めることが、持続的なインバウンド集客と顧客満足の向上に直結します。是非、取り組んでみてください。
なお、「Digima~出島~」には、優良なインバウンドビジネスの専門家が多数登録されています。「海外進出無料相談窓口」では、専門のコンシェルジュが御社の課題をヒアリングし、最適な専門家をご紹介いたします。是非お気軽にご相談ください。
本記事が、インバウンド対応、そして海外展開を検討される日本企業の皆様にとって、実務の一助となれば幸いです。
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