訪日外国人マーケティングの始め方|失敗しないための5ステップと準備すべきこと
訪日外国人の数は、コロナ禍を経て急速に回復し、2024年には訪日外客数が過去最高水準を更新しました。政府による観光立国推進の政策的な後押しもあり、インバウンド消費は今後もさらなる拡大が期待されています。こうした追い風のなかで、「自社でも訪日外国人向けのマーケティングを始めたい」と考える企業や担当者の方は、年々増えてきています。
しかし、「どこから手をつければよいのかわからない」「ターゲットにすべき国はどこか」「どれくらいの予算が必要なのか」など、具体的な一歩を踏み出せずにいる方も多いのではないでしょうか。通常のマーケティングとは異なり、言語や文化への対応が必要となるぶん、「ハードルが高い」と感じてしまうのは自然なことです。
本記事では、訪日外国人マーケティングをこれから始める方に向けて、準備段階から実践までの5つのステップをわかりやすく解説します。失敗しないための考え方やよくある落とし穴もあわせてご紹介しますので、自社の施策を検討する際の参考としてお役立てください。
▼ 訪日外国人マーケティングの始め方|失敗しないための5ステップと準備すべきこと
訪日外国人マーケティングとは
通常のマーケティングとは何が違うのか
訪日外国人マーケティングとは、日本を訪れる外国人旅行者や訪日ビジネス客を対象に、自社の商品・サービスを認知してもらい、購買・利用につなげるための活動全般を指します。国内向けのマーケティングと基本的な考え方は変わりませんが、実践においていくつかの点で大きな違いがあります。
最も重要な違いは、言語と文化への対応です。日本人向けに作られたコンテンツや接客対応をそのまま活用することはできません。ターゲットとする国・地域の言語でコミュニケーションを取るのはもちろんのこと、その国ならではの文化的背景や価値観、消費行動の特性を理解したうえでアプローチを設計することが求められます。さらに、訪日外国人が情報を収集する媒体も国内向けとは大きく異なります。旅行前に自国のSNSや動画プラットフォーム、口コミサイトで目的地や店舗を調べる傾向が強く、国内マーケティングとは異なるチャネルでの接点づくりが不可欠です。こうした違いを正しく理解することが、効果的な訪日外国人マーケティングの第一歩となります。
インバウンド消費の現状
日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2024年の訪日外客数は約3,688万人と過去最高を更新し、インバウンド消費額も初めて8兆円を超えました。コロナ禍前の2019年比でも大幅に上回る水準となっており、訪日外国人市場は今まさに拡大局面にあります。
こうした市場拡大の背景には、円安による割安感の高まりや、日本のコンテンツ・食・文化への世界的な関心の上昇があります。特にアジア圏からの訪日客に加え、欧米・中東からの訪問者数も増加傾向にあり、ターゲットとなり得る国・地域の幅は広がっています。一方で、市場が拡大しているからこそ、競合他社よりも早く・正確に訪日外国人へのアプローチを確立することが、ビジネス上の優位性につながります。成長が続くインバウンド市場において、今から準備を始めることには十分な戦略的意義があります。
始める前に確認すべき3つの自社チェック
自社のリソース(予算・人員)は整っているか
訪日外国人マーケティングを始めるにあたって、まず確認しておきたいのが、自社のリソース状況です。どれだけ優れた施策を立案しても、予算や人員が不足していれば、継続的に取り組むことが難しくなります。スタートする前に、現実的な範囲を把握しておくことが重要です。
予算面では、多言語コンテンツの制作費・広告費・ツール導入費などが主な費用項目となります。最初から大きな予算を用意する必要はありませんが、「効果が出るまでに一定の期間がかかる」という前提で、短期的な費用対効果だけで判断しない姿勢が求められます。人員面では、施策を担当する専任者がいるかどうかも重要なポイントです。社内に担当者を置けない場合は、外部の専門会社に一部を委託することも選択肢のひとつとして検討しておきましょう。
対応できる言語・サービスの範囲を把握する
次に確認すべきは、自社がどの言語・どの範囲までサービスを提供できるかという点です。訪日外国人マーケティングでは、情報発信だけでなく、実際に来店・利用した際の対応品質も、集客の成否を左右する重要な要素となります。
たとえば、英語対応のウェブサイトは用意できても、実際の問い合わせや接客で英語が使えない場合、せっかく興味を持ってもらった訪日外国人を取りこぼすことになりかねません。まずは「どの言語で・どこまで対応できるか」を正直に棚卸しし、現状でカバーできる範囲からスタートすることが大切です。無理に対応範囲を広げるよりも、対応できる言語・サービスに絞って質を高める方が、顧客満足度の向上につながります。
受け入れ体制(決済・案内・接客)は最低限整っているか
集客施策を動かす前に、訪日外国人が実際に来店・利用した際の受け入れ体制が整っているかどうかも確認が必要です。いくら集客に成功しても、現場の対応が不十分であれば、口コミやレビューを通じてネガティブな評判が広がるリスクがあります。
特に確認しておきたいのは、決済手段・案内表示・接客対応の3点です。クレジットカードや電子マネーへの対応、多言語での店内表示や案内板の整備、そして基本的なコミュニケーションが取れる接客体制は、訪日外国人を受け入れる上での最低限の準備といえます。すべてを完璧に整えてからスタートする必要はありませんが、「集客と受け入れをセットで考える」という視点を持つことが、マーケティング成功の前提条件となります。
ターゲット市場(国・客層)を絞る
全方位対応はNG、まず1〜2カ国に絞るべき理由
訪日外国人マーケティングを始める際に多くの企業が陥りがちなのが、「できるだけ多くの国をターゲットにしよう」という発想です。しかし、特にリソースが限られる段階では、対象を広げすぎることがかえって成果を遠ざける原因になります。
国ごとに言語・文化・情報収集の習慣が異なるため、それぞれに合わせたコンテンツや対応を用意する必要があります。最初から複数の国を同時に狙うと、どの国に対しても中途半端な施策になりやすく、費用と労力のわりに効果が出にくくなります。まずは1〜2カ国に絞り、そのターゲットに向けて質の高い情報発信と受け入れ体制を整えることが、結果的に最も効率的なアプローチです。一定の成果が出てきた段階で、対象国を少しずつ広げていくというステップを踏むことをおすすめします。
国・地域別の特徴と消費傾向を知る
ターゲット国を選ぶ際には、各国・地域の訪日客の特徴や消費傾向を大まかに把握しておくことが役立ちます。
アジア圏では、台湾・韓国・香港からの訪日客はリピーターが多く、グルメや日常的な買い物への関心が高い傾向があります。中国本土からの訪日客は高単価消費の傾向が強く、旅行前に中国独自のSNS(小紅書・WeChatなど)で情報収集するのが特徴です。東南アジア(タイ・インドネシア・シンガポールなど)は若年層を中心に訪日需要が伸びており、体験型コンテンツやSNS映えするスポットへの関心が高い層が増えています。一方、欧米圏からの訪日客は滞在期間が長く、伝統文化・自然・ローカル体験を重視する傾向があります。情報収集はInstagramやGoogle検索が中心で、英語対応の質が集客に直結します。
自社の業種・立地から逆算してターゲットを選ぶ
ターゲット国を選ぶ際は、「どの国が大きいか」ではなく、「自社のサービスや立地と相性が良い国はどこか」という視点で考えることが大切です。
たとえば、ハラール対応が難しい飲食店であれば、イスラム圏よりも東アジア・欧米圏をターゲットにする方が現実的です。温泉旅館であれば、温泉文化に親しみのある台湾・韓国からの訪日客と親和性が高いといえます。また、地方に立地する事業者であれば、「ゴールデンルート」と呼ばれる主要観光地以外にも足を運ぶ傾向がある欧米・オーストラリア圏の訪日客を意識することが有効です。このように、自社のサービス内容・立地・受け入れ体制を起点に逆算してターゲットを絞ることが、効果的なマーケティングへの近道となります。
訪日外国人マーケティングの5ステップ
ステップ1:現状分析(どこから来ているか把握する)
まず取り組むべきは、現状の把握です。すでに自社に訪日外国人のお客様がいる場合は、どの国・地域から来ているのか、どのような手段で自社を知ったのかを確認することから始めましょう。Googleアナリティクスでウェブサイトのアクセス国別データを確認したり、スタッフに声がけして来店経路をヒアリングしたりするだけでも、多くのヒントが得られます。
まだ訪日外国人の利用がない場合は、自社の業種・立地・サービス内容をもとに「どの国の人が興味を持ちそうか」を仮説として整理するところから始めます。現状分析は施策の方向性を決める土台となるため、思い込みや感覚ではなく、データと事実をもとに判断することを心がけてください。
ステップ2:ターゲット・ペルソナを設定する
現状分析をもとに、具体的なターゲット像(ペルソナ)を設定します。「訪日外国人全般」を対象にするのではなく、「台湾在住・30代・女性・グルメと買い物目的で年1〜2回来日するリピーター」といった具体的なイメージを持つことで、その後の施策の精度が大きく変わります。
ペルソナを設定する際は、国籍・年齢・旅行スタイル・情報収集の手段・来日目的などの軸で整理するとわかりやすくなります。最初から完璧な精度を求める必要はありませんが、「誰に届けたいのか」が曖昧なまま施策を進めると、コンテンツも広告もぼんやりとした内容になりがちです。ターゲットを具体的に言語化することが、一貫したマーケティングの出発点となります。
ステップ3:集客チャネルを選定する
ペルソナが定まったら、そのターゲットが実際に情報を収集している媒体・チャネルを選定します。訪日外国人の情報収集手段は国によって大きく異なるため、ターゲット国に合わせた選択が重要です。
たとえば、台湾・タイの訪日客にはInstagramやLINEが有効な場合が多く、中国本土をターゲットにする場合は小紅書(RED)やWeChatへの対応が必要になります。欧米圏であれば、GoogleやInstagram、TripAdvisorといったプラットフォームが主な情報収集の場となります。また、OTA(オンライン旅行代理店)への掲載や多言語SEOも、訪日前の検索行動に対応する有効な手段です。最初からすべてのチャネルに取り組むのではなく、ターゲットが最も利用しているチャネルに集中することが、限られたリソースを有効に活用するコツです。
ステップ4:コンテンツ・接点を整備する
チャネルが決まったら、そのチャネルで発信するコンテンツと、実際の接点(ウェブサイト・店頭・予約導線など)を整備します。コンテンツ制作で特に重要なのは、ターゲット言語への翻訳の質です。機械翻訳をそのまま使うと不自然な表現になりやすく、信頼感を損なう原因になることがあります。可能であれば、ネイティブチェックを経た自然な表現でのコンテンツ制作を心がけましょう。
また、SNS投稿やウェブサイトだけでなく、店頭の多言語表示・予約システムの多言語対応・決済手段の整備なども「接点の整備」に含まれます。オンラインで興味を持ってもらった訪日外国人が、実際に来店・利用するまでの導線をスムーズにつなげることが、コンバージョン率の向上に直結します。
ステップ5:効果測定とPDCAを回す
施策を実施したら、定期的に効果を測定し、改善を繰り返すことが長期的な成果につながります。訪日外国人マーケティングは、すぐに結果が出るケースばかりではありません。データを見ながら仮説を立て、修正を加えていく継続的なPDCAのサイクルが重要です。
測定すべき指標はチャネルによって異なりますが、ウェブサイトであれば外国語ページのセッション数・直帰率・問い合わせ数、SNSであればリーチ数・エンゲージメント率などが基本的な確認項目となります。数値の変化を定点観測し、「何が効いているか・何が効いていないか」を把握することで、次の施策の精度を着実に高めていくことができます。
よくある失敗パターン3選
失敗パターン1:翻訳しただけで終わる
訪日外国人マーケティングを始める際に最もよく見られる失敗のひとつが、既存の日本語コンテンツを翻訳しただけで「対応完了」とみなしてしまうケースです。翻訳はあくまでスタートラインであり、それだけでは十分な効果は期待できません。
訪日外国人に響くコンテンツとは、ターゲット国の文化的背景や価値観に合わせて設計されたものです。日本人向けに最適化された文章や表現をそのまま翻訳しても、現地の読者には違和感を与えることがあります。また、機械翻訳をそのまま使用した不自然な表現は、ブランドの信頼性を損なうリスクにもなります。翻訳の質にこだわりつつ、コンテンツそのものをターゲット読者の視点で作り直す意識を持つことが大切です。
失敗パターン2:チャネルを絞らずに予算を分散する
「効果が出るかわからないから、いろいろ試してみよう」という発想から、複数のチャネルに少しずつ予算を振り分けてしまうケースも、よく見られる失敗パターンです。結果として、どのチャネルも効果検証に必要な十分なデータが集まらず、何が有効だったのかが判断できないまま終わってしまいます。
訪日外国人マーケティングにおいては、チャネルごとに必要なコンテンツ形式や運用ルールが異なるため、複数を同時に高品質で運用するにはそれ相応のリソースが必要です。まずはターゲットが最もよく利用する1〜2つのチャネルに集中し、そこで一定の成果と知見を積み上げることが、全体の効率を高める近道となります。
失敗パターン3:受け入れ体制を整えずに集客する
集客施策だけが先行し、実際に訪日外国人が来店・利用した際の受け入れ体制が追いついていないケースも少なくありません。SNSやウェブサイトで興味を持ってもらい、実際に足を運んでもらっても、現場での対応が不十分であれば、せっかくの機会を活かすことができません。
特に注意が必要なのは、口コミ・レビューへの影響です。訪日外国人はTripAdvisorやGoogleマップ、各国のSNSに来店後の感想を投稿する傾向が強く、ネガティブな体験がそのまま口コミとして広がると、次の集客に悪影響を及ぼします。集客と受け入れは常にセットで考え、現場の準備が整った状態で集客施策を本格化させることが、長期的な信頼と売上につながる正しい順序です。
内製 vs 外注:どちらで始めるべきか
内製向きのケース・外注向きのケース
訪日外国人マーケティングを進めるにあたって、「社内で対応するか、外部に委託するか」は多くの企業が悩むポイントです。どちらが正解というわけではなく、自社の状況に合った選択をすることが重要です。
内製が向いているのは、社内に語学スキルを持つ担当者がいる場合や、すでにSNS運用・コンテンツ制作のノウハウが蓄積されている場合です。また、自社ならではのリアルな情報や空気感を発信することが強みになる業種(飲食・宿泊・体験型サービスなど)では、現場に近い担当者が運用した方が、コンテンツの鮮度や親しみやすさが出やすいという利点もあります。一方で、語学対応・専門知識・運用リソースのいずれかが不足している場合は、外注を検討することが現実的な選択肢となります。
プロに依頼することで得られるメリット
外部の専門会社に委託する最大のメリットは、自社にないノウハウと実績を即座に活用できる点です。訪日外国人マーケティングは、国内向けマーケティングとは異なる専門知識が求められる領域であり、独学や試行錯誤だけでは成果が出るまでに時間がかかることも少なくありません。
専門会社であれば、ターゲット国の市場特性・効果的なチャネル・コンテンツの方向性について、豊富な支援実績をもとに的確なアドバイスを提供することができます。また、多言語コンテンツの制作・広告運用・効果測定までを一括して依頼することで、社内の担当者は本来の業務に集中しやすくなるという副次的なメリットもあります。「何から始めればよいかわからない」「施策を試したが思うように成果が出ていない」という場合は、まず専門家に相談することで、自社に合った最短ルートを見つけられる可能性が高まります。
まとめ
訪日外国人マーケティング、5ステップの要点整理
本記事では、訪日外国人マーケティングをこれから始める方に向けて、準備から実践までの流れをご紹介しました。最後に、5つのステップの要点を簡単に振り返っておきましょう。
まず取り組むべきは、現状分析です。自社にすでに訪日外国人のお客様がいる場合は来店経路やデータを確認し、まだいない場合は自社の業種・立地をもとに仮説を立てるところから始めます。次に、ターゲット・ペルソナを具体的に設定し、「誰に届けたいのか」を明確にします。その上で、ターゲットが実際に利用しているチャネルを選定し、質の高いコンテンツと現場の受け入れ体制を整えます。そして、施策を実施したあとは効果測定とPDCAを継続することが、長期的な成果につながります。いきなりすべてを完璧に整える必要はありません。小さく始めて、データをもとに着実に改善を重ねていくことが、訪日外国人マーケティング成功への王道です。
「何から始めればよいかわからない」そんな時はご相談ください
訪日外国人マーケティングは、正しい順序と方法で取り組めば、着実に成果につなげることができます。一方で、ターゲット選定・チャネル設計・多言語対応など、初めて取り組む企業にとって判断が難しいポイントも多く存在します。
「自社に合ったターゲット国がわからない」「どのチャネルから手をつければよいか迷っている」「施策を実施したが効果が出ていない」といったお悩みをお持ちの場合は、ぜひ一度、訪日外国人マーケティングの専門家にご相談ください。貴社の業種・規模・目標に合わせた最適なアプローチを、豊富な支援実績をもとにご提案いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
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