海外進出に現地法人は必要?日本企業が知っておきたいEOR(雇用代行)の活用法
海外進出を検討する日本企業にとって、進出先で現地法人を設立し、その法人を通じて従業員を雇用する方法は、よく取られる選択肢の一つです。シンガポール、タイ、ベトナム、インドネシアなどアジア各国を含む海外で長期的に事業を展開する予定がある場合には、有力な方法と言えるでしょう。
一方で、新しい市場への進出を検討している段階や、まずは1名を採用して市場の可能性を見極めたい場合には、必ずしも現地法人の設立から始める必要はありません。
そうした場面で選択肢となるのが、EOR(Employer of Record/雇用代行)の活用です。国や雇用形態によって利用条件は異なりますが、自社の現地法人がない国でも人材を雇用できる方法として活用されています。
▼ 海外進出に現地法人は必要?日本企業が知っておきたいEOR(雇用代行)の活用法
海外で人材を採用する3つの方法
海外で人材を採用する方法は、現地法人の設立だけではありません。主な選択肢を整理すると、次の3つに分けられます。
1. 現地法人を設立する
進出先の国で子会社や支店などの現地法人を設立し、従業員を直接雇用する方法です。
長期的な事業展開を見据え、一定規模の組織を構築する予定がある企業には、現地法人の設立が適している場合があります。
一方、法人の設立・維持には、会社登記、会計、税務、給与計算、人事管理に加え、各種法令への継続的な対応も必要です。
まずは1名、あるいは数名から海外採用を始めたい企業にとって、進出初期に現地法人を設立することは大きな負担になりかねません。
2. 個人事業主・業務委託として契約する
業務内容によっては、現地の人材に個人事業主として業務を委託する方法もあります。
ただし、業務委託契約の内容は、実際の働き方や当事者間の関係と整合している必要があります。
契約書上は「業務委託」であっても、実際の働き方が従業員に近い場合、現地法上、独立した業務委託者とは認められない可能性があります。
そのため、労働者の区分や雇用関連法令への対応についても確認が必要です。
3. EOR(Employer of Record)を利用する
EOR(Employer of Record/雇用代行)は、自社の現地法人がない国で人材を雇用する際に活用できる選択肢の一つです。
一般的なEORの仕組みでは、進出先の国にあるEOR事業者が従業員の法的な雇用主となります。一方で、職務内容や役割、目標の設定、日々の業務管理はクライアント企業が担います。
EORの利用可否や仕組みは国によって異なるため、採用前に各国の法令や要件を確認することが重要です。
EORは具体的に何をするのか?
初めてEORを検討する企業からよく寄せられるのが、次の質問です。
「EORが法的な雇用主になる場合、実際に従業員を管理するのは誰なのでしょうか?」
一般的なEORの仕組みでは、EOR事業者とクライアント企業が役割を分担します。
具体的には、雇用に関する手続きや労務管理をEOR事業者が担い、実際の業務管理をクライアント企業が行います。
EOR事業者は、主に次のような雇用関連の手続きや管理を行います。
- 現地の雇用契約
- 給与計算・給与支払い
- 社会保険などの法定拠出
- 法定福利厚生
- 給与に関連する税務手続き
- 休暇制度などの法定雇用要件への対応
- 雇用関連書類および人事管理
一方、職務内容や業務目標の設定、人事評価、日々の業務管理はクライアント企業が担当します。
簡単に言えば、従業員はクライアント企業のチームの一員として働き、EORは現地雇用に必要な法務・労務管理の基盤を提供するという仕組みです。
海外進出は「まず1名の採用」から始めることもできる
たとえば、アジアへの事業拡大を検討している日本企業のケースで考えてみましょう。
シンガポールを有望な市場と見込んでいるものの、現地法人の設立にはまだ踏み切れない段階だとします。
本格的な投資に踏み切る前に、現地の事業開発担当者を1名採用し、市場調査や顧客との関係構築、シンガポールでの事業基盤づくりを進めたいと考えています。
この1名を採用するためだけに、シンガポールで現地法人を設立しなければならないのでしょうか。
必ずしも、そうする必要はありません。
このような場合、EORの利用が選択肢になります。
EORを利用する場合、従業員はシンガポールのEOR事業者に法的に雇用され、日本企業が日々の業務や事業目標を管理します。
EOR事業者は、現地法令に基づく雇用契約の締結、給与計算、社会保険料などの法定拠出、その他の雇用主に必要な手続きを担当します。
このような場合、EORを利用することで、現地法人をすぐに設立しなくても、シンガポールでの事業展開に向けた第一歩を踏み出せます。
その後、事業の成長に伴ってシンガポールに自社法人を設立した場合は、中長期的な事業戦略に応じて、従業員を自社法人での直接雇用へ切り替えることも検討できます。
日本企業がEORを活用できるのはどのようなケース?
EORは、シンガポール、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシアなど、もちろんアジア圏以外にも海外への進出を検討する企業にとっても選択肢となります。現地法人を設立する前の段階や、少人数で市場を検証したい場面で活用を検討できます。
例えば、次のようなケースが挙げられます。
- 新しい海外市場で初めての従業員を採用したい
- 現地法人を設立する前に市場の可能性を検証したい
- すでに海外に居住している人材を採用したい
- 海外で小規模なチームを構築したい
- 複数の国へ進出したいが、すべての国ですぐに法人を設立する予定はない
- 中長期的な海外展開を検討しながら、先に海外採用を開始したい
このように、EORは日本企業が段階的に海外展開を進める際の選択肢の一つとなります。
EORは「業務のアウトソーシング」とは異なる
EORを利用すると、従業員の業務そのものを外部に委託することになると思われるかもしれません。
しかし、EORは業務委託とは異なります。
EORを通じて雇用された従業員も、クライアント企業のチームの一員として働きます。
従業員の職務内容、ビジネス上の目標、日々の業務などはクライアント企業が管理します。
EORの主な役割は、従業員が働く国で、法的な雇用主として必要な雇用・労務管理の基盤を提供することです。
グローバル採用戦略の一環としてEORを検討する際には、この違いを理解しておくことが重要です。
EORを利用する前に確認すべきポイント
EORを活用することで、海外採用に伴う手続きや管理の一部を効率化できる場合があります。ただし、すべての国や雇用形態で同じ仕組みを利用できるわけではありません。
雇用に関する法令や制度は、国によって大きく異なります。
海外で人材を採用する前に、例えば次の点を確認しておく必要があります。
現地の労働法および法定福利厚生
- 給与計算および社会保険などの法定拠出
- 試用期間および通知期間
- 労働時間および休暇制度
- 解雇・雇用終了に関する要件
- 外国人を雇用する場合のビザ・就労許可
- 希望する職種や雇用形態がEORで対応可能か
- 会社負担の法定費用やEORサービス料を含む総雇用コスト
国によっては、労働協約(Collective Agreement)や業界別の雇用条件が適用される場合もあります。
海外雇用では、一つの方法をすべての国に一律で当てはめるのではなく、対象国や従業員の状況に応じて個別に確認することが重要です。
Link Complianceが日本企業の海外雇用をサポート
Link Complianceは、世界各国でEOR(Employer of Record/雇用代行)、人材採用支援、HRアウトソーシングのサービスを提供しています。
海外展開を進める日本企業に対し、現地の採用・雇用要件や雇用コストの確認から、従業員のオンボーディング、給与計算、継続的な雇用管理までをサポートしています。
各国のネットワークと現地の専門知識を生かし、それぞれの市場における実務上の雇用要件を確認しながら、企業の海外人材戦略に適した雇用体制の構築を支援します。
海外で初めて従業員を採用することを検討していますか?
海外で初めて従業員を採用する予定がある場合や、進出予定国でどのような雇用方法が利用できるか等、Link Complianceまでお気軽にお問い合わせください。
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