ドラッグストアのインバウンド施策|訪日客に選ばれる店舗づくりとリピーター獲得の仕組み
訪日外国人にとって、日本のドラッグストアは「必ず立ち寄る場所」です。Payke社の調査によれば、訪日外国人のドラッグストア利用率は97.4%にのぼり、滞在中に週2回以上訪れる人が約8割を占めています。化粧品やサプリメント、医薬品など「日本でしか買えないもの」を求めて来店する訪日客を取り込むことは、店舗の売上を大きく押し上げるチャンスといえるでしょう。
一方で、免税対応・多言語POP・キャッシュレス決済といった基本施策は、すでに多くの競合店が導入済みです。これらは「あって当たり前」の環境になりつつあり、基本だけでは差別化が難しくなっています。
本記事では、まず押さえるべき基本施策を整理したうえで、国籍別の購買傾向に合わせた売り場づくりやSNS集客の使い分け、さらには帰国後もリピート購入してもらう仕組みまで、ドラッグストアのインバウンド施策を体系的に解説します。
この記事でわかること
- ・訪日外国人のドラッグストア利用実態と国籍別の購買傾向
- ・免税・多言語・キャッシュレスの基本施策から、GBP最適化・SNS活用の差別化施策まで
- ・帰国後のリピーター獲得につなげる越境EC誘導・LINE会員化の仕組み
▼目次
1. 訪日外国人にとってドラッグストアは「必ず行く場所」
利用率97%・週2回以上が約8割というデータ
訪日外国人のドラッグストア利用率は97.4%。これはPayke社が実施した訪日外国人の購買行動調査で明らかになった数字です。(出典:Payke「Paykeユーザ約2,000名に聞いた!インバウンドのドラッグストアの選び方や購買理由などを徹底調査!」2025年3月)。しかも、滞在中に週2回以上ドラッグストアを訪れる人が約8割にのぼり、旅行中のルーティンとして組み込まれていることがわかります。
注目すべきは、約8割の訪日客が来店前に購入する商品を決めているという点です。SNSや口コミサイトで事前にリサーチし、「この商品を買いに行く」という明確な目的を持って来店しています。つまり、店頭での接客だけでなく、来店前の情報発信が売上を左右するのです。
認知度・利用率のトップはマツモトキヨシで、次いでダイコクドラッグが続きます。大手チェーンはブランド力で訪日客を集めていますが、個店や中小チェーンでも品揃えや情報発信の工夫次第で十分に勝負できます。
国籍別の購買傾向を押さえる
訪日客といっても、国籍によって求める商品やリサーチの仕方は大きく異なります。効果的な売り場づくりやプロモーションを行うには、この違いを理解しておくことが重要です。
中国人観光客は、サプリメント・医薬品・ベビー用品への関心が特に高い傾向があります。小红书(RED)やWeChat上での口コミを参考に購入品を決めるケースが多く、SNSでの事前情報収集が非常に活発です。近年はリピーターも増えており、品質の高い日用品を定番として購入する動きも見られます。
韓国人観光客は、美容・スキンケア製品への関心が突出しています。日本のドラッグストアコスメは韓国でも高い評価を得ており、価格を比較しながら複数店舗を回る傾向があります。Instagramでの情報収集が主流で、パッケージデザインも購買の決め手になります。
英語圏(欧米・オーストラリア)の観光客は、「日本限定品」や「Made in Japan」というブランドに価値を感じる傾向があります。事前に計画を立てるよりも店頭で商品を見て選ぶ「現地判断型」が多く、文房具やユニークな日用品など、お土産需要も取り込みやすい層です。
台湾・香港の観光客は、化粧品・スキンケアに加えて、医薬品(目薬・胃腸薬など)の人気も高い層です。日本の医薬品の品質への信頼度が非常に高く、リピート率も高い傾向があります。繁体字中国語の情報があると購買意欲が高まりやすい点は、見落としがちなポイントです。
2. まず整えるべき基本施策
免税対応・多言語POP・キャッシュレス決済
インバウンド施策の第一歩は、「免税対応」「多言語POP」「キャッシュレス決済」の基本3点を整えることです。これらはもはや差別化要因ではなく、「ないと選ばれない」最低限のインフラといえます。
免税対応については、免税カウンターまたは免税レジの設置が基本です。なお、2026年11月からはリファンド方式(購入時に税込みで支払い、出国時に税が還付される仕組み)への移行が予定されています。現行の店頭免税方式とは運用が変わるため、レジシステムの改修や対応フローの準備を早めに進めておくことが重要です。
多言語POPは、英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語の4言語対応が標準になりつつあります。商品名や価格だけでなく、「何に効くのか」「どう使うのか」といった効能・使い方まで多言語で伝えられると、購買率は大きく上がります。翻訳の精度が低いと逆に不信感を与えるため、ネイティブチェックを入れることをおすすめします。
キャッシュレス決済は、クレジットカード(Visa・Mastercard)に加えて、中国人客向けのWeChat Pay・Alipay、銀聯カードへの対応が欠かせません。QR決済の導入は比較的低コストで始められるため、未対応の場合は優先的に検討する価値があります。
売れ筋商品の見せ方と売り場レイアウト
基本的なインフラを整えたら、次に取り組みたいのが売り場レイアウトの最適化です。訪日客は限られた時間の中で買い物をしているため、「探しやすさ」が購買額に直結します。
インバウンド客が多い時間帯や曜日を把握し、来店が集中するタイミングには人気商品を入口付近やレジ前に配置しましょう。
「For Tourists」「人気No.1」といった多言語POPで商品を目立たせることも重要です。訪日客は日本語パッケージだけでは内容を理解できないため、視覚的にわかりやすい誘導が欠かせません。QRコードから商品説明動画にリンクさせる方法も手軽で効果的です。
国籍別の人気商品をまとめたコーナーを設けるのも有効です。「中国人観光客に人気」「韓国人観光客に人気のコスメ」といった切り口でまとめれば、目的買いの訪日客に「自分向けの品揃えがある店」と感じてもらえます。
3. 競合店と差がつく集客施策
Googleビジネスプロフィール(GBP)の多言語最適化
訪日客が現地で「近くのドラッグストア」を探すとき、最も使われるのがGoogleマップです。Googleビジネスプロフィール(GBP)の情報を充実させることは、来店数を増やすために非常に効果的な施策です。
まず、ビジネス名に英語表記を追加しましょう。「〇〇薬局(〇〇 Pharmacy)」のように併記することで、英語検索にもヒットしやすくなります。次に写真の充実です。店舗外観・店内・人気商品の写真を10枚以上登録しておくと、来店前の安心感につながります。
口コミへの返信も重要です。外国語の口コミには、できれば同じ言語で返信しましょう。簡単な英語でも、返信がある店舗は信頼度が大きく異なります。「near me」検索に対応するため、GBPのカテゴリ(「ドラッグストア」など)や属性(「免税対応」「多言語スタッフ」など)を正確に設定しておくことも忘れずに行ってください。
SNS活用 ― 国籍別に使い分ける
訪日客の多くは来日前にSNSで情報収集を行います。ただし、利用するプラットフォームは国籍によって大きく異なるため、ターゲットに合わせた使い分けが重要です。
中国人客向けには小红书(RED)が最も効果的です。小红书は中国版Instagramとも呼ばれ、商品レビューや購入体験の共有が活発です。「日本のドラッグストアで買うべき商品10選」のようなコンテンツは高いエンゲージメントを獲得しやすく、店舗誘導に直結します。投稿は中国語で行う必要があるため、自社運用が難しい場合は中国マーケティングに強い支援企業への外注も選択肢です。
韓国人客にはInstagramやNaver Blogが有効です。美容・コスメ系の投稿は韓国人ユーザーの関心が高く、スウォッチ(色味の比較)写真が反応を得やすい傾向があります。ハッシュタグは韓国語で設定するとリーチが広がります。
欧米圏にはInstagramとTikTokが効果的です。「日本のドラッグストアで見つけた面白い商品」「外国人が驚く日本の便利グッズ」といった切り口の動画コンテンツは拡散力が高く、店舗の認知度向上に貢献します。
いずれの国籍向けでも、KOL(Key Opinion Leader)やインフルエンサーとの提携は検討に値します。特に小红书では、フォロワー数千〜数万人の中規模KOLとの提携が費用対効果に優れるとされています。
4. 帰国後もリピートしてもらう仕組みづくり
越境EC・公式サイトへの誘導
インバウンド施策というと「来店時の売上」に注目しがちですが、本当に大きな成長をもたらすのは帰国後のリピート購入です。一度日本の商品の品質を実感した訪日客は、帰国後も同じ商品を買い続けたいと考えています。この需要を取りこぼさない仕組みを用意しておくことが、長期的な売上成長の鍵になります。
最も手軽な方法は、レジ袋やレシートにECサイトのQRコードを印字することです。「帰国後もオンラインで購入できます」というメッセージとともにQRコードを掲載すれば、低コストで越境ECへの導線をつくれます。さらに効果的なのは、商品と一緒に「帰国後もここから買えます」と記載したカードを渡す方法です。カードには越境ECサイトのURLやQRコードを印刷し、英語・中国語・韓国語で案内を記載しましょう。
越境ECのプラットフォームとしては、Amazon GlobalやShopeeなど既存のマーケットプレイスを利用するのが現実的です。初期費用は数万〜数十万円程度から始められます。自社ECサイトの構築は100万円以上の初期投資が必要になるため、まずは既存プラットフォームで需要を検証してから判断するのがよいでしょう。
LINE公式アカウント・会員登録で再来店を促す
帰国後のリピート購入だけでなく、次回来日時の再来店を促す仕組みも重要です。ここで効果的なのがLINE公式アカウントの活用です。
店頭でLINE公式アカウントのフォローを促しましょう。「友だち追加で〇〇円OFFクーポン」のようなインセンティブを用意すると、登録率は大幅に上がります。LINEは台湾・タイ・インドネシアなど東南アジア圏でも広く利用されており、これらの国籍の訪日客との接点維持に適しています。
会員登録によるポイント付与も再来店の動機づけに有効です。「次回来日時にポイントが使えます」というメッセージは、リピーターにとって明確な来店理由になります。登録後はメルマガやLINEで新商品情報やセール案内を定期的に配信し、「一度買ったお客様」を「ファン」に変えるCRM的な発想で関係性を築いていくことが大切です。
こうした仕組みは、多くの競合店がまだ十分に取り組めていない領域です。基本施策に加えてリピーター獲得まで整えることで、持続的な収益基盤をつくることができます。
5. よくある質問(FAQ)
Q1. 免税対応は必須ですか?
インバウンド客が多い立地であればほぼ必須です。訪日客にとって免税対応は「あって当然」の基準であり、対応していないだけで競合店に流れてしまうケースは少なくありません。まずは免税レジの導入から検討しましょう。
Q2. 多言語POPは何言語対応すべきですか?
まずは英語・中国語(簡体字)・韓国語の3言語から始めるのが現実的です。台湾・香港からの訪日客が多い立地であれば、繁体字中国語を追加することで購買率の向上が期待できます。翻訳の精度はネイティブチェックで担保しましょう。
Q3. 小红书(RED)のアカウント運用は自社でできますか?
基本的な投稿は自社でも可能ですが、中国語でのコンテンツ制作が必要になります。投稿の頻度や品質を安定させるのが難しい場合は、中国マーケティングに強い支援企業へ外注するのも効果的な選択肢です。
Q4. 越境ECを始めるのにどのくらいの費用がかかりますか?
Amazon GlobalやShopeeなど既存プラットフォームを活用すれば、初期費用は数万〜数十万円程度から始められます。自社ECサイトを構築する場合は100万円以上が目安です。まずは既存プラットフォームで需要を検証し、段階的に拡大するのがおすすめです。
Q5. 地方のドラッグストアでもインバウンド対策は必要ですか?
観光地や温泉地に近い立地であれば十分に効果があります。地方は都市部に比べて競合が少ないため、免税対応や多言語POPといった基本施策を整えるだけでも訪日客に選ばれやすくなります。
Q6. 2026年の免税制度改正にはどう対応すべきですか?
2026年11月からリファンド方式(出国時に税が還付される仕組み)への移行が予定されています。現行の店頭免税方式とは運用が変わるため、レジシステムの改修や運用フローの見直しが必要です。早めに情報収集を始め、対応スケジュールを立てておきましょう。
6. まとめ
訪日外国人のドラッグストア利用率は97.4%と圧倒的に高く、インバウンド市場は大きな売上成長のチャンスです。免税対応・多言語POP・キャッシュレス決済の基本3点はもはや「あって当たり前」であり、これだけでは競合との差別化は困難です。
差をつけるためには、中国人にはサプリ・医薬品を小红书で訴求し、韓国人には美容系コンテンツをInstagramで発信するなど、国籍別の購買傾向に合わせた売り場づくりとSNSの使い分けが重要になります。さらに、越境ECへのQRコード誘導やLINE公式アカウントによる会員化など、帰国後もリピート購入してもらう仕組みまで設計することが、長期的な売上成長の鍵です。
すべてを一度に整える必要はありません。まずはGoogleビジネスプロフィールの多言語設定と、売れ筋商品のPOP改善から始めてみてはいかがでしょうか。小さな一歩が、訪日客に「また来たい」と思ってもらえる店舗づくりにつながります。
7. 優良な海外進出サポート企業をご紹介
「Digima〜出島〜」には、厳正な審査を通過した優良な海外進出サポート企業が多数登録しています。
「インバウンド施策を強化したいが何から始めればいいかわからない」「多言語対応やSNS運用を専門家に相談したい」とお考えの方は、ぜひ「Digima〜出島〜」をご活用ください。インバウンド集客に精通した支援企業が、貴社の状況に合った最適なプランをご提案します。
参考文献
・Payke「Paykeユーザ約2,000名に聞いた!インバウンドのドラッグストアの選び方や購買理由などを徹底調査!」(2025年3月)
https://www.payke.co.jp/news/20250325
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