ベトナム経営の実務とは?会社設立から安定運営まで押さえるべき重要ポイント
ベトナムは、安定した経済成長と若い労働人口を背景に、日本企業の進出先として高い注目を集めています。製造業の生産拠点としてだけでなく、ITやサービス分野においても市場の拡大が続いており、「次の成長拠点」として位置づける企業も少なくありません。しかし、現地法人を設立しただけで事業が軌道に乗るわけではないのが現実です。会社設立はあくまでスタートラインにすぎず、その後の経営体制や管理設計が、成否を大きく左右します。
特にベトナムでは、会計・税務制度や労務管理のルールが日本とは大きく異なり、ローカル特有の実務対応が求められます。設立段階で十分な準備を行わなければ、後から修正に多大なコストと時間を要することもあります。また、本社と現地法人の間で情報共有が不十分なまま運営が進むと、経営の透明性が損なわれるリスクも生じます。
本記事では、ベトナム会社設立の基本から、設立後に直面しやすい経営課題、そして安定した事業運営を実現するための実務ポイントまでを整理します。これから進出を検討している企業はもちろん、すでに現地法人を持ち、運営体制の見直しを検討している企業にとっても参考となる内容をお届けします。
▼ ベトナム経営の実務とは?会社設立から安定運営まで押さえるべき重要ポイント
なぜ今、ベトナムでの会社設立・経営が注目されているのか
ベトナム市場の成長性と投資環境
ベトナムは近年、安定した経済成長を続けており、ASEANの中でも有望な市場として評価されています。若年人口が多く、消費市場としての拡大余地が大きい点に加え、製造拠点としての競争力も依然として高い水準にあります。政府も外資誘致に積極的であり、工業団地の整備や投資優遇措置の拡充など、外国企業にとって参入しやすい環境づくりが進められています。このような背景から、日本企業にとっても中長期的な経営戦略の一環としてベトナムを位置づける動きが広がっています。
製造業・IT分野を中心とした進出動向
これまでベトナム進出の中心は製造業でしたが、近年はIT、ソフトウェア開発、サービス業など多様な分野へと広がっています。特に、サプライチェーンの再構築やリスク分散の観点から、製造拠点を新たに設ける企業が増えています。一方で、IT分野では優秀な若手人材を活用したオフショア開発やデジタル事業の展開も活発です。ただし、業種を問わず共通して言えるのは、現地事情を踏まえた経営設計がなければ、期待通りの成果を上げることは難しいという点です。
「進出=成功」ではない現実
法人設立が完了すると、一見すると事業が本格的にスタートしたように感じられます。しかし実際には、設立後の経営管理や実務対応が十分に整っていなければ、思わぬトラブルに直面することがあります。会計処理の遅れや税務申告の不備、労務管理の誤りなどは、事業運営に直接的な影響を及ぼします。進出時の期待感と現実のギャップに戸惑う企業も少なくありません。ベトナム経営では、設立をゴールとするのではなく、その後の安定運営までを見据えた準備が不可欠です。
ベトナム会社設立の基本ステップ
法人形態の種類(LLC・合弁など)
ベトナムで会社を設立する際には、まず適切な法人形態を選択する必要があります。最も一般的なのは有限責任会社(LLC)で、出資者が一社または複数社の形態を選ぶことができます。単独出資による100%外資法人も可能ですが、業種によっては現地企業との合弁が求められる場合もあります。事業内容や将来的な展開方針によって最適な形態は異なるため、設立段階で慎重に検討することが重要です。法人形態の選択は、税務やガバナンス体制にも影響を与えるため、経営戦略と一体で判断する必要があります。
投資登録証明書(IRC)と企業登録証明書(ERC)
ベトナムで外資企業が事業を行うためには、投資登録証明書(IRC)と企業登録証明書(ERC)の取得が必要となります。IRCは投資プロジェクトに対する承認を示すものであり、事業内容や出資額、所在地などが審査対象となります。その後、ERCを取得することで法人としての法的地位が確立されます。手続きは書類準備や当局とのやり取りを含め一定の時間を要しますが、提出内容の整合性が取れていないと差し戻しが発生することもあります。設立スケジュールを見据えた計画的な準備が求められます。
設立にかかる期間・費用の目安
会社設立にかかる期間は、事業内容や地域、書類の準備状況によって異なりますが、一般的には数か月程度を見込む必要があります。費用についても、登録費用や専門家報酬、オフィス契約費用などが発生します。また、最低資本金の規制は業種ごとに異なり、十分な資本金を設定していない場合、ビザ取得や銀行口座開設に影響が出ることもあります。初期コストを抑えることだけを優先せず、事業規模や将来計画を踏まえた資金計画を立てることが、安定したベトナム経営の第一歩となります。
会社設立後に始まる“本当の経営”
会計・税務登録とコンプライアンス対応
会社設立が完了すると、次に重要となるのが会計・税務関連の登録と運用体制の整備です。ベトナムでは、法人税や付加価値税(VAT)などの申告義務があり、月次・四半期ごとの報告が求められます。日本と会計基準や税務実務が異なるため、現地ルールに沿った帳簿管理が不可欠です。申告遅延や計算誤りが発生すると、罰金や追徴課税の対象となる可能性もあります。設立直後から適切な会計体制を構築し、コンプライアンスを徹底することが、安定した経営の基盤となります。
銀行口座開設・資本金払い込みの実務
法人設立後は、現地銀行口座の開設と資本金の払い込みが必要です。銀行口座の開設には、代表者の面談や各種書類の提出が求められ、想定以上に時間がかかることもあります。また、資本金は定められた期限内に払い込む必要があり、為替管理や送金手続きにも注意が必要です。これらの実務が滞ると、事業開始や取引先との契約にも影響を及ぼします。設立段階からスケジュールを見据え、余裕を持った準備を行うことが重要です。
労務・社会保険手続きの初期対応
従業員を雇用する場合、労働契約の締結や社会保険登録などの手続きが発生します。ベトナムの労働法は改正も多く、雇用契約書の内容や試用期間の取り扱いなどに細かな規定があります。社会保険の加入や個人所得税の源泉徴収も適切に行わなければなりません。初期段階で制度理解が不十分なまま運用を始めると、後に是正対応が必要となる場合があります。設立後の人事・労務体制を早期に整備することが、組織の安定運営につながります。
ベトナム経営で直面しやすい実務課題
会計・税務のローカルルールへの対応
ベトナムでは、日本とは異なる会計基準や税務実務が適用されます。例えば、付加価値税の取り扱いや損金算入の可否など、細かな運用ルールが存在します。日本本社の基準で処理を進めてしまうと、後に修正が必要になるケースもあります。また、税務調査への対応に備えた書類整備も重要です。現地ルールを理解し、適切に記録を残しておくことが、経営リスクを低減させるための基本となります。設立後の段階で、会計・税務体制をどこまで整備できるかが、その後の安定運営を左右します。
本社と現地法人のレポーティングギャップ
ベトナム現地法人から日本本社へ提出されるレポートは、形式的には整っていても、経営判断に十分な情報が含まれていない場合があります。現地での慣行や数字の前提条件が共有されていなければ、本社は正確な状況を把握できません。その結果、意思決定が遅れたり、誤った判断につながったりする可能性があります。本社と現地の間で、報告フォーマットや確認プロセスをすり合わせ、情報の透明性を高めることが重要です。単なる数値報告ではなく、背景や課題を共有する仕組みづくりが求められます。
内部統制・ガバナンスの設計不足
設立当初は少人数での運営となることが多く、内部統制の仕組みが十分に整備されないまま業務が進むことがあります。しかし、事業規模が拡大すると、承認フローや権限管理の不備が問題化する可能性があります。特定の担当者に業務が集中し、属人化が進むと、引き継ぎや不正防止の観点からもリスクが高まります。ベトナム経営では、初期段階からガバナンス体制を意識し、業務プロセスを明確にしておくことが不可欠です。管理を強化するというよりも、継続的に運営できる仕組みを整えることが重要です。
安定したベトナム経営を実現するためのポイント
設立段階からの管理体制設計
ベトナム経営を安定させるためには、会社設立の段階から管理体制を見据えた設計を行うことが重要です。法人形態や資本金の設定だけでなく、将来的な事業拡大や組織拡張を前提とした会計・税務・労務の運用方針を定めておく必要があります。設立後に体制を後付けで整えると、業務フローの変更や再申請など、余計なコストと時間が発生する場合があります。初期段階から管理体制を意識することで、経営の透明性を確保し、リスクを未然に防ぐことが可能になります。
ローカルパートナー・専門家の活用
ベトナム特有の制度や商習慣に対応するためには、現地事情に精通した専門家のサポートが有効です。会計・税務・法務の各分野で専門的な知見を持つパートナーと連携することで、法令遵守を徹底しつつ、効率的な運営が実現します。また、言語や文化の違いによる誤解を防ぐ役割も期待できます。自社だけで対応しようとするのではなく、外部の知見を活用することは、経営の安定性を高めるための現実的な選択肢といえます。
経営の“見える化”によるリスク管理
安定したベトナム経営には、数値と業務プロセスの見える化が欠かせません。売上や原価、資金繰りの状況をタイムリーに把握できる体制を整えることで、問題の早期発見が可能になります。また、本社との情報共有が円滑になれば、意思決定のスピードも向上します。見える化は単なる管理強化ではなく、経営判断の質を高めるための基盤です。継続的に改善を重ねることで、現地法人が自律的に成長できる体制が整います。
まとめ|ベトナム経営は設立より「設計」が重要
ベトナムでの会社設立は、あくまで事業展開の第一歩にすぎません。本当に重要なのは、その後の経営体制をどのように設計し、運営していくかという点です。会計・税務・労務といった基礎的な実務を確実に整え、本社と現地の連携を強化することで、安定した経営基盤を築くことができます。設立時点で将来を見据えた設計を行うことが、長期的な成功につながります。ベトナム経営を持続的な成長へと導くためには、制度理解と実務設計の両立が欠かせません。
ベトナムでの会社設立は、あくまでスタートに過ぎません。重要なのは、その後の経営体制をどのように設計し、安定的に運営していくかです。
会計・税務・労務といった基礎実務を確実に整え、本社と現地の連携体制を構築することが、持続的な成長の土台となります。設立時から将来を見据えた設計を行うことで、リスクを抑えながら強い経営基盤を築くことが可能です。弊社では、設立支援にとどまらず、設立後の管理体制構築や実務運用まで一貫してサポートしております。ベトナム事業を長期的な成功へと導く体制づくりを、ぜひお任せください。
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私たちは企業の海外挑戦を設計→実行→着地まで伴走支援いたします。
これまでの企業支援数は1,500以上です。
私たちは『どの国が最適か?』から始まる海外進出のゼロ→イチから、
海外進出後のマーケティング課題も現地にて一貫支援いたします。
※支援主要各国現地にメンバーを配置し、海外進出後も支援できる体制
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■サポート対象国(グループ別)
↳アジア①(タイ・ベトナム・マレーシア・カンボジア・インドネシア・フィリピン・ラオス)
↳アジア②(日本・香港・シンガポール・台湾・韓国)
↳アジア③(ドバイ・サウジアラビア・インドバングラデシュ・モンゴル・ミャンマー)
↳欧米(アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ)
※サポート内容により、対応の可否や得意・不得意な分野はあります。
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■対応施策ラインナップ
①"市場把握"サポート
目的は"海外現地を理解し、事業の成功可能性を上げる"こと。
(以下、含まれる施策)
↳市場概況・規制調査
↳競合調査
↳企業信用調査
↳現地視察企画・アテンド
②"集客活動"サポート
目的は"海外現地で売れるためのマーケティング活動を確立"すること。
↳多言語サイト制作
↳EC運用
↳SNS運用
↳広告運用(Google/Metaなど)
↳インフルエンサー施策
↳画像・動画コンテンツ制作
③"販路構築"サポート
目的は"海外現地で最適な海外パートナーとの取引を創出"すること。
↳商談向け資料制作
↳企業リストアップ
↳アポイント取得
↳商談創出・交渉サポート
↳契約サポート
④"体制構築"サポート
目的は"海外現地で活動するために必要な土台"をつくること。
↳会社設立(登記・銀行口座)
↳ビザ申請サポート
↳不動産探索(オフィス・倉庫・店舗・住居)
↳店舗開業パッケージ(許認可・内装・採用・集客)
↳人材採用支援(現地スタッフ採用支援)
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合同会社サウスポイント
世界と日本をつなぐ架け橋「沖縄」から海外展開を支援しています
2017年7月日本・沖縄と海外の万国津梁の架け橋を目指して、企業の海外展開支援を目的として沖縄・那覇で設立。アジア・欧州を中心に沖縄県内・沖縄県外企業の海外進出・国際展開のサポートを実施しています。2022年7月には観光産業の伸びの著しい石垣市に八重山事務所を開設しております。
沖縄をハブに、台湾・中国・香港・ベトナム・タイ・マレーシア・シンガポール・インドネシア・オーストラリア・ニュージーランド・イギリス・ドイツ・ブラジル各国にパートナーエージェントを配置し、アメリカ合衆国・インドは提携先を設けていますので、現地でも情報収集、視察等も直接支援可能、幅広く皆様の海外展開とインバウンド事業をサポートしております。 -
株式会社東京コンサルティングファーム
【26ヵ国39拠点】各国日本人駐在員が現地にてサポートいたします。
弊社は、会計事務所を母体とした26ヵ国39拠点に展開するグローバルコンサルティングファームです。
2007年に日本の会計事務所として初めてインドに進出し、翌年ASEAN一帯、中南米等にも進出しました。歴が長く、実績・ノウハウも豊富にございます。
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当社のサービスは、“ワンストップ”での サービスを提供できる環境を各国で整えており、特に会計・税務・法務・労務・人事の専門家を各国で有し、お客様のお困りごとに寄り添ったサービスを提供いたします。
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