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加速する〝中国撤退〟 | 経産省による「中国撤退の補助金」支給の真相とは? 外資企業が中国を撤退する理由とは?

掲載日:2021年01月18日

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2021年を迎えた現在、世界中の企業で、いわゆる「中国撤退」「中国離れ」と呼ばれる動きがさらに加速しています。

米中貿易戦争と新型コロナウイルス感染拡大の影響により、アップルやホンハイ(鴻海)、任天堂といった名だたる企業が中国からベトナム、タイなどの国へと生産移管を進めつつあります。

本テキストでは、世界で加速している「中国撤退」の背景について、中国ビジネスに特化した総合コンサルティング会社「アウトバウンド・マネジメント」代表の日上正之氏に解説していただきます。

中国撤退を検討・実行している世界の企業の最新情報、昨今の中国ビジネスシーンで話題となった、経産省による中国撤退の補助金とも言われている「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」の最新状況についても、詳しく説明していただきます。

さらに、中国から事業を撤退する際の注意点として、いわゆる「チャイナリスク」についてもわかりやすく解説していただきます。

1. 世界で加速する「中国撤退」の背景とは?

新型コロナ感染拡大で、製造業を中心とした外資系企業が、一斉に中国からの撤退を実施・検討

2018年3月、トランプ政権が中国からアメリカへ輸出される鉄鋼製品に関税をかけたことから端を発した「米中貿易戦争」により、中国とアメリカの経済的対立が非常に深刻なものとなったことが盛んに報道されたのは、まだ記憶に新しいところでしょう。

同年12月のアルゼンチンおよび、翌2019年6月の大阪での「G20(主要20ヵ国・地域)サミット」を経て、トランプ大統領と習近平国家主席の会談が行われたことで「米中貿易戦争」はいったんは休戦。両国の対立もいったんは落ち着きを見せ始めました。

しかし、2019年12月以降の「新型コロナウイルス」の感染拡大により、中国に拠点を持つ外資企業の「中国離れ」「中国撤退」の動きが加速したのです。

具体的には、コロナのパンデミックを受け、中国に拠点を置いていた製造業を中心とした外資系企業が、一斉に中国からの撤退を実施・検討。2020年6月には、中国で製造業を営む企業の財務責任者の76%が、自社生産の一部を中国から他国に移管する計画があるという、スイス金融機関UBSによる調査データも発表されました。

2. 中国からの撤退を意向している企業とは?

国際社会で「脱・中国化」の風が吹き荒れている?

2019年6月、アップルがiPhoneなどの中国での集中生産を避けるように主要取引先へ要請したことが話題となりました。

同年7月には、任天堂が家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の生産ラインの一部を中国からベトナムへ移管する旨を発表。さらに同月、ダイナブックは、アメリカ向けのノートパソコンの生産について、中国以外への生産拠点の移転を検討していることを明らかにしました。サムスンも製造ラインを中国から生産拠点を移行しています。

前述したとおり、企業の中国離れは新型コロナウイルスの感染拡大により加速し続けており、UBSエビデンス・ラボの起業家アンケート調査によると、生産能力の一部を中国から移転したか、または移転する予定があると回答した企業は中国で60%、北アジア85%、米国においては76%にのぼります。

日本においては、政府が生産拠点の国内回帰や多元化を図るための補助金を採択。アイリスオーヤマやHOYA、シャープやサラヤ、テルモなどがこれを利用して、生産拠点を中国から移管することを計画しています。この補助金については次の項でご説明します。

輸出志向型企業は生産能力の一部を中国から移転することに対して強い意欲を示している企業が多いようです。

国際社会において、中国に対しての「脱・中国化」といった強い逆風が吹き荒れています。アメリカが中国製スマホアプリであるWeChatとTikTokを禁止したことは各種メディアで大きく報道されました。インドにおいても、WeChatとTikTokだけでなく、百度やウェイボーなどの100以上の中国製アプリを禁止しています。

3. 日本の経産省が中国撤退のための「補助金」支給を採択?

サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」とは?

新型コロナウイルスの感染拡大により、サプライチェーンが大混乱したのは昨年春先のこと。マスクやアルコールなどがドラッグストアから姿を消し、転売が問題視されました。これを受けて、多くの企業がマスクや医薬品などを国内生産しようとする動きが見られました。

前項でも日本政府が生産拠点の国内回帰や多元化を図るための補助金を採択したことに触れましたが、この補助金の正式名称は「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」と言い、コロナ対策として2020年度第1次補正予算に計2,200億円が計上されました。第一弾(6/5)の補助金は90件(996億円)の申請に対して57件(574億円)が採択(7/17)され、第二弾(7/22)の申請には1,670件(1兆7,600億円)の急増した申請に対して146件(2,478億円)が採択(11/20)されました。今後は補正予算860億円を追加にて検討中。

第一弾の採択企業の内訳は、前述したアイリスオーヤマやHOYA、シャープやサラヤ、テルモ以外にも、ゴム製の医療用使い捨て手袋を生産しているショーワグローブや、医薬品を製造しているニプロファーマなど、新型コロナウイルス対策に縁の深い製品を生産する企業が名を連ねています。大企業はわずか14社のみでした。第二弾も大企業は10社ほどに留まりましたが、マスクやアルコール以外に半導体、航空機、車用電池、レアメタルなどの企業も含まれています。

国内回帰の流れではありますが、サプライチェーンを特定国でなく多元化することが本来の目的でしたが、当初の説明ではあたかも中国撤退の趣旨をにおわせていましたが、生産拠点を国内生産に分散する戦略をとる企業であれば、問題なく申請は可能となっております。中国撤退のための「補助金支給」の意図は薄れています。例えばアイリスオーヤマは今後、日本国内だけでなくアメリカ、フランス、韓国といった拠点でマスク生産を行っていく方針のようです。

4. 中国から事業を撤退する際の注意点とは?

世界中の企業が中国からの撤退を意向している流れが止まらない中で、日本企業が中国撤退する際に注意しておきたいこととは何でしょうか。このセクションでは、忘れてはいけない「チャイナリスク」について解説します。

チャイナリスクとは?

チャイナリスクとは中国のカントリーリスクのこと。カントリーリスクとは、その国の女医性や社会環境など、地域性によるリスクのことであり、例えば日本なら、地震などの自然災害があげられます。

現在の「中国撤退ブーム」ともいえる状況になるより前から、中国への進出には、それ相応のリスクが伴うことが懸念されていたのです。

中国進出に具体的にどのようなリスクがあるのか見ておきましょう。

■環境のリスク

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、中国の生産部門に依存していた日本の製造業に大きなダメージを与えました。中国市場には進出していない企業も、インバウンド需要の激減などにより、厳しい状況に陥っています。これも環境にかかわるリスクの一つでしょう。

環境にかかわるリスクはビジネスに大きな影響を与えます。中国における環境に関する大きな問題といえば大気汚染です。大気汚染を減らそうという試みは数年前からあるものの、環境汚染が以前から問題視されています。

2016年には北京市で、大気汚染警戒レベルにおいて最も深刻な、健康被害をもたらすため外出を控える必要のある「赤色警報」が発令され、学校は休校。屋外工事なども休業になりました。

■政治的なリスク

政治にかかわる大きなリスクとしては、前述した米中貿易戦争でしょう。

いったん落ち着いた米中貿易戦争でしたが、トランプ大統領は中国の新型コロナウイルスへの対応を批判するなど、中国への強い姿勢を崩していません。

2020年7月には、アメリカ政府がテキサス州ヒューストンの中国総領事館の閉鎖を命令。中国がアメリカの知的財産を盗んでいることを受けた決定であると国務長官が発表しています。もちろん中国側は猛反発。米中の関係は新型コロナウイルスの感染拡大以降、さらに悪化し続けているように見えます。

米中関係は中国生産部門に依存している企業にとって大きなリスクの1つであり、だからこそ今、中国撤退の動きが加速しているのです。

■感染症のリスク / セキュリティのリスク

2005年に猛威を奮った鳥インフルエンザなど、各種感染症は人に対しても害が及ぶ可能性のある深刻な問題です。新型コロナウイルスの感染拡大は、世界で多くの人を死に至らしめました。しかもこの感染症には決定的な治療法が見つかっておらず、国によってはまだまだ収束していないのが現状です。

従業員に害が及ぶ可能性のあるリスクは他にもあります。例えば反日デモや不買運動などです。セキュリティに関するリスクは政治的なリスクとも直結しています。

■経済的リスク

中国の人件費が高騰しており、これが経済的なチャイナリスクと言えるでしょう。もともと安価な生産コストが魅力だった中国ですが、最近は人件費高騰によって生産コストが増えてきています。

■行政のリスク

日本と中国では、輸出入にかかる関税や審査、現地サービスの利用や住所の獲得などの行政面においてかなり勝手が違う、というのもおさえておかなければいけないチャイナリスクのひとつです。

中国の行政対応は日本に比べて煩雑な上に対応も遅いため、中国市場への進出を進める際、思うようなスピード感で事業展開できないことに苛立ちを感じることもあるかも知れません。

5. 中国からの事業の撤退・現地拠点の閉鎖は難しい?

中国進出よりも中国撤退が難しい?

中国は、進出よりも撤退が難しいと言われています。というのも、中国では事業を清算する際には裁判所からの許可が必要であり、裁判所から許可が降りず撤退できない、というケースがあるからです。

裁判所は、規模の大きな事業であればあるほど、撤退の許可を出し渋る傾向にあります。大手企業が、撤退の許可がおりないため、事業を法外とも言える格安の金額で現地企業に譲渡することになった、というケースもあるのだとか……。

中国撤退には、裁判所による許可だけではなく、現地の従業員の反発によって起こるリスクもあります。以前、撤退を不服とした現地従業員によって日本人経営者が軟禁されたという事件がありました。

中国で事業を行う際には、設立や運営の際よりも、撤退時にトラブルが生じやすいことはあらかじめ知っておいた方がいいでしょう。

6. 優良な中国進出サポート企業をご紹介

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今回は、世界で加速している「中国撤退」の背景について、中国撤退を検討・実行している世界の企業の最新情報、経産省による中国撤退の補助金と言われている、「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」について、さらには改めてチャイナリスクについて、中国関連の総合コンサルティング会社「アウトバウンド・マネジメント」代表の日正之氏に解説していただきました。

世界中で加速している中国撤退。ただし、撤退するには裁判所の許可が必要です。その許可もなかなかおりない傾向にあるため、中国撤退はなかなか難しいといえます。中国からの撤退をお考えの際は専門家に相談して対策を練るのが一番でしょう。

中国離れが進んでいるとはいえ、その理由のひとつとなった新型コロナウイルス感染症は他国に先んじて中国では収束しつつあります。また、生産した商品の多くは最終的に中国市場で消費されることや、生産の納期を守るためといった理由から中国にとどまる企業もまだまだ多く、中国市場の魅力がなくなったわけではありません。

中国への進出や撤退、また中国で事業を行っていく際には、現地の情勢や法律などに詳しい専門家が強い味方になります。中国事業に関するお悩みはぜひ一度、専門家にご相談されることをおすすめします。

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(参照文献)
「経産省、補助金第1弾を決定 世界中で「脱中国依存」が本格化か」大起元
「中国撤退に強い意欲 76%の米企業が移転の意向=スイス銀行が調査」大起元
【中国】北京を襲った大気汚染。2016年の当局の対策は如何にSustainable Japan

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この記事を書いた人

日上 正之

日上正之

中国関連のトータルサービスを提供する中国関連の総合コンサルティング会社「アウトバウンド・マネジメント」代表。 青山監査法人プライスウォーターハウス(現PwCあらた有限責任監査法人)に入所後、数年後同社の香港事務所に出る。その後、上海初代となり日系企業クライアント数がゼロの段階から200社のレベルまでに引き上げる。 帰国後はEY税理士法人にて取締役に指名され、その後国際税務アドバイザリーをより深めるためKPMG税理士法人へ異動。さらにクロスボーダーM&Aに関するトータルサービスを実践するためキャストコンサルティング(弁護士法人キャスト糸賀)の取締役、代表取締役社長を経て現職。国税庁内研修・税務大学校元講師。

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