留学生の新卒採用ガイド|在留資格変更のスケジュールと特定活動46号の使い方
日本の大学や専門学校で学ぶ留学生の採用は、外国人採用のなかでも最も始めやすい入口です。すでに日本に住んでいるため呼び寄せの手続きが不要で、日本語や日本の生活習慣にも慣れています。
一方で、つまずきやすいのが在留資格です。「留学」から就労できる在留資格へ切り替える手続きが必要になりますが、選べる在留資格は1つではありません。特に見落とされがちなのが「特定活動(本邦大学等卒業者)」、いわゆる46号です。これを使えば、技術・人文知識・国際業務では認められない接客や製造ラインを含む業務にも従事してもらえます。
この記事では、公表データで留学生の就職の実態を押さえたうえで、2つの在留資格の使い分け、46号の要件と業務範囲、そして内定から入社までのスケジュールと手続きを整理します。
この記事でわかること
- ・令和6年に就職した留学生の人数・国籍・在留資格・業種の内訳
- ・技術・人文知識・国際業務と特定活動46号の使い分け
- ・サービス業や製造業でも留学生を採用できる条件
- ・46号で認められる業務と、認められない業務の線引き
- ・内定から入社までのスケジュールと、卒業を待つ期間の在留資格
▼留学生の新卒採用ガイド
1. データで見る留学生の就職状況
令和6年は39,766人が就職のために在留資格を変更
出入国在留管理庁の「令和6年における留学生の日本企業等への就職状況について」によると、留学生が日本の企業等への就職を目的として行った在留資格変更許可申請の処分数は41,142件で、そのうち39,766件が許可されています。
国籍・地域別の許可数は中国が14,511人で最も多く、続いてベトナム8,484人、ネパール3,909人、韓国1,688人、インドネシア1,331人。この上位5か国で全体の75.2%を占めています。地域別ではアジアが37,321人(93.9%)で、ヨーロッパ1,307人、北米550人と続きます。
変更後の在留資格を見ると、技術・人文知識・国際業務が31,393人(78.9%)と大半を占め、特定技能1号2,517人(6.3%)、特定活動2,394人(6.0%)、教授1,032人(2.6%)、高度専門職1,032人(2.6%)となっています。
就職先の業種は製造業13.6%、非製造業86.4%。非製造業のうち小売業が10.2%、情報通信業が9.3%と上位を占めています。小売業が上位に来ている点は、後述する特定活動46号の存在と関係があります。技術職だけでなく、店舗や現場に近いポジションでも留学生が採用されているということです。
2. 留学生採用で使える2つの在留資格
基本は「技術・人文知識・国際業務」
留学生の新卒採用でまず検討するのが「技術・人文知識・国際業務」です。統計で78.9%を占めるとおり、これが標準ルートになります。
この在留資格では、大学や日本の専修学校専門課程で学んだ内容と、これから従事する業務との関連性が審査されます。情報工学を学んだ学生をシステム開発に、経営学を学んだ学生を企画や海外営業に、というように、専攻と職務がつながる説明が必要です。
手続きは、在留資格「留学」から就労資格への在留資格変更許可申請です。企業側は雇用契約書、業務内容を説明する資料、登記事項証明書、決算文書などを、本人側は卒業証明書(または卒業見込証明書)と成績証明書を用意します。
ただしこの在留資格には制約があります。一般的なサービス業務や製造業務が主たる活動となるものは認められません。飲食店のホール業務が中心、製造ラインの作業が中心という配属は、この在留資格では想定されていないということです。ここで行き詰まる企業が少なくありません。
サービス業・製造業でも雇える「特定活動46号」
その制約を超える選択肢が「特定活動(本邦大学等卒業者)」です。告示の号数から46号と呼ばれます。
出入国在留管理庁のガイドラインは、この制度の位置づけを明確に説明しています。技術・人文知識・国際業務では一般的なサービス業務や製造業務等が主たる活動となるものは認められないのに対し、本制度ではそれが認められるという違いです。日本の大学等での学びを通じて得た高い日本語能力を活用することを要件に、幅広い業務に従事する活動を認めるという設計になっています。
つまり、小売店の店舗運営、飲食店の店舗管理、工場での現場業務といったポジションで留学生を迎えたい企業にとって、46号は事実上唯一の道です。統計で特定活動が2,394人(6.0%)にとどまっているのは、制度がまだ十分に知られていないことの裏返しとも読めます。
なお、業務独占資格が必要な業務と風俗関係業務は認められません。この2点は明確な除外事項として押さえておいてください。
3. 特定活動46号の要件と業務範囲
学歴と日本語能力の要件
46号を使うには、本人が次の要件を満たす必要があります。
学歴は、日本の大学の卒業者または大学院の修了者が基本です。加えて、日本の短期大学・高等専門学校の卒業者で大学改革支援・学位授与機構の審査に合格して学士の学位を授与された者、専門職大学の前期課程を修了して同機構の審査により学士号を取得した者、そして外国人留学生キャリア形成促進プログラムの認定校で専修学校専門課程や専攻科を修了し高度専門士の称号を付与された者も対象になります。海外の大学の卒業者は対象外である点が重要です。
日本語能力は、日本語能力試験N1、またはBJTビジネス日本語能力テスト480点以上の成績証明書が必要です。外国の大学で日本語を専攻していた場合は、その大学の卒業証書または卒業証明書で代替できます。
この日本語要件はN2では足りないため、選考の段階で保有資格を確認しておく必要があります。JLPTの各レベルが実務でどの程度の能力に対応するかは、JLPT(日本語能力試験)N1・N2は必要?もあわせてご覧ください。
なお46号の告示は令和6年2月29日に改正され、対象範囲が見直されています。申請前に最新の要件を確認してください。
認められる業務と、認められない業務の線引き
46号で最も注意が必要なのが業務内容の線引きです。ガイドラインは「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」を、単に作業指示を理解して自らの作業を行うだけの受動的な業務では足りず、翻訳・通訳の要素がある業務や、自ら第三者へ働きかける双方向のコミュニケーションを要する業務だと説明しています。
さらに、大学等で修得した学修の成果を活用すると認められること、つまり商品企画、技術開発、営業、管理業務、企画業務(広報)、教育など、大学等で学ぶ知識が必要となる業務が含まれることも求められます。
ガイドラインには具体的な活動例が示されています。
・飲食店で店舗管理業務や通訳を兼ねた接客業務を行う(日本人に対する接客も可能)。※厨房での皿洗いや清掃にのみ従事することは認められません
・工場で日本人従業員から受けた作業指示を、技能実習生や外国人従業員に外国語で伝達・指導しつつ、自らもラインに入って業務を行う。※ラインで指示された作業にのみ従事することは認められません
・小売店で仕入れ、商品企画、通訳を兼ねた接客販売業務を行う(日本人に対する接客販売も可能)。※商品の陳列や店舗の清掃にのみ従事することは認められません
共通するのは「〜のみでは不可」という点です。現場業務に就けること自体は認められていますが、それだけを担わせる配属設計では要件を満たしません。採用時点で、企画・管理・指導・通訳といった要素を職務に組み込んでおく必要があります。
4. 内定から入社までのスケジュール
在留資格変更のタイミングと、卒業を待つ期間の扱い
留学生採用のスケジュールは、卒業と入社日に縛られます。在留資格変更許可申請は卒業前から準備でき、実務上は卒業年度の前年12月頃から受け付けられる運用が一般的です。4月入社に間に合わせるには、年内に企業側の書類を揃えておくのが安全です。
審査期間の目安は公表データで確認できます。出入国在留管理庁の在留審査処理期間では、令和8年6月許可分の技術・人文知識・国際業務の在留資格変更が平均56.8日でした。年明けの申請が集中する時期はさらに時間がかかることを前提に組んでください。
卒業したものの入社まで期間が空く場合は、内定者向けの「特定活動」が使えます。「留学」または継続就職活動の「特定活動」で在留中であること、日本の教育機関を卒業・修了していること、内定後1年以内かつ卒業後1年6月以内に採用されること、就労系の在留資格への変更が見込まれることなどが条件です。この在留資格では週28時間以内のアルバイトも可能で、インターンシップの場合はより長い時間の許可を得られる場合があります。
逆に、卒業できなかった場合は在留資格変更の前提が崩れます。内定を出した後も卒業見込みの状況を確認し、万一のときの対応(入社時期の変更など)を本人と共有しておくと、直前の混乱を避けられます。
5. よくある質問(FAQ)
Q1. 留学生を新卒採用する場合、どの在留資格になりますか?
多くは「技術・人文知識・国際業務」です。令和6年に就職目的で在留資格を変更した留学生39,766人のうち78.9%がこの在留資格でした。日本の大学等を卒業しN1相当の日本語能力を持つ場合は、より幅広い業務に従事できる「特定活動(本邦大学等卒業者、46号)」も選べます。
Q2. 特定活動46号では技術・人文知識・国際業務と何が違うのですか?
技術・人文知識・国際業務では一般的なサービス業務や製造業務が主たる活動になるものは認められませんが、46号では認められます。飲食店での店舗管理や通訳を兼ねた接客、工場で外国人従業員へ指導しながら自らもラインに入る業務などがガイドラインに例示されています。ただし業務独占資格が必要な業務と風俗関係業務は対象外です。
Q3. 特定活動46号の日本語能力の要件は何ですか?
日本語能力試験N1またはBJTビジネス日本語能力テスト480点以上の成績証明書が必要です。外国の大学で日本語を専攻した場合は、その大学の卒業証書または卒業証明書で代替できます。N2では要件を満たしません。
Q4. 内定を出したあと、卒業まで待つ期間の在留資格はどうなりますか?
卒業後に採用までの期間がある場合は、内定者向けの「特定活動」が利用できます。内定後1年以内かつ卒業後1年6月以内に採用されることなどが条件で、週28時間以内のアルバイトも可能です。
Q5. 留学生の採用でどの業種が多いのですか?
令和6年の就職状況では製造業が13.6%、非製造業が86.4%でした。非製造業では小売業10.2%、情報通信業9.3%が上位を占めています。
6. まとめ
留学生の新卒採用は、すでに日本にいる人材を迎えるぶん、海外からの呼び寄せに比べて手続きも定着の負担も軽くなります。令和6年には39,766人が就職のために在留資格を変更しており、市場としても十分な厚みがあります。
押さえるべきは在留資格の選択です。標準は技術・人文知識・国際業務(統計では78.9%)ですが、一般的なサービス業務や製造業務が中心となる配属は認められません。店舗運営や現場業務を担ってほしい場合は、特定活動46号が選択肢になります。日本の大学等の卒業とN1(またはBJT480点以上)が要件ですが、飲食店の店舗管理、小売店の仕入れ・商品企画・接客販売、工場での指導を伴う現場業務まで認められます。
ただし46号は「現場作業だけ」では要件を満たしません。企画・管理・指導・通訳といった要素を職務にどう組み込むかを、採用の時点で設計しておく必要があります。
スケジュール面では、4月入社に向けて年内に企業側の書類を整え、卒業と入社の間が空く場合は内定者向けの特定活動を活用する。この2点を押さえておけば、入社日を巡る不安はかなり減らせます。
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参考文献
・出入国在留管理庁「令和6年における留学生の日本企業等への就職状況について」(令和7年11月)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001449962.pdf
・出入国在留管理庁「在留資格『特定活動』(本邦大学等卒業者及びその配偶者等)」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/designatedactivities11.html
・出入国在留管理庁「留学生の就職支援に係る『特定活動』(本邦大学等卒業者)についてのガイドライン」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00038.html
・出入国在留管理庁「大学又は専門学校の在学中又は卒業後に就職先が内定し採用までの滞在をご希望のみなさまへ」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00013.html
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