「何もない」過疎地域がインバウンド集客を始める方法|低予算でできる施策ロードマップ
「うちの地域に外国人が来るわけがない」——地方や過疎地域の事業者・自治体担当者から、こうした声をよく耳にします。しかし、その思い込みを考え直す価値があります。
欧米・豪州・台湾からのリピーター旅行者は「本物の日本の暮らし」を求めて農村・過疎地域を訪れています。棚田の風景、囲炉裏のある民家、地元の職人技——都会にはないコンテンツがインバウンド集客の武器になりえます。
本記事では、予算や人手が限られる過疎地域の事業者・自治体担当者に向けて、インバウンド集客の始め方をステップ別・予算別に整理します。
この記事でわかること
- ・過疎地域がインバウンドで戦える理由と地方の強みの見つけ方
- ・低予算から始められるインバウンド施策のステップ別ロードマップ
- ・OTA・DMO・SNSなど集客チャネル別の取り組み方と継続する仕組みづくり
▼目次
1. 過疎地域がインバウンドで戦える理由
外国人が「大都市より地方を選ぶ」3つの動機
観光庁の調査(2024年)によると、リピーター旅行者の約40%が「東京・大阪以外の地域を訪れたい」と回答しており、「脱・ゴールデンルート」の傾向は強まっています。
外国人旅行者が地方・過疎地域を選ぶ動機は主に3つです。第一に「オーセンティックな日本体験」への欲求です。農村や漁村でリアルな日本の暮らしに触れたいという願望がSNSを通じて世界に広がっています。第二に「人混みを避けたい」というニーズです。オーバーツーリズムを嫌う欧米・豪州の旅行者にとって「人が少ない」過疎地域はむしろメリットです。第三に「体験型コンテンツ」への関心です。農業・漁業・伝統工芸など都市部では得られない「参加する」観光への需要が高まっており、過疎地域はその提供源として大きな潜在力があります。
過疎地域の弱みが逆に強みになるケース
過疎地域の事業者が「うちには何もない」と感じる要素が、外国人旅行者には「日本らしい非日常」として映るケースが多々あります。
人口が少なく静かな集落は「本物の日本を感じられる場所」として海外の旅行メディアに取り上げられやすいコンテンツです。古くなった民家や蔵は外国人の目には「歴史ある建物」として映り、地元で当たり前に続いてきた農作業や漁業の現場も一生の思い出になりえる体験の場です。
実際、島根県の農村地域では田植え・稲刈り体験を提供し始めた農家が口コミ評価を高め、欧米からのグループ旅行の誘致につながった事例があります。
重要なのは「ない」という視点から「違う」という視点への転換です。都市部にはない独自の価値を発見し旅行者の言葉で伝えることが、過疎地域のインバウンド戦略の出発点になります。
2. まず何から手をつけるか(ステップ0〜1)
自地域の「売れる資源」の棚卸し方
インバウンド施策を始める前に、まず自地域にある資源を整理する作業が必要です。「地元の人が当たり前だと思っているもの」こそが観光資源になりやすいという点が重要です。
棚卸しは4軸でリストアップしましょう。自然・風景(里山・棚田・海岸など)、食・食文化(地場産品・郷土料理など)、体験・技術(農業・漁業・伝統工芸など)、建物・歴史(古民家・神社仏閣など)の4軸で整理すると漏れが少なくなります。
リストアップができたら「外国人の視点で見て、どれが珍しく映るか」を想像しながら優先順位をつけます。地域の観光協会や地元住民に意見を聞くのも有効です。
無料でできる最初の一手(GoogleビジネスプロフィールとSNS登録)
資源の棚卸しができたら、次は「外国人旅行者に見つけてもらう」仕組みを作ります。費用ゼロで始められる最初の一手として、Googleビジネスプロフィールへの登録が最優先です(週30分程度から運用できます)。
Googleビジネスプロフィールは、Google検索やGoogleマップ上に施設情報を表示できる無料サービスです。外国人旅行者の多くは訪問先検索にGoogleマップを使用しており、登録することで施設名・営業時間・写真・多言語クチコミを表示できます。英語の説明文も入力しておくことを強くおすすめします。質の高い写真を10枚以上登録すると表示機会が増えます。
SNSではInstagramへの投稿が特に有効です。英語キャプションに#ruralJapan #hiddenJapanなどのハッシュタグを活用することで海外ユーザーにリーチできます。週1〜2回の継続投稿を心がけましょう。
3. 予算別インバウンド施策ロードマップ
月0〜3万円でできること
予算がほとんどない段階でも施策は多数あります。この段階の目標は「外国人旅行者に存在を知ってもらう」ことに絞りましょう。
まずGoogleビジネスプロフィールの登録・最適化(無料)が最優先です。英語の説明文、高画質の写真、営業時間を整備します。次にInstagramやFacebookへの英語投稿(無料)として、スマートフォン撮影の写真とDeepLを使った英語キャプションで定期投稿します。OTAへの掲載申請(成果報酬型)として、Airbnb・Booking.com・Viatorなどへの掲載は登録無料で予約成立時に手数料が発生する仕組みです。また多言語の簡易案内ツールの整備(〜1万円)として、指さし会話シートや多言語QRコードメニューを準備します。さらにキャッシュレス決済の導入(AirペイやSquare等、初期費用無料)も早めに対応しましょう。現金のみでは機会損失につながります。
この段階ではまず「見つけてもらえる状態」を作ることが重要です。
月3〜10万円で追加すべき施策・補助金活用
ある程度の予算が確保できたら、情報発信の質と量を高め受け入れ体制を整える段階に移ります。
多言語対応ウェブサイトの整備(初期費用3〜10万円)として最低限の英語ページを作成します。アクセス方法・体験内容・予約方法を英語で明確に記載することが重要です。英語SNS広告の試験運用(月3〜5万円)として、農村・自然・日本文化に関心を持つ海外ユーザーへのターゲティング広告を少額から試みます。多言語予約システムの導入(月5,000〜2万円程度)として「Airbnb体験」などを活用すると外国人旅行者が自力で予約できる環境が整います。
さらに補助金・助成金の活用も検討してください。小規模事業者持続化補助金や観光庁のDMO支援事業、各都道府県の観光振興補助金などが利用できるケースがあります。自治体の産業振興課や観光課に相談しましょう。
4. 集客チャネル別の取り組み方
OTA(Airbnb・Booking.com)への掲載
OTA(Online Travel Agency)への掲載は、過疎地域のインバウンド集客においてコストパフォーマンスが高い施策の一つです。初期費用ゼロで世界中の旅行者にリーチできる点が最大のメリットです。
宿泊施設を持つ事業者にはAirbnbとBooking.comへの掲載を優先してください。Airbnbは古民家や農家での民泊など体験型宿泊施設に強いプラットフォームです。体験コンテンツのみであればViatorやGetYourGuideで農業体験・伝統工芸・料理教室も販売できます。
OTA掲載では口コミ評価の蓄積が重要です。初期の予約客に丁寧にフォローアップして評価4.5以上を目指しましょう。写真の質も集客に大きく影響します。
旅行会社・DMOとの連携の進め方
単体の事業者だけでインバウンド集客を行うには限界があります。地域のDMO(観光地域づくり法人)や旅行会社との連携は、過疎地域にとって非常に有効な手段です。
DMOに参加することで、単独では難しいプロモーション・海外旅行会社との商談活動に加われます。都道府県の観光協会や観光課に問い合わせましょう。
旅行会社との連携では「着地型観光プログラム」として完成した商品を提示することが重要です。「2泊3日パッケージ」「半日体験プログラム」として価格・内容・最少催行人数を整理して提案すると販売しやすくなります。
SNS・YouTubeでの地域PRの始め方
長期的なインバウンド集客には、SNSやYouTubeを通じた継続的な情報発信が欠かせません。過疎地域は「まだ世界に知られていない秘境」として発信することで大きな反響を得られる可能性があります。
Instagramは過疎地域の自然・食・文化コンテンツと相性の良いプラットフォームです。英語キャプションに #ruralJapan #hiddenJapan などのハッシュタグを付けるとリーチが広がります。リール(短尺動画)も効果的です。YouTubeは長尺コンテンツとして、地域の四季・体験・暮らしを発信するのに適しており、英語字幕を付けることで海外視聴者にも届きます。スマートフォン撮影で十分です。
5. 継続して成果を出すための仕組みづくり
KPIの設定と測定方法
インバウンド施策を継続して改善していくためには、成果を定量的に測定するKPI(重要業績評価指標)の設定が不可欠です。感覚だけでなく数字で把握することで、どの施策が効果的かを判断できるようになります。
設定すべき主なKPIとして、認知・流入指標(Googleビジネスプロフィールの表示回数・SNSリーチ数)、予約・来訪指標(OTA経由の予約件数・外国人宿泊者数)、顧客満足指標(口コミ評価平均点・リピート率)が挙げられます。
これらを月次でスプレッドシートに記録し、推移を確認する習慣をつけましょう。
自治体・地域連携で負担を分散する方法
インバウンド集客を一事業者だけで担おうとすると、情報発信・受け入れ対応・測定・改善のすべてに人手と費用がかかり継続が難しくなります。地域全体での連携体制を作ることが長続きする仕組みの鍵です。
自治体との連携では、まず観光課や産業振興課への相談から始めましょう。インバウンド促進計画が存在する自治体では、補助金・研修・プロモーション参加機会などのサポートメニューが整備されています。
地域内の他事業者との横連携も重要です。宿泊・食事・体験・交通を束ねた地域一体型パッケージとして提供することで、外国人旅行者の「滞在する理由」が増えます。商工会や観光協会への相談から始めましょう。
6. よくある質問(FAQ)
Q1. 過疎地域でインバウンド集客を始めるには何から着手すればよいですか?
まずGoogleビジネスプロフィールへの登録と英語対応から始めましょう。費用ゼロで外国人旅行者に見つけてもらいやすくなります。慣れたらInstagramやOTAへ段階的に拡大します。
Q2. インバウンド集客に使える補助金・助成金はありますか?
小規模事業者持続化補助金(経済産業省)、各都道府県の観光振興補助金、観光庁のDMO支援制度などが活用できるケースがあります。自治体の産業振興課・観光課や地元の商工会への相談が最初の一歩です。
Q3. 英語が話せなくてもインバウンド対応は可能ですか?
はい、可能です。翻訳アプリや指さし会話シート、写真を使った案内板など言語スキルに頼らない対応方法が多数あります。多言語対応の予約システムの導入もおすすめです。
Q4. OTAへの掲載はどのプラットフォームから始めるべきですか?
宿泊施設があればAirbnbとBooking.comへの掲載から始めるのがおすすめです。体験中心であればViatorやGetYourGuideが効果的です。いずれも登録無料で予約成立時に手数料が発生する仕組みのため、初期費用ゼロで始められます。
Q5. インバウンド集客の成果はどのように測定すればよいですか?
GoogleビジネスプロフィールのリーチやSNSのリーチ数、OTAの予約件数と口コミ評価をKPIとして設定し、月次で記録する習慣をつけましょう。
7. まとめ
「何もない」と思われている過疎地域は、外国人旅行者にとって大きな魅力を持っています。都市にはない自然・食・体験・静けさは、大都市観光に飽きたリピーター旅行者が求めるものです。
インバウンド集客はまずGoogleビジネスプロフィールへの登録とSNSでの英語発信(費用ゼロ)からスタートし、OTAへの掲載、多言語ウェブサイトの整備、補助金を活用した本格展開と段階的に進めましょう。
継続して成果を出すためには、KPIを月次で測定し、自治体や地域の事業者と連携して負担を分散する仕組みが重要です。本格化させたい場合は、専門的なノウハウを持つ支援企業への相談も有効です。
8. 優良な海外進出サポート企業をご紹介
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参考文献
・観光庁「インバウンド消費動向調査(旧 訪日外国人消費動向調査)」(2024年)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/tokei_hakusyo/gaikokujinshohidoko.html
・日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」(2024年)
https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/
・中小企業庁「小規模事業者持続化補助金について」(2024年)
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/shokibo/jizoku/index.html
・観光庁「観光地域づくり法人(DMO)とは」(2025年)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/page04_000048.html
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